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Timeline

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@Sound Muiseum Vision

Dec 23, 2011

文:野田 努   Dec 27,2011 UP
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E王

 クリスマス前夜の23日ともなると、僕と同世代のいい年した連中なら家で家族と過ごしているのだろうし、それはもちろん......良いことだ。あるいは、いわゆるハコ客が若い......ということもあるのかもしれない。まあとにかく思っていたよりも、客層は若い。男祭りでもなく(それを期待していた人もいたが......)、ラヴ&ピースな、心地よいヴァイブレーションだった。何人かのお客さんと話したら、フライング・ロータスのファンだった。
 タイムラインのライヴは熱かった。熱狂があった。前の晩の〈ヘッスル・オーディオ〉は音楽的には新鮮だったが、フロアの熱量と運動量という点では少々おとなしかったから、なおさらそう感じてしまったのかもしれない。また、メッセージのある音楽の強さが、こういう時代ではとくに際だつのだろう。が、それにしても1時間半を超える彼らの演奏、予定調和を後にした自由な演奏、つまりほとんど即興、タイムラインの新しい姿を迎えるオーディエンスの騒ぎ方は、最高の"宴"を創出した。僕はつくづく思った。ブラック・ミュージックには"情の厚さ"というものがある。それが英語で言うところのemotionやsoul、music from their heartsってもんだ。

 タイムラインは、去る11月にリリースした新作「Graystone Ballroom EP」の楽曲をガイドラインにしながら、1時間15分、がっつりとインプロヴィゼーションを展開した。それは時間の経つのも忘れるぐらいに耳と目と、そして気持ちをロックした。途中で演奏された"ジングル・ベル"も美しかった。ぜんぶ良かった。
 サックス奏者は23歳の大学院で博士課程を学ぶDe'Sean Jones(スティーヴィー・ワンダーのバックもつとめている)、キーボード奏者はふたり、ひとりはウェイン州立大学で音楽講師を務めているJon Dixon(ジャズとテクノの研究者)、そしてもうひとりはマイク・バンクス、DJは地元のヒップホップのキッズの面倒を見ているというDJシカリ(バンクスが彼の甥っ子の野球のコーチだった。お互いに音楽をやっていることを知ったのは数年後のことだったらしい)......MCはお馴染みのコーネリアスといった、選ばれし5人といったところで、とくにフロントをつとめる若いサックスと鍵盤のふたりは、演奏技術の高さもさることながら、そのステージング、情熱、気迫、実に見事だった。そういえば三田格はハーバートやモーリッツ・フォン・オズワルド・トリオの2011年の新譜にテクノの成熟のあり方を感じたというけれど、今回のタイムラインもそのひとつだったと言える。お馴染みのヒットメドレーでもやるのかと、一瞬でも思ってしまった自分の浅はかさを恥じるしかない。

 ライヴがはじまる数時間前、マイク・バンクスと久しぶりに会話した。いろいろ喋りながら、思わず「3.11 changed everything」などと口走ると、彼は押し黙り、泣いた。フットワークが好きだとマイクに言った。俺も大好きだと彼は言った。あの文化は、70年代後半、いや、おそらくそれ以前からあるものだと言った。「ちなみにデトロイトのヒップホップでいまいちばん面白いのは......」と言って、バンクスは「14KT」という名前をメモってくれた。ヤツをチェックしろよ、実験的で、そして良い言葉を持っている......。
 ほかに報告することは......ベース・ミュージック世代がURをプレイしていることををめちゃ喜んでいたこと。アメリカのシリアスな不況、イチローの猫みたいな動きの凄さ、あるいは彼がアジのタタキの骨までしっかり食べて醤油まで飲み干したこと(さすがに止めました)。相変わらず重りを背負って坂道を走っていることとか......。

 ブラック・ミュージックは情に厚い音楽である。ときにそれは尋常ではない情の深さを露わにする。まわりにいる人が「バカじゃないの」と呆れるくらいの、ラジカルな"情"だ。平岡正明の有名な言葉を思い出す。「どんな感情も正しい」
 タイムラインのライヴはそれを我々にあらためて伝える。最後の"ハイテック・ジャズ"、アンコールの"ジャガー"は正しい方向を向いた即興によってオリジナル録音の演奏を自由に崩す。アリス・コルトレーンやファラオ・サンダースらが参加してヴィレッジ・バンガードで演奏した"マイ・フェイヴァリット・シングス"......、いやいや違う、スピリチュアルというよりも、つねにファンクをキープしているという点では、『オン・ザ・コーナー』に近い。つまりこれはもう、jazzだった。モーリッツ・フォン・オズワルド・トリオがベルリン・ミニマルの新たな展開として見せた即興をデトロイト・テクノの文脈で試みたプロジェクトというたとえもできるかもしれない。いずれにしても、フライング・ロータスを契機にやって来た子らは満足したことだろう。僕もあらためて、彼らのファンになった。新しいムーヴメントはつねに魅力的だが、キャリアを積んだアーティストのかつて自分も新しいムーヴメントのいち部であったことに頼らない真のチャレンジ、さまざまな人生経験を経てのさらなる実験を今回はたたえたい。
 ライヴが終わってDJダクトのプレイを少し聴きながら、「いやね、じつは風邪ひいていたし(←本当)、リハだけ見て帰ろうとしていたんだよね」と、メンバーに土下座しようかとも考えたが、結局、誰にも挨拶せずに僕は会場をあとにした。午前4時を回っていた。こんどはこっちが泣く番だった。クラブのあとの空しさだって? そんなものあるわけないっしょ!

 (thanks to 石崎くん@Underground Gallery, 浅井くん@Es.U.Es)

文:野田 努

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