ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Kendrick Lamar - Mr.Morale & The Big Steppers (review)
  2. interview with Nils Frahm ポスト・クラシカルのピアニスト、珠玉のアンビエント作品 (interviews)
  3. 対談 半世紀を経て蘇る静岡ロックンロール組合 (interviews)
  4. Natalie Beridze - Of Which One Knows (review)
  5. Spoon × Adrian Sherwood ──テキサスのバンド、スプーンの最新作をエイドリアン・シャーウッドが再構築 (news)
  6. Plaid ──プラッドがニュー・アルバムをリリース (news)
  7. Jun Togawa ——2022・秋の戸川純、ライヴ告知です! (news)
  8. Valerio Tricoli - Say Goodbye To the Wind (review)
  9. interview with Danger Mouse デンジャー・マウス、17年ぶりのヒップホップ・アルバムを語る (interviews)
  10. Special Talk : OGRE YOU ASSHOLE × Mark McGuire GW特別鼎談:オウガ・ユー・アスホール×マーク・マッガイア (interviews)
  11. Moor Mother - Jazz Codes / 700 Bliss - Nothing to Declare (review)
  12. HAINO KEIJI & THE HARDY ROCKS - きみはぼくの めの「前」にいるのか すぐ「隣」にいるのか (review)
  13. KANDYTOWN - ADVISORY (review)
  14. Coby Sey - Conduit (review)
  15. Cornelius - 2022.7.30@Fuji Rock Festival (review)
  16. Frank Zappa - Zappa/Erie (review)
  17. interview with Jockstrap UKメタ・ポップ・ミュージックの魅力 (interviews)
  18. Suzi Analogue - Infinite Zonez (review)
  19. 『セックス・ピストルズ』 - (review)
  20. Takuro Okada ——コルトレーンの“至上の愛”からはじまる岡田拓郎の新作 (news)

Home >  Reviews >  Album Reviews > The Alps- Easy Action

The Alps

The Alps

Easy Action

Mexican Summer

Amazon iTunes

野田 努   May 10,2011 UP
E王

 不抜けたクラウトロックの電子音が宙を蝶のように舞う......かと思えば電子ノイズの波が打ち寄せてくる。サンフランシスコの3人(昔タッスルにも参加していたアレクシス・ジョージアプレスをはじめ、ジーファ・カントゥ・レスマ、スコット・ヒーウィッカー)によるジ・アルプスの音楽もこの時代のサイケデリック・ミュージックだが、パンダ・ベアやウォッシュト・アウトのようにポップを志向するものではない。人によってはこれをポスト"ポスト・ロック"と呼ぶそうだが、たしかにインストゥルメンタル・バンドで、しかし"ポスト・ロック"よりヒプノティックで、トランスを志向するものである。トリップを誘発する反復するパーカッションとドローンに導かれて、ジ・アルプスは〈メキシカン・サマー〉に移籍して最初のリリースとなる本作の2曲目において印象的な旋律を重ねるが、それは彼らのひとつの武器だ。ゼラが主宰する〈タイプ〉からリリースされた前作『ル・ヴォヤージ』は70年代初頭のピンク・フロイドを最新のアンビエントで調理したような作品で、全体の出来としてはまあまあだったが、それでもアルバムの何曲かは彼らの演奏するメロディが冴えているためレコード店で流れていると「何ですか、これ?」と訊いてしまうのだ。

 『イージー・アクション』は、基本的には『ル・ヴォヤージ』の発展型だが、前作との大きな違いは、ブルース臭さがなくなり、エレクトロニクスを大胆に打ち出した音作りとなっていることである。エメラルズやOPNの影響もあるのだろう、クラウトロックからの影響はそのミニマルなアプローチにも注がれているが、先述したようにこのバンド特有の優美なメロディは維持している。ギターのアルペジオやピアノのよどみない音色を用いて、それが自分たちの武器であることを知っているかのように、美しい調べがクラスターめいた電子ノイズに飽きた頃に挿入される。
 90年代後半の"ポスト・ロック"を引き合いに出される所以のひとつは、おそらくは空間処理の巧さにあるのだろう。ジ・アルプスには素晴らしい静寂がある。このアルバムを聴いたあとでは、パンダ・ベアの『トムボーイ』など音数が多すぎると感じてしまうほどで......、というかあれはたしかに音数が多い音楽で、玄人のトビ好きなら間違いなくジ・アルプスを選ぶに違いない。どこまでもピースで、ホント、これこそ野外フェスティヴァルで聴いてみたい音楽である。
 まあしかし、このアルバムは何よりもアートワークですよ。ねぇ、見てくださいよ、これ、写真が下手でわかりづらいかもしれませんが素晴らしい! 音もベリー・ナイスだが、この立体のピラミッドのデザインゆえにE王。

野田 努