Home > Reviews > ゆーきゃん × Rent:A*Car - sketches for the tomb mound rhap…
一連のフォーク・リヴァイヴァルとは一線を画す京都派(?)シンガー・ソングライターのなかでも透き通った歌声と歌の世界で多方面で活躍する"ゆーきゃん"と、パニック・スマイルの保田憲一、battanationの岩沢卓、女性パフォーマンス集団、つむぎねのツダユキコの"Rent:A*Car"のコラボレーション。物音、環境音を弾き語りと対置する構成だが、一方が他方を添えものになるのではなく、リスナーの前をともに過ぎることで、サウンドトラック的な、というより、表題にもある「tomb mound=古墳(と訳すのが適当だろうか)」が思い起こさせる古代と、身のまわりの風景を重ね合わせる、音楽にしかできない広角かつ即時的な表現をサラリとやってのけている。
風景が奏でる音と、
風景が呼び込む詩が織りなす珠玉の文学作品。
京都を代表するシンガーソングライターゆーきゃんと、東京を中心に活動するRent:A*Carの共作。ゆーきゃんはこれまでに、くるり主催のレーベルNOISE McCARTNEY RECORDSからリリースした、ゆーきゃんwith his best friends名義の『sang』を始め、4枚のアルバムを発表している。ソロ以外には、あらかじめ決められた恋人たちへのリーダー池永正二とのユニットシグナレスなどでも活動。また京都にて10年間以上続くインディー・フェスティバルボロフェスタ主催メンバーの一人だ。 Rent:A*CarはPANIC SMILEの保田憲一とマルチ・クリエーター岩沢卓によるノイズ・アンビエント・ユニット。街の雑踏を集音及びエディットした素材を用いたり、拾ってきたガラクタを手作りの楽器に作り変えて演奏するなどして作品を制作している。 本作は愛知県豊田市の山奥に3日間寝泊まりし録音、フィールド・レコーディングした音源を元に制作されており、粗さや泥くささを残したあえて洗練し過ぎないサウンド・プロダクションが試みられている。
飛鳥時代に作られた古墳の石室内で録音された"石室の詩"、キャンプ場の東屋で録音された"lost in campsites"など、録音した場が作る音の反響、場所からインスピレーションを受けた詩の世界観が一体となってそれぞれの楽曲を作り上げている。
(中本真生/UNGLOBAL STUDIO KYOTO)
松村 正人