ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Columns スピリチュアル・ジャズの名門〈Black Jazz〉の魅力とは (columns)
  2. Columns CAN:パラレルワールドからの侵入者 (columns)
  3. interview with Oneohtrix Point Never(Daniel Lopatin) OPNはいかにして生まれ、そして新作mOPNへと繫がったのか (interviews)
  4. BudaMunk & TSuggs - Thank And Gro (review)
  5. Autechre ──先日アルバムを送り出したばかりのオウテカが早くも新作をリリース (news)
  6. interview with Oneohtrix Point Never(Daniel Lopatin) OPNはいかにして生まれたのか (interviews)
  7. former_airline ──〈Call And Response〉からサイケデリックな新作をリリース (news)
  8. ralph ──気鋭の若手ラッパーがファーストEPをリリース、プロデュースは Double Clapperz (news)
  9. Lucrecia Dalt - No Era Sólida (review)
  10. interview with Meitei 海外で評判の新進電子音楽家、日本文化を語る (interviews)
  11. Vladislav Delay / Sly Dunbar / Robbie Shakespeare - 500 Push-Up (review)
  12. Nubya Garcia - Source (review)
  13. Oliver Coates - Skins n Slime (review)
  14. Autechre - Sign (review)
  15. Oneohtrix Point Never ──OPNがニュー・アルバムをリリース (news)
  16. Bruce Springsteen ──ブルース・スプリングスティーンが急遽新作をリリース、発売日は大統領選直前 (news)
  17. Richard Spaven & Sandunes - Spaven x Sandunes (review)
  18. R.I.P. 加部正義 (news)
  19. Rob Mazurek - Exploding Star Orchestra ──シカゴのジャズ・コルネット奏者ロブ・マズレクが新作をリリース (news)
  20. Wool & The Pants ──ウール&ザ・パンツのNTSラジオでのミックスショーが格好いいので共有させてください (news)

Home >  Reviews >  Album Reviews > Jefre Cantu-Ledesma- Love is a Stream

Jefre Cantu-Ledesma

Jefre Cantu-Ledesma

Love is a Stream

Type

Amazon iTunes

三田 格   Nov 25,2010 UP
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 ラスティ・サントスのザ・プレゼントを聴いて『ラヴレス』を聴く回数が減ってしまいそうだと書いたことがある。それはザ・プレゼントが描き出すイメージ豊かなドローンの多様性に引き込まれてしまったからであり、また、そのことによって『ラヴレス』が持っていた濃密なムードにどこか鬱陶しさを感じるようになったせいもある。ザ・プレゼントは全編がシューゲイズではないし、比較すべきものではないのかもしれないけれど、シューゲイザーが辿ってきた狭苦しい流れのなかでは、なかなか『ラヴレス』を凌駕する作品が現れることもなく、その美意識が揺るぐこともなかった。エレクトロニカと融合したポート-ロイヤルにしても、低音部をカットしたビロングにしても、その鬱陶しさはそのまま受け継がれ、それがシューゲイズを決定づける要素になりかけていた。シガー・ロスやグルーパーはむしろそのなかから生まれてきたともいえるし、だからこそノイズ・ドローンとの垣根も低く、KTLやナジャのようなドゥーム系とも親和性を取り沙汰することも不可能ではなかったといえる。このことにザ・プレゼントの存在は多少の疑問を与えたのかもしれない。大きな変化をもたらしたわけではない。何かがわずかに動いただけ。あるいはその感触だけがあった。そのこととチルウェイヴの浮上が同時期だったということは何かの符号のようにも思えるし、何も関係はないのかもしれない。

 タレンテルのリーダーで、タッセルのメンバーらとはジ・アルプスとしても活動するジェフレ・キャンツ-リデスマのセカンド・ソロはそれまでのキャリアをいささか覆す感じで、全編がシューゲイズであった。しかも、5曲でヴォーカルまでフィーチャーされている。タレンテルのドローンは地獄で瞑想に耽っているような......とかなんとか『アンビエント・ミュージック 1969-2009』でも書いた通り、基本的にはおどろおどろしく、サウンドの要はドラムにあった(と、僕は思っている)。それはどとらかといえばアンサンブルに重きを置くサウンドで、音楽の魅力はその空間性にあったといってもいい。それがここでは『ラヴレス』に勝るとも劣らない濃密なシューゲイズが展開され、しかし、その音圧の固まりが鬱陶しさに転じることはなく、実に広々としたイメージを与えていく。どの曲もすべて開放感に満ち満ちていて、『ラヴレス』よりはエイフェックス・ツインやサン・エレクリックに感覚は近い。一説によると『ラヴ・イズ・ア・ストリーム』というタイトルは『ラヴレス』ではなく『ラヴ』を訴えたいという意味があるそうで、それならばなるほど『ラヴレス』に感じられるようになった鬱陶しさを払拭していることはたしかだし、彼が活動の拠点としているサン・フランシスコで起きている他の動きとも連動するようなヒッピー的精神の表れとして聴くことも不可能ではない。そう、エンディングこそ手馴れたドローンに回帰していくものの、それまではとにかくひたすら天に舞い上がっていくようなシューゲイズがこれでもかと繰り返され、先のカリフォルニア議会でもしもマリファナを合法化する法案が可決されていたら、いま頃、このアルバムはその存在感をもっと示すことになっていたかもしれない......
 キャンツ-リデスマが運営する〈ルート・ストレイタ〉(グルーパーやイーリアス・アメッドなどを輩出。OPNがフリートウッドマックやマーヴィン・ゲイをカヴァーした映像作品も)からはまた、00年代のサイケデリック・ドローンを支えてきた重要なグループのひとつ、イエロー・スワンズが解散した後にようやくピート・スワンソンが完成させたソロ・アルバム『フィーリングス・イン・アメリカ』もリリースされたばかり。ツアー会場のみで販売された限定アルバム『ウェアー・アイ・ワズ』とともに暗く沈みこむノイズ・ドローンは『ラヴ・イズ・ア・ストリーム』とはあまりに対照的で、現時点では時代の角を曲がり切れなかった印象が強く残る。

三田 格