MOST READ

  1. Dirty Projectors - Dirty Projectors (review)
  2. interview with Thundercat「ファンタジー」とソウル、その調和 (interviews)
  3. R.I.P マジック・アレックス,マジアレ(村松誉啓) (news)
  4. interview with Shota Shimizu10年目の情熱 (interviews)
  5. yahyel - ──この一風変わった名前のバンドをきみはもう知っているか? ヤイエルが500枚限定の初CD作品をリリース (news)
  6. Campanella - PEASTA (review)
  7. interview with Jeff Mills100年先の人びとへ (interviews)
  8. TAKKYU ISHINO×WESTBAM──STERNE15年目の夜、石野卓球×ウエストバム (news)
  9. Clap! Clap! - A Thousant Skies (review)
  10. interview with Bo Ningen - UK発ジャップ・ロック、その正体とは! (interviews)
  11. Gabriel Garzón-Montano - Jardín (review)
  12. Kan Sano――カン・サノ、全国ツアー決定! ツアー会場では数量限定のカセットも発売 (news)
  13. Arca──アルカが〈XL〉と契約、4月にニュー・アルバムをリリース、新曲も公開 (news)
  14. Shobaleader One──スクエアプッシャー率いる覆面バンドがアルバムをリリース、来日公演も決定 (news)
  15. MAJOR FORCE 25th ANNIVERSARY - メジャー・フォース25周年にリスペクトを (news)
  16. interview with Dirty Projecters - コンテンポラリー・ポップの知性 (interviews)
  17. Solange - A Seat At The Table (review)
  18. 『すべすべの秘法』The Secret to My Silky Skin (review)
  19. interview with Sampha心を焦がす新世代ソウル (interviews)
  20. Visible Cloaks - Reassemblage (review)

Home >  Reviews >  合評 > How To Dress Well- Total Loss

合評

How To Dress Well

合評

How To Dress Well- Total Loss

Weird World/ホステス

Nov 06,2012 UP 北中正和木津 毅 E王
このエントリーをはてなブックマークに追加
12

こういう音楽が存在する 文:北中正和

E王 How To Dress Well
Total Loss

Weird World/ホステス

Amazon iTunes

 人間、元気なときは、出かけて他の人と接触するのが苦にならない。たとえひとりで過ごすとしても、前向きな気分でいられる。しかしときには、そうでないことだってある。そんなときは、出かけて人に会う気も起こらないし、何かを思い浮かべようとしても、考えが悪いほうに転がりやすい。
 『トータル・ロス』は、どちらかといえば、後者の気分にフィットしやすいアルバムではないだろうか。浮かない気分や冴えない考えのすきまにしみこんできて、痛みをわかちあい、凝った心を静かにほぐしてくれる音楽。
 ヴォーカルにはR&B的なファルセットの影響が感じられるが、"ラニング・バック"を除けば、一般的なR&Bとちがって、サウンドにビートやリズミカルなグルーヴがそれほど重視されているわけではない。曲はアンビエント的というか、ゆっくりと東の空が白んでいく様子を眺めているような穏やかな起伏をともなって進むように構成されている。サウンドはときには未来的で、ときには室内楽的。歌はメロディ重視で、"オーシャン・フロア・フォー・イヴニング"あたりでは、歌声が古い賛美歌めいて聴こえる部分もある。
 この種の音楽の歌は「こんなにかわいそうな私」「こんなに美しいぼく」の肯定のスパイラルに陥りがちだが、ハウ・トゥ・ドレス・ウェルの歌には人に向かって語りかけてくるところがある。トム・クレルのヴォーカルにも、感情を強調するのではなく、そっと取り出して置いて眺めているようなニュアンスがある。ぼくはこういう音楽が好きだが、いつも聴いていられるかというと、そうではない。しかしたとえ聴かなくても、こういう音楽が存在することを知っていることによって回避できるストレスがあることはまちがいないと思う。


文:北中正和

»Next 木津 毅

12