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Jake Bugg

Jake Bugg

Slumville Sunrise

ブレイディみかこ   Oct 29,2013 UP

 1枚目があれほど鮮烈なデビュー作となったからには(そしてブリテンの音楽業界人、中年文化人たちから激烈に支持されたからには)、11月発売のジェイク・バグのセカンド『Shangri-La』に大いなる期待と危惧が寄せられるのは当然のことだ。

 プロデューサーにリック・ルービンを迎えたことから、ジェイクは米国を意識した“ビッグになるため”のアルバム作りをしているという推測は、『NME』をはじめとするメディアが何ヶ月も前から書いてきたことだ。
 「俺と俺のギター」の段階は終わった。これからが本番だ。みたいなことを業界の大人たちが書き煽るなかで、若き青年ジェイクのこころは不安定に揺れたりしていないのだろうか。

 というおばはんの心配を粉砕してくれた、というか大笑いさせてくれたのが、新曲“SLUMVILLE SUNRISE”のPVである。このPVは、(遂に日本公開された『ザ・ストーン・ローゼズ:メイド・オブ・ストーン』でわが祖国の音楽ファンの涙腺を決壊させている)シェイン・メドウズが監督を務め、ベニー・ヒルを髣髴とさせるレトロ調ドタバタ・コメディの映像になっている。彼の代表作『This Is England』シリーズのロル(ヴィッキー・マクルアー)が“Two Fingers”のPVでジェイクの母親役を演じていたので、そのうちシェイン・メドウズも出て来るんじゃないかとは思っていた(実際、カメオ出演までしてジェイクが乗ったボートを担いでいる)が、「来たか」という感じのコラボである。

 曲の終了後、『This Is England』シリーズのスメル(ロザムンド・ハンソン)とジェイクの掛け合いがあるのだが、ジェイクはアルバム・デビュー後こそストレート・ジーンズと黒シャツ、黒ジャケットのシャープなイメージでキメているが、実際このPVのようなヤバめのジャケットを着てChav色を漂わせていた時期もあったので、どこか初心に帰った感もある。また、吃驚したのが、ジェイクが俳優としても大変な逸材であるということで、このまま『This Is England』シリーズに出て欲しいような醒めた目つきの北部のChavっぷりを見せている。

          ******

 今夏、BBCが放映したワーキングクラスの歴史を辿るドキュメンタリーを見ていたら、英国で初めてワーキングクラスがクールになった時代として1960年代の映像がふんだんに出て来た。そのなかで、英国初のワーキングクラス出身モデルだったツイッギーが大きくフィーチャーされ、それまでは上流階級の子女に独占されていたメディア、アート、ファッションといった世界にワーキングクラスの若者たちが進出を果たし、それがスウィンギング・ロンドンに繋がった60年代は、労働者階級が史上もっとも格好よかった時代だと語られていた。

 英国の現代のメディアやアート、ファッション(&ミュージック)といった分野は、60年代以前と同じようにミドルクラスの子女に独占されている。それはジュリー・バーチルなども指摘している点だ。そう考えれば時代は後退したのかもしれないが、そのなかで「恐るべき子供たち」と呼ばれているジェイク・バグやストライプスといった若者たちが60年代を髣髴とさせる音を奏でているのは興味深い。

 が、しかし、60年代のクールなワーキング・クラスが英国に蘇ることはない。なぜなら、現代のワーキング・クラスは社会に忌み嫌われるアンダークラスに変貌を遂げているからだ。アンダークラスやChavは、英国の「クールでないもの」のすべてを象徴しているため、ジャージを着て公営住宅地をふらふらし、妊娠中の女と居間に座っている無職の青年をPVで演じて見せるアーティストなどいない。そんな低みにまでロック・ミュージシャンが降りていってはいけないのだ。なぜなら、ロックとはクールで高尚でアーティスティックで地べたの人間など反映しないものでなくてはならないからだ。

 What the fuck are you talking about?(クソふざけんな)

 という爽快な一撃をこのPVには感じた。わたしが大笑いしたのはその点である。喜ばしいことに、ジェイク・バグのセカンド・アルバムを心配する必要はまったく無さそうだ。

ブレイディみかこ