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Cloud Nothings

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橋元優歩   Mar 13,2014 UP
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 ニルヴァーナすらちゃんと聴いたことはないという90年代生まれが、とくに何の変哲もないガレージ・ロックの詰め合わせによって、びっくりするほど鮮やかにわれわれの涙腺を破ってみせた、あれが2010年。クラウド・ナッシングスは、それまでにリリースしていたテープ音源やシングルをまとめたEP『ターニング・オン』(カーパーク)によって注目を集めていた。ディラン・バルディ率いるクリーヴランドの4人組。当時彼はまだ18歳で、でもなんとなく老けて見える風貌が印象的だった。まわりの子よりも少しだけ大人で、だけどそれが実際の年齢と釣り合っているわけでもなくて、ちょっと思春期はしんどかったかもしれないな、というような想像をさせる。
 それはロックやパンクにおいてはめずらしいことではないけれども、“ヘイ・クール・キッド”のPVに出てくる不器用で孤独なロボットは、あまりにもそのままバルディの投影であるように思われ、微笑ましくも切実で、親しみを覚えずにはいられなかった。作品の向こうにはっきりと彼そのものがいる。若い人間の美しさもウザさも、そして彼自身のパーソナルな特徴も、ゼロ距離で感じられた。どの曲も「楽曲」なんていう客体ではなくて、ハンドリングできない、主観、主体そのもの。でありながら、平凡なほどポップ・ソングのフォームに押し込められている。さながら制服を着たギザギザハートである。しかし制服を着ているからこそそれは際立ったのかもしれない。むしろフォームがフォームでしかないことを示すように、バルディのハートは強烈なフックとなって、4、5年経ついまも昨日のことのように耳に残っている。
 また、初めてのショウはリアル・エステイトとウッズのオープニング、〈サウス・バイ・サウス・ウエスト〉に出演後ウェイヴスとツアー、タイタス・アンドロニカスやベスト・コーストらとも共演済みと、デビュー当初から「ネオ・ローファイ」(当時「シットゲイズ」などと並んでそのような呼び方があった)・コネクションへ与えたインパクトの大きさをうかがわせる。

 さて、3枚めのフル・アルバムとなる『ヒア・アンド・ノーウェア・エルス』は、すでにギザギザハートではなく、バルディ本人の言葉からしても「もっとポジティヴに」アプローチされたもののようだ。ただし、明るく牧歌的なものが増えたということではなく、よりパワフルで攻撃的なベクトルを持って現れたところがたのもしい。前作『アタック・オン・メモリー』はスティーヴ・アルビニ録音で、彼のギザギザがもっともソリッドなかたちで切り出された作品だった。今作はスワンズの新作も手がけているジョン・コングルトンがプロデューサーとして加わっているが、“パターン・ウォークス”後半のノイズ・インプロ的展開はまさに新機軸。7分あることにも普通に驚く。もちろん名だたるノイズ・バンドには比べるべくもない可愛らしいものだが、これは彼らにとって大きな一歩だ。やがては終わるはずの青春期の、そののちの時間を生きていくために──あるいは音楽をつづけていくために、それは何かしら必要なプロセスだったのではないだろうか。
 冒頭とラストはあまりにディランらしいクセを持ったパワー・ポップで、やっぱりコレがなければと思ってしまうのだが、中盤を彩る“ギヴィング・イントゥ・シーイング”“ノー・ソウツ”などの疾走感は、メロウかつダウナー、ときにサッドコア的な翳りを宿す彼らの持ち味から、たしかに「ポジティヴ」なエネルギーを引き出していると言える。ただ、そのことによってやや「普通に」なってしまっているかもしれない。何か新しいステージへの過渡期にあるような作品であることは間違いない。よって不完全な部分も多いけれども、すみずみまで美味しく、また、みずみずしく次を予感させるところがすばらしい。

橋元優歩