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Oscar Jerome

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小川充   Sep 09,2020 UP
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 サウス・ロンドンのジャズ・シーンでは、ジャズだけでなく他の分野のミュージシャンとの交流もいろいろあり、たとえばシンガー・ソングライターやラッパーとのコラボも頻繁におこなわれる。今年リリースされたトム・ミッシュとユセフ・デイズのアルバム『ワット・カインダ・ミュージック』などが代表例だが、オスカー・ジェロームもそうしたジャズと他分野の境界線にいるアーティストだ。オスカー・ジェロームはギタリストであり、アフロ・バンドのココロコのメンバーとして知られる。ジョー・アーモン・ジョーンズとは学生時代からの友人で、『イディオム』(2017年)や『スターティング・トゥデイ』(2018年)などの作品でも演奏している。サウス・ロンドンのギタリストではマンスール・ブラウンやシャーリー・テテなどもいるが、テクニカルなプレイでギターの可能性を追求するマンスール・ブラウンに対し、オスカー・ジェロームはシンガー・ソングライターとしての立ち位置に重きを置くギタリストであり、どちらかと言えばトム・ミッシュに近いスタンスかもしれない。

 最初にオスカーがソロEPをリリースしたのは2016年のことで、ジョー・アーモン・ジョーンズ、ヌバイア(ヌビア)・ガルシアモーゼス・ボイドらと共演するものの、“ギヴ・バック・ワット・ユー・ストール・フロム・ミー” のようなヒップホップ・ソウルも披露していた。ギル・スコット・ヘロンとモス・デフを足して2で割ったような印象で、トム・ミッシュやロイル・カーナーなど同世代のアーティストに通じる作品だった。2018年の “ホエア・アー・ユー・ブランチズ?” はさらにアコースティックな要素が強く、アフリカ音楽の要素を感じさせる点は彼の参加するココロコにも通じるところだった。この曲が収録されたEPではウー・ルー(最近ではザラ・マクファーレンのアルバム『ソングス・オブ・アンノウン・タン』をプロデュースしていた)をプロデューサーに迎え、ポッピー・アジュダーなどさらに多彩な面々と共演している。そのほかではヒドゥン・スフィアーズのディープ・ハウス系トラックにも参加するなど、いろいろ幅広い活躍を見せていた。

 アルバムとしては2019年に『ライヴ・イン・アムステルダム』を発表し、これは文字通りオランダでのライヴ録音で、“ギヴ・バック・ワット・ユー・ストール・フロム・ミー” や “ドゥ・ユー・リアリー”など、これまでシングルやEPで発表してきた曲を演奏していた。そしてこの度リリースした『ブレス・ディープ』は、初めてのスタジオ・アルバムとなる。ミュージシャンにはジョー・アーモン・ジョーンズなどこれまでのEPやライヴ盤でも演奏してきた面々に加え、ココロコのメンバーからディラン・ジョーンズ、トム・スキナー、トム・ドライスラー、ファーガス・アイルランド、サム・ジョーンズ、ベン・ハウク、ブラザー・ポートレイトらサウス・ロンドン勢、さらに先日ニュー・アルバムをリリースしたばかりのシンガー・ソングライターのリアン・ラ・ハヴァスまで参加する。リアンのアルバムにはブルーノ・メジャーも参加していたが、プロデューサーのベニ・ジャイルズとエンジニアのロバート・ウィルクスがオスカーのアルバムとも共通していて、いろいろな繋がりが見えてくる。

 収録曲は “ギヴ・バック・ワット・ユー・ストール・フロム・ミー” をテンポ・アップして再演し、“グラヴィテイト” は『ライヴ・イン・アムステルダム』でもやっていたナンバーだが、ほかは全て新曲となっている。“サン・フォー・サムワン” はファンク調のトラックだが、レゲエやダブから来たレイド・バックしたフィーリングと風変わりなリズムがアクセントとなっている。オスカーの歌もちょっとスティングを感じさせるところがある。“ユア・セイント” はアコースティック・ギターの弾き語りではじまり、やや調子外れの歌はキング・クルールやプーマ・ブルーを彷彿とさせる。途中からリズム・セクションが入ってくるが、演奏はココロコのメンバーが中心となっていて、アフリカ音楽からの影響も感じさせる曲だ。“コイ・ムーン” にもムビラやカリンバ(親指ピアノ)のような音色が流れ、アフリカ的なムードを感じさせる。こうしたムードは、ほかのR&Bアーティストやシンガー・ソングライターにはないオスカー独自のテイストと言える。

 ジャズ・ファンクとブロークンビーツが混ざったような “グラヴィテイト” はベン・ハウクとの共作で、いまのサウス・ロンドンらしいクロスオーヴァーな魅力に溢れたクラブ・トラック。インストの “ファッキン・ハッピー・デイズン・ザット” はギタリストとしてのオスカーを映し、ジャズとファンクとブルースとカリプソが一緒になったような曲になっている。そしてリアン・ラ・ハヴァスとのデュエットで聴かせるオーガニック・ソウルの “タイムレス”、バックはファーガス・アイルランドのベースのみというシンプルなギターの弾き語り曲 “ジョイ・イズ・ユー” と、アルバムの最後はフォーク・シンガーとしてのオスカーの魅力が詰まった曲で締めくくられる。ジャズ、ソウル、フォーク、アフロなどの中間点に位置するシンガー・ソングライター、それがオスカー・ジェロームである。

小川充

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