ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Columns 断片化された生活のための音楽 ——UKインディーズ考 (columns)
  2. Ehiorobo - Joltjacket (review)
  3. King Krule - You Heat Me Up, You Cool Me Down (review)
  4. dj honda × ill-bosstino - KINGS CROSS (review)
  5. 年明けのダンス・ミュージック5枚 - (review)
  6. interview wuth Geoff Travis and Jeannette Lee 〈ラフ・トレード〉が語る、UKインディ・ロックの現在 (interviews)
  7. どんぐりず ──マッチョなシーンに風穴を開ける!? エレキング注目のラップ・ユニットが東京と大阪でライヴ (news)
  8. Makaya McCraven - Deciphering The Message (review)
  9. Luke Wyatt & Dani Aphrodite ──ファッション・ブランドの〈C.E〉が2022年春夏コレクションに先駆けヴィデオを公開 (news)
  10. ELECTRONIC KUMOKO cloudchild ──サム・プレコップやカルロス・ニーニョらも参加するコンピがリリース (news)
  11. Parris - Soaked In Indigo Moonlight (review)
  12. History of Fishmans ——久しぶりのフィッシュマンズのライヴ情報 (news)
  13. Random Access N.Y. vol. 131 : 2022年1月、ニューヨークの現在 (columns)
  14. Norhern Soul ──『ノーザン・ソウル』、この最高な映画を見たらスリムのデニムを履けなくなる (news)
  15. interview with Jun Miyake ジャズ、ブラジル音楽、クラシックが交錯する時間の迷宮 (interviews)
  16. パフォーマンス:クリスチャン・マークレーを翻訳する - @東京都現代美術館 (review)
  17. Billy Wooten ──70年代ジャズ・ファンクの至宝、ビリー・ウッテンのTシャツ&7インチ・セットが発売 (news)
  18. Ian Wellman - On The Darkest Day, You took My Hand and Swore It Will Be Okay (review)
  19. interview with Terre Thaemlitz 移民、ジェンダー、クラブ・カルチャーと本質主義への抵抗 (interviews)
  20. Cleo Sol - Mother (review)

Home >  Reviews >  Album Reviews > Parliament - Medicaid Fraud Dogg

Parliament

Funk

Parliament

Medicaid Fraud Dogg

C Kunspyruhzy/Pヴァイン

Amazon

野田努   Sep 12,2018 UP
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
E王

 若い頃は1ヶ月のレコード代で5万は使っていたが、いまは1年間カミさんと合わせて医療費10万以上は使っている。そのぐらいで済んでいるだけでもラッキーかもしれない。若い頃はジョギングなんかしているミック・ジャガーを死ぬほど軽蔑していたものだが、いまは毎週末区民プールで泳いでいる。悲しいよのぉ。歳を取るとは診察券が何種類も増えることであり、医療をより身近に考えることである。悲しくもしかしリアルな、そして我々が生きていく上で必要不可欠な問題をサブジェクトに、パーラメントがこの名義では38年ぶりとなる新作をリリーする──というのはなんともファンキーだ。題して「医療詐欺の犬(メディケイド・フロード・ドッグ)」。
 オバマケアの喪失も大きいし、ジョージ・クリントンは数年前に長年のドラッグ中毒から立ち直り、そしていまは合法的なドラッグ治療に身をさらしていると、70を越えたファンケンシュタイン博士はそう言っていた。アメリカの医療費はハンパなく高額だし。こうした医療/健康という観点から社会を覗いたときの違和感/憤りを音楽に込めるというのは、さすが。というかパーラメントがこんな社会派だったことがあったのだろうか。ジョージの観察眼は、習慣病からSNS文化、保険勧誘員にまでおよんでいるようだ。なんにせよ、ジョージはその鋭さを失っていない。これはアメリカの闇夜への逆襲だ。1曲目の“医薬用クリープ”のシンセベースとトラップのリズム(それは本作で何回か出てくる)、不気味な童謡コーラス、ホーン、そして堂々たるトロンボーン。格好いいけれど……しかし決して楽観的ではない。なにせ「お母さんが昨晩、廊下で倒れて寝てしまった……」のだから。
 本人によれば、ケンドリック・ラマーの『トゥ・ピンプ・ア・バタフライ』への参加は大きかったようで、ジャズへのアプローチを見せている“アンチソーシャル・メディア”は完全にその影響だという。ちなみに歌詞のほうはソーシャル・メディアの病みを扱っていると思いきや、嫌っている人間ほどソーシャル・メディアをやっているということらしい。それから“69”は、1969年を主題にした曲で、こんな時代だからこそあの頃の理想主義を思い出そうということらしいです。
 パーラメントならではの宴会のりというか、“On Fire”や“Loodie poo Da Pimp”(ケンドリックに捧げたと思われる)のような、そしてかなりキラーな“Kool Aid”のような、教会でゴスペルやりながらトリップしていくようなヨコ揺れ感覚はもちろん健在で、4年前のファンカデリック名義のアルバムはCD3枚だったが、こんどはこんどでCD2枚でおよそ2時間ある。全23曲+1、ゆるゆるではあるが、なぜか心強くなるサウンドが惜しみなく収録されているというわけだ。とくに1枚目のCDの後半から2枚目の最後までは、P-ファンク節満載。まあ、泥臭い音楽である。つまり商品として加工される前の生々しさ、ムーディーマンのようなそれがここにもある。

 ところで、こないだの来日時に編集部はジョージ・クリントンに対面取材しました。10月発売の「フライング・ロータスとブレインフィーダー」特集号に掲載されるので、どうぞお楽しみに。(取材時にもっともシュールだったのは、撮影のためジョージ・クリントンと小林さんが同じエレヴェイターに乗ったことだった。お互い無言でただ笑みを交わしただけだったというが、想像しただけでもオソロシイ……)
 

野田努