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Disclosure / AlunaGeorge

HouseR&BUK Garage

Disclosure / AlunaGeorge

@恵比寿LIQUIDROOM

Sep 24, 2013

竹内正太郎  
写真:yuichiihara   Oct 02,2013 UP
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 「ヤバい、ヤバい」と、うしろの女の子グループが興奮しているのが聴こえる。隣の男の子は、最初から体を激しく揺さぶったままだ。僕も負けじと体を動かす。ちょっと前の方に、XXYYXXのトートバッグをぶら下げた男の子がブチ上がってるのが見える。そのうしろの、上品にめかし込んだシティ・ガールも控えめながらも体でビートを感じている。いい感じだ。
 ディスクロージャーがハウス色に染め上げた空間に、再びアルーナが登場する。"White Noise"だ。当然、プレイが期待され、また予期もされていたナンバーだが、フロアはこの夜の最高潮を迎えた。ジャスト・ノイズ、ホワイト・ノイズ、ジャスト・ノイズ、ホワイト・ノイズ......、本当にいい夜だった。特にディスクロージャーのパフォーマンスは、〈FUJI ROCK FESTIVAL '13〉におけるThe XXとともに、いま、UKのポップ界で何が起きているかを見せつける素晴らしい内容だったのではないだろうか。

 思えば大学時代、仙台市の図書館で『ブラック・マシン・ミュージック』(河出書房新社)を読んだ僕は、以来、ハウスという音楽を、どこか秘密の地下帝国にのみ存在する架空の音楽としてそのイメージを闇雲に膨らませてきた。同時期に手に取ったフランキー・ナックルズの偉大なるクラシックスに魅了されなかったわけではない。この本──言うまでもなく、ポスト・ファンク期においてディスコがいかに嫌われ、笑われ、軽蔑され、そしてそれがハウス・ミュージックへと「潜る」ことによってアンダーグラウンドでいかに延命したかを、緻密なリファレンスとロマン主義的な筆致で描いた古典──のなかで前景化される、若き黒人たち──主に同性愛者たち──の物語は、意識のレベルで僕を排除するにはあまりにディープ過ぎたのだ。
 一方のこの日、恵比寿の〈LIQUIDROOM〉には、なにか特定のフィルタリングを施される前の、所属クラスターの異なる人たちの奇妙な融和があった。ひと言で、ちょっとしたカオスだったと言ってもいい。開演を待つあいだ、どこからか「ディスクロージャーを聴いてるのがどういう人たちか、まったく想像できないんだよねー」という声が聞こえ、そこで「たしかに」と思ったのは、実際、フロアに集まった人たちに統一感というものがなかったからで、みんなめかし込んでハウスとR&Bを渇望してきたのか、と思えば、すぐ前の男の子グループはなぜか血気盛んにラモーンズの話をしているし、予定を20分押してアルーナジョージが登場すると、ギャル風のグループから「カワイイー!」の声が上がる。僕はいい場所に来たな、と思った。

 アルーナジョージのライヴは"Just A Touch"で幕を開けた。〈トライ・アングル〉からのEP「You Know You Like It」のB面に収録された、ファンにとってはずいぶん思い入れのあるナンバーだ。アルーナは、ハイスクールものの海外ドラマから出てきたヒロイン(の親友)のような奔放さと無邪気さを残しつつも、人を誘うような、挑発するような眼差しを振りまいていて大変に危険だった。頭部の容積はおそろしく小さく、ウエスト周辺には怪しい曲線が走っている。ジョージは終始クールだ。サポートでドラムとベースが入っている。が、ベースが少し物足りない(終盤、"Lost And Found"でもう一歩、盛り上がっていなかったのはそのせいだろうか)。
 遅すぎず速すぎず、『Body Music』で披露したミドル・テンポのR&Bでフロアを揺らし続けた。セットリストとしては、中盤を"You Know You Like It"で盛り上げ、ラストを"Your Drums Your Love"で締める、という、フロアの期待に正面から応える、サービス精神旺盛な40分程度の内容だった。目立った変調操作もなく、アルーナの声が地であの甘ったるさを持っているのには驚いたが、インターネット・インディ出身だけあり、ライヴでの空間の使い方にはまだまだ向上の余地があるように思えた。

 ディスクロージャーは、転換のイントロダクションを経て、準備運動もなく"F For You"をドロップ。ライブのセッティングもこの曲のヴィデオそのまんまで、左右対称に構えたふたりの手からは、4/4で刻まれるイーブンなキック、そこにまとわりつくベースライン、細かく刻まれるハイハット、乱舞するパーカッション、スペーシーなシンセの音色、、、が放たれた。このふたりは、じらしたり勿体ぶるといったことをしなかった。BPMを落としたのも、ラストの"Latch"に繋ぐ流れくらいで、あとはほとんど上げっぱなし。
 それもそうか、と言うのは、いまやインターネット世代であれば、フランキー・ナックルズや、ケリー・チャンドラーのような大御所からジェイミー・XX、ジェイムス・ブレイク、ローレル・ヘイローまでもが出演経験のあるストリーミング・パーティ・サイト、「BOILER ROOM」なんかで手軽にクラブ気分を味わえるわけだから、その手軽さと皮膚感覚的に同期していた、というか、持ち時間の都合もあったのだろうが、1分でいかに人を魅了できるか、という時間感覚のなかでハウスをやっていたような気がする。
 それがいいことか悪いことかはわからない。少なくとも、「2013年、我が家のコレクションが流行の最先端になってしまった......」などと言ってとぼけていた『ブラック・マシン・ミュージック』の著者であれば、小言のひとつやふたつ、残したことだろう。それは、歴史のトレースがポップの最前線に躍り出るようになった、ゼロ年代以降のひとつのヴァリエーションとして見ることもできる。おそらく、現象としてはそれ以上でも以下でもない......。ところが、ディスクロージャーときたら、何の躊躇もなくそこに全乗りするのだ。彼らのホワイト・マシン・ミュージックは実に浮ついていて、洒落っ気があって、セクシーであると同時に、とても清潔だ。そこには、良くも悪くも、音楽しかない。

 では、今日のUKインディ界は、ハウス・ミュージックで何をどうセレブレートしているか? あの日、〈LIQUIDROOM〉にいた人ならば、多くの人がこう答えるだろうのではないか。「ハウスという音楽がこの世に存在していること、そのものを」と。「ははは、それはあまりにベタというか、阿呆やねえ」と、あなたは笑うだろうか。いずれにしても、選択肢は最初からふたつしかないのだから。そこにハウスのビートがあったときに、あなたは踊るのか、それとも踊らないのか、それだけだ。しかしまあ、我ながら、まさか自分がこんなことを言うようになるとは思わなかった。しかしたしかに、そういう夜だったのだ、9月24日という日は。

竹内正太郎