ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Tohji - angel (review)
  2. Haruomi Hosono ──細野晴臣のドキュメンタリー映画が公開 (news)
  3. Kali Malone - The Sacrificial Code (review)
  4. Undefined ──注目のダブ・ユニットがUSの〈ZamZam Sounds〉から初のリリース (news)
  5. There are many many alternatives. 道なら腐るほどある 第8回 電車の中で寝転がる人、ボルタンスキーの神話 ――2019年8月11日に見たものの全て (columns)
  6. New Order ──すでに話題のニュー・オーダー来日情報 (news)
  7. Battles ──バトルスが新作を引っさげ来日 (news)
  8. Calexico / Iron & Wine - Years To Burn (review)
  9. Inoyama Land & Masahiro Sugaya ──イノヤマランドと菅谷昌弘の編集盤が、スペンサー・ドーランのレーベルからリリース (news)
  10. Ninjoi. - Masayume (review)
  11. アナキズム・イン・ザ・UK 第20回:ヤジとDVとジョン・レノン (columns)
  12. Laura Cannell - The Sky Untuned / Laura Cannell, Polly Wright - Sing As The Crow Flies (review)
  13. Solange - When I Get Home (review)
  14. Tunes Of Negation ──音楽にまだ未開の領域はあるのか、シャックルトンの新プロジェクトがすごい! (news)
  15. interview with Yutaka Hirose よみがえる1986年の環境音楽 (interviews)
  16. Tohji ──いま若い世代から圧倒的な支持を集めるラッパーが、初のミックステープをリリース (news)
  17. interview with South Penguin サイケデリック新世代が追い求める「美しさ」とは (interviews)
  18. interview with Vityazz インスト・バンドをなくしたい (interviews)
  19. Craig Leon, Jennifer Pike - Bach to Moog (review)
  20. R.I.P. Ras G (news)

Home >  Reviews >  Album Reviews > Form A Log- For The Records

Form A Log

ElectronicJunkNoise

Form A Log

For The Records

Bathetic

三田格   Oct 16,2014 UP
このエントリーをはてなブックマークに追加

 これは2014年のギャグ・アルバム、No.1でしょう。マティアス・アグアーヨやメリディアン・ブラザーズなど、ここ数年、南米に持っていかれっぱなしだった笑いをアメリカに取り戻した3人組。フィラデルフィアからプロフライゲイト(Profligate)ことノア・アンソニー(Noah Anthony)、コンテナー(Container)ことレン・ショーフィールド(Ren Schofield)、ディナー・ミュージック(Dinner Music)ことリック・ウィーヴァー(Rick Weaver)によるスラップスティックの玉手箱です。アナログ盤としては『ザ・トゥー・ベンジーズ(The Two Benji's)に続く2作めで、笑いの角度が少し内側に向くことで弾けるような攻撃性よりもじわじわと効いてくるタイプに発展途上しています。最近のコメディ映画でいえば『なんちゃって家族』よりも『俺たちニュースキャスター』か。感傷性の裏打ちではなく、フォックスTVの右傾化を揶揄しまくった毒のある感じを思わせる。

 〈ノット・ノット・ファン〉からデビューしたプロフライゲイトは基調がどこまでもインダストリアルだったし、〈スペクトラム・シュプール〉から2枚のアルバムをリリースしているコンテナーはインダストリアル・イタロ・ディスコとでもいいたくなるテクノ未満の強迫的なビートの反復がメイン。しかし、同じようにアンダーグラウンドに沈みきっていてもカセットばかり出しまくるディナー・ミュージックは奇怪な作風に振り切れまくり、何が中心にあるかもわからない存在なので、アンソニーもショーフィールドもこの人の磁場に引きずりこまれて、いつしか接点がお笑いになってしまったと考えるのが自然なのだろうか(リリー・フランキーやピエール瀧が集まると老人殺しの映画になる感じ?)。
 ある意味、ディナー・ミュージックの八方破りな音楽性はこれでもひとつの方向性を持つようになったといえ、少しは掴みどころというものができたというか。かつてゼロ年代にウルフ・アイズやバーニング・スター・コアといった混沌から最終的にはアンビエント・ドローンが導かれていったパターンとは異なる混沌からちがう種類のものが生まれつつあるのかもしれない。どこから来るのか、その余裕。ジャケットがどうして法廷なんだろうと思ったら、実際にニュー・ヨークの法廷でライヴ録音されたものだという。3人とも演奏しているのはテープのみ。

 オープニングはそれこそディナー・ミュージック。ジャズ・ピアノの響きと木槌を叩く音と傍聴席のざわめきにはじまり、ハーシュ・ノイズにグルーヴィーなベース・ライン、さらにはギター・ソロのループに各種のブリープ音と容易には把握しきれない音楽性の洪水がつづく。ただし、グジャグジャではない。リズムもシャッフルを効かせたものが何曲か。ジャド・フェアーとマウス・オン・マーズを足してミュージック・コンクレートで割った感じだったり、ピエール・アンリとディーヴォをアレックス・パタースンがマッシュ・アップしているようだったり、もしくはバットホール・サーファーズがノイエ・ドイッチェ・ヴェレと化したとも、ハーバートがフライング・リザーズをリミックスしたとも(あ、なんで、それないんだ?)。ポップ・ミュージックではよく「なんでもあり」という形容がされるけれど、実験音楽でそのような状態になったものと思えばいいのかもしれない。つーか、ポップ・ミュージックと実験音楽の境すらないに等しいかも。千変万化のおもしろさです。

 ベルギーのフィオーク(Fyoelk)やナスラックス、アメリカのナッティマルに日本の食品まつり……笑わせてくれる人はみんな好きだなー。

三田格