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橋元優歩   Jun 17,2013 UP
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 セント・ヴィンセントを解体してバンドとして再組織するとちょうどティーンのような音になるかもしれない。彼女に解体のモチーフを伝えたら「いいわね、すぐにバラバラにしてちょうだい」なんて言われそうだ。おそらくセント・ヴィンセントの意識そのものをバラバラにしないかぎり、彼女の破片はおそろしい魔物のようにたちまち元のかたちを復帰してしまうだろう。そのくらいセント・ヴィンセントの音楽は強靭で意志的だ。彼女の音楽を聴くということは、フレーズを感じる、リズムやテクスチャーを楽しむ、などというよりも、ほとんど彼女の精神と切り結ぶという行為である。凛々しく、明確な哲学をもって振り下ろされる精神の剣を丁丁発止と受け止め、払う、それが不肖橋元流のセント・ヴィンセントの聴き方。彼女のギター自体も白刃になぞらえるのにふさわしい。それは何というか、同士として正々堂々と手合わせを願うというような、ある意味ではユリとかヅカとかウテナとかそういう世界であって、男性がどんなふうに聴いているのかは興味深いところだ。

 ティーンの音楽はそのように対峙することを求めてくるわけではない。おそらくはセント・ヴィンセントの影響下にあるが、ギター・バンドとしてのダイナミズムが、もっと単純に(純粋に)音楽の楽しみを伝えてくれる。ヒア・ウィ・ゴー・マジックの元メンバーが、妹や友だちと結成したというブルックリンの女性4人組。ほとんど2作めと呼んでよさそうな本EPは、2000年代のエクスペリメンタルを牽引した名門のひとつ、〈カーパーク〉からのリリースだ。ミックスにはダイヴを手がけたダニエル・シュレットを起用。1枚めがソニック・ブームだったのに対し、今作はスペーシーな要素を抑えてガレージ感を強調している。サイケデリックなアンサンブルから甘くドリーミーな風合いがうまく引き出されているのがわかるだろう。これらの条件によって脇も固められており、まず間違いのないアルバムである。

 表題曲"カロリーナ"は、重心の低いギター・リフとオルガン風のシンセがリードするガレージ・サイケ。後半でギター、オルガン、ヴォーカルがリフをユニゾンで唱和する展開、その高揚感は、ガール・バンドが力ではなく知性や繊細な感覚でもって大きなグルーヴを生み出せるということを証している。一方で往年のオルタナ名盤を思わせるような骨太のバンド・アンサンブルを楽しむこともできるが、その対角線上には必ずシンセがミステリアスに揺曳している。スリーター・キニーやハギー・ベアなどのライオットの系譜とは逆方向を向きながら、女性バンドとしての存在感を放つ様子はウォーペイントにも通じる。要は、今日〈4AD〉的な意匠を通過せずに女子バンドが説得力を持つのは難しいということだ。彼女らの音に共感する一方で、快速東京のように頭のいいライオット・ガールが出てきてかっ飛ばしてほしいという気持ちにもなる。

橋元優歩