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Home >  Columns > DJ NOBU @ Berghain- 「ノブ君を〈ベルグハイン〉にブッキングするまで帰って来ないから!」

Columns

DJ NOBU @ Berghain

DJ NOBU @ Berghain

「ノブ君を〈ベルグハイン〉にブッキングするまで帰って来ないから!」

浅沼優子 May 31,2010 UP

マルセルも「グレート!」を連発。ブース目の前に陣取ってるうるさ方の常連さんらもみんな笑顔。「後ろのほうまですごい盛り上がってるよ!」とノブ君に伝 えると、ガッツポーズ! 完全に「オン」になった! 

 アイスランドの火山灰騒動でノブ君のフライトがキャンセルになり、いちどは今回は諦めて何ヶ月後かに仕切り直した方がいいんじゃないかという話も出たほど、直前は大混乱となった。でも結局、ノブ君が少し自腹を切ってでも、航空券を買い直して今回のパーティに出たいというので、慌ててパーティ前日である金曜日に到着する便を手配することになった。本来はローディーも兼ねたふたりの友人と一緒に来るはずだったが、彼らのフライトもキャンセルになったのでノブ君ひとりで来ることになり、重量制限があるので3時間のプレイぎりぎりのレコードしか持って来れなくなってしまった。だから直前、ものすごく慎重に選曲をしてきたようだ。行ったこともないクラブで、他はシェッド、マルセル・デットマン、ベン・クロックというレジデントのみのパーティ。ノブ君は普段から、どんなパーティでもすごくその場所やお客さんのノリ、自分の出番や役割を考えて綿密に選曲をしていることを私は知っている。だから今回などは、本当にいろいろ考えと想像と妄想をめぐらせたに違いない。

 正直、私も不安がなかったわけではない。ノブ君の実力は誰よりも評価しているけど、「あそこ」でそれが発揮できるのかどうか、そしてそれがベルリンの客に伝わるのかどうか。日本全国いろんなパーティを経験したノブ君でも、ベルリンの客を相手にやった経験はない。日本でやっていることをそのままやっても、客が違うので伝わらないかもしれない。でも、逆にベルリンのノリを意識しすぎてノブ君の個性や持ち味が出せなかったら意味がない。そのバランスをどう取ればいいのか、私もわからなかった。ノブ君には、「あとは現場でお客さんの反応を見て判断して」としか言えなかった。

 パーティ当日の夜のノブ君は、いままで見たことがないほど緊張していた。呼ばれた出演者との夕食会も両脇にマルセルとベン、向かいに〈Ostgut-Ton〉のレーベル・マネージャーであり当日〈パノラマ・バー〉のほうでプレイすることになっていたニック・ホップナー、その隣にはレジデントDJでありブッキング・マネージャーであるアンディ・バウメカー、シェッドを含む〈ハードワックス〉のスタッフ、そんな彼らと個人的に仲がいいライアン・エリオット、〈Ostgut〉のブッキング・スタッフ、とイカツイ面子がずらりと揃っていて、私ですら緊張した(笑)。ノブ君の出演時間である3時よりもだいぶ早めに、1時頃には会場に入った。夕方じっくりサウンドチェックもしたが、やはり営業時間の雰囲気、音の鳴りはその場に行ってみないとわからない。

 トップバッターだったシェッドがプレイしていたが、フロアはがらがらだった。普段から客足は遅い方だが、それにしても人が少なかった。火山灰騒動で多くの格安航空便がキャンセルになり、観光客が少なかったからだと思われる。これほど人が少ないのは予想外。シェッドも淡々とウォームアップをしている感じ。ノブ君は緊張顔でソワソワ。ところが交代30分前くらいになって、シェッドがピッチもボリュームも上げ出して、いっきに客も踊りはじめた。そして急激にテンションを上げ切ったところでノブ君に交代。それでもガチガチに顔がこわばっているノブ君(あんな顔見たことない!)に、「いつものノブ君らしくやれば、絶対大丈夫だから!」と最後に言った。心なしか、お客さんもこの無名の日本人DJがどうくるのか、好奇心をもってこちらを見ているようだった。いつの間にかマルセルやその友だちの常連さんたちがブースの前に集合していた。

 ノブ君のプレイがはじまった。最初の30分は、恐る恐るという感じが伝わって来た。でも〈ベルグハイン〉の客にはなじみ深い〈Ostgut-Ton〉のレコードをノブ君のセンスでプレイし、お客さんも少し安心したようだった。明らかにフロアに人が増え、みんなが踊っていた。最初の30分が問題なく過ぎたので、ブースから出てフロアを偵察しに行った。バッチリ。後ろのほうのお立ち台上のマッチョのゲイたちもがっつり踊っている! この人たちを踊らせたら、〈ベルグハイン〉のフロアは制したも同然。ブース内のマルセルも踊りまくっている! 「みんな踊ってるよ!!」とノブ君に言いにいくと、少し緊張が解けたような笑顔になった。開始1時間で、このクラブの要領とお客さんのノリは掴んだようだった。さすが。

 〈ベルグハイン〉のノリは掴んだようだったけど、まだノブ君らしさは発揮されていなかった。まだ硬かった。いつもの伸び伸びとした感じがない。せっかく日本から来てるのに、「他の〈ベルグハイン〉のDJたち」と同じことをやっても仕方がない。〈ベルグハイン〉の世界観を理解しながら、そのなかでどれだけ自分らしく遊べるかどうか。そう考えるとやはりDJにとって難しいハコだと思う。しかし4時を過ぎた頃から、フロアは満員、がっつりと客がついてきている手応え。マルセルも「グレート!」を連発。ブース目の前に陣取ってるうるさ方の常連さんらもみんな笑顔。「後ろのほうまですごい盛り上がってるよ!」とノブ君に伝えると、ガッツポーズ! 完全に「オン」になった! そこで1回、「やったね」の硬い握手をしたのを覚えている。そこからは、いつものノブ君。とくに最後の1時間は本当に楽しそうにプレイしていたし、それがフロアにも伝わって最高潮の盛り上がりを見せた。一緒に夕食を食べた面々も、納得の表情。この夜の主賓であるマルセルがめちゃくちゃ楽しそうに踊っていたことが、何よりの証拠だった。

 後半はあっという間に過ぎて、気づけばもう6時。マルセルと交代の時間だ。交代前に、この日にリリースされた『Dettmann』アルバムの3枚組LPをマルセルが持って来てノブ君に渡した。そしてノブ君最後の1曲が終わるといちど音を止めて、お客さんに紹介するようにノブ君に拍手を送った。あっという間に、私のひとつの「夢」だった"DJ NOBU @ Berghain"は終わっていた。ぶっちゃけ、終わる頃には相当酔っぱらっていた(笑)。だから、その後のことはあまり覚えていない。後は遊んだだけ。ノブ君もめいっぱい遊んでいた。何人かが私のところに、「NOBUがすごく楽しそうにフロアで踊ってるよ!」と言いに来たほどだ。プレイを終えて初めて、ノブ君は〈ベルグハイン〉の客の感覚をフロアで味わっていた。最強のレジデント、マルセル・デットマンとベン・クロックのプレイを彼らのホームグラウンドで体験していた。

 さすがに昼くらいで帰るだろうと思っていたのだが、結局午後3時過ぎ、〈ベルグハイン〉の音が止まるまでいてしまった。上階の〈パノラマ・バー〉は、まだまだそこから夜中まで続くのだが、〈ベルグハイン〉を味わい尽くしたところでこの日は満足。ほとんど〈パノラマ・バー〉をチェックしにも行かなかったが、どうやら〈ベルグハイン〉のほうに客が集中していたようだ。昼くらいまでいた私の友人は、「NOBUのときがお客さんの入りも盛り上がりもピークだった」と言っていた。私はそれ以降の記憶があやふやなのでどうだったか判断できないが、ノブ君が「〈ベルグハイン〉のためのDJ NOBUセット」を絶妙なバランスでプレイし、それが読み通りの反応を得たことはたしかだと思う。ノブ君のセットの終盤、私は酔っぱらいながら「this is one of the happiest moments of my life!」といろんな人に言いまくっていたことも記憶している。本当に鼻が高かったから!

 ありがとう、ノブ君。
 そして、またやりましょう!

浅沼優子

DJ Nobu Current Chart

  • Juju & Jordash / Deep Blue Meanies / Dekmantel
  • Mirko Loko / Tahktok (Villalobos Hilery's Chant Remix - Edit) / Cadenza
  • Claro Intelecto / Back In The Day / Modern Love
  • Marcel Dettmann / Dettmann / Ostgut Ton
  • Mike Parker / GPH14 / Geophone
  • Dasha Rush / Sonic State / Sonic Groove
  • James Kumo / Kumomusic Vol.1 / Delsin
  • Crue-L Ground ohcestra / Endbeginning(NOBU'S DUB) / Crue-L
  • Peter Van Hoesen / Entropic Minus Six / Time To Express
  • ??? / Desperation / Do Not Resist Beat!
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Profile

浅沼優子浅沼優子/Yuko Asanuma
フリーランス音楽ライター/通訳/翻訳家。複数の雑誌、ウェブサイトに執筆している他、歌詞の対訳や書籍の翻訳や映像作品の字幕制作なども手がける。ポリシーは「徹底現場主義」。現場で鍛えた耳と足腰には自信アリ。ディープでグルーヴィーな音楽はだいたい好き。2009年8月に東京からベルリンに拠点を移し、アーティストのマネージメントやブッキングも行っている。

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