Home > Columns > 2週間後の僕らはソナーへ- ――SonarSound Tokyo、今年の見どころは?
「アドヴァンスト・ミュージック(進歩的音楽)」とは? その祭典を宣言する〈SonarSound Tokyo〉(以下ソナー)が今年もこの春、〈ageHa/STUDIO COAST〉で2日間にわたって開催される。
例年どおり豪華極まりないラインアップで、UKテクノの大御所LFOやカール・ハイドのソロをはじめ、エイドリアン・シャーウッドとピンチがタッグを組む最強ダブ、ポスト・ダブステップの荒野からシンセ・ポップの波を漂うダークスター、アンビエント・テクノの新たな領域を切り拓くアクトレス、テクノとジャズと現代音楽を操る若き奇才ニコラス・ジャー、インディ・クラブを中心に次々とアンセムを送り出している新世代トラックメイカーtofubeatsなどなどなどなど......が、たった2日で勢揃いする。先鋭的なエレクトロニック・ミュージックを中心としながらも、面白い音であればジャンルも問わない自由度の高さで集められたラインアップである。
また、〈Red Bull Music Academy〉がホストを務め気鋭のアクトを紹介するショウケースも、今年もバッチリ用意されている。〈テンパ〉のダブステップ周辺からアディソン・グルーヴやコスミンTRG、ベース・ミュージックのサイケデリックな場所に挑戦するイルム・スフィア、日本からはソウルフルなディープ・ハウスが世界中で高い評価を受けているsauce81など......光る才能がひしめいている。ある意味、ここが今年のソナーの肝と見て間違いはないだろう。未来を予感させる。
だが何よりも、ソナーは自分の聴覚の新たな領域に挑戦せんとするあなたの姿勢によって完成されるイヴェントであるだろう。刺激的な音を、ときには思い切り踊り、ときにはじっくりと聴き入り、ときには視覚と共に体験しようとする好奇心こそを。そこで生まれるものこそを、アドヴァンスト・ミュージックと呼ぼうではないか。
以下は、エレキングの20代男子3人によって深夜に繰り広げられた大放談(のいち部)である。そう、早くもソワソワしてしまっています。踊りたくて、楽しみたくて、ウズウズしています。あまりに話がまとまらないので僕は泣きましたが、それだけ楽しみ方が豊富に用意されているということでしょう! あと2週間少し辛抱して、会場で会いましょう。そしてあなたの体験について聞かせてください。
木津: 今回は、それぞれ期待するアクトの3つを挙げてくるということだったんだけど。僕が上から、ニコラス・ジャー、ダークスター、アクトレス。
斎藤: 僕はダークスター、エングズエングズ、トーフビーツ、あとボーイズ・ノイズですね。
竹内: 僕はまだ、定まらないんですよねー。観たいのがちょいちょいわかれてて。xxxy、サファイア・スロウズ、ジョン・タラボットあたりは絶対観たいけど。
木津: たしかにかなりのアクト数で、絞るのが難しいよな。
竹内: 比較するなら、エレグラよりも明確な重心がない感じ。
斎藤: そもそもこのソナーっていうイヴェントはなんなのですか?
木津: もともとはバルセロナ発祥のエレクトロニック・ミュージックが中心のイヴェントで。
竹内: 94年発で、02年から日本でもやってるんだ。しかも毎年。とすると、イベント・イメージは微妙に変化しているのかもしれないですね。
木津: うん。さっきのエレグラとの違いで言うと、ざっくりだけどもうちょっと振れ幅が広いというか、エレクトロニック・ミュージックやクラブ・ミュージックを中心として、そこからポスト・ロックっぽいものとか、エレクトロニカなんかに緩やかにはみ出していく感じ。「インターナショナル・フェスティヴァル・オブ・アドヴァンスト・ミュージック」と銘打たれてる。
竹内: toeとかいますもんね。グリーン・バターはヒップホップだし。でも、どちらも気持ちいいだろうなあ。
木津: そうか、ヒップホップ。たしかに。
竹内: 20代のリスナーの期待となると、やっぱりアクトレスあたり?
木津: アクトレスは観たいなあー! 『R.I.P.』の、あの繊細なスリルに満ちたテクノが、ライヴでどんな風に再現されるのか、あるいは変貌するのか。
斎藤: 僕はアウェイのトーフくんがどうかましてくれるのかに相当期待してます。
竹内: トーフ君はアウェイなの?
木津: そんなことないでしょ。
斎藤: なんだかんだ彼はJ-POPじゃないですか。こないだ改めてDJみたんですけど。
竹内: しかし、トーフビーツくんの名前は本当にいろんなところで見るようになったね。同年代で、リミックスしてもらってる立場からすると、どうなの? 応援したくなる?
斎藤: そりゃ、だって、アクトレスと同じイヴェントに出るんですよ! 超あがりますね。
木津: いいねえ。
斎藤: 若いひとたちにとって、ひとつの決め手になると思います。「他のメンツやばいし超楽しみだけど、トーフくん応援しに行きたい」って。ほぼ歳同じやつがこんな大舞台でやってたら、うおおおおおってならないほうが嘘でしょ!
木津: LFOとカール・ハイドと同じステージやもんね。
竹内: そこで言うと、やっぱりサファイア・スロウズでしょう!
斎藤: たしかに、たしかに。
竹内: あの子も相当ですよ。〈ノット・ノット・ファン〉~〈100%シルク〉~〈ビッグ・ラヴ〉という強い流れでキテるし。去年の、エレキングとのシブカル祭。で観て、ホントにかっこよかったんです。けっこう踊れて。〈NNF〉周辺では、よりダンサブルな女性アクトが出て来てる印象。
斎藤: やっぱり、若者にとって歳近くて共鳴できるアーティストが活躍しているのはとても大切なことだと思うんですよ! 今回のラインナップの要といってしまっても過言ではないかと!
木津: はははは。おじさんがLFOを観に来ているなか、かましてくれたらいいよね。や、僕はLFOすごく楽しみだけど。
竹内: 90年代〈ワープ〉の立役者だけど、アルバムは03年の『シース』が最後ですよね。ライヴはどんな感じなのかな?
木津: 本邦初公開って書いてるねえ。僕は2、3回観てるけど、LFOのライヴって音源よりもめちゃくちゃBPMが速くて。
竹内: へえ。
木津: けっこうアグレッシヴにゴリゴリ押してくる感じなので、たぶん初日夜のピークタイムにはなるかと。
竹内: それは想定外だ(笑)。僕は初日の「アゲ」要員ではxxxyを狙ってるんですけど。
木津: それ、僕はどういうのかあんまり知らないですね。
竹内: シカゴ・ハウス血統かな? もともとはダンスの人ではなかったらしいのですが、UKガラージを経由してアップリフトなダンス・ビートへと向かってる。レディオヘッドのリミックスをガラージ・ベースでやったり。
斎藤: (聴きながら)かっこいいですね!
木津: 声ネタのベースライン。いまっぽいね。若手で言うと、ニコラス・ジャーが僕はすごく楽しみなんだけど、ライヴがどんなのかは想像がつかない。
竹内: 未知数ですね。音的にも。
斎藤: 彼は僕と同い年。23才と若いですよね。前にソロのライヴセットは見ましたけど、今回はバンド編成と聴いているのでどうアレンジしてかましてくれるのか楽しみです。
木津: 歌うんだよね。どうせなら、思いっきりトリッピーにやってほしいな。いちばん異色のアクトになってもいいから。想像がつかないで言えば、ダークスターもね! 斎藤くん的に、劇的に音が変わった『ニュース・フロム・ノーウェア』後のライヴの予想はある?
斎藤: 映像を観る限り全員がサンプラー(MPC)を装備していて、かなりバンドとしての意識が高いものになるのではと思います。
竹内: もしかして、アウェイ?
木津: うーん、でも、ソナーはけっこう音楽性もスタイルもバラバラやからね。
竹内: たしかにアウェイというより、他のアウェイの人たちを繋ぎ止める役割を果たすかもですね。「俺たち〈ワープ〉だけど、いまこういう気分でこんな感じだからみんな大丈夫」みたいな(笑)。
斎藤: (笑)以前の暗い曲をどういうアレンジをして、今回の明るめな曲をどう織り交ぜてくるのか。しっかり歌声を聴かせてくれるのではとも思います。彼らに期待するのも、前知識なしで一度ライヴを観ているというのも理由としてありますね。当時、ダブステップすら知りませんでしたから、衝撃でした。アホな感想ですが、これは日本で生まれない音楽だー! とマジで思いました。
木津: それはいい話。たしかに、ブリアル以降として聴いてる耳よりも、ある意味新鮮かも。今回はもっと自由な広がりのある内容になりそうだしね。
竹内: 前にライヴ観てる人の記憶をも、華麗に裏切ってくれるんじゃないかと。
木津: 僕のなかではLFOとか、シャーウッド&ピンチ辺りが、かなり安定してカッコいいライヴをするんだろうなーという予想があって、そんななかで若手が未知数なのはすごく健全だなあと。
竹内: たしかに。その点、サブマーズてのが面白いですよ。
木津: どんなの?
竹内: UKの若手2ステップ~ガラージなんですけど、〈マルチネ〉からも多数リリースしてるひとで。
斎藤: ほええ。なぜ〈マルチネ〉から。
竹内: 僕は最初、そっちを何も知らずに聴いてて。本国では真面目なダンスを作り、〈マルチネ〉ではインディ・ボーイの裏クラシック“agepoyo(あげぽよ)”というのがありまして......。(http://maltinerecords.cs8.biz/97.html)
一同: (聴く)
斎藤: 渋谷GAL'sのサンプリングじゃないですか(爆笑)!!
木津: (笑)すげー、それでベースラインやん!
竹内: tomadくんのネット監視の成果。って言ったら怒られるかな(笑)。
斎藤: アガル↑↑↑↑↑
竹内: この辺を果たしてやるのか。やってほしいけど(笑)。
斎藤: やってほしいですね!!
木津: やらないと意味ないんじゃない(笑)?
竹内: これは期待できますね(笑)。楽しみになってきた。辰也、エングズエングズは?
斎藤: 最高!!!
木津: その話をしてよ。
斎藤: まさかこんなに早く〈フェイド・トゥ・マインド〉(〈ナイト・スラッグス〉の姉妹レーベル)のアクトが日本で観られるとは思いませんでした。ジャム・シティしかり、ヴェイパーウェイヴとは遠くない感性があって、合成感とでもいいましょうか、『DIS magazine』が好みそうな。そういう連中が日本に来てくれることが嬉しいです。
竹内: たしかにDISだねー。ディストロイドっていうんだっけ。
斎藤: それはヴェイパーウェイヴと対照的に、流行らなかったタグですね。
木津: (聴きながら)でもヒップホップ感覚もすごく自然に持ってるね。
斎藤: そうですね。やっぱグライムがあるのかもと。
竹内: ちょっとジュークぽさもあるのか。
斎藤: やっぱり、〈ソフトウェア〉あたりとも遠くないです。彼らのリミックスをしているトータル・フリーダムも来日していますし、そこら辺りのインターネット/PC加工感まる出しの連中が実はこぞっている感じも、ヤバいと思います。
竹内: たしかにこのリミックスはヤバいね。
斎藤: こないだ工藤キキさんがレポート書いてましたけど、あの感じを体験したいです!
竹内: あの感じか。
木津: あの感じね。ドーム・ステージのホストを務める〈Red Bull Music Academy〉というのが、そういう未知なる才能を拾って育てようとしてるみたい。今年のラインアップを見た感じでは、さらに新しい音を貪欲に拾っているよね。
竹内: そういや、ボーイズ・ノイズの話がまだ......。これは任せた。
斎藤: 超楽しみなんですけど(笑)。まあ、ぶっちゃけEDMに聴こえるわけじゃないですか。でも彼はとっても硬派で、客をチャラチャラさせるための音楽ではないんですよ。
竹内: そうなの?
斎藤: だって彼はEDM嫌いですからね。
竹内: それよりはロック的なノリに近い感じ?
斎藤: 遠くないですね。彼の音聴いて、間違いなくハード・ロック好きだなと思ってたら、インタヴューしたとき、AC/DCのパロディーTシャツ着てましたからね。で、AC/DC好きですかって訊いたら好きだって。
木津: でも、たしかにハード・ロック感はあると思う。ノリっていうか、男の子っぽさね。
斎藤: “サーカス・フル・オブ・クラウン”の酩酊感あるベースとか、カッコいいですよ。彼もけっこうアウェイ感あるじゃないですか。
竹内&木津: うん。
斎藤: そこは満場一致かよ。インディ野郎どものなかで、彼がどうアゲてくれるのか楽しみです。トーフくんも同様ですね。
木津: なるほどねえ。でもボーイズ・ノイズは自分のレーベルで、シーパンクやベースラインを取り込んだコンピも作ってるもんね。今回DJだし、その辺りも含む幅の広いプレイになれば、じつは今年のソナーにバッチリ合うのかも。
斎藤: フェスという観点で期待したいのは、〈アゲハ〉ってそもそも常時フェスみたいな会場なんですよ。アミューズメント・パーク。ステージはいつも数か所ある。そういう環境でいかに特別な「フェス」として成立するのか。そこに注目してます。他のイヴェントとの差異がどう出るのか楽しみです。
木津: ちょっとアート・オブジェ的なものも出たりすんだけど、わりと「場」としては自由な作りにはなってるんだよね。
竹内: 疲れたらゆっくりできる感じですか?
斎藤: 外でメシ食えますよ。
木津: しかし、たしかに“あげぽよ”とアクトレスが両立するイヴェントっていうのはすごいよなあ。
斎藤: (笑)
竹内: テン年代的だし、いかにも日本ぽい。
斎藤: まあ、フェス感がどんな風に出るかが僕はいちばん楽しみです。
竹内: じゃあフェス感とは?
斎藤: そのフェスだからいく、と思わせるような何かです。フジロックってだけでいくひといるじゃないですか。ソナー野郎というのがいるのかという。
木津: 僕は今回友だちを連れて行く予定やけど、まあそいつは、ソナーだから行くって感じやけどね。
斎藤: ほお。ソナラーが。
竹内: ソナラーって(笑)。生のソナラーの声とは。
木津: いや、そいつもオールナイトのイヴェントとか、そもそも行き慣れてなくて。去年スクエアプッシャー目当てで行って。で、いろんなアクト観たりとか、それ以上に、オールで頑張って踊りながら明かすって場が楽しかったみたいで。で、ソナーって音楽としてはアーティなアクトが揃っているので、そういう聴いたことのない音楽に出会えるきっかけぐらいには思ってるかも。
竹内: おおー。
木津: いま、今年出るアクトをいろいろ紹介してるけど、LFOとか、ダークスターの“エイディーズ~”とか、気に入ってるよ。
竹内: 2013年ソナー的にはバッチリじゃないですか。
斎藤: なんか今回は、とてもアングラ感がゴチャゴチャしていて、出演者同士、張り合いみたいになって愉しいのでは。
竹内: ダンス系のフェスとはいえ、ひとつひとつのアクトがお互いにほぼ無関係くらいの距離感てのが面白いですね。
斎藤: それはマジで言えますね。そのなかで張り合ってほしい。
木津: うん、それだけいまのエレクトロニック・ミュージックの範囲が広がってるんだと思うし、それをドキュメントし得るラインアップになってると思う。だから、今年のソナーに関しては、目当てのアクトもいいけど、よく知らないアーティストにチャレンジしてみるのもいいんじゃないかな。
竹内: “あげぽよ”からディストロイドまで、一気に駆け抜ける夜にしましょう!
木津: ま、2日目は寝不足でもね(笑)。
斎藤: やっぱ踊り明かすのが最高でしょ! ダンスをするのが超大事! カルチャーは僕たちが踊りながら作る!
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www.sonarsound.jp www.sonar.es