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U.S. Girls

Indie RockPop

U.S. Girls

In a Poem Unlimited

4AD

Tower HMV Amazon

木津毅   Mar 29,2018 UP
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 女性たちの怒りをいよいよ世が無視できなくなっているが、このムーヴメントより以前にメーガン・レミーはたしかに怒っていた。女性の労働の不遇に、ホワイトハウスに、戦争そのものに。しかし、その怒り方が彼女の場合……変だ。若い女が何かをすると「○○女子」といった安易なカテゴライズをすぐに与えられてしまうが、それを逆手に取るかのように「アメリカ女子」などという雑な自称をしていた彼女は、その名前を変えないままカナダに移住し、いまもアメリカの外からアメリカを糾弾している。はじめは冗談だったという。それはやがて批評的な意味を帯び、だがいまも半分は冗談のまま、「アメリカ女子」はおかしなプロテスト・ソングを歌っている。利発で奔放、そして徹底的に反抗的なUSガールズのウィアード・ポップは時代の追い風を受けていまこそ高みへと飛翔する。

 通算では6作め、名門〈4AD〉からは2作めとなる『イン・ア・ポエム・アンリミティッド』は、音楽的には近作のポップ志向を前進させたロジカルな発展形と言える。初期のローファイやアングラ性は影を潜め、ゴージャスなバンド・アンサンブルとリッチなソングライティングが堂々たる一枚だ。が、それでもどこかメジャー感がしないのは、様々なジャンルが脈絡なくミックスされているからだろう。何やらいかがわしく、どうにも奇天烈。映画にはジャンル映画という言い方があるが、同様に、USガールズの音楽性は様々なジャンルの音楽のクリシェを敢えて強調するようなやり方で取り入れたものだ。60年代のガールズ・グループ、グラム・ロック、ディスコ、シンセ・ポップ、ノイズ、ダブ、ジャズ……それらがランダムバトルのように次々に現れ襲いかかってくる。
 夫のマックス・ターンブルやトロントのミュージシャンであるシモーヌ・シュミットがソングライティングに貢献しており、メーガン自身は作曲のクレジットから外れているナンバーもある。その分なのか、メーガンは歌謡ショウのステージに立つシンガーよろしく艶やかに歌い上げる。素直に言ってチャーミングだし、セクシーだとも思う。それがかえって舞台装置めいた大仰さを醸しており、マックスが参加するジャズ・バンドであるザ・コズミック・レンジによるビッグ・バンド風のサウンドを背に彼女自身がギラギラと光沢を放つかのようだ。

 そうしたシアトリカルな意匠はサウンド面だけでなく歌詞のモチーフとも一体化。たとえばリヴァービーなパーカッションが響くオープニングのダブ・ナンバー“Velvet 4 Sale”はドメスティック・ヴァイオレンスなどの加害者に対する女からの復讐譚だそうだ。あるいは妖しげコーラスが彩る異形のファンク“Pearly Gates”は、危険なセックスを強要する男の姿を宗教的な権威と重ねながら告発している。ナマで入れたいがために「俺は外に出すのがすごく得意なんだ」と自慢する男のアホらしさから着想を得たそうだが、そうした語りの面白さは確実にこのアルバムの魅力だ。この突拍子もないユーモアこそがUSガールズの武器であり、それはここでさらに磨かれている。前作に続いて戦争の暴力を訴える“M.A.H.”はロネッツのようなイントロで始まったかと思えばチャカポコとコンガが楽しげに鳴り出すふざけたディスコ・ナンバーだが、それはオバマ前大統領に向けられたものである。「わたしは忘れない、なんで許さないといけないの?」──誰もがトランプに怒りをぶつけているときにオバマの外交面の失策を指摘しているのは彼女らしい怜悧さを示すものだが、それはこじれた男女のラヴ・ストーリーのように語られる。躁的な高揚感に満ちたリズムに合わせて中指を立てながら踊るレトロな映像を装ったヴィデオも、シュールでふざけていて、ひたすら痛快だ。


 
 アルバムは“Rosebud”の室内楽+R&B、“Incidental Boogie”のけばけばしいグラム、“Poem”のシンディ・ローパーかマドンナかと見紛うようなシンセ・ポップとコロコロと場面を変え、情熱的なジャズ・ロック・セッション“Time”の狂騒で幕を閉じる。アメリカのショウビズの遺産を引用しながらアメリカを皮肉るというのは最近ではファーザー・ジョン・ミスティの『ピュア・コメディ』を連想するが、ジョシュ・ティルマンのそれがペーソスを纏っていたことを思うと、メーガン・レミーの反骨はもっとタフでパワフル、それにひょうきんだ。この奇怪なプロテスト・ソング集は、それが「Girls=女子」によるものだからこれほどまでに生き生きと躍動しているのだろう……というのは情けない男の勝手な願望だ。メーガンはそんなもの歯牙にもかけずに勝手にやっている……このまま勝手にやってほしい。
 MeTooやTimesUpが強権的な佇まいを帯びてきつつある現在だからこそ、『イン・ア・ポエム・アンリミティッド』のユーモアは輝いている。ここには怒りも憎しみもある。が、それ以上にダンスと快楽がある。収まりのいい場所に1秒だってじっとしていられないとでも言うかのようなUSガールズのポップ・ソングは、新しい時代における自由を無根拠に予感させてくれる。

木津毅