ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Global Communication - Transmissions (review)
  2. interview with A Certain Ratio/Jez Kerr マンチェスター、ポストパンク・ファンクの伝説 (interviews)
  3. Boldy James / Sterling Toles - Manger on McNichols (review)
  4. Brian Eno ──ブライアン・イーノ、初のサントラ・コレクションがリリース (news)
  5. interview with Saito テクノ夫婦 (interviews)
  6. slowthai ──UKのラッパー、スロウタイの新曲にジェイムス・ブレイクとマウント・キンビー (news)
  7. Phew ──日曜日にスペシャルセットの配信ライヴあります (news)
  8. Sam Prekop - Comma (review)
  9. Idris Ackamoor & The Pyramids - Shaman! (review)
  10. Shintaro Sakamoto ── 坂本慎太郎が新曲を7インチで2ヶ月連続リリース (news)
  11. ZOMBIE-CHANG - TAKE ME AWAY FROM TOKYO (review)
  12. interview with Diggs Duke 偽りなきソウルを追い求めて (interviews)
  13. Africa HiTech - 93 Million Miles (review)
  14. Bruce Springsteen ──ブルース・スプリングスティーンが急遽新作をリリース、発売日は大統領選直前 (news)
  15. Cuushe ──クーシェ、5年ぶりのソロ・アルバムが完成 (news)
  16. interview with Trickfinger (John Frusciante) ジョン・フルシアンテ、テクノを語りまくる (interviews)
  17. Opinion 政治で音楽を救う(音楽で政治を救う?) (columns)
  18. Special Interest - The Passion Of (review)
  19. WATERFALL ──吉祥寺で、アシッド・ハウスやデトロイト・テクノをモチーフにした服を販売中 (news)
  20. Jun Togawa ──戸川純のユーチューブ再開 (news)

Home >  Reviews >  Album Reviews > Julianna Barwick & Ikue Mori- FRKWYS Vol. 6

Julianna Barwick & Ikue Mori

Julianna Barwick & Ikue Mori

FRKWYS Vol. 6

Rvng Intl.

Amazon iTunes

野田 努   Jun 20,2011 UP
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
E王

 これは思いもよらない喜びのアルバムだ。イクエ・モリ(ノーウェイヴ時代のニューヨークにおける最高のバンド、DNAのメンバー)、そして、今年、本当に素晴らしいアルバム『ザ・マジック・プレイス』を〈アスマティック・キティ〉(スフィアン・スティーヴンのリリースで知られる)から発表したジュリアンナ・バーウィックとのコラボレーション・アルバムである。
 アルバムのなかにホチキスで止められたハンドメイドの写真集が封入されている(それはそれでひとつの作品と言える)。ページをめくるとふたりの録音風景がある。小さな机の向かって左にバーウィックがいる。彼女の前にはミキサーとマイク、小さなエフェクターが置かれている。反対側にはイクエ・モリがいる。彼女の前にはラップトップとミキサーがある。バーウィックは歌い、その声はコンピュータに注がれ、加工され、消えてしまいそうなギリギリのところでループする。静謐さのなかでモリは控えめながら点滅する光のような電子音、そよ風のような、川のせせらぎのような、あぶくのような電子音を重ねていく。優しい電子の口笛が聴こえる。70年代半ばにおけるイーノのアンビエント・ミュージックでさえも力みが入っていると思えるほどの、綿のように柔らかく軽やかな音がスピーカーから広がっている。時折、抜き差しならぬ緊張感――ふたりは対決しているような感覚――がしないでもないが、即興で録音されたこの演奏を、その場で聴いていた人たちは雲の上を歩いているような、さぞかし極上の気分を味わったことだろう。
 曲名を収録順に言えば、"夢のシーケンス(Dream Sequence)""鍾乳石の城(Stalactite Castle)""蓮の池の雨と陽光(Rain and Shine at the Lotus Pond)""応答(Rejoinder)"。録音は2010年の10月29日と11月16日の2回にわたっておこなわれている。『ザ・マジック・プレイス』にイクエ・モリが参加したような......と言えるかもしれない。つまり、この音楽の下地を作っているのはバーウィックだと思われる。それは複数の声のループにそれぞれ変化を与えながら重ねていくスタイルで、イクエ・モリが発信するまるでコンラッド・シュニッツラーのような、あるいは中原昌也のような、まったくの機械の(ときにノイジーな)音は、しかしそれが鼓膜を震わせ脳に信号が送られるときには機械音ではない何か別の音に変化させる。そう、生活感はまるでなく、コンラッド・シュニッツラーが美しい森のなかで舞い上がっていくような、感動的なまでの夢の音楽だ。というか、このジャケが格好良過ぎるでしょう。


追記:6月18日、埼玉スタジアムの浦和戦での清水エスパルスの高原直泰のダイビング・ヘッド、久しぶりにスポーツを見ていて涙が出た。魂のこもった本当に素晴らしいゴールだった。

野田 努