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三田 格   Apr 20,2012 UP

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 なるほど橋元さんの言う通りである。『イナズマイレブン』のことではない。ましてやコロコロコミックのおまけでもない(紙エレキングVol.4 参照)。南アからダブステップを打ち出してきたスプー・マサンブがセカンド・アルバムから〈サブ・ポップ〉に移ったら、これが急にメジャーを意識したような音楽性に成り果てていて、かなりたじろいでしまったからである。どんな必要があって、こんなことになってしまうのだろう。才能がひとつぶッ潰れたような印象さえ持ってしまった。ウォッシュト・アウトに起こったことがまったく同じことかどうかはわからないけれど。

 ウォッシュト・アウトは、しかし、〈サブ・ポップ〉に移る前から僕は受け付けなかったので、そのせいで、チルウェイヴの影響下から現れたクラウド・ラップというシーンもおそらくは馴染まないだろうと最初から僕は遠ざけていたw。しかし、毎週のようにジェット・セットに行くと、たいていのものは売り切れていくのに、クラウド・ラップでは初のフル・アルバムだといわれるメイン・アトラキオンズは1ヶ月を経過してもぜんぜん売れ残っている。訊いてみると、いち度売り切れて再入荷というわけでもないらしい。いくら半年ばかりデータ先行だったとはいえ、3月のヴィンセント・ラジオでも特集され、あれだけツィッターなどで話題になっているんだから......ツィッターで話題になっているとフィジカルはあんまり売れませんよね、そういえば。

 そこで少し考えた。ウォッシュト・アウトは何もかもが受け付けられないけれど、ひとつの要因としてリズムの貧しさがまずは耐えられない。それぐらいのことが......レイヴ・カルチャー通過後にはなかなかクリアーできなくない。レイヴに突入する以前はあれだけ好きだったレニゲイド・サウンドウェイヴもリズムが単調で聴く気が半減してしまったように、踊るための音楽ではないというイクスキューズがどうあっても成り立たなくっている(エディットが流行る理由はそこでしょう)。リズムが貧しい音楽は、ただ座って聴いていても気持ち悪いことこの上なく、それを補ってあまりあるものがなければ、存在価値があるとは思えない。とりあえず僕は聴けなくなってしまった。

 チルウェイヴに端を発しているとはいえ、クラウド・ラップは曲がりなりにもヒップホップの新潮流である。ということは、下部構造には少しは期待していいのかもしれない。そう思って、メイン・アトラキオンズを視聴用のターンテーブルに乗せてみた。......買わなかった。ははは。

 次の週、やっぱり買ってみた。理由はよくわからない。ジャケット・デザインがちょっとユーモラスだったから? クラムス・カジノが1曲だけプロデュースしていたのも気にはなった(http://www.youtube.com/watch?v=WZ57C53bSNY)。家に帰って、何度か聴き直してみると、ジューク(?)みたいな"ヴェジタブル"とかレゲエ・タッチの"モンダー・モ・マーダー"とかいいのもあったけど、基本的にはアンチコンというか、ドーズワンと同じだなーと思い、そういえばしばらくドーズワンのソロは聴いてないなーと思って検索してみたら、ちょうどサウンドクラウドに昨日アップしたという新曲があり、これが半分を過ぎたあたりからあまりにもユーフォリックなので驚いてしまった。チルウェイヴやクラウド・ラップの醍醐味というものがなんなのかまったくわかっていないので、困ったものだけれど、スモーキーでトベるとか、そういうことなら別にドーズワンの新作でもいいような......

 オッド・フューチャーも、そして、クラウド・ラップに数える人がいる。そうなのか。本当にそうなのか(電気グルーヴ風に)。

 タイラー・ザ・クリエイターやジ・インターネットのアルバムが先行したオッド・フューチャーも例によってイーグルスやレズビアンたちと揉め事を起こしながら、11人総出でクルー・アルバムをリリース。当然のことながら曲調も多岐に及び、PVの世界観を反映したようなフザけた曲調からサイプレス・ヒルのパロディ(?)など、シンプルで乾いたムードを浴びせ続ける(ジ・インターネットやメロウ・ハイプは逆に超ウェットで、むしろいいアクセントになっている)。ジャケットが何種類かあるようだけど、スケーターのルーカス・ヴェルチェッティを使ったものが通常盤らしい(?)。

 それにしても、このフザけ方(http://www.youtube.com/watch?v=fN-xq7t6pKw)は、彼らがまだティーンエイジャーだということもあるだろうけれど(なぜか人体の変形ネタが多い)、ウータン・クランの時期=90年代と違って、貧しいのが黒人だけではないという時代背景も反映しているのではないだろうか。ビル・クリントンによって中道政権が誕生したことによって左翼の位置にいることが難しくなったジェシー・ジャクスンが黒人の最下層を支えていたネイション・オブ・イズラム(同時多発テロ以降、統一教会と合体)に金銭的なサポートの打ち切りを伝えなければならなくなったときと違って、経済格差と人種問題はいまやリンクしなくなっている。それこそカニエ・ウエストがオキュパイNYを支持したところ、「お前は1%だろ」といって追い返されたり、ジェイ・Zとのジョイント・アルバム『ウォッチ・ザ・スローン』でも、満を持して復帰したのに人気が回復しなかったジェイ・Zが金では買えないものがあるとラップする傍から、なんでも買えて嬉しいな~と能天気にラップしていたカニエ・ウエストは不評サクサクと、同じアルバムでも聴きたい部分と聴きたくない部分があるなどと『ニューズウィーク』にも酷評され、金がなくても楽しくやるさという気運が共有される範囲はまったく人種とは重ならなくなっている(......といってる沙汰からオッド・フューチャーがカニエ・ウエストとスタジオ入りしたという情報がw)。

 また、L.A.で銃による抗争を続けているのは、いまや「あぶない刑事」ぐらいで、ひと頃のようなギャング・モードではないという話も聞いたので(いまの流行りはツィッターで示し合わせた人たちが同時に同じデリなどを襲うフラッシュ・モブ)、オッド・フューチャーの表現自体がすでにパロディとしてのそれだという見方もある。すべてを笑いに還元できるわけではないけれど、オッド・フューチャーに関する限り、笑いの要素は少なからず彼らの知性を反映していることはたしかで、そのことがシリアスなかたちで曲になったエンディングなど、とにかく多様な聴き方ができるアルバムである。クラウド・ラップとのつながりはよくわからなかったけど......。

*『ジ・OF・テープス Vol.1』はちなみに2008年にリリースされていて、来月CD化されるらしい(?)。タイラー・ザ・クリエイターのサード・ソロ『ウルフ』も5月リリース予定。

三田 格