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ShowyRENZO

Hip HopRap

ShowyRENZO

FIRE WILL RAIN

Sound Kitchen

つやちゃん Jan 24,2023 UP

 死が迫ってくるような作品だ。
 Lit した炎が消えるまでの時限爆弾のように、死が襲ってくる。

 ShowyRENZO はペルーの血をひく茨城出身のMC。そのコールするような刻んだラップはプレイボーイ・カーティ以降、いわゆるケン・カーソンやコチースといった気鋭のラッパーのモードを踏襲しているように見えるし、日本語/英語の単語の並びを独自に入れ替え、意味より音を重視するように区切っていくスタイルは LEX 的とも言える。ヒップホップ・コミュニティにおいては『ラップスタア誕生!2021』のファイナルで鮮烈な印象を残したことで一気に知名度を高めた彼だが、2022年には勢いそのままに傑作アルバム『2022』をリリース。本作『FIRE WILL RAIN』は、止まらない ShowyRENZO 節を知らしめるだめ押しの一枚である。

 たとえば、90分の間に決着をつけなければならないフットボールというスポーツの焦燥感をメッシ経由で持ち込んだ “Pink Messi” において、彼は「好きなだけ俺の愚痴いいな/それで満たされるならいいな/I’m sorryあんまり時間がないな/死神が迎えにきた」とリズミカルに歌う。死へのカウントダウンが始まっているかのような焦りは、前作『2022』収録の “シナリオ” でも弾むようなステップでこう披露されていた──「俺は楽しんでる/死神、死を操ってる/俺は毎晩楽しんでる/いつ死んでも良いわけじゃないけど/いつでも俺は準備できてる」

 金を稼ぐ、成長する、俺は凄い、俺はまだまだ昇りつめる。現代における多くのラッパーがそうであるように、ShowyRENZO もまたネオリベラリズム社会における果てしない成り上がりを目論む。彼がゲームへと新たに持ち込んだのは、〈時間〉という概念だった。「I just今smoke I just今smoke」と忙しなく連呼する “Smoke Sports” や「マジで/マジで/マジで」と威勢よい声を小刻みに発する “Stress by” といった曲では、とにかく〈今〉が大事なのだ、悠長にセンテンスを作りラップなんてしている時間はないのだ、と言わんばかりに瞬間の一フレーズに賭ける態度が迫ってくる。もはやリリックと呼ぶことを憚られるかのような、ワードのつぎはぎとしてのラップ。そのスタイルについては、『ラップスタア誕生!2021』での審査員コメントで「雰囲気だけになっちゃう可能性がある」と指摘されていたこともある。

 前作『2022』に収録され、彼の中にある政治性が顕在化した “死と税金” という曲はとりわけ重要だ。ここでもまた、細かく刻むようなラップで彼は次のように吐露する。「ソファに座ってチルしてる/相変わらず目が空いたまま夢を見てる/Like夜神月/Deathnote世界を変える/俺が選ばれてる俺が選ばれてる/死神が見える死神が見える/死か生きる賭ける/likeこれイカゲーム/逃れ逃れない/逃れ逃れない/死と税金/逃れない」。彼が唐突に引き合わせる〈死〉と〈税金〉は一見遠いもののようにも思えるが、ハスリングやゲットーを通じ資本主義を描いてきたヒップホップにおいて、それはむしろ並べ提示されて然るべきテーマであり、あたかも並列なものとして配置する批評眼にこそ ShowyRENZO のヒップホップ的な神髄が宿っていると言ってよいだろう。だからこそ、彼が走り抜けるように死と税金についてラップする様子は、つまり国家の規制に対し「好き放題自由に稼がせろ」と主張しているようにも見えるし、同時に「(たくさん税金とられるくらい)こんなに稼いだぜ」というボースティングにもなっている。

 ただ本作は、その権力への反抗や成り上がりへの自己言及が、徹底して軽さを極めていく技術とともに表現されている点が重要だ。近年、いつしかヒップホップにおけるセルフボースティングは〈型〉となり〈ルール〉となり、突き詰められていった結果重量感を失いますます〈自らに対する励まし〉に転化しつつ、時にユーモアすらも内包するようになった。事実、“APOLLO” はリリックとラップの相乗効果によって、破綻/破滅と紙一重のユーモラスさが浮き上がっているではないか。「Gotta go hard/ステージの上で/カッコつけ/恥とかねぇ/恥があるならもうやめ」から「紙神紙神」と受け(薄っぺらな紙と重々しい神との対比!)、「Picasso/Picasso/Picasso/Picasso」と連呼したうえで「I’m ok/そのcase/kkk ok we ok」と自らを肯定し励ますようひたすら繰り返す「OK」。それはまさにアルバート・バンデューラ的な自己効力の作用に近いものがあり、いつしか素朴な自己啓発の標語のごとき軽さへと接近する。

 軽いワードをリズミカルに発し、ただただ並べ、ユーモアとぎりぎり紙一重の「俺はできる」を貫徹すること。その浮遊するような重力のなさは、かつて加速するネオリベラリズム下における資本主義社会の様相を鋭く綴った SCARS の〈重さ〉とは隔世の感がある。彼らは “I STEP 2 STEP” で「悩めるこの街で稼ぐだけだから/日々重さを増す体/日々重さを増す責任」とラップした。ShowyRENZO は本作のハイライトである見事なナンバー “火をつける” で、ジャージー・クラブの軽やかなリズムに乗せて軽薄にワードを連ねる。「火をつけるLit/早く起きてburning/息を吐くよmorning/結局のところ今がやばい/果てしない終わらない/時間より早い/軽くてやばい/増やしてマニー」と。

 ShowyRENZO の魅力とは、「雰囲気だけになっちゃう可能性がある」というスタイルに対し、むしろそこに宿る価値観を逆手に取り突き詰めていくことで、ある種の軽妙さを獲得しながら死へと向かっていく点にこそあるのだ。ゆえにその徹底した軽さは、これもまたユーモアすれすれなほどドラマティックにサンプリングされる “火をつける” での一幕で、次のような歌詞とともに結ばれる。「私が生きている他に何もない/たった一人のものだから/どんな明日もこわくない」

 私が生きている他に、何もない。
 生きている他に、何もない!
 あぁ、この〈死〉を前提とした軽さ!

つやちゃん