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Rainbow Disco Club 2020

Rainbow Disco Club 2020

“Sumewhere under the rainbow!”

4月18(土)/12:00~24:00

野田努   Apr 22,2020 UP
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 リボ核酸(RNA)、それ自身では生きられないが生き物に寄生することで生きる新型のウイルスの影響によって、ことごとくライヴおよびクラブは休止を余儀なくなされている。この状態は永遠に続くわけではないが、しばらくのあいだ(ワクチンが普及するまでは)以前のようには行動できないだろう。こうしたシビアな状況のなかで海外でも国内でも「じゃあ、いまこの条件でできることをクリエイトしよう」という前向きな動きが出て来ている。ぼくはもう歳が歳なので夜更かしはできず、RDJのライヴもNOのライヴも見逃してしまったが(NOはあとから見ました)、RDCは国内イベントなので、しかとリアルタイムで楽しませていただきました。

 Rainbow Disco Club、通称RDCは、日本がほこるDIYフェスティヴァルのひとつで、音楽もさることながら環境のクオリティをふくめ海外でも評価が高く、またele-kingでもかねてからリコメンドしているのだけれど、今年は周知のように早々と開催を断念し、配信による開催に切り替えていた。
 とはいえ、RDCにリピーターが多いのは、なんといってもあのロケーションであり、あの場のヴァイブなので、ぶっちゃけ言えば、試みは素晴らしいが実際どうなんだろうと訝ってはいた。ドネーション感覚で、というのはある。あれだけ楽しい思い出を作らせてもらったフェスに対して感謝があるし、少しでも赤字の足しになってくれればという思いもある。
 しかし、である。ぼくのように妻子がいる立場の人間が、そして土曜日の昼から家でダンス・ミュージックを浴びながらひとりでダンスするというのは、これ簡単そうに見えて難儀なことなのだ。ただでさえ自粛生活のなかで家人のストレスは上昇している。「土曜日ぐらい、家の掃除を手伝えや」というオーラが午前中の段階ですでに発せられているのである。これが日常生活のなかで“体験する”ことの難しさだろう。いきなり自分ひとりだけ非日常化するわけにはいかないし、じゃあ、家族全員で楽しめば良いという意見もあるろうが、世界はピースな家庭ばかりではないということだ。

 そんなところに長年の友人である弘石雅和からショートメールが届く。「いま瀧見さんですよ~」、時計を見るとすでに14時過ぎ。外は暴風雨で、寒い。だが、ぼくはいよいよ覚悟を決めた。コンビニでビールを買い込み、部屋を閉めて、チケットを購入しチューンイン。弘石君にメール。「パーティに間に合ったぜ!」
 こうして長い1日がはじまった。


(こんな感じの画面です。瀧見憲司には間に合ったぜ~)

 弘石雅和からメール。画面では「俺を見ろ」と言わんばかりに、すでにクラフトワークのTシャツを着て部屋のなかで踊っている(笑)。すげー、この男もうすっかり入っていやがる。最初ぼくは、DJのプレイするダンス・ミュージックを部屋で鳴らしながら(PCをDJミキサーに突っ込んでオーディオ装置で聴いてました)、ただぼんやりと座っていた。音質はかなり良かった。ちゃんとPAの方がミキシングしているのがわかる。また、当たり前かもしれないが、やはりどうしても画面を見てしまう。画面では、すべて録画だが伊豆稲取の山の中腹になるいつもの場所でDJたちがプレイしている。いつもの山、空……もっと山とか空とか写してーと思いながら椅子に座ってダンス・ミュージックを聴いていると、いつの間にだんだん気持ち良くなっていった。で、ここあたりで弘石雅和とZOOMで話すことに。


(自室でひとり踊っている弘石氏。U/M/A/A主宰、ケンイシイやジェフ・ミルズなんか出してます)

 「けっこう良いね」「いま何飲んでるの?」「俺レモンサワー」「俺ビール」といったどうでも良い話からコロナのシリアスな話、いつの間にか最近の身の上話までして、「ちょっと冷蔵庫までビール取ってくるわ」などと言ってまた音楽に集中したり、「こりゃ、ヴァーチャルなフェス空間作れるかもな」なんて言い合ったりして、どんどん時間が過ぎていった。DJがWATA IGARASHIからNOBUのあたりで、それまでの寒々しい暴風雨から一転、空から晴れ間が見えはじめ東京地方はいっきに青空。「うっひょー」「やっぱ天気って重要だね」
 やがてあたりは暗くなり、さらにパーティのテンションは上がっていく。「弘石君、この画面に出ているチャットに書き込みたいんだけど、どうすればいい?」「ツイッターのアカウントで書けますよ」「俺、ele-kingの公式アカウントしかない」そんな会話をしながら、どうしてもチャットに書き込みしたい衝動が抑えられなくなってきた。これは、クラブやライヴハウスでテンションが上がると叫んだり奇声を上げたくなるあの衝動と同じだ。いまの思いを伝えたい──我慢できずにele-kingの公式アカウントで書き込みと、「弘石君もチャット書き込めよな」と思いきり同調圧力を加える。ノリの良い彼はしっかりと書き込み、「もっと場を盛り上げようぜ」と逆に煽ってくる。「場って何だよ、場って(笑)」「この場ですよ」「ああこの場ね」……
 すっかり夜で、DJはLICAXXX。「おお、テクノだねー」「テクノだねー」……、ホントにどうでもいい会話(酔っぱらいトーク)をしつつ、我々はお互い踊り続けている。


 こんなシチュエーションもいまだけなのだろう。いや、意外とこれはこれで面白いし、パンデミックが収まっても根付く可能性だってある。そう、実際体験してみて思ったのは、それだった。いや、もちろんこれを伊豆の稲取の山の中腹の芝生の上での経験と比較してはダメです。やっぱダンス・ミュージックはダンスフロアでしょうとか、そういう話ではない。これはそれとは別モノとしての楽しさがあるということを発見したと。そう、いまこの条件のもとでもできることはある。不安は星の数ほどあれど、使い慣れたフレームがいま使えないなら新たなフレームをクリエイトすればいい。それがアートってもんだ。ブライアン・イーノがそんなようなことを言っていた。

 さて、弘石雅和はすごい男だ。夜も深まりはじめた頃、その日の夜同時にやっていた「BLOCK. FESTIVAL」に行ってみないかと誘ってきた。「ちょうどいまチャラが歌ってるんだ」という彼はすっかり家でトランスしている。(失笑しながら)「ごめん、俺は腹減った。風呂に入って、風呂でトランスさせてもらうよ」「そうか、わかったよ、いつか野外でトランスしよう」「それまで感染しないように気をつけよう」
 そんなことを言いながら弘石君と別れて、ぼくは夕食を食べて風呂に入った。それからベランダに出て外気浴をしつつ、PCの画面のなかのCYKを見た。夜の22時過ぎ。楽しい1日だった。ありがとう弘石君、そしてRDC。可能性を見せてもらいました。


(LICAXX、盛り上がりましたね~。隣にはチャットが書き込めて、みなさんと一緒にいるような気持ちになります)

野田努