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Moan

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Shapeless Shapes

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デンシノオト   May 23,2017 UP
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 音の遠近法や認識のしかたを、少しずつ、ズラし、溶かしていくサウンド。じっと聴き込んでいくと、音が、時間が、空間が、ノイズが、声が、エレクトリック・ギターの音が、リズムが、音楽が、ゆったりとコーヒーの中のミルクのように溶け出していく。つまりはサイケデリック。カラフルにしてモノクロームに揺れる音楽の生成変化。2017年の日本において、このようなサイケデリックな音楽が生まれ、そして聴くことができるとは。まさに僥倖。

 それもそのはずだ。このモアンは、ただのバンドではない。あの轟音ロック・バンドDMBQのギター/ヴォーカル、そしてボアダムスのギタリストとしても知られる増子真二と、大阪の5人組ガールズ・ノイズ・ポップ・バンドwater fai(2015年に解散)のベーシストで現DMBQのベーシストでもあるマキによるユニットなのである。つまりは音に込められた念/気が違うのだ。
 彼らのファースト・アルバムは、アクロン/ファミリーのセス・オリンスキーが主宰する新レーベル〈ライトニング・レコード(Lightning Records)〉の第1弾アーティストとしてリリースされた『シンク・アバウト・フォーゴットン・デイズ』である。『ピッチフォーク』などの海外メディアからも取り上げられ話題を呼んだ。彼らは同年にも〈データ・ガーデン(Data Garden)〉から『ブックシェルフ・サンクチュアリ』もデータ配信でリリースした。

 本作『シェイプレス・シェイプス』は、モアン、数年ぶりの新作アルバムである。リリースは、アンビエント・アーティス/マスタリング・エンジニア畠山地平主宰の〈ホワイト・パディ・マウンテン〉から。本作もまたドローン、ノイズ、アンビエント、ミニマル・ミュージック、ロック、電子音楽など多様な音楽的エレメントを用いつつ、サイケデリックな音響空間を生成している。しかも、より洗練され、過激になり、そして熟成している。

 アルバムは連作“ザ・ステーツ・オブ・ウォーター(The States Of Water)”から幕を開ける(全5トラック)。1曲め“ドロップ(Drop)”と2曲め“サーフェイス(Surface)”では、電子音の粒のようなランダムな音が滴り落ちる。それらの音は溶け合い、やがてドローン・サウンドを生成する。3曲め“サージ(Surges)”は、加工されたマキの澄んだヴォイスもレイヤーされ、音楽と音響の領域を溶かす、透明カーテンのように美しいサウンドを展開する。4曲め“マス(Mass)”ではエレクトリック・ギターによる暴風のようなサウンドが、聴覚に圧倒的な刺激を与えることになるだろう。このノイズとアンビエントの快楽は筆舌に尽くしがたい。これぞ恍惚。
 5曲め“ストリーム(Stream)”で静かに幕を閉じた“ザ・ステーツ・オブ・ウォーター”に続く6曲め“ヴォイス・イズ・マイ・フェイヴァリット(Voice Is My Favorite)”はマキのヴォーカル/ヴォイスを全面的にフィーチャーしたトライバル/リズミックなトラック。7曲め“カム・イントゥ・ザ・ウォーム(Come Into The Warm)”は増子真二の静謐なギターが鳴り響く美しい曲である。一転して、8曲め“フォレスト、サーキット・ボード(Forest, Circuit Board)”はアルバム冒頭に戻るような粒のような電子音が動きまわるトラック。その“フォレスト、サーキット・ボード”に続くカタチで展開するラスト曲“ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・フィードバックス(While My Guitar Gently Feedbacks)”は、マキのヴォイスを細やかにエディットしたサウンドから、次第に壮大なドローンを生成する。まさにアルバム・ラストを飾るに相応しいサイケデリック・アンビエントである。

 全9曲、どのトラックも、美しく、そして快楽的なサイケデリック・エレクトロニック・アンビエントを展開している。タイプはまったく異なるが、山本精一の傑作『クラウン・オブ・ファジー・グルーヴ』に連なる壊れたミニマル/アブストラクトな音とでもいうべきか。もしくはマニュエル・ゲッチングの系譜にある2017年最新型サイケデリック・アンビエントとでもいうべきか。刺激的な音/音楽を求めているのなら、ぜひ本作を聴いてほしい。時間が溶け出すような刺激/快楽的な音響体験がここにある。

デンシノオト