ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. yapoos ──地球最後のニューウェイヴ・バンド、ヤプーズが再始動する (news)
  2. New Order - ∑(No,12k,Lg,17Mif) New Order + Liam Gillick: So It Goes.. (review)
  3. Seba Kaapstad - Thina (review)
  4. Politics 黒船MMTが来航、開国を迫る。その時、日本の与野党は (columns)
  5. ピータールー マンチェスターの悲劇 - (review)
  6. James Ferraro - Requiem For Recycled Earth (review)
  7. ハッパGoGo 大統領極秘指令 - 原題 Get the Weed (review)
  8. Bon Iver ──ボン・イヴェールが8月末に新作をリリース (news)
  9. Kokoroko - Kokoroko / Various - Untitled (review)
  10. Flying Lotus ──衝撃を与えた映画『KUSO』がまさかの再上映決定 (news)
  11. 編集後記 編集後記(2019年7月9日) (columns)
  12. interview with Francesco Tristano 日本らしいものを作っても意味がない (interviews)
  13. DE BEREN GIEREN ──ベルギーがほこる注目のジャズ・ピアノ・トリオを東京塩麹やスガダイローが迎えうつ (news)
  14. Columns いまだ眩い最高の夜 ──ニュー・オーダーのライヴ盤『NOMC15』を聴きながら (columns)
  15. interview with New Order 我らがニュー・オーダー (interviews)
  16. Koji Nakamura - Epitaph (review)
  17. SCARS ──復活が話題のSCARS、オフィシャルTシャツが限定発売! (news)
  18. Ken Ishii ──ケンイシイが13年ぶりのニュー・アルバムをリリース、新曲を公開 (news)
  19. 子どもたちの階級闘争――ブロークン・ブリテンの無料託児所から - ブレイディみかこ (review)
  20. interview with Jordan Rakei 人間性を忘れてはいけない (interviews)

Home >  Reviews >  Album Reviews > Julianna Barwick & Ikue Mori- FRKWYS Vol. 6

Julianna Barwick & Ikue Mori

Julianna Barwick & Ikue Mori

FRKWYS Vol. 6

Rvng Intl.

Amazon iTunes

野田 努   Jun 20,2011 UP
このエントリーをはてなブックマークに追加
E王

 これは思いもよらない喜びのアルバムだ。イクエ・モリ(ノーウェイヴ時代のニューヨークにおける最高のバンド、DNAのメンバー)、そして、今年、本当に素晴らしいアルバム『ザ・マジック・プレイス』を〈アスマティック・キティ〉(スフィアン・スティーヴンのリリースで知られる)から発表したジュリアンナ・バーウィックとのコラボレーション・アルバムである。
 アルバムのなかにホチキスで止められたハンドメイドの写真集が封入されている(それはそれでひとつの作品と言える)。ページをめくるとふたりの録音風景がある。小さな机の向かって左にバーウィックがいる。彼女の前にはミキサーとマイク、小さなエフェクターが置かれている。反対側にはイクエ・モリがいる。彼女の前にはラップトップとミキサーがある。バーウィックは歌い、その声はコンピュータに注がれ、加工され、消えてしまいそうなギリギリのところでループする。静謐さのなかでモリは控えめながら点滅する光のような電子音、そよ風のような、川のせせらぎのような、あぶくのような電子音を重ねていく。優しい電子の口笛が聴こえる。70年代半ばにおけるイーノのアンビエント・ミュージックでさえも力みが入っていると思えるほどの、綿のように柔らかく軽やかな音がスピーカーから広がっている。時折、抜き差しならぬ緊張感――ふたりは対決しているような感覚――がしないでもないが、即興で録音されたこの演奏を、その場で聴いていた人たちは雲の上を歩いているような、さぞかし極上の気分を味わったことだろう。
 曲名を収録順に言えば、"夢のシーケンス(Dream Sequence)""鍾乳石の城(Stalactite Castle)""蓮の池の雨と陽光(Rain and Shine at the Lotus Pond)""応答(Rejoinder)"。録音は2010年の10月29日と11月16日の2回にわたっておこなわれている。『ザ・マジック・プレイス』にイクエ・モリが参加したような......と言えるかもしれない。つまり、この音楽の下地を作っているのはバーウィックだと思われる。それは複数の声のループにそれぞれ変化を与えながら重ねていくスタイルで、イクエ・モリが発信するまるでコンラッド・シュニッツラーのような、あるいは中原昌也のような、まったくの機械の(ときにノイジーな)音は、しかしそれが鼓膜を震わせ脳に信号が送られるときには機械音ではない何か別の音に変化させる。そう、生活感はまるでなく、コンラッド・シュニッツラーが美しい森のなかで舞い上がっていくような、感動的なまでの夢の音楽だ。というか、このジャケが格好良過ぎるでしょう。


追記:6月18日、埼玉スタジアムの浦和戦での清水エスパルスの高原直泰のダイビング・ヘッド、久しぶりにスポーツを見ていて涙が出た。魂のこもった本当に素晴らしいゴールだった。

野田 努