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スコットランドはグラスゴーのターンテーブリスト、マイケル・ハンターによるデビュー・アルバム(CD2枚組)で、地元の硬派レーベル〈ソーマ〉からのリリース。ハンターは、マニアのあいだではそれなりに名が通っていて(しかし......どう考えてもこれはジャズ・ヒップホップじゃないでしょ!)、すでにヨーロッパでは、13年前のDJシャドウによる『エンドトロデューシング』を引き合いにバズが起きている。実際の話、ハンターはシャドウのように、ピーナッツ・バター・ウルフのように、古いソウルやジャズ、あるいはサウンドトラックを蒐集してはリサイクルする。ジ・アヴァランチーズのように、ナールズ・バークレーのように、それらを機械に通してノスタルジック・ポップスへと変換する。
"Sing"のようなアップビートなジャズを聴いていると、ぐるぐる回る7インチ・シングルが目に浮かぶ。"Fairchild "のようなグルーヴィーなファンクを聴いていると、70年代のアメリカにトリップしたような気分になる。"Sky Is High"はナイトメアズ・オン・ワックスのソウルフルなダウンテンポだ。"'The Story Of Sampling"は、この手の音楽のテーマ曲である。ラッパーは、その曲名の通り、サンプリング音楽における講釈をたれる。言葉がわかれば相当面白いらしいが、仕方ない。
CD1枚目の最後に収録されている"High Jazz"は、いまのところこの人の最大のヒット曲で、このアルバムのハイライトでもある。美しいジャズ・ピアノを、アルト・サックスの音色を、20年前のコールドカットのようにカット&ペーストする。エレガントなこのトラックは、60年代/70年代のアメリカのブラック・ミュージックへの憧れの旅を締めくくるのに相応しいと言える。
そんなわけで、心配しなくて大丈夫、あなたはすっかり時間の経過を忘れるでしょう。ディス・イズ・ア・ジャーニー......。
野田 努