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The XX

DubstepElectronicHouseIndie DanceIndustrial

The XX

@FUJI ROCK FESTIVAL '13 (White Stage)

July 28th, 2013

与田太郎   Aug 09,2013 UP
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 今年も終わってしまった......。
 フジロックは3日間で100を超すアクトがライヴを繰り広げるのだが、そのなかで毎年いくつかの奇跡のようなステージが生まれている。毎年必ずフジに行く人たちはそのことをよく知っているので、自分のアンテナを最大限に広げ、最高の瞬間の目撃者たろうとがんばるのである。
 それはかならずしもメイン・ステージのヘッドライナーではないし、自分が大好きなアーティストであるわけでもない。普段はあまり聴かないアーティストでも、会場にいてタイムテーブルを眺めていると、妙に気になったりするのだ。
 そしてその予感につられて泥濘んだ山道をえんえん歩いた先にとんでもない瞬間を目撃するのは、このフェスの醍醐味のひとつだろう。

 今年は予想通り3日間断続的な雨に降られはしたものの、オーディエンスは雨などものともしない完全装備であの広い会場を移動していた。まったく目撃することはできなかったが、ライ(Rhye)やマムフォード・アンド・サンズ(Mumford & Sons)、マヤ・ジェイン・コールズ(Maya Jane Coles)そしてウィルコ・ジョンソン(Wilko Johnson)はよかったんじゃないだろうか? 僕は今年それほど多くのステージを観ることはできなかったが、それでもThe XXだけは見逃さなくてほんとによかった、まさに奇跡としか言いようのないステージだったのだ。

E王
The XX
Coexist

Young Turks/ホステス

Amazon iTunes

 彼らのセカンド・アルバム『コエグジスト』が発売になったときには全体のトーンがファーストより落ち着いていたこともあって聴き流してしまい、どうしても自分なりの入り口が見つからなかった。
 しかしその状況は3月ぐらいに一変した。きっかけはユーチューブにアップされたBBCのスタジオ・ライヴで、彼らがカヴァーしていたのは2001年に世界中で大ヒットとなったハウス・ナンバー、キングス・オブ・トゥモロー(Kings Of Tomorrow)の"ファイナリー(Finally)"だった。その解釈のあまりの素晴らしさにドギモを抜かれ、これは『コエグジスト』を完全に聴き逃しているに違いないと、即座にリピート再生を開始した。

 それは界面のあまりの滑らかさに、かえって手触りや特徴を消し去られているような純度の高いアルバムだったと、ようやく発売から半年たってから気がついた。そして4月のコーチェラ、6月のボナルーとグラストンバリーのライヴをユーストやユーチューブで見ると、演奏も歌もファースト発売時より格段にレベルアップしている。まさかこれほど旬な時期に彼らのライヴを観られるとは願ってもないタイミングだ。
 昼間のうちに降った雨の湿気が森に溜まり、照明の光がぼやけた輪郭となって反射するなか、ライヴは"トライ(Try)"からはじまった。まず驚いたのはビートの音色の多彩なことだった。決して音数は多くないリズム・パターンなのに、ひとつひとつの音がほんとによく響いてくる。
 彼等の大きな特徴はダンス・ビートとの絶妙な距離感にある。そう、ダンス・ミュージックそのものを作ろうとはしてないのだ。そうではなく自然とこのビートを感覚で選びとっているのだ。ちょうどユーチューブで"ファイナリー"を発見した頃、同じようにジェイミーがソロ名義でルイ・ダ・シルバ(Rui Da Silva)の"タッチ・ミー(Touch Me)"のカヴァーをやっているのを見つけたことを思い出した。"タッチ・ミー"は2002年に全英でナショナル・チャート初登場2位でランク・インしている。
 彼等にとってティーンネイジャーの入口だった2000年から2002年あたりのイギリスのチャートの半分はダンス・ミュージックだったのである。これから自分はどんな音楽を聴くべきかを彼等が真剣に考えはじめたときに、イギリスでいちばん勢いがあったのがダンス・ミュージックであったことは間違いない。少なくともテレビやラジオからはさまざまなダンス・ミュージックが、毎週トピックになる新譜として流れていたはずだ。だとするならば音楽が彼等にとって大事なものとして意識された時点から、すでにそれはダンス・ミュージックだった。そしてこれは僕の妄想かもしれないけれど、"ファイナリー"と"タッチ・ミー"に共通する存在はダニー・テナグリア(Danny Tenaglia)である。テナグリアのDJで2000年から2005年ぐらいに踊ったことのある人ならすぐわかるだろう。The XXがもしテナグリアやジョン・ジョン・ディグウィードになんらかの影響を受けていたとすれば、彼等のビートの洗練のされ方は納得がいく。
 ステージにはスモークが焚かれ、白を中心とした照明が黒い服を着たロミーとオリバーを照らす。ちょうどライヴの中盤あたりで"ナイト・タイム(Night Time)"、これまでのステージに圧倒され言葉も出ない。ここからの後半さらにふたりのヴォーカルの響きが強さと深さを増した。彼等は孤独を歌っているけれど決して孤独を嘆いてはいない。その部分は変わっていないのだが、彼等の声の響きと演奏から強力な自信と信念が伝わってくる。
 これまで共鳴というかたちで響き合っていたメンバーの関係性がさらに進んで有機的に絡み合っているように思えてならない。もし、彼等が、もしくはロミーとオリバーがより深く向き合ってこのステージを行っているとしたら、いまこのときにしか見ることのできないライヴだ。僕は"シェルター(Shelter)"あたりから、ロミーとオリバーからまったく目が離せなくなってしまった。彼らもオーディエンスの思いに応えるということでなく、オーデェンスもそれぞれの気持ちを重ねるということではなく、目の前に現れた予想を遥かに超えたなにか純粋なものに息を飲むというような瞬間が続く。

 ラストの"エンジェル(Angel)"を終えてステージ袖に消えてゆくロミーとオリバーが手をつないだ瞬間、僕はほんとに胸が締め付けられた。
 もしあのふたりが僕の想像するように向き合っているのなら、これほどまでにピュアな関係性が現実ならば、僕はこの先の彼等に訪れるものを想像して震えてしまう。いやそうではない、終わってほしくない物語がまたひとつはじまったのだ。
 イギリスでは3枚、4枚と続いて進化もしくは深化し、さらにテンションを維持しながらアルバムを作り続けるアーティストはまれである、それはしかたのないことなのだ。しかし彼等なら、次の次元あるいは想像を超えた風景を見せてくれるかもしれない。

The XX "finally"


Jamie XX & Yasmin "touch me"


与田太郎