ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Columns 断片化された生活のための音楽 ——UKインディーズ考 (columns)
  2. Ehiorobo - Joltjacket (review)
  3. King Krule - You Heat Me Up, You Cool Me Down (review)
  4. dj honda × ill-bosstino - KINGS CROSS (review)
  5. 年明けのダンス・ミュージック5枚 - (review)
  6. interview wuth Geoff Travis and Jeannette Lee 〈ラフ・トレード〉が語る、UKインディ・ロックの現在 (interviews)
  7. どんぐりず ──マッチョなシーンに風穴を開ける!? エレキング注目のラップ・ユニットが東京と大阪でライヴ (news)
  8. Makaya McCraven - Deciphering The Message (review)
  9. Luke Wyatt & Dani Aphrodite ──ファッション・ブランドの〈C.E〉が2022年春夏コレクションに先駆けヴィデオを公開 (news)
  10. ELECTRONIC KUMOKO cloudchild ──サム・プレコップやカルロス・ニーニョらも参加するコンピがリリース (news)
  11. Parris - Soaked In Indigo Moonlight (review)
  12. History of Fishmans ——久しぶりのフィッシュマンズのライヴ情報 (news)
  13. Random Access N.Y. vol. 131 : 2022年1月、ニューヨークの現在 (columns)
  14. Norhern Soul ──『ノーザン・ソウル』、この最高な映画を見たらスリムのデニムを履けなくなる (news)
  15. interview with Jun Miyake ジャズ、ブラジル音楽、クラシックが交錯する時間の迷宮 (interviews)
  16. パフォーマンス:クリスチャン・マークレーを翻訳する - @東京都現代美術館 (review)
  17. Billy Wooten ──70年代ジャズ・ファンクの至宝、ビリー・ウッテンのTシャツ&7インチ・セットが発売 (news)
  18. Ian Wellman - On The Darkest Day, You took My Hand and Swore It Will Be Okay (review)
  19. interview with Terre Thaemlitz 移民、ジェンダー、クラブ・カルチャーと本質主義への抵抗 (interviews)
  20. Cleo Sol - Mother (review)

Home >  Reviews >  Album Reviews > MV & EE- Space Homestead

MV & EE

MV & EE

Space Homestead

Woodist

Amazon iTunes

橋元優歩   Jul 24,2012 UP
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 いま〈ウッディスト〉からリリースするには、たとえば"ウェイストランド"のギター・ソロなんかはちょっとこぶしがきき過ぎていると思って、でも奏法の問題でもないと感じたので、ためしにガレージバンドに入れてハイを削って中低域を強調してみたら、じつに具合がよろしかった。まったくDTMの知識はないからやれることはここまでで、操作の意味を理解しないまま他もいろいろいじってみたが、まあ、リアル・エステイトやウッズみたいにはならなかった(クレジットにはジェレミー・アールの名がある。ドラムやスティール・ギターで参加しているようだ)。これはタワーレコーディングスや彼らが取り組んできた一連のアヴァン・フォーク作品を振り返れば、冒涜ともいえる行為である。ローファイであっても、クリアな感触、さめたようなプロダクションのなかに彼らの無重力的なサイケデリアは宿る。けっしてチルウェイヴっぽく音をけずってもこもこにしたり、よごしたり、あるいはリヴァーブをかけ過ぎたりすることのなかにはない。その意味で筆者のおこなった聴き方は、尾頭つきの鯛をつみれにして食べてしまうようなものかもしれず、品もない。しかしそのほうがいまの生理にあっていたということと、なにより、〈ウッディスト〉のまばゆかった先進性がここへきて後退してしまったように感じてさびしかったのである。実力者たちによる心ある優れた作品、をリリースするのはすばらしいことだし、個人的な関係やリスペクトもあるだろうが、〈ウッディスト〉からの新しい才能がしばらく見出せなかったなか、次の一手がMV & EEとはなにか保守的な展開だという気はしないだろうか。

 とはいえ、もちろんMV & EEは素敵だ。タワー・レコーディングスのマット・ヴァレンタインと、パートナーでありマルチな才能を持つエリカ・エルダーによって2000年に結成されて以降、おびただしい量の作品をリリースしてきた。サーストン・ムーアの〈エクスタティック・ピース〉からも発表しており、ほかにハンドメイドの超限定ものも多い。ニール・ヤングやグレイトフル・デッドと比較されるが、レイドバック感よりは、たとえばギャラクシー500やステレオラブの時代のあとの音だということがよくわかる。それはなにも"トゥー・ファー・トゥ・シー"に挿入される電子音などのことばかりを指すわけではなくて、"ハート・ライク・バルバラ・スティール"という導入のドリーミーなアンビエント・スタイルもとてもしゃれていて現代的だし、"スウィート・シュア・ゴーン"での打楽器の響きかたやハンド・クラップも空間性を繊細に生むようとても心地よく塩梅されている、そうしたことの全体についてである。タワー・レコーディングスらのエクスペリメンタルな志向性に対して、サウンドキャリアーズやコットン・ジョーンズのように、より素朴で瀟酒な歌ものとしてとらえることもできる。それはフォーク・ロックのアクを持ちながら、とても浮遊感のある、そしてどこか環境音楽的な音の採りかたをしているようでもあり、聴きながそうとすればしっくりと背景に、じっくり聴こうと思えば緻密な細部を備えて前掲に浮かびあがる。この作品じたいはとても上質なものだ。夏の薄明には"ポーチライト>リーヴス"もよく映える。

橋元優歩