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Home >  Interviews > interview with Cloud Nothings (Dylan Baldi) - いま、いまこの瞬間のこと

interview with Cloud Nothings (Dylan Baldi)

interview with Cloud Nothings (Dylan Baldi)

いま、いまこの瞬間のこと

──クラウド・ナッシングス(ディラン・バルディ)、インタヴュー

橋元優歩    質問翻訳:Miku Suzuki   Mar 26,2014 UP

Cloud Nothings - Here And Nowhere Else
Carpark / ホステス

Review Tower HMV iTunes

 インディ・ロックが2014年にもっとも期待する盤のひとつがリリースされた。年若き才能ディラン・バルディが率いるクリーヴランドの4人組、クラウド・ナッシングス3枚めのフル・アルバムだ。バルディの書く曲はデビュー当初から大きく注目を浴びていたが、結成から約5年の間、彼らはてらうことなく活動を充実させてきた。

 本インタヴューへのディラン・バルディからの返答は、どれもとても率直なものだった。アーティストとしてのエゴがきちんとありながら、しかし自らの像に下駄を履かせない。それは彼の表現に直接的に結びついていていることでもある。シンプルでまっすぐなパンク・ロック。そのまっすぐさがともすれば危うく感じられるほどロウに切り出されたのがスティーヴ・アルビニ録音の前作『アタック・オン・メモリー』(2012年)だとすれば、それをまさにエモとして咀嚼し、控えめながらポップ・ミュージックとしての洗練を加えているのがジョン・コングルトンとの今作『ヒア・アンド・ノーウェア・エルス』ではないかと思う。バルディという中心はいつでもただ率直に音楽に向かい、そして抜きんでて印象に残るメロディを生みつづけている。

 音楽に祝福されているとしか言いようのない、その若い生の喜びと憂愁にみちたパフォーミングについては、気づけばもう3度もレヴューを書いているので割愛するとして、棒立ちに近かった彼らの音のたたずまいが、枚数を重ねながら、そのまま人生における時の積み重なりにつられるように自然にカーブしていくさまに感動を覚えたことを記しておきたいと思う。今作において「完璧に仕上げることを自分に要求するようになった」というバルディは、勢いや生々しさ、青春の追い風によってはアルバム一枚しか作れないということを感覚で知っているのかもしれない。そして、それが職人になることではなく、心の中の衝動に目をつむるということでもなく、「自分がどういう人間なのか、自分はこの世界でどこに位置するのかっていうことについて語ってるんだ。成長するにおいてそれが大事だって俺は思うんだよね」──成長するということに自覚的であることを通して思考されていることに、彼のまっすぐさの深みがのぞいているように思う。10代のように思いあがっているのではない、10代のように真剣なバルディのこの先の時間には、パンクやロックにとっても重要な契機がふくまれているはずだ。

いまは卓越した楽曲を書き上げることに満足してる。だけど何年か経ったら、それに疲れてなんか狂ったことをするんだろうね。

■今回、ジョン・コングルトン(John Congleton)をプロデューサーに迎えたことにはどのような意図があったのでしょう?

DB:ジョンは、去年俺たちのマネージャーをしていた人に薦められたんだ。ジョンについてはあまり詳しくなかったんだけど、いろいろ調べてから彼がふさわしいんじゃないかって思ってね。俺のテイストの音楽じゃないものでも、彼が手掛けたものはすべて素晴らしかったんだ。だからきっといいものができるって確信を持てたんだ。

■ 新しく彼から学んだことはありますか?

DB:完璧に仕上げることを自分に要求するようになった。そうすればいいアルバムができるってことがわかったんだ。普段は「完璧」なサウンドになるようにっていうようなこだわりは持たないんだけど、ジョンと仕事をしてから、すべてのパートにベストを尽くせばもっと強い主張性を持ったアルバムを届けられるってことがわかったんだ。

■“パターン・ウォークス”には大胆にギターのインプロヴィゼーション・パートがフィーチャーされていますね。こうしたさまざまな模索があなたの音楽の次の段階をひらいていくように思われますが、ご自身としてはどうですか?

DB:インプロを入れるのは大好きなんだ。俺たち曲にいつも入れている。ツアーで毎晩毎晩同じ曲をやるとき、狂わないで済む理由はまさにインプロだね。そこで新しいことを試すのがすごく楽しいんだ。

■前作はアルビニ録音ということもあって生っぽさが意識されてもいたと思いますが、今作はさらにノイジーになっていますね。前作リリース後から今作制作にいたるあいだ、ご自身の音楽についてどのようなことを考えていましたか?

DB:『アタック・オン・メモリー』では転機を迎えて、それがあったこそ『ヒア・アンド・ノーウェア・エルス』にたどりつけた。音楽が前作では暗くなりすぎて、いまの自分とはちょっとすれ違うものがあったんだ。だから『ヒア・アンド・ノーウェア・エルス』ではまた俺のちがう面、新しい感情を入れ込みたかったんだ。

■“ヒア・アンド・ノーウェア・エルス”とはどのような場所のことを言うのでしょうか?

DB:「いま」だね。いま、この瞬間を示している。場所じゃないんだ。自分の前にあるもの、後ろに置いてきたものじゃなくて、ただ「いま」を生きることが大事だっていうことを伝えたかったんだ。

■今作は「ポジティヴな」作品であるとも語っておられますね。それはハッピーで明るい曲が増えたということではなくて、むしろ勢いやアグレッシヴさが増したということであるように感じます。あなたにとってのポジティヴな状態についてもう少し教えていただけませんか?

DB:歌詞はこのアルバムの方がポジティヴだね。音楽はアグレッシヴだし、生身のエネルギーを感じられるものだと思うんだけど、歌詞は自分がどういう人間なのか、自分はこの世界でどこに位置するのかっていうことについて語ってるんだ。成長するにおいてそれが大事だって俺は思うんだよね。

■大人になったら何になろうと思っていました?

DB:何かをつくり上げる人。将来自分が何をしているかって考えたときに、何かしらアートを作り出している自分しか想像がつかなかった。

■音楽制作において、「新しい音楽をつくりたい」「見たことのないものをつくりたい」という思いは強いですか?

DB:いまはそうでもないかな。いまは卓越した楽曲を書き上げることに満足してる。だけど何年か経ったら、それに疲れてなんか狂ったことをするんだろうね。

取材:橋元優歩(2014年3月26日)

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