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デンシノオト   Jan 05,2016 UP
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 サンO)))、6年ぶりのスタジオ・アルバムである本作は、静寂な持続音から幕を開ける。それは現代音楽的な弦楽のようにも聴こえるし、極寒の風のように厳しく、もしくは乾いた大地のような過酷な音にも感じる。やがて、その硬い持続音は、大きく波打ちながら、サンO)))的な強烈な音響へと変化を遂げていくだろう。
 アッティラ・チハーのハウリングするヴォイス、グレッグ・アンダーソンによる地響きのようなベース、スティーヴン・オマリーの空気を切り裂くような電気ギター、そして、オーレン・アンバーチ、スティーブ・ムーア、レックス・リッター、ランドール・ダンらによる生々しいアナログな電子音などが重層的に積み上げられ、鼓膜を、耳を、体を強く揺さぶる。まさに漆黒のドゥーム/ドローン、強靭なダーク・アンビエント、極限にして異形のヘヴィメタルである。ここには西洋音楽の極北とでもいうべき音楽/音響への嗜好性が強く刻み付けられている。音響。建築。空間。静寂。轟音。終局。メタル的な轟音が融解したノイズによって、ヘーゲル的な弁証法を音楽によって実現すること。そんな彼らのサウンドは、いわば西洋人の受難の旅の極北地点を思わせるもするものだ。

 そして、その極北において西洋と東洋は交錯する。観音菩薩をイメージ/テーマとする本作は、「東洋」的(あくまでイメージとしてだが)な瞑想性を想起させる楽曲/音響になっているのだ。ヴォイスは絶叫から念仏のように変化を遂げ、静寂と轟音は、融解・反転し、建築と偶然は共存する。
 たしかに本作にはある種の「瞑想性」がある。轟音と瞑想。いわば瞑想のためのドゥームだ。世界崩壊の予兆が表面化してきたこの時代に、西洋と東洋の交錯地点で「瞑想」すること。歴史と国境の境界では「無」になること。ノイズのむこうにある静寂=空虚=無の生成させること。とはいえ、急いで付けくわえておくが、その瞑想性は、サウンドのアンビエント性「だけ」で保障されているわけではない。そうではなく、本アルバムがわずか「30数分で唐突に、本当に唐突に幕をおろす」点が重要なのだ。この中断によって「無」が生まれる。まるで三島由紀夫『豊穣の海』の終局のように、あらゆるものが無に還る空虚が……。

 1曲め“カンノン1”、2曲め“カンノン2”では多くの(にしておなじみの)ゲストが参加しているが、3曲め“カンノン3”はサンO)))の二人に加え、チハーを加えた3人だけの演奏で、その分、ギターとノイズ、ヴォイスがより生々しく感じられるトラックである。“カンノン1”と“カンノン2”が冥界から降り注ぐようなアンビエント轟音と比較すると、“カンノン3”の音はもっともっと生々しい、いわば地上世界の過酷な生死のさまを描写する煉獄(と救済)の音のように聴こえる。
 そして、それは唐突に終わるのだ。プッツリとブラック・アウトするように。私などは、この「宙吊りの空虚感」こそ「無」を極限において表現しようとした彼らの創作的達成ではないかと考えてしまう。奔流から無へ。そこに広がる(無=)音は、わたしたちが生きる無常/無情の世界の音響であるのはいうまでもない。
 そう、本作においては「轟音と無(=中断)」、「音楽と世界」、「冥府と現実」が反転するかのように繋がっているのである。そこにこそ『カンノン』というアルバムの本当の凄まじさ(恐ろしさ)があるように思えてならないのだが、どうだろうか……?

デンシノオト