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Home >  Interviews > interview with Cosey Fanni Tutti - スロッビング・グリッスルを語る

interview with Cosey Fanni Tutti

interview with Cosey Fanni Tutti

スロッビング・グリッスルを語る

──コージー・ファニ・トゥッティ、2万5千字ロング・インタヴュー

質問:野田努+坂本麻里子    通訳:坂本麻里子   Nov 01,2017 UP

わたしは中流ではなくワーキング・クラス出身で、貧しい公団暮らしだった。ああいう環境では、居場所を確保するために闘わなくてはいけなかったのよね。というわけで、わたしはこう、ちょっとばかり厄介で胡散臭くなりかねない、そういったシチュエーションに対処するのに若いうちから慣らされてきたのよ。


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■『セカンド・アニュアル・レポート』に次いで『D.o.A. 』も人気作ですよね。そして、『20ジャズ・ファンク・ グレイツ』へと続くわけですが、『20ジャズ・ファンク・グレイツ』は、エレクトロニック・ミュージックの未来への架け橋になった作品ですが、 それまでのTGが築いたノイズ/インダストリアルのパブリック・ イメージを混乱させるような作品です。

コージー:ええ。

■で、あのアルバムのもくろみ、あれは何を意図したものだったのでしょうか? ドリュー・ダニエルの解釈のように、「自らのアイデンティティを自ら意識的に冒涜すること」、TGの周辺に生まれていたインダストリアル神話めいたものを自ら破壊するのが目的だったのでしょうか?

コージー:まあ……わたしたち4人は個人として、全員それぞれユーモアのセンスを備えた、そういう連中だったわけで。

■(笑)はい。

コージー:全員がアイロニーを祝福していたし、だから、人びとをまごつかせもしたかった、と。わたしたちは実は全員、マーティン・デニーとかラウンジ・ミュージック系、いわゆる「エキゾチカ」に入れ込んでいてね。「エキゾチカ」というのは、彼(マーティン・デニー)の名作アルバムのひとつのタイトルでもあるけれど。

■(笑)はい。

コージー:だから、「じゃあ、それも混ぜてみよう」とわたしたちは考えたのよね。だから、あれをやったのも要は、物事をやっていくための新たなやり方を発見していくということ、それに尽きる、と。わたしたちは確立したフォーミュラにはまってしまうこと、同じことをえんえんと繰り返すことに興味はなかったし、TGを「インダストリアル・ミュージックの最初の形」として定めるつもりもなかった。
 というのも、あれはそういうものではなかったから。インダストリアル・ミュージック、あるいはインダストリアル云々というのはライフスタイル。あれは、生活/人生に対するアプローチの方法だった。だから、このインタヴューのあいだ中わたしがずっと言ってきたように、それは「自分たちはどんな人間なのか」、「自分たちは何をやっているか」、そして「どんな風に自分を表現するか」ということなのよね。
 で、あの当時、『20ジャズ・ファンク・グレイツ』をつくったときのわたしたちというのは、「オーケイ、じゃあ、ああいうジャケットで出そう」と考えた。だから、ジャケットだけ見ればいかにも「ジャズ•ファンクの名曲20選」めいたアルバムなわけだけれども、実際あのレコードをターンテーブルに載せてみれば、それとは似ても似つかない音楽が入っている、と。だから、あれがわたしたちのユーモア感覚であり、アイロニーであり、当時のわたしたちがたまたまいたのがああいう場所だった、ということなのよね。

■自らをジョークにしているような、あのジャケットは有名ですよね。一見すごくキュートで……

コージー:とても可愛らしいけど、あの写真が撮影されたのは有名な自殺スポット(※東サセックス州にあるビーチー岬)だし。だからまあ、現実生活のなかでは「何事も見た目通りとは限らない」、そういうことでしょ? だから、何かを糖衣にくるんで美味しそうに見せることはいくらだってできるけれども、いったんその表層の下をめくってみれば、そこではありとあらゆることが起きている。だからあれは、多くを引き出すためには、表だけ見て満足するのではなく深く掘り下げていく必要がある、そういうことだと思う。

■はい。ただ、最近よく感じるのは、色んな物事が表面だけ/字義通りになっているんじゃないか、ということで。「ここには深い意味、隠された何かがあるのかもしれないぞ」と期待して表面を剥がしていっても、いざ中身を見てみると、実はそこには何もなかった、見た目の通りだった、というか。

コージー:それはだから、表層性をそのまま疑問なしに受け入れてしまうような、そういう人びとが集積してきた結果、といいうことじゃないかしら。

■ああ、なるほど。

コージー:とは言っても、いつだって、常に表面だけだったわけだけれども。人びとが好むのは、綺麗だとか気持ちいいだとか、そういう「表面」ばかりだったから。

■ええ。

コージー:音楽の聴き方にしてもそうで、人びとはライヴを観に外に繰り出して、お酒であれ、それ以外の何でもいいけれど、それらを飲み込んでさんざん酔っぱらい、楽しいひとときを過ごして、それが終わったら家に帰る、と。で、それと同じことを、彼らはまた次の週末にも繰り返していくわけよね。ただ、わたしはそういう人生はごめんだった。TGにしても同じことで、そんな風に人生を過ごすことに、わたしたちはまったく興味がなかった。だから、わたしたちが求めていたのは、人びとが人間として成長していくことだったし……そうやって彼らに、可能な限り彼らの人生をフル体験していってほしかった、というね。

■なるほど。

コージー:だから、わたしたちは何も、「ぞっとするような、残酷な人間になりましょう」と提唱していたわけではなかったしね。そうではなくて、「人間や日常にあるひどい現実にちゃんと目を向けて、それを良いものに変えていこう」と。

■でも、あの当時、あなたたちの音楽は「ひどいシロモノ」、「音楽ではない」みたいに形容されたこともあったわけですよね。そこは、辛くはなかったでしょうか?

コージー:いいえ、別に。だって、わたしたちは現実を提示していただけだったし。人間のありさまに備わった、もっとも残忍でひどい部分、その失敗をプレゼンしていただけの話であって。だから、やっているわたしたち自身がむかつかされる、ひどい人間だったわけではなかったでしょ? 多くの人びとにしても、それは同じこと。わたしたちは悲惨な出来事を歌ったかもしれないけれど、それは別に、わたしたち自身がやった行為ではなかったんだし。

■有名な“ホット・オン・ザ・ヒールズ・オブ・ラヴ”のような曲は前作の“ユナイティッド”の延長かもしれませんが、イタロ・ハウスとTGとの関係をあらかめた明らかにするもので──

コージー:(苦笑)。

■で、TGがイタロ・ディスコとリンクしたのは、 そのエロティシズムとミニマリズムゆえだと思うんです。

コージー:ああ、なるほどね。

■で、アシッド・ハウス以降のダンス・ミュージックのシーン、ハウス、 テクノ、ミニマルで、あなたがとくにお気に入りのDJ/ プロデューサーがいたら教えて下さい。

コージー:とくにいないわね。というのも、わたしたちは……というか、わたしがTGでやっていた頃は、その手の音楽はまったくやっていなかったと思う。ただ、TGが終わった時点で、わたしとクリスとはTGとはかなり違う進路を採ったし、そこから何年かのあいだ、ふたりでそういうルートを進んでいった。だから、あの頃のわたしたちはトランス・ミュージックみたいなものもやったし、あるいはあなたがそう呼びたいのなら「テクノ」でも構わないけれども、その手の音楽はかなり初期の段階でやっていたのね。だから、その手の音楽がメインストリームになった頃までには、わたしとクリスはもうそこから去っていた、別の何かに向かっていたし、あまり気に留めていなかったわ。

■あなたが個人的にもっとも好きなTGのアルバムはどれですか?

コージー:あー、参ったなぁ……どれだろう??

■(笑)。

コージー:……そうね、たぶん、『D.o.A.』? 自分でもはっきり決められないけれども……。 

質問:野田努+坂本麻里子(2017年11月01日)

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