ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. interview with Okada Takuro 眠れぬ夜のために (interviews)
  2. Sugai Ken - UkabazUmorezU (不浮不埋) (review)
  3. Mura Masa - Mura Masa (review)
  4. Quit Your Band! ──イギリス人ジャーナリストによるJポップ批評、『バンドやめようぜ!』刊行のお知らせ (news)
  5. interview with Takuro Okada 眠れぬ夜のために (interviews)
  6. East Man ──ベーシック・リズムが新名義で〈プラネット・ミュー〉よりアルバムをリリース (news)
  7. New Sounds of Tokyo 東京でもっとも尖っている音楽をやっているのは誰だ? (interviews)
  8. AFX - London 03.06.17 [Field Day] / AFX - Korg Trax+Tunings for falling asleep / AFX - Orphans (review)
  9. 光 - (review)
  10. Melanie De Biasio - Lilies (review)
  11. Nicola Cruz ──エクアドルの電子音楽家、ニコラ・クルース初来日決定 (news)
  12. Matthew Herbert Brexit Big Band - @Blue Note Tokyo (review)
  13. interview with doooo マッドでファニー、盛岡からやって来た気鋭のビートメイカー (interviews)
  14. Lee Gamble - Mnestic Pressure (review)
  15. 音楽と建築 - ヤニス・クセナキス 著 高橋悠治 編訳 (review)
  16. interview with Yukio Edano つまり……下からの政治とはいったい何なのか (interviews)
  17. L.A. Witch - L.A. Witch (review)
  18. interview with Cosey Fanni Tutti スロッビング・グリッスルを語る (interviews)
  19. interview with Mount Kimbie 生き残ったのは誰だ (interviews)
  20. パーティで女の子に話しかけるには - (review)

Home >  Reviews >  Album Reviews > Jamie Woon- Making Time

Album Reviews

Jamie Woon

DubstepR&B

Jamie Woon

Making Time

PMR / ホステス

Tower HMV Amazon iTunes

小川充   Dec 08,2015 UP
このエントリーをはてなブックマークに追加

 ジェイムス・ブレイクはファースト・アルバム、続いて『オーヴァーグロウン』を発表する中、それ以前のシングル群で見せていたダブステップの世界から、シンガー・ソングライターとしての色合いを深めていった。ジェイミー・ウーンも同じような立ち位置のアーティストで、ともに親がロックやフォーク畑のミュージシャンという共通点もある。ジェイムス・ブレイクがキーボードを弾いて歌うのに対し、ジェイミー・ウーンはギターの弾き語りだ。もともとソウル系のシンガー・ソングライターを出発点とするジェイミーだが、ブリアルやラマダンマンらダブステップの人脈から、母親の出身地であるスコットランドのハドソン・モホークとも交流を持ち、彼らをリミキサーに迎えている。2011年にリリースされたファースト・アルバム『ミラーライティング』は、ブリアルや母親のメイ・マッケンナなどを交えて制作され、シンガー・ソングライターとしての側面とポスト・ダブステップ的なサウンド・プロダクションが結び付き、ジェイムス・ブレイクやサブトラクトのファーストと並んでこの年を代表する傑作だった。それからかなり間隔が空いてのセカンド・アルバムが『メーキング・タイム』だ。

 今回はリリース元がディスクロージャーやジェシー・ウェアなどをリリースする〈PMR〉なので、『メーキング・タイム』よりさらにダンス色、ポップ色が強まり、ややもすればジェイミーの持味が薄れてしまうのではとも懸念したが、そうした心配は必要なかった。むしろ前作でのブリアルのサウンド・プロダクションがなくなったぶん、ジェイミーのシンガー・ソングライター面によりスポットが当たっている。彼の歌とソング・ライティングだが、“メッセージ”“ムーヴメント”“デディケーション”などに顕著なように、マーヴィン・ゲイやリオン・ウェア・マナーとでも言うべきソウルフルなテイストが増している。“シャープネス”はミルトン・ライトとかティミー・トーマスあたりのマイアミ・ソウルを彷彿とさせる。“セレブレーション”はゲスト参加のウィリー・メイソンによるしわがれた歌をフィーチャーし、カントリー調の味わいを持つ作品に仕上がっている。“スキン”での自身のコーラスの多重録音はドゥーワップを基とするものだろう。

 ジェイミーはディアンジェロやアッシャーなど1990年代のR&Bが好きで音楽をはじめたので、そのルーツにあるこうした1960年代から70年代にかけてのアメリカのソウルへと向かうのは理解ができる。でも、アメリカの黒人文化の象徴であるソウルとはちがう肌触りもあり、あくまで抑制のきいた歌や演奏が、ジェイムス・ブレイク同様にイギリスのシンガー・ソングライターたるゆえんではないだろうか。そうしたUKらしさは内省的な“ラメント”やフォーキーな“フォーギヴン”“リトル・ワンダー”に表れており、ニック・ドレイクやジョン・マーティンから、ルイス・テイラーなどUKのシンガー・ソングライターの系譜を思い浮かべさせる。“サンダー”のようにポップさを持ちながら、どこか屈折した味わいも英国ならではだ。

小川充