Home > Reviews > Sound Patrol > Leftfield Groove 4 逸脱するグルーヴ5選(4)- 逸脱するグルーヴ5選(4)
世のなかにはいろんなタイプのダンスミュージックが存在するが、ハウスとテクノの区別が難しく感じられることはないだろうか。その主な理由は楽曲の構造とBPMが近い関係にあるからだろう。とりわけ、素材を削ぎ落としたミニマルなトラックになってくると、表面的な違いが少なくなり、トラックの芯となるグルーヴの違いが楽曲の印象を大きく左右することになる。さらに言えば、ひとつのジャンル内にも多様なグルーヴが存在する。
そうした違いごとに名前をつけてカテゴリー化する行為に意味があるかどうかは、ここでは置いておくとして、グルーヴの違いを意識し、その違いが何なのかについて考えてみることは、DJセットのような、ある程度の時間にわたってダンス・ミュージックを紡いでいく作業において、その指針となる有意義な視点を与えることにつながると思う。そうした視点がなければ、変化に乏しい、平坦なパフォーマンスに陥ってしまう可能性があるからだ。
そしてDJというのは面白いもので、単体で聞くと全く異なるグルーヴの楽曲同士でも、そこへミックスという人為的要素が加わることで、まったく違う印象のグルーヴへと変化させて混ぜ合わせることができる。今回ここに挙げた5曲も、どこかのカテゴリーへ綺麗に収まる類のトラックではないが、ミックス次第で様々なセットの一部として組み込むことが可能だ。
吹き抜けるような爽やかなパッドときらびやかな電子音が漂う中、低音の塊が鼓動するキックレス・トラック。ウワモノが折り重ねられることで陶酔感が増していく。キックが使われていないので、様々なビートの楽曲と組み合わせが可能。
素材を削ぎ落として楽曲のムードを浮き彫りにしたものがダブだとするならば、必要最小限の素材だけを残してグルーヴを浮き彫りにしたのがこのトラックだ。変拍子のためロングミックスには向かないが、ミックス心をくすぐられる。
ハーフのキックとベースラインによるタメの効いたリズムはハウスと相性がいい。マリンバ系のサウンドと低域のコントラストが心地いい。中盤になると『ワイルド・スタイル』でおなじみの(https://www.youtube.com/watch?v=l0ZAnUN9U_A)ヒップホップ・クラシックを思わせるビートが挿入される。
トライバルなビートにバグパイプ(?)とヴォイス・サンプルが投入されるJ.A.K.A.M.らしさ溢れるトライバル・トラック。底部で起伏するシンセベースにより、独特の印象を持つグルーヴが生まれている。
リード・シンセの奏でる泣きのメロディラインが気だるくエレガントな魅力を放つ極上チューン。少し枯れたムードはダンスフロアに至福の酩酊をもたらしてくれそう。こちらもハウスとの相性が◎。
http://www.juno.co.uk/products/tom-ellis-modo-01/603608-01/文:Yusaku Shigeyasu