ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. David Byrne ──「世界は変わっている──だから私たちも」ディヴィッド・バーンの考察 (news)
  2. interview with Thundercat 悲しみの先のフュージョン (interviews)
  3. Aphex Twin ──エイフェックス・ツインが現在の状況を警告 (news)
  4. AJATE - ALO (review)
  5. The Drums - Summertime! (review)
  6. Politics コロナ恐慌を機に高まった「政府は金を出せ」の声 (columns)
  7. PANICSMILE - REAL LIFE (review)
  8. Columns Playlists During This Crisis この非常事態下における家聴きプレイリスト (columns)
  9. Moment Joon - Passport & Garcon (review)
  10. Random Access N.Y. VOl.124 NYシャットダウン#2 (columns)
  11. NYをはじめ、各地でオンライン・フェスやライヴ・ストリーミングが開催 (news)
  12. VIVA Strange Boutique ──東京の奥沢で売られているクリス&コージーのTシャツが格好いいです (news)
  13. RC SUCCESSION - COMPLETE EPLP ~ALL TIME SINGLE COLLECTION~ 限定版 (review)
  14. Thundercat ──延期になっていたサンダーキャット来日ツアーの振替日程が決定 (news)
  15. 吉田アミ - 虎鶫(とらつぐみ) (review)
  16. COM.A ──パンク精神あふれるIDMの異端児が13年ぶりの新作をリリース (news)
  17. R.I.P. Gabi Delgado(ガビ・デルガド) (news)
  18. Gil Scott-Heron - We’re New Again (A Reimagining By Makaya McCraven) (review)
  19. interview with Little Dragon (Yukimi Nagano) 世界を魅了した歌声、北欧エレクトロニック・ポップのさらなるきらめき (interviews)
  20. Random Access N.Y. VOl.123 NYシャットダウン (columns)

Home >  Reviews >  Album Reviews > Form A Log- For The Records

Form A Log

ElectronicJunkNoise

Form A Log

For The Records

Bathetic

三田格   Oct 16,2014 UP
このエントリーをはてなブックマークに追加

 これは2014年のギャグ・アルバム、No.1でしょう。マティアス・アグアーヨやメリディアン・ブラザーズなど、ここ数年、南米に持っていかれっぱなしだった笑いをアメリカに取り戻した3人組。フィラデルフィアからプロフライゲイト(Profligate)ことノア・アンソニー(Noah Anthony)、コンテナー(Container)ことレン・ショーフィールド(Ren Schofield)、ディナー・ミュージック(Dinner Music)ことリック・ウィーヴァー(Rick Weaver)によるスラップスティックの玉手箱です。アナログ盤としては『ザ・トゥー・ベンジーズ(The Two Benji's)に続く2作めで、笑いの角度が少し内側に向くことで弾けるような攻撃性よりもじわじわと効いてくるタイプに発展途上しています。最近のコメディ映画でいえば『なんちゃって家族』よりも『俺たちニュースキャスター』か。感傷性の裏打ちではなく、フォックスTVの右傾化を揶揄しまくった毒のある感じを思わせる。

 〈ノット・ノット・ファン〉からデビューしたプロフライゲイトは基調がどこまでもインダストリアルだったし、〈スペクトラム・シュプール〉から2枚のアルバムをリリースしているコンテナーはインダストリアル・イタロ・ディスコとでもいいたくなるテクノ未満の強迫的なビートの反復がメイン。しかし、同じようにアンダーグラウンドに沈みきっていてもカセットばかり出しまくるディナー・ミュージックは奇怪な作風に振り切れまくり、何が中心にあるかもわからない存在なので、アンソニーもショーフィールドもこの人の磁場に引きずりこまれて、いつしか接点がお笑いになってしまったと考えるのが自然なのだろうか(リリー・フランキーやピエール瀧が集まると老人殺しの映画になる感じ?)。
 ある意味、ディナー・ミュージックの八方破りな音楽性はこれでもひとつの方向性を持つようになったといえ、少しは掴みどころというものができたというか。かつてゼロ年代にウルフ・アイズやバーニング・スター・コアといった混沌から最終的にはアンビエント・ドローンが導かれていったパターンとは異なる混沌からちがう種類のものが生まれつつあるのかもしれない。どこから来るのか、その余裕。ジャケットがどうして法廷なんだろうと思ったら、実際にニュー・ヨークの法廷でライヴ録音されたものだという。3人とも演奏しているのはテープのみ。

 オープニングはそれこそディナー・ミュージック。ジャズ・ピアノの響きと木槌を叩く音と傍聴席のざわめきにはじまり、ハーシュ・ノイズにグルーヴィーなベース・ライン、さらにはギター・ソロのループに各種のブリープ音と容易には把握しきれない音楽性の洪水がつづく。ただし、グジャグジャではない。リズムもシャッフルを効かせたものが何曲か。ジャド・フェアーとマウス・オン・マーズを足してミュージック・コンクレートで割った感じだったり、ピエール・アンリとディーヴォをアレックス・パタースンがマッシュ・アップしているようだったり、もしくはバットホール・サーファーズがノイエ・ドイッチェ・ヴェレと化したとも、ハーバートがフライング・リザーズをリミックスしたとも(あ、なんで、それないんだ?)。ポップ・ミュージックではよく「なんでもあり」という形容がされるけれど、実験音楽でそのような状態になったものと思えばいいのかもしれない。つーか、ポップ・ミュージックと実験音楽の境すらないに等しいかも。千変万化のおもしろさです。

 ベルギーのフィオーク(Fyoelk)やナスラックス、アメリカのナッティマルに日本の食品まつり……笑わせてくれる人はみんな好きだなー。

三田格