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VVAQRT

IndustrialNoisePost-PunkSynth-pop

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久保正樹   Feb 26,2015 UP
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 チャペル・ヒルから現れた、男女ミニマル・シンセ・デュオ=VVAQRT。マイ・フィリ(エレクトロニクス)とミルデュー・イーザース(ヴォーカル)による2人組という以外、そのユニット名の由来はおろか、読み方さえもさっぱりからないけれど(ヴァクアートでよいのかな?)、どことなく空っぽで、陰陰滅滅と灰色めいた世界を、曲がりなりにも垢抜けた可憐なフィーリングで包みこむキャラクターとサウンドははなはだ刺激的だ。

 リリースは知る人ぞ知るノースカロライナのマイナー・レーベル〈ホット・リリース〉からだけれど、いかんせんこのレーベル……「ホット」とは名ばかりで、体温低いし、実験的だし、ときにサイケでドローンでアシッドまじりのテクノ作品まで押さえているのだからあなどれない。そして、彼らはそんなレーベル・カラーにもぴったり! さらに、そのなかでもひときわ立ちまさる存在感を放つ理由は、ミルデューによる、オブスキュアな雰囲気を醸し出しつつも、歯切れのよいニュー・ウェイヴィなヴォーカルの魅力があるからにちがいない。
 ざらついたインダストリアルなビートにメタリックでどう猛なパーカッション。穏やかでない気配を漂わせながらも、フックの効いた小気味よいシーケンスがポップに駆け抜けるさまは、まるでクリス&コージーの『トランス』(1982)の頃のような工業サウンドとテクノ・ポップの妙々たる混ざり具合を聞かせてくれる。そして、そこに乗っかるミルデューのヴォーカルは、歌う、というよりも語りかける(ときに性急にまくしたてる!)スタイルで、マイが作りこんだTVや映画からのサンプリング音を巧みに織りまぜた、ロウでハウシーなリズムと絡みあい、なんとも言えないゾクゾク感を与えてくれる。

 この少し風変わりでチープなリズム&音響に、キリリと空気を引き締めるポエトリックなヴォーカル。何かに似ているな……と考えていたら、1982年から90年代前半まで活動していたシカゴの男女ミニマル・ポスト・パンク・デュオ=アルジェブラ・スーサイドを思い出した。そして、そんなことを考えながら彼らのブログを覗いてみたら、ネナ・チェリーの“バッファロー・スタンス”、スリック・リックらオールドスクールなヒップホップ。スタントン・ミランダ(元シック・ピジョン)、マルタン・デュポン、マリー・ムーアらB級シンセ・ウェイヴ〜ポップ。さらには、コクトー・ツインズからモンテ・カザッツア(かの名フレーズ〈Industrial Music For Industrial People〉の発案者!)の動画までもが紹介されていて納得! 彼らが憧憬する先と美意識がもろに見てとれて楽しい。

 マシナリーに駆動する工業サウンドだけでなく、ディスコチックなレトロ・ビートや、暗闇でドッキリ! とさせられるどん底シンセ・ベースもどくどくむらむらと昂揚を誘うVVAQRT。アルバムのほとんどを2分にも満たないエレクトロニクス小曲で畳みかけ、こぢんまりとしながらも、あの手この手でこちらを攻め立てるセンシュアルな風情が妙に艶めかしい。
 今年1月には、地元ノースカロライナで行われたゾラ・ジーザスのツアーのオープニングも務めた彼ら。そのときの写真を見ると、いつもはつつましい佇まいをみせているヴォーカルのミルデューが、わずかに装飾をほどこした灰色の全顔マスクを装着していて、その姿はまるでGX・ジュピター・ラーセン(ザ・ヘイターズ)のよう……。いや、少し大げさでしたね。さすがにGX印の黒のラバー・マスクではないので、あれほどの恐怖感はなく、スカミーでもなく、いくらかポップなんだけれども、その衝動の美学はミニマル・シンセ好きだけではなく、心あるノイズ・ファンの目と耳も十二分にくすぐるはずだ。

久保正樹