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Moritz Von Oswald Trio

Moritz Von Oswald Trio

Horizontal Structures

Honest Jon's/Pヴァイン

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野田 努   Mar 16,2011 UP

 先行リリースされた"リコンストラクチャー2"がバカ格好良かったので楽しみにしていたのだけれど、アルバムは即興演奏によるテクノ・ミニマル・ミュージックとアフリカ、ダブ、ジャズとの接合、そんなところ。とにかく長い。熱心に耳を傾けて音の細部に集中するれば、それなりの物語があるのだろうけれど、子供が絶えずやかましい家で聴いていると、60分のミニマルの旅行はあっという間に終わる。そしてまた再生する......。そしてまたいつの間にか終わっている。そしてまた再生する......そしてまたそしてまたそしてまた......。1曲16分もあるミニマルを集中して聴いていられる環境にいるのは、学生あるいは無職という身分でないのなら、豪邸で自由気ままに暮らすメタルのような芸術家ぐらいしか思いつかないが、いつか自分もそうなれたらと思う。いつかそうなれたら、僕もプログレやアンビエントを楽しもう。

 "リコンストラクチャー2"は、12インチ・シングルで発表された昔ながらのクラブ仕様ということもあって、キックドラムが入っているからわかりやすいと言えばわかりやすい。が、しかし、あの蛇のようなビートのうねりからは並々ならぬ老練さが滲み出ていたし、本来ならリミキサーにオリジナル・ダブステッパーのマーラが抜擢されていることに驚くべきなのだろうけれど、ほとんどB面には針を落とさせないほど強烈な惹きとテンションが"リコンストラクチャー2"にはあった。『ホリゾンタル・ストラクチャーズ』は、そのオリジナル・ヴァージョンにあたる"ストラクチャー2"を収録した60分以上におよぶ作品で、モーリッツ・フォン・オズワルト・トリオ(MVOT)にとって『ヴァーティカル・アセント』に続くオリジナル・セカンド・アルバムとなる。メンバーはモーリッツ・フォン・オズワルト、マックス・ローダーバウアー、サス・リパッティの3人を中心に、ギタリストにポール・セント・ヒラーレ(ティキマン)、ベーシストにジャズ畑のマルク・ミュールバウアーを加えている。

 MVOTの音楽は、即興である。即興音楽におけるレコードとは、作品であり記録であるが、彼らがいったいどういった意図でもって即興をしているのかを僕は知らない。彼らは取材に応えない。リスナーが勝手に想像すればいい、ある意味では彼らは正しい態度を取っている。
 ベースラインの反復からはじまる"ストラクチャー1"は、せっかちな人にはとてもオススメできない。曲の終わりにはアフリカン・ドラムが挿入され場面はドラスティックに変化するが、それまで12分以上もの時間を要する。つまり僕にはこれは、ほとんどプログレに思える。カタルシスを得るためには、長い時間、このミニマリズムとじーっと対峙していなくてはならない。シングルとして既発の"ストラクチャー2"は、そういう点で言えば、最初からリズミカルな刺激を持っている。何よりもヘヴィー級のベースラインが地響きを上げている。そして、15分以上続く機械に制御された正確で淡泊なリズムの反復のうえを、ギターとキーボードは飽きもせずに即興演奏を続けている。"ストラクチャー3"はダブの冒険だが、スタッカートが効いたこの曲からはクラウトロックの混沌を感じる。クラフトワークのファースト・アルバムや初期のクラスターの持っていた落ち着きのない不安定さが続く。僕がもっとも気に入ったのは、細かいパーカッションの発展がユニークな"ストラクチャー4"だが、これが実に20分もある。
 アートワークは、前作のロケットに対して今回は骨。そのドイツ流の(あまり面白くない)ジョークを楽しむように、まあ、なんにせよ、気楽な気持ちで聴いて欲しいということなのだろう。

野田 努