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久保正樹   Feb 13,2015 UP
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 スティーヴ・ライヒのクラッピング・ミュージックを彷彿とさせる手拍子ポリリズム運動からはじまったかと思いきや、有無を言わせずに持続とヴァイオレンスが拡大し、ディス・ヒートばりの「この熱さ」がぐつぐつと蒸気を上げて(マサカーばりの鋭利さと凝縮力と言ってもいい)、舌の根も乾かぬうちに無骨で攻撃的なミニマル・アンサンブルにばったばったとなぎ倒される。ああ、こんなジーズを待っていた! 2000年に結成ということなので、ヤー・ヤー・ヤーズ、ライアーズ、ブラック・ダイス、アニマル・コレクティヴ、ライトニング・ボルト、バトルズ、アクロン/ファミリー、ダーティー・プロジェクターズなどなど、極彩色の音を放ちまくり、自由奔放に個性の固まりをぶつけてくるブルックリン一派たちと同世代ながら、そのなかでもひどく特殊なエネルギーをもった(特殊すぎて日本ではヤバさのみが伝播してイマイチ人気がないところがニクイ!)脱構築/新構築フリー音楽集団=ジーズの新作がリリースされたのだ。

 サム・ヒルマー(サックス)を中心に不定形なメンバー構成で活動をしてきたジーズだが、本作は、ヒルマーのほか昨年来日したガーディアン・エイリアンのドラマーとしてもお馴染みのグレッグ・フォックス(ドラムス/パーカッション/エレクトロニクス)、パトリック・ヒギンス(ギター)によるシンプルなトリオ編成にしてハミ出し方はマキシマムな、最新型ジーズの初のスタジオ演奏が収められている──こいつは2013年に来日したときにイキまくりの演奏を聞かせてくれたメンバーではないか!前作『Grain』(2013)ではいつもの反復運動に加え、サイケデリックにうずを巻きつつオウテカなんかも思い出させるグリッジーでバキバキのノイズ〜エレクトロニクスが導入されたり、古い音源をあれこれ加工したりして、ジーズがジーズを客観的に眺める冷めたエディット感覚を楽しむことができた。この極北感こそジーズなのだ。が、しかしそこに少しのもの足りなさを感じていたのは筆者だけだろうか? 整頓されて取りすました暴力なんて似合わない。ジーズはごつごつと粗雑でいてお熱いのにかぎる。

 そして本作『Xe』だ。熱い。金属的なのに熱い。息をつかせぬ緊張感の連続にばくばくと鼓動が高鳴り、ひたすら熱い。スタジオ一発録り&ノー・エフェクト、ノー・エディット。ポスト・プロダクションとしていっさい手を加えてないという産まれたままの音が潔い。もう一度言う。熱い。熱すぎる。個人的に2010年のベストであった『ニュー・スレイヴス』の頃に立ち返ったような、いや、それ以上に露骨で肉体的な質感。パトリックによるピッチシフトされたテクニカルなメタリック・ギターにカキンコキンと打楽器のように鳴らされるハーモニクスとブラッシング・ノイズ。そこに、「鉄は熱いうちに打て!」と言わんばかりに細かく連打されるグレッグのリム・ショット。内臓破りのバス・ドラム。土着的なタム回し。ときに竜巻のような脅威をもって襲いかかるそのリズムは、ミルフォード・グレイヴスの野蛮とハン・ベニンクの頓智をないまぜにしたようなきっかいさを食らわせてくれる。そして、なんと言ってもヒルマーの雄叫びのようなサックスが凄まじい。ペーター・ブロッツマンが脳裏をかすめる豪快なマシンガン・ブロウにアルバート・アイラーが取り憑いたようにすすり泣く咆哮。がさごそとした騒音からファラオ・サンダースばりの神妙なフレーズまで飛び出すプレイは、まるで古い薬箪笥のように引き出しが多く、どこを開いてもアヴァンギャルドな処方せんが用意されているので癒しどころか軽くめまいを覚えてしまう。

 ブルックリン一派だけでなく、レコメン〜ノイズ/フリー・ジャズ系にも激しく呼びかけ、極めてオルタナティヴなエネルギーを放出するジーズの新作。かつてジョン・ライドンがP.I.Lのシングル“ライズ”(1986)のなかで「Anger is an Energy(怒りはエネルギーだ!)」と繰り返し叫んだように、ジーズの根っ子には怒りがありハードコアがある。そこには彼らがよく比較されるバトルスがもっていた数学的な聡明さというよりも、もっと本能的で、ずっとヤクザで、少し数字が苦手そうな(失礼……!)大阪のボナンザスやgoatたちとの親和性を感じるのは筆者だけではないはずだ。黙ってラスト18分にも及ぶ“Xe”を聴いてほしい。すべての音にぶっちぎりのテンションが宿り(同時にプリズムの板のように研ぎ澄まされた繊細さをもち、輝かしい光を跳ね返す!)、模索するのではなく、はっきりとした意識をもって迷いなく新しい尺度を構築するわがままなアンサンブルにむんずと胸ぐらをつかまれて、とことんまでビビらされたあげく、私たちが知ってるつもりでいた通念的なアヴァンギャルドの皮を根こそぎ引っ剥がされるわ、肝をつぶされるわで、ぐりぐりされてあんぐりするのがオチである。

久保正樹

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