ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Ken Ishii ──ケンイシイが13年ぶりのニュー・アルバムをリリース、新曲を公開 (news)
  2. 子どもたちの階級闘争――ブロークン・ブリテンの無料託児所から - ブレイディみかこ (review)
  3. TODD TERJE JAPAN TOUR 2019 ──ノルウェーのディスコ王、トッド・テリエが来日 (news)
  4. interview with Strange Reitaro この素晴らしき世界 (interviews)
  5. Politics 黒船MMTが来航、開国を迫る。その時、日本の与野党は (columns)
  6. IO - Player's Ballad. (review)
  7. Columns マキ・ザ・マジック追悼文 ――女神にKiss ケツにKiss どっちにしても墓場で笑う (columns)
  8. R.I.P. Philippe Zdar (news)
  9. Stereolab ──ステレオラブ再始動キャンペーン第二弾、代表作3枚が一挙リイシュー (news)
  10. Kokoroko - Kokoroko / Various - Untitled (review)
  11. 編集後記 編集後記(2019年7月9日) (columns)
  12. interview with Jordan Rakei 人間性を忘れてはいけない (interviews)
  13. Flying Lotus ──衝撃を与えた映画『KUSO』がまさかの再上映決定 (news)
  14. interview with Francesco Tristano 日本らしいものを作っても意味がない (interviews)
  15. Charles Hayward - (Begin Anywhere) / Charles Hayward - Objects Of Desire (review)
  16. Koji Nakamura - Epitaph (review)
  17. Ryan Porter ──LAのトロンボーン奏者ライアン・ポーターが新作をリリース、カマシ・ワシントンやサンダーキャットが参加 (news)
  18. interview with Black Midi 自分自身を解体するアート (interviews)
  19. Flying Lotus フライング・ロータス最新作『フラマグラ』の魅力とは? (interviews)
  20. Politics オカシオ-コルテス、“MMT(現代貨幣理論)”を語る (columns)

Home >  Reviews >  Album Reviews > Félicia Atkinson- Hand In Hand

Félicia Atkinson

Experimental

Félicia Atkinson

Hand In Hand

Shelter Press

Tower HMV Amazon iTunes

デンシノオト   Jul 05,2017 UP
このエントリーをはてなブックマークに追加

 フランスの電子音楽家フェリシア・アトキンソンの新作が〈シェルター・プレス〉からリリースされた。活動初期には〈ホーム・ノーマル〉や〈スペック〉などからアンビエントな作品をリリースしていた彼女だが、2015年に同〈シェルター・プレス〉から発表した『ア・レディメイド・セレモニー』あたりから作風がよりエクスペリメンタルな音響作品へと変化。2016年に〈ルーツ・フェスタ〉の主宰としても知られるアンビエント/サウンド・アーティスト、ジェフリー・キャントゥ=レデスマとのコラボレーション作品『コム・アン・スル・ナルシス』をリリースしたことで、「2010年代的エクスペリメンタル・ミュージック・アーティスト」としての存在感が再浮上してきた(その意味で、フェリシア・アトキンソンの創作活動には2015年前後を境に大きな変化と断絶を聴き取ることは可能のはず)。

 本作『ハンド・イン・ハンド』は、フェリシア・アトキンソンの新たな代表作としてカウントすべき傑作である。少なくとも今年前半にリリースされたエクスペリメンタル・ミュージック/電子音楽の中でも格別の出来栄えを示している。昨年あたりからやや飽和気味ともいえるこの種の音楽にあって個性と洗練が絶妙なバランスで同居している稀なアルバムに仕上がっているのだ。

 ロバート・アシュリーやジョアン・ラ・バーバラなど電子音楽史にその名を残す巨匠たちからインスパイアを受けたとされる本作は、電子音楽/ミュジーク・コンクレートの系譜にあるともいえるが(じっさい、GRMのフェスで演奏されるという)、同時に〈ポッシュ・アイソレーション〉からリリースされるノイズ作品のような衝動と色気が同居するような現代性も強く刻印している。この境界や流域の越境性において、2017年現在のエクスペリメンタル・ミュージック/ノイズ・サウンドとして格別な存在を刻み込んでいるアルバムとなっている。

 楽曲の構造も独特だ。即興と構築の「あいだ」を融解させ、連続と非連続の「はざま」に乾いた電子音や環境音の交錯/構造/結晶体が生成し、消えていき、そしてまた生成する。そこには明確な構造の意志と構造を超えたところに表出する感覚的なモノへの感性がある(彼女自身の「声」が、アルバム全編に渡って、モノローグのように、ポエトリー・リーディングのように挿入/レイヤーされていることも重要だ)。

 アルバムには全10曲(ヴァイナルは2枚組)が収録され、フェリシア・アトキンソンは、コンポジション/ミックスのみならずアートワークまでも手掛けている。
 電子音、環境音、声。そしてアートワーク。それらが「意味」を超えて、質感の官能を露わにしていくことで生まれる新世代の実験性と先進性。そう、本作に蠢く音響は、2017年的な新しいエクスペリメンタル・ミュージックの姿を見事に象徴しているように思えてならないのだ。先端的エクスペリメンタル・ミュージック/電子音楽/実験音楽における最良の作品が、いま、ここに生まれた。2017年前半における最良のエクスペリメンタル・ミュージックである。

デンシノオト