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野田 努   May 10,2011 UP
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E王

 不抜けたクラウトロックの電子音が宙を蝶のように舞う......かと思えば電子ノイズの波が打ち寄せてくる。サンフランシスコの3人(昔タッスルにも参加していたアレクシス・ジョージアプレスをはじめ、ジーファ・カントゥ・レスマ、スコット・ヒーウィッカー)によるジ・アルプスの音楽もこの時代のサイケデリック・ミュージックだが、パンダ・ベアやウォッシュト・アウトのようにポップを志向するものではない。人によってはこれをポスト"ポスト・ロック"と呼ぶそうだが、たしかにインストゥルメンタル・バンドで、しかし"ポスト・ロック"よりヒプノティックで、トランスを志向するものである。トリップを誘発する反復するパーカッションとドローンに導かれて、ジ・アルプスは〈メキシカン・サマー〉に移籍して最初のリリースとなる本作の2曲目において印象的な旋律を重ねるが、それは彼らのひとつの武器だ。ゼラが主宰する〈タイプ〉からリリースされた前作『ル・ヴォヤージ』は70年代初頭のピンク・フロイドを最新のアンビエントで調理したような作品で、全体の出来としてはまあまあだったが、それでもアルバムの何曲かは彼らの演奏するメロディが冴えているためレコード店で流れていると「何ですか、これ?」と訊いてしまうのだ。

 『イージー・アクション』は、基本的には『ル・ヴォヤージ』の発展型だが、前作との大きな違いは、ブルース臭さがなくなり、エレクトロニクスを大胆に打ち出した音作りとなっていることである。エメラルズやOPNの影響もあるのだろう、クラウトロックからの影響はそのミニマルなアプローチにも注がれているが、先述したようにこのバンド特有の優美なメロディは維持している。ギターのアルペジオやピアノのよどみない音色を用いて、それが自分たちの武器であることを知っているかのように、美しい調べがクラスターめいた電子ノイズに飽きた頃に挿入される。
 90年代後半の"ポスト・ロック"を引き合いに出される所以のひとつは、おそらくは空間処理の巧さにあるのだろう。ジ・アルプスには素晴らしい静寂がある。このアルバムを聴いたあとでは、パンダ・ベアの『トムボーイ』など音数が多すぎると感じてしまうほどで......、というかあれはたしかに音数が多い音楽で、玄人のトビ好きなら間違いなくジ・アルプスを選ぶに違いない。どこまでもピースで、ホント、これこそ野外フェスティヴァルで聴いてみたい音楽である。
 まあしかし、このアルバムは何よりもアートワークですよ。ねぇ、見てくださいよ、これ、写真が下手でわかりづらいかもしれませんが素晴らしい! 音もベリー・ナイスだが、この立体のピラミッドのデザインゆえにE王。

野田 努