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Album Reviews

Azymuth

FunkFusionJazzLatin

Azymuth

Fênix

Far Out Recordings/unimusic

Tower Amazon iTunes

小川充   Jan 17,2017 UP
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 ブラジルが生んだ世界的なフュージョン・グループのアジムス。1970年代後半から1980年代にかけて、ジャズ/フュージョンの分野ではブラジル音楽をモチーフとした、いわゆるブラジリアン・フュージョンが隆盛を極めたのだが、その中心にいたグループがアジムスである。結成は1970年代前半に遡り、マルコス・ヴァーリのバック・バンドを経て、1975年にファースト・アルバムを発表した。1979年からアメリカ進出を果たし、〈マイルストーン〉からリリースした『ライト・アズ・ア・フェザー』の大ヒットで、日本でもよく知られる存在となる。当時のNHK-FMの音楽番組『クロスオーバー・イレブン』のテーマ曲にアジムスの作品が採用されたことで、彼らの存在は広く認知されるようになった。ジョゼ・ロベルト・ベルトラミ(キーボード)、アレックス・マリェイロス(ベース)、イヴァン・コンチ(ドラムス)という、ジャズ・グループとしてはミニマルな編成だが、重層的に積み重ねられたキーボードやシンセ類、多彩なパーカッション群で実に彩り豊かな音像を生み出し、純粋なブラジル音楽の枠に収まらない未来的なサウンドを作り出していった。シンセやヴォコーダーなど電気楽器の導入にも積極的で、エレクトリック・サウンド~エレクトロ方面においても進取の精神に富むバンドであった。『ライト・アズ・ア・フェザー』に収録された“ジャズ・カーニヴァル”はディスコ・サウンドとしての一面も持ち、1980年リリースの『アウターボ』では“ディア・リマーツ”というヴォコーダー・ファンクを披露している。これらの作品は、1980年代後半にアシッド・ジャズ~クラブ・ジャズが勃興してきたときにレア・グルーヴとして再評価され、その流れからアジムスの世界に入っていったファンも少なくないだろう。その1980年代後半から1990年代前半にかけて、グループの活動そのものは停滞していたのだが、こうした再評価の波を受け、UKの〈ファー・アウト・レコーディングス〉から復活作『カーニヴァル』を1996年にリリース。以降は〈ファー・アウト〉を拠点に定期的にアルバム・リリースをおこない、現役の大物フュージョン・バンドとして存在感を放っていった。

 そんなアジムスだが、2011年に『オーロラ』をリリースした後、ジョゼ・ロベルト・ベルトラミが2012年に逝去し、グループとして実質的な活動を終えていた。3人の長きに渡る強固な結束は他に替え難いものであり、ベルトラミもアジムス・サウンドの核を担うような存在であったので、グループとしてはもはや再現不可能であったからだ。ところが、こうして『フェニックス(不死鳥)』という新作を引っ提げ、アジムスは新生バンドとして2016年末に復活した。ベルトラミの代わりに加わったのはキコ・コンチネンチーノというキーボード奏者で、ミルトン・ナシメント、ジルベルト・ジル、ジャヴァンなどの作品やツアーなどで演奏してきた。1969年生まれで相応のキャリアを持つのだが、全員1946年生まれというアジムスのオリジナル・メンバーからすると、子どもくらいの年齢の隔たりがある。そうした点で果たしてコンチネンチーノに、ベルトラミの代わりがどこまで務まるのかという不安はあった。ところが、結果として『フェニックス』は全盛期のアジムス・サウンドを見事に再現するものとなっている。表題曲は名曲“ジャズ・カーニヴァル”を意識した楽曲構造だが、そこに“ディア・リマーツ”のヴォコーダー・ファンク的な味付けを施している。同様に“バトゥカーダ・エン・マルテ”もサンバ・リズムとファンクやディスコ・ビートを融合し、ヴォコーダーをはじめエレクトリック・サウンドによって表現するスタイルを取っている。“ヴィラ・マリアナ”はスペイシーなキーボード&シンセとタイトなリズムのコンビネーションによるアジムス流ジャズ・ファンク。“オレンジ・クラウズ”は前述の『クロスオーバー・イレブン』に使われた“フライ・オーヴァー・ザ・ホライゾン”を彷彿とさせる。“コロンバ”はアマゾンの密林を想起させるパーカッシヴな楽曲だが、ここではイヴァン・コンチの驚異的なドラム/パーカッション技術が浮き彫りになり、またゲスト参加するロベルチーニョ・シルヴァ(彼もアジムス同様にブラジル音楽界を代表するベテラン・パーカッション奏者)とのインプロヴィゼーション・プレイが圧巻である。

 『フェニックス』のプロデュースを手掛けるのはダニエル・モーニック。インコグニートのブルーイの息子で、DJヴェノム名義で1990年代後半より制作活動をおこなっている。インコグニートのプロデュースに携わった時期もあり、〈ファー・アウト〉とも長きに渡って関係を築いている。アジムスとはリミックス・ワークなどで一緒に仕事をしてきたほか、2011年の『オーロラ』ではプロデュースとキーボードのサポートで参加している。今回は彼が全体のプロデュースをおこなうことにより、アジムス・サウンドが正しく継承されているのである。また、ダニエル・モーニックはそもそもクラブ・サウンド出身のプロデューサーであるので、そうした彼の感性がアジムスの演奏と組み合わさることにより、現代のバレアリックなテイストも感じさせる作品になっていると言えよう。

小川充