「SXSW」と一致するもの

Beatie Wolfe and Brian Eno - ele-king

 3月にアルバム『AURUM』をリリースしたばかりのブライアン・イーノ。さらなる新作情報です。これまでもさまざまな音楽かとコラボしてきたコンセプチュアル・アーティスト、ビーティー・ウルフとの共作2枚、『Luminal』と『Lateral』が本日6月6日に2枚同時リリース。あわせて、『Luminal』より収録曲 “Play On” のミュージック・ヴィデオも公開されている。

 また、ブライアン・イーノといえば、観るたびに構成や内容が変化するジェネレイティヴ・ドキュメンタリー映画『Eno』(監督はギャリー・ハストウィット)がいよいよ日本でも公開となる。すでにソールド・アウトとなっている6月21日のプレミア上映を皮切りに、東名阪の109シネマズにて7月11日から期間限定で上演。巨匠の新たな試みを体感できるまたとない機会、ぜひお見逃しなく。予告編、詳細は以下より。

Artist : Beatie Wolfe and Brian Eno
Title: Luminal
Release Date:2025.6.6
Label : Verve / BEAT
Format : CD / Vinyl / Digital
Buy / Stream : https://BeatieWolfe-BrianEno.lnk.to/LUMINAL

Tracklist:

1. Milky Sleep
2. Hopelessly At Ease
3. My Lovely Days
4. Play On
5. Shhh
6. Suddenly
7. A Ceiling and a Lifeboat
8. And Live Again
9. Breath March
10. Never Was It Now
11. What We Are

Artist : Beatie Wolfe and Brian Eno
Title: Lateral
Release Date:2025.6.6
Label : Verve / BEAT
Format : CD / Vinyl / Digital
Buy / Stream : https://brianeno-beatiewolfe.lnk.to/LATERAL

Tracklist:

CD:
1. Big Empty Country

Vinyl:
1. Big Empty Country (Day)
2. Big Empty Country (Night)

Digital:
1. Big Empty Country Pt. I
2. Big Empty Country Pt. II
3. Big Empty Country Pt. III
4. Big Empty Country Pt. IV
5. Big Empty Country Pt. V
6. Big Empty Country Pt. VI
7. Big Empty Country Pt. VII
8. Big Empty Country Pt. VIII

アンビエントの巨匠ブライアン・イーノとコンセプチュアル・アーティストのビーティー・ウルフによる新たなコラボレーション・アルバム『Luminal』と『Lateral』がヴァーヴ・レコーズより本日リリースされた。『Luminal』から「Play On」のミュージック・ビデオが公開となっている。

イーノとウルフの出会いは2022年の音楽祭・映画祭・インタラクティブ・フェスティバルなどを組み合わせた大規模イベント、サウス・バイ・サウス・ウエスト(SXSW)にさかのぼる。二人はSXSWにて「アートと気候(Art and Climate)」と題して特別講演を行い、この公演はSXSWの25年間の歴史の中でベスト・トークの一つに選ばれた。
その後、二人はそれぞれロンドンの別々のギャラリーでビジュアル・アートやコンセプチュアル・アートの作品を展示していたときに再会し、音楽的なコラボレーションが生まれた。

 イーノはニュー・シングル「Play On」について
「この曲は私たちを不思議な場所へ連れて行ってくれました。全く相容れない感情が、落ち着きのない仲間になる場所です。怒りと恍惚、ある種の力と混ざり合った絶望、そしてある種の喜び。この複雑な感情を表す言葉はあるのでしょうか?たとえ言葉がなくても、今やそれを表現する音楽が産まれています」
と語った。

また、イーノとウルフは、2024年まで散発的にレコーディングされたこのプロジェクトでのコラボレーションを振り返って、次のように語っている。

==
音楽は感情を喚起するものです。その感情の中には、馴染みのあるものもあれば、そうでないもの、あるいは複数の異なる感情が複雑に混ざり合ったものもあります。他の言語や文化には、そのような感情を表す美しい言葉がたくさんあります。そう、英語にはない言葉です。感情に名前をつけることで、私たちはその感情をより感じやすく、より具体的にすることができます。アートは、私たちがこれまで感じたことのないような感情や、あるいは感情の混ざり合いを引き起こすことができます。このように、アート作品は、ある種のフィーリングの「母」となり、そのフィーリングを見つけ、再体験するための場所になり得るのです。私たちが取り組んだ感情の中には、次のようなものがありました・・・。

Ailyak (ブルガリア語)・・・ゆっくりと、プロセスを楽しむこと
Commuovere (イタリア語)・・・感動すること
Dor (ルーマニア語)・・・あこがれ、帰属意識
Duende (スペイン語)・・・ゾクゾクすること
Feath (ゲール語)・・・静寂、平和
Gezelligheid (オランダ語)・・・温かい親密さ Ilinx (フランス語) ・・・遊びによる不思議な興奮
Jijivisha (サンスクリット語)・・・人生を全うすること
Liget (フィリピン語)・・・燃えるようなエネルギー、生命の輝き
Merak (セルビア語)・・・宇宙と一体になること
Meraki (ギリシャ語)・・・何かに没頭すること
Mono no aware (日本語)・・・人生のはかなさに感謝すること
Onsra (ボロ語)・・・愛を失うことを予期すること
Pronoia(ギリシャ語)・・・パラノイアの反対の意
Sisu (フィンランド語)・・・決意、気概
Torschlusspanik (ドイツ語)・・・時間がなくなることへの恐怖
Ya'aburnee (アラビア語)・・・誰かがいない世界で生きたくないということ
==

そして、ブライアン・イーノのジェネレイティヴ・ドキュメンタリー映画『Eno』が日本国内での上映が迫っている。ギャリー・ハストウィット監督による『Eno』は、ブライアン・イーノへの長時間のインタビュー、そして500時間を超える貴重なアーカイブ映像を組み合わせ、アーティストのブレンダン・ドーズと共同開発した自動生成システム「Brain One(ブライアン・イーノのアナグラム)」を導入。観るたびに構成や内容が変化する映画の常識を覆す全く新しい体験を実現した。そんな映画『Eno』がついに日本初上陸を果たす。なお、アジア圏での劇場上映はこれが初となる。

監督:ギャリー・ハストウィット
字幕翻訳:坂本麻里子 / 字幕監修:ピーター・バラカン
配給:東急レクリエーション / ビートインク
サイト:https://enofilm.jp/

THEATER
劇場・上映スケジュール・チケット情報

■ 上映スケジュール
特別プレミア上映(トークイベント付き) *SOLD OUT
【会場】109シネマズプレミアム新宿 シアター7
【日時】2025年6月21日(土)
【登壇者】ギャリー・ハストウィット監督 × ピーター・バラカン(トークショーあり)
※特別プレミア上映は1回目と2回目でそれぞれ別のヴァージョンとなります。

一般上映
109シネマズプレミアム新宿 シアター7
【期間】2025年7月11日(金)~ 7月17日(木)

109シネマズ名古屋 シアター4
【上映日】2025年7月12日(土)、7月13日(日) ※土日限定上映

109シネマズ大阪エキスポシティ シアター5
【上映日】2025年7月12日(土)、7月13日(日) ※土日限定上映

【チケット販売URL】 https://eplus.jp/eno/

yahyel - ele-king

 次世代を担うバンドとして彼らが浮上してきたのが2010年代半ば。その後2018年にセカンド・アルバム『Human』で大いに飛躍を遂げた東京の4人組、ヤイエルが5年ぶりに帰ってきた。
 この間、ほんとうにいろんなことが起こった。敏感なアンテナを有する彼らもまた、それぞれに思うところがあったにちがいない。はたしてそれは、どのように音楽へと昇華されたのだろうか。
 まずは3月8日、『Loves & Cults』と題されたひさびさのアルバムがリリースされる。その後3月下旬から4月頭にかけ、名古屋、梅田、渋谷の3年を巡回。ヤイエルの新たな船出に注目したい。

先日アナウンスされたyahyel5年振り最新作「Loves & Cults」のアートワークとトラックリストが公開された。そして、同時発表を行った名古屋、大阪、東京を巡るリリース・ツアーの前売り一般チケットも本日から発売開始する。

“Loves & Cults” は、加熱した時代、愛と狂信の望まない類似性をテーマにしたアルバムとなっている。人間の不確かさを巡る、誠実さへの問いかけはyahyelの脈々と通底するテーマ。しかし同時に、今作がこの5年間の間に、人間が新たに生み出した怪物に向き合っているという意味で、”群れ”の中の人間の視座が新たに加味されている。それは結果的に、かつてのような個々を重んじるプレイヤーの集まりとしてではなく、摩擦の先にある、バンド(≒小社会)”yahyel”しか鳴らせない音像として結実することとなった。”Loves & Cults”は、まさに長い時間をかけて固まっていった大陸のような作品であり、その歪で予定調和のない造形の中に込められた対話への願いが、異質なリアリティとして浮き上がる”怪作”となっている。愛と狂信の境界はどこか。2023年のyahyelに注目だ。

■作品概要
Artist : yahyel
Title : Loves & Cults
Label : LOVE/CULT
Date : 2023.3.8[ Wed ]
Cat # : LC004 ※Digital Only

Tracklist
01. Cult
02. Karma
03. Highway
04. ID
05. Mine
06. Sheep
07. Slow
08. Eve
09. Four
10. Love
11. kyokou

■作品紹介
東京を中心に活動するyahyelが5年の歳月をかけた最新作”Loves & Cults”をリリースする。
2015年に忽然と現れたyahyelは、10年代のポストダブステップ的な感性、出自など関係ないような独特のボーカルライン、猟奇的なライブパフォーマンス、予想外の映像作品など当時の真新しいアイディアを詰め込んだ特異な存在だった。”日本の音楽≒J-Pop”という呪いにかかった東京の街へのアンチテーゼは、”破竹の勢い”とも形容されるほどだった。

そして、世界的なパンデミックを目前にした2019年、yahyelは突然の沈黙に入る。

本人が”糸口の見えない世界の混沌に滅入っていた”と認めるように、 社会と音楽の一進一退の歩みは、彼らにそれだけのインパクトを残したものだった。再定義、線引き、分裂、その中での希望と失望。社会=共同体が、それぞれの正義を掲げて両極化に突き進んだ赤い熱の時代。双方の主張はフェイクニュースと断じられ、仮想敵はカルトじみた存在に仕立てられ、身内はラブの名の下に扇動される。
人の、あらゆる事象への執着が愛から来るものなのか狂信からくるものかは、あくまで不完全な自我が生み出す主観的な感覚でしかなく、社会という相対性の中では非常に脆いものである。音楽という営みなど、カウンターの霞に追いやられ、もれなくyahyelもその問題に向き合っていく。
バンドを小さな共同体として見た場合、我々は一つの社会として何を結論づけるのか。なぜ、我々はここで音を鳴らすのか。“Loves & Cults”は愛と狂信の表裏一体さを意識せずにはいられない、それでも人と人が対話をするという理想を捨てきれない、人間の”群れ”の中に傍観者として立ち尽くすことの憂鬱をテーマにした作品となっている。

おどろおどろしい合唱とサイバーな儀式のような狂騒が印象的なオープニング曲 ”Cult”では、痛烈にカルトじみた世相を皮肉りながらも、その混沌とした音像は迷いの中に立ち尽くしている。アルバムのストーリーはすでにシングルカットされている”Highway”、”ID”などを通過しながら、形而上学的な問いの中で、骨太で90年代のアートロックのような文脈で深まっていく。完全なロックチューンとなった”Four”は、まさにこの時期のyahyelの進化を如実に表しており、”4人でバンドとして音楽をする”ということに対するアンサーになっているともとれるだろう。個人主義から共同体へという流れはまさに20年代らしいが、その結論が一筋縄ではいかないのがyahyelらしく、バンドのリアリティを内包しているとも言えるのかもしれない。そして、アルバムのストーリーは一つの臨界点、アンセム”Love”へと導かれる。アルバムタイトルにある通り、”Cult”への皮肉から始まった物語は、”Love”は何なのかという問いを残して終わるのだ。

yahyelの作品は、3作目となった今でも一貫したテーマを周回している。それは人間の不確かさを巡る、誠実さへの問いかけである。今作がこの5年間の間に、人間が新たに生み出した怪物に向き合っているという意味で、時代に対するyahyelの解答ということにもなるだろう。それは結果的に、かつてのような個々を重んじるプレイヤーの集まりとしてではなく、摩擦の先にある、バンド(≒共同体)”yahyel”しか鳴らせない音像として結実している。”Loves & Cults”は、まさに長い時間をかけて固まっていった大陸のような作品であり、その歪で予定調和のない造形の中に込められた願いが、異質なリアリティとして浮き上がる”怪作”となっている。

■ツアー情報
yahyel "Loves & Cults" Album release tour

2023年3月22日(水)
名古屋 CLUB QUATTRO
18:45 開場/ 19:30 開演
ぴあ : https://w.pia.jp/t/yahyel/
ローソン : 42590
イープラス : https://onl.tw/uf6EcBc

2023年3月23日(木)
梅田 CLUB QUATTRO
18:45 開場/ 19:30 開演
ぴあ : https://w.pia.jp/t/yahyel/
ローソン : 56616
イープラス : https://onl.tw/uf6EcBc

2023年4月5日(水)
渋谷 WWWX
18:30 開場/ 19:30 開演
ぴあ : https://w.pia.jp/t/yahyel/
ローソン : 75386
イープラス : https://onl.tw/uf6EcBc

■yahyel profile :
2015年東京で結成。池貝峻、篠田ミル、大井一彌、山田健人の4人編成。エレクトロニックをベースとしたサウンド、ボーカルを担当する池貝の美しいハイトーンボイス、映像作家としても活躍する山田の映像演出を含むアグレッシブなライブパフォーマンスで注目を集める。2016年、ロンドンの老舗ROUGH TRADEを含む全5箇所での欧州ツアー、フジロックフェスティバル〈Rookie A Go Go〉ステージへの出演を経て、11月にデビュー・アルバム『Flesh and Blood』を発表。翌2017年には、フジロックフェスティバル〈Red Murquee〉ステージに出演、さらにWarpaint、Mount Kimbie、alt-Jら海外アーティストの来日ツアーをサポートし、2018年3月に、さらに進化した彼らが自身のアイデンティティを突き詰め、よりクリアで強固なものとして具現化することに挑んだセカンドアルバム『Human』をリリース。その直後のSXSW出演を経て、フランスのフェス、韓国・中国に渡るアジアツアー、SUMMER SONICなどに出演。同9月にはシングル「TAO」をリリース。楽曲、ミュージックビデオの両方を通じて、yahyelの芸術表現が完全に別次元に突入したことを証明した。同じく11月には水曜日のカンパネラとのコラボ楽曲「生きろ」をリリース。2019年には再びSXSWに出演、米NPR、英CRASH Magazineなど数多くの海外メディアに紹介される。パンデミックの最中に開催された2020年のワンマンライブを最後に、突然の沈黙期に入ったyahyelは、扇情と混沌のユーフォリアから起き上がろうとする2023 年の世界に呼応するように、新たなフェーズへの密かな胎動を繰り返している。

interview with Fieh (Sofie Tollefsbøl) - ele-king

日本のメディアでインタヴューができるなんてとても嬉しい!

 2017年にノルウェーから登場してきた7人組バンドの FIEH(フィア)。リード・シンガーのソフィー・トレフスビョルの柔らかなヴォーカルをフロントに立て、都会的でジャジーな肌触りの演奏やドリーミーな雰囲気を醸し出すコーラスをまとい、2019年にリリースしたデビュー・アルバムの『コールド・ウォーター・バーニング・スキン』は、ハイエイタス・カイヨーテムーンチャイルドに続く新世代のネオ・ソウル・バンドと評価された。その後、このアルバムのUKでの発売元が〈デッカ〉だった関係で、〈ブルーノート〉のカヴァー・プロジェクトの『ブルーノート・リ:イマジンド・2020』に参加してウェイン・ショーターの “アルマゲドン” をカヴァーするなど、注目を集める存在へ着々と進んでいく。そうして発表したセカンド・アルバムが『イン・ザ・サン・イン・ザ・レイン』である。

 『イン・ザ・サン・イン・ザ・レイン』には前作にあったネオ・ソウルやヒップホップ/R&B的な路線も存在するが、ほかにもインディ・ポップやポップ・ロック、シンセ・ポップ的な要素もあり、全体としてとてもヴァラエティに富んだカラフルなアルバムとなっている。タイプとしてはハイエイタス・カイヨーテのアルバムに近い印象なのだが、バンドとしての進化や音楽性の拡大を感じさせる作品である。そして、そこにはプロデューサーとして参加したジャガ・ジャジストのラーシュ・ホーンヴェットや、エンジニアとして参加したラッセル・エルヴァド(ディアンジェロの『ヴードゥー』はじめザ・ルーツの作品などを手掛けてきた)の存在も見え隠れする。今回のインタヴューはそんなフィアの誕生から現在に至る道程、そして『イン・ザ・サン・イン・ザ・レイン』についてなどを、グループの中心人物であるソフィー・トレフスビョルに訊いた。

シーンの全員が全員を知っている感じね。ジャガ・ジャジストのラーシュ・ホーンヴェットは私たちのアルバムをプロデュースしてくれたし、もちろん繋がりを感じる。

フィアは日本ではほぼ初めて紹介されるバンドですので、まずはバンドの結成から伺います。いつ頃、どのようなメンバーがどのように集まり、フィアは結成されていったのですか?

ソフィー・トレフスビョル(以下ソフィー):そうね、日本のメディアでインタヴューができるなんてとても嬉しい! 最初フィアがスタートしたときは私ひとりだったんだよね。もともとガレージバンドやロジックなどの音楽ソフトを使ってひとりで曲を作っていたんだけど、それらの曲をほかのバンドをやってる友だちとかに聴いてもらって。そのなかにいまフィアでベースとドラムを担当しているアンドレアス(・ルーカン)とオラ(・エーヴェルビィ)もいたんだよね。それで彼らが組んでた別のバンドで出演したライヴで私が作った曲を数曲演奏して。そのライヴがとっても良い感じだったから、これはもうバンドにするしかないでしょ! って感じではじまった。

フィア(Fieh)という名前はどこからきているのですか?

ソフィー:最初の曲を配信しようと考えたときに、アーティスト名が必要だと気づいたんだ。この名前についてはラッパーのナズに影響を受けたと思う。彼の本名は「Nasir」って言うんだけど、私も彼のように自分の名前からもじろうと思って。私の名前は「Sofie」だから「Fie」はそこから取って、残りの “h” がエリカ・バドゥを真似たんだ。彼女の本名は「Erica」だけど、アーティスト・ネームでは “h” が「Erykah」の最後についてるでしょ。だから私も “h” を付け加えて、「Fieh」にしたってわけ(笑)。

ソフィーさんはバンドのリード・シンガーですが、あなた自身の音楽キャリアはどのようにはじまりましたか? 幼少のころに好きだった音楽や影響を受けたアーティストなどについても教えてください。

ソフィー:私がピアノをはじめたのは10歳のときだった。私には兄がいるんだけど、当時その兄はギタリストでブルースをよく弾いていたのね。ブルースのコンサートやフェスティヴァルにも連れてってもらった。彼はほかにもソウルを教えてくれた。アレサ・フランクリンとかレイ・チャールズとかをね。だから私は子供の頃はブルースやソウルが好きだった。それから小学校を通してカニエ・ウェスト、ファレル、スヌープ・ドッグ、アウトキャストとかのヒップホップにも夢中になった。その後高校生のときにレッド・ツェッペリンとかザ・ドアーズとかのロックにハマった時期があったし、ほかにも高校時代はレッド・ホット・チリ・ペッパーズの大ファンになった。いまでも大好きなんだけどね。私が歌いはじめたのはバンドと出会った頃だから17歳くらいかな。その頃は同時にディアンジェロ、J・ディラ、エリカ・バドゥ、ザ・ルーツのようなR&Bやネオ・ソウル、ヒップホップのアーティストにもとても興味があったんだけど、それからオスロ音楽アカデミーに通いはじめてジャズの沼にハマりはじめたのよね。特にジョン・コルトレーン、アリス・コルトレーン、セロニアス・モンク、ジャッキー・バイアードとかがお気に入りかな。いままであげてきたアーティストはいまでも大好きだし、ほかにも最近だとビョーク、ケイト・ブッシュ、シュギー・オーティスやソランジュとかにハマってる!

フィアはノルウェーのオスロを拠点に活動していますが、オスロ及びノルウェーの音楽シーンの状況はいまどんな感じですか? 日本にはリンドストロームプリンス・トーマスといったニュー・ディスコ系のDJ/プロデューサーの情報などは断片的に入ってきますが、全体としては情報量が多くはないので、あなたたち周辺の音楽シーンの状況を教えていただければと思います。

ソフィー:リンドストロームとプリンス・トーマスは最高! ノルウェーには世界的に活躍しているポップ・アーティストとしてオーロラとシグリッド、ガール・イン・レッドがいて、有名なエレクトロニック・アーティストとしてはいま言ったリンドストロームとプリンス・トーマスのほかにロイクソップがいる感じかな。オスロのジャズ・シーンは世界でも私が知る限りでベストだと思う。とにかく多様性があって、いろんなバンドがジャンルの垣根を超えた音楽を作ってて。例えばジャズと伝統的なノルウェーの音楽をミックスしたりして、ジャズとポップ、ジャズとロック、ジャズとエレクトロニカとかいろいろなジャンルが混じってるのがオスロのジャズ・シーンの特徴だと思う。マサヴァ(Masåva)とホワイ・カイ(Why Kai)は特にお気に入りだからチェックしてみてね。フィアのメンバーもそれぞれクールなバンドをほかにもやっていたりする。ソルウァイ(・ワン)はナッシング・パーソナル(Nothing Personal)というエレクトロ・トリオ、アンドレアス(・ルーカン)はタイガーステイト(Tigerstate)というインディー・バンド、さっきも紹介したホワイ・カイは(『イン・ザ・サン・イン・ザ・レイン』のレコーディング後にフィアに参加した新メンバーの)カイ(・フォン・ダー・リッペ)のジャズ/エレクトロニカのソロ・プロジェクトだし、オラ(・エーヴェルビィ)はダマタ(Damata)というジャズ・トリオでもプレイしていて、リーデ(・エーヴェレオス・ロード)は彼のソロ・ジャズ・アルバムを2019年にリリースしてる。

フランク・オーシャンの “ピラミッズ” とかかな。あの曲の変調の仕方と完全にふたつの別のパートが一曲のなかで混合している感じがめちゃくちゃ最高で。リリースされたときバンドのみんなと一緒に聴いたのを覚えているんだけど、めちゃくちゃ衝撃的だった。全然予想もしていなかった、見知らぬ場所で突然に旅がはじまる感じね。

周りに仲のいいアーティストやバンドなどはいますか?

ソフィー:もちろん! オスロを拠点にしている友達だとポン・ポコ(Pom Poko)、モール・ガール(Mall Girl)、テア・ウォン(Thea Wang)、ベハーリ(Beharie)、ホワイ・カイ、ナッシング・パーソナル、タイガーステイト、ダマタとかいて、みんなクールなアーティストだよ!

トランペットのリーデ(・エーヴェレオス・ロード)さんはほかにもいろいろなバンドやプロジェクトで活動していますね。モザンビークというジャズ・バンドで演奏していたり、〈ジャズランド・レコーディングス〉から先ほど話されたソロ・アルバムを出すなど、メンバーのなかでは比較的ジャズのバックグラウンドが強い人のようですが、彼はどんなプレーヤーですか?

ソフィー:その通り! リーデとはオスロ音楽アカデミーでジャズを学んでいたときに出会った。リーデは最高なジャズ・トランペッターね。とにかく名人って感じだし、彼が出すアイデアもいつも最高で。私たちの曲にも間違いなく彼のテイストが色濃く出ていると思うし、ロイ・ハーグローヴ的なジャズのエッセンスは彼のお陰。ちなみに彼はステージ上では素晴らしいダンサーでもあり、パーカッションもできる。一緒にいて楽しいし、彼と一緒に音楽をプレイしているときは最高な気分になれる。

そうしたジャズの話では、ブッゲ・ウェッセルトフトなどを擁する〈ジャズランド・レコーディングス〉は、いまから20年ほど前に「フューチャー・ジャズ」という新しいジャズのムーヴメントを担うレーベルでした。ほかにもジャガ・ジャジストやニルス・ペッター・モルヴェルが世界的に活躍するなど、ジャズの世界におけるノルウェーは非常に興味深い存在です。リーデさんもそうしたノルウェーのジャズ・シーンの影響を受け、それはフィアにもフィードバックされていたりしますか?

ソフィー:リーデ自身のプレイも、彼のソロ・プロジェクトも、そしてフィアもノルウェーのジャズ・シーンの一部だと思っている。さっきも言ったけどノルウェーのジャズ・シーンが大好きだし、つねにクールなことが起こっている刺激的なシーンだから、その一部になれるのは嬉しいし、クールだけど小さなシーンでもあるから、シーンの全員が全員を知っている感じね。ジャガ・ジャジストのラーシュ・ホーンヴェットは私たちのアルバムをプロデュースしてくれたし、もちろん繋がりを感じる。

フィアの歩みに戻りますが、2019年にファースト・アルバムの『コールド・ウォーター・バーニング・スキン』を発表します。ジャズ・ファンクやファンク、ソウルなどがブレンドされたクロスオーヴァーな作風で、ソフィーさんの歌を中心としたグルーヴィーな演奏を聴かせてくれます。全体的にはネオ・ソウルの要素が強いアルバムですが、どのようなイメージでこのアルバムは作られましたか? 個人的にはオーストラリアのハイエイタス・カイヨーテとかアメリカのムーンチャイルドあたりに近い印象を持ったのですが。

ソフィー:デビュー・アルバムは何年もプレイしてきた楽曲をまとめたコンピレーションのようなアルバムだったんだけど、ディアンジェロとエリカ・バドゥにかなり影響も受けたアルバムだと思う。言ってくれた通り、ハイエイタス・カイヨーテにも影響は受けていると思うね。このアルバムはなんていうか私たちの最初の子供って感じかな。“25” とかは本当にバンドがはじまった頃からずっと演奏し続けている曲なんだよね。

“サムライ(Samurai)” という曲が収録されていますが、これは日本の侍が出てくる映画とかアニメにインスパイアされているのですか?

ソフィー:このタイトルはクエンティン・タランティーノの映画『キル・ビル』に出てくるザ・ブライドとオーレン石井の剣を使った戦闘シーンにインスパイアされてつけた。日本の映画からじゃなくてちょっとガッカリさせちゃったかな(笑)。ごめん(笑)。でも、この映画は確実に日本から影響を受けているはず(注:千葉真一はじめ日本の俳優が数名出演するほか、梶芽衣子主演の『修羅雪姫』など日本映画やブルース・リーの『死亡遊戯』など香港映画、台湾映画のオマージュが散りばめられている)。コロナの影響で家にいる時間が多くなったからいくつか日本のアニメを見たりもしたんだけど、私は『食戟のソーマ』が大好き。次のアルバムには『食戟のソーマ』に影響された曲が収録されるかも(笑)。

その後、2020年に〈ブルーノート〉のカヴァー・プロジェクトの『ブルーノート・リ:イマジンド・2020』に参加しますね。基本的にサウス・ロンドンのミュージシャンが中心となったこのプロジェクトに、どうしてオスロのあなたがたたちが参加するようになったのですか?

ソフィー:そのときはイギリスの〈デッカ〉からファースト・アルバムをリリースしていたから、彼らが〈ブルーノート〉のアルバムに参加できるようにしてくれたのよね(注:現在〈デッカ〉と〈ブルーノート〉は同じ〈ユニバーサル〉グループに属する)。本当にクールなことだったし、〈ブルーノート〉と関連する仕事ができたのは本当に光栄に思っている!

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この曲ではかなりファンカデリックからの影響を受けているよ。この曲を作るとき私はドラマーのオラにファンカデリックのグルーヴがほしいよ! って注文したら彼がやってくれた。というかあなたがこの曲を聴いて感じてくれたみたいだけど、実際に私たちはこの曲の後半の部分を「フライロー」(フライング・ロータスの愛称)って呼んでた(笑)。かなり的確ね(笑)。

新作の『In The Sun In The Rain』について話を伺います。先ほど話に出たようにジャガ・ジャジストのラーシュ・ホーンヴェットがプロデュースを務めていますが、彼はどのようないきさつで参加することになったのですか?

ソフィー:このアルバムにはプロデューサーが必要だと感じていて、みんなラーシュは素晴らしいアイデアを幾つも持った凄腕プロデューサーだと知っていた。私たちのなかにラーシュと知り合いだったメンバーはいなかったけど、それでも思い切ってお願いしたんだ。

エンジニアにはディアンジェロやザ・ルーツを手掛けたラッセル・エルヴァドを迎えています。それでネオ・ソウル色が強まるのかと思いきや、逆にそうしたテイストは後退し、“ルーフトップ” や “ファスト・フード” あたりに顕著なインディ・ポップやシンセ・ポップといった要素が出てきたり、音楽的には前作と比べて非常にカラフルでヴァラエティに富む内容になっていると思います。前作からバンドの中で何か変化があったのでしょうか?

ソフィー:そうね、このアルバムはデビュー・アルバムとは全然違う方法で制作した。デビュー・アルバムではもともとの持ち曲がライヴやセッションをしているうちにどんどんと進化していったって感じだけど、今回はちょっと違っていて、アルバム全体としてのサウンドを作ることがとても重要だった。だから「カラフル」って言ってもらえてとても嬉しい。カラフルにするってことは私たちが今作で狙ったポイントだからね。私のライティングにおいても、いままでとはちょっと違ってインディ・ポップからも影響を受けたと思う。たとえばビョークやケイト・ブッシュとかね。後はラーシュがストリングス・アレンジでいままでの作品よりもオーケストラっぽさを表現してくれたと思う。彼はほかにも少しプログレっぽい要素だったり、ジャガ・ジャジストっぽいフレイヴァーをアルバムに付け加えてくれたと思う。

ひとつの楽曲のなかでも急激なテンポの変化があったり、曲の前半と後半ではまったく印象が変わったりとか、自由で先の読めない展開は先も比較したハイエイタス・カイヨーテを思い起こさせます。ジャガ・ジャジストもそうですが、彼らのパフォーマンスはオペラのようにシアトリカルでイマジネーションを掻き立てます。『イン・ザ・サン・イン・ザ・レイン』の方向性も彼らに通じるものを感じさせますが、いかがでしょうか?

ソフィー:気づいてくれてありがとう! いま言及してくれた自由で先が読めない展開は私も曲を作る上でとても意識したことだし、バンドでもたくさん話し合ったことで。楽曲を分割したときに、後半のパートに進むと完全に違う新世界に突入できるような感覚にしたかったのよね。代表的な例をあげるとフランク・オーシャンの “ピラミッズ” とかかな。あの曲の変調の仕方と完全にふたつの別のパートが一曲のなかで混合している感じがめちゃくちゃ最高で。この曲がリリースされたとき(2012年)にバンドのみんなと一緒に聴いたのを覚えているんだけど、めちゃくちゃ衝撃的だった。全然予想もしていなかった、見知らぬ場所で突然に旅がはじまる感じね。だからあなたが私たちの音楽を聴いて、同じことを感じてくれたのが嬉しい!

“グレンデヒューズ・ファンカデリック(Grendehus Funkadelic)” は何かファンカデリックと関係あるのでしょうか? 楽曲自体はディスコ・テイストのポップ・ロックでパーティー・キッズたちを歌った曲なのですが、中盤以降のスペース・オペラ調の展開はPファンク的かなとも思います。Pファンクもそうですし、フライング・ロータスサンダーキャット、〈ブレインフィーダー〉とも契約したハイエイタス・カイヨーテの感性に非常に近いものを感じました。

ソフィー:うん、この曲ではかなりファンカデリックからの影響を受けているよ。この曲を作るとき私はドラマーのオラにファンカデリックのグルーヴがほしいよ! って注文したら彼がやってくれた。というかあなたがこの曲を聴いて感じてくれたみたいだけど、実際に私たちはこの曲の後半の部分を「フライロー」(フライング・ロータスの愛称)って呼んでた(笑)。かなり的確ね(笑)。もともとこの曲の前半と後半はそれぞれ別の曲として制作していたんだけど、プロデューサーのラーシュがこのふたつのパートを繋げてひとつの楽曲にしたら? って提案してくれて。

『ヴードゥー』は私が最初にネオ・ソウルにハマったアルバムで。フィアは『ヴードゥー』を私たちなりの解釈で表現するためにスタートしたって部分もある。サウンド、ベース・ライン、ドラム、ヴォーカル、とにかくすべての部分で影響を受けていることは間違いない。本当に私にとって世界一好きなアルバム。

“オール・ザ・タイム・イヴン・ホエン(Allthetimeevenwhen)” はドリーミーでサイケ・ポップ的な雰囲気を持つ曲です。そして “ヒーロー” でもそうですが、ストリングスやオーケストレーションの使い方などアルトゥール・ヴェロカイのテイストを感じさせます。彼から影響はあったりするのでしょうか?

ソフィー:正直に言うと私はアルトゥール・ヴェロカイのことは、ハイエイタス・カイヨーテが昨年のアルバム『ムード・ヴァリアント』で彼とコラボするまで知らなかった。でも、ストリングスのアレンジをしているラーシュはずっと前からヴェロカイの音楽を聴いてたみたいね。

“イングリッシュマン” はラテン・フレーヴァーの曲でディアンジェロの『ヴードゥー』っぽいムードを持つのですが、サビのフレーズでは素晴らしいハーモニーやコーラスを聴かせてくれます。ネオ・ソウルからザ・ビートルズやザ・ビーチ・ボーイズなど幅広い影響を感じさせる曲だと思うのですが、いかがでしょう?

ソフィー:ありがとう! 『ヴードゥー』は私が最初にネオ・ソウルにハマったアルバムで。実際にフィアは『ヴードゥー』を私たちなりの解釈で表現するためにスタートしたって部分もある。だからサウンド、ベース・ライン、ドラム、ヴォーカル、とにかくすべての部分で影響を受けていることは間違いない。本当に私にとって世界一好きなアルバムだから。後はデヴィッド・ボウイをよく聴いていたときに思いついたコードも “ルーフトップ” に入っている。オリジナルはもっとシンセが使われているけどね。確かに私たちの音楽は少しビートルズを感じさせる部分もあるかもしれないし、サイケ的な要素も少し感じるよね。あなたが言っている通り、このアルバムはソウルやヒップホップからビートルズやビーチ・ボーイズのようなロックやポップスまでを参照して作られたアルバムで、全部がミックスされていると思う。

“ハウカム?” は1960年代、1970年代のムードを感じさせる曲ですが、この曲に見られるようにリズム・プロダクションはとても生々しくて力強いのが『イン・ザ・サン・イン・ザ・レイン』の特徴かなと思います。その点はラッセル・エルヴァドの手腕でしょうか?

ソフィー:理由はいくつかあると思う。ひとつはアレンジの部分ね。この作品はあまりシンセやドラムにトリガーを使ってないから、それが60~70年代のサウンドに近づける要素になったんだと思う。後はやっぱりラッセルのミックスは本当にサウンドにとっては重要だった。彼はアナログ・ミックスをしてくれたんだけど、彼にしか出せないフレイヴァーやムードをまるでサウンドに命を吹き込むように与えてくれる。あと私たちは彼にたくさんの参考音源を送ったのもあるかもね。その中の多くの曲が60年代、70年代の楽曲だったしね。スライ・アンド・ザ・ファミリー・ストーンとか。

『イン・ザ・サン・イン・ザ・レイン』はさまざまな楽曲がありながら、全体的にはバランスの取れたムードで統一されたアルバムだと思います。アルバム全体で何かコンセプトやストーリーはあったりするのですか?

ソフィー:今回のアルバムでは制作する前からアルバム全体としてどんなサウンドにしたいのかっていうのがあったし、何よりもこのアルバムにしか出せない音っていうのを目指したかった。それが私のなかだとディアンジェロの『ヴードゥー』、ケンドリック・ラマーの『トゥ・ピンプ・ア・バタフライ』、フランク・オーシャンの『チャンネル・オレンジ』のようなアルバムなんだけど。作りはじめてしばらくしてからアルバムをA面の『イン・ザ・サン』、B面の『イン・ザ・レイン』に分けるコンセプトのアイデアが出たんだ。『イン・ザ・サン』はアップテンポな曲を多く入れたパーティー感のあるもの、『イン・ザ・レイン』はスロー・テンポでメロウでオーケストラ要素が強い楽曲を入れて、アフター・パーティーをイメージした感じかな。

今後の活動予定や新たな取り組みがあれば教えてください。

ソフィー:今冬ちょうどサード・アルバムの制作に取り掛かっているところ。クールなアルバムになると思う! あとは、テキサスのSXSWとニューヨークの「ニュー・コロッサス・フェス」にも出演することが決まってて。今年はもう待ちに待ったツアーをたくさんできることを祈ってる!

vol.123 NYシャットダウン - ele-king

 コロナヴァイラスが世界的に流行している。NYでは、3月4日に10人ぐらいが感染していると発表があった後、瞬く間に1000人を超える大流行となった(3/21現在)。中国からイタリアへと大流行しているのを受け、3月11日水曜日、トランプ大統領は「13日の金曜日からヨーロッパからの飛行機を制限する」と発表した。3月末にポルトガル行きを予定していた私はヨーロッパ行けなくなるかもと、能天気に考えていたが、とんでもない、そこから事態はさらに加速した。

 3月13日金曜日、たくさんの観光客で賑わうチェルシーマーケットが閉まった。500人以上のショーが中止になったと思ったら、10人以上の集まりも禁止され、15日日曜日までにNYのレストラン、バーがシャットダウン警告を出され、17日火曜日までにテイクアウトとデリバリーのみになった。コスメティック・ブランドのセフォラは全店閉鎖、リテイルストアも閉鎖、空いているのはスーパーマーケットと銀行ぐらいで、NYは完全に真っ暗である。
 オフィスも閉鎖され、自宅勤務にシフト。ホスピタル業、サービス業、人と人が会う仕事はすべてアウト。メトロポリタンオペラは全員クビ、フェスティヴァルやショーはすべてが延期かキャンセル、地下鉄もほとんど人がいない。マスク、手袋をして、お互い6フィート以上離れるソーシャル・ディスタンスをとることを推奨している。「家で待機」が合言葉で、「必要な外出以外はダメ」という状況である。


リテイルストアは全て閉鎖

 私は、突然降ってきたヴァケーションを取り、友だちの家に行ったり、ビーチに行ったり、滝を見に行ったり、毎日気を紛らわそうとしているが、仕事がないことや、家に篭りっきりは本当に辛い。スーパーに行くとトイレットペーパーが売り切れているし、冷凍食品、缶詰、パスタあたりがまったくなかったり、みんなの不安も感じる。13日の金曜日に日本から来たミュージシャンと一緒に共演する予定だったのだが、そのショーもキャンセル、そし彼らはいま何もないオースティンにいる。本来なら、いちばん人が多い時期のオースティン。SXSWが中止になったいま、NYと同じようにゴーストダウンらしい。

 私は、3月の頭にオースティンに行って、ピーランダーZと、たこ焼きイベントをしてきたばかりだったが、NYの窮屈さと、アメリカでいちばん感染者の多さもあり、少しNYを離れ、オースティンに行くことにした。

 空港がいままでにないほどガラガラで、飛行機も5人ぐらいしか乗ってなかった。こんなにのスムーズに、セキュリティを通れたのは初めて。


地下鉄の風景

 オースティンに着いた翌日、NYが22日日曜日からロックダウンされると聞いた。NYに帰れないかもしれない。家に居るしかない生活が平常だが、オースティンのカラッとした天候に少し元気付けられた。日本から来ている人のなかにはフライトがキャンセルになり、「帰れないかも」という人もいる。

 NYの人たちは、ライヴストリーミングをはじめたり、仕事がなくなったレストラン、ナイトライフワーカーのためにファンドレイザーを立ち上げたり、クリエイティヴなことをはじめたり、家を改造しはじめたり、この状況で、少しずつ出来る何かをやろうとしている。国民に$1000支給されるとか、家賃やモーゲージが免除されるとか、いろんな噂が飛び交うが、この状況でも生きていかなければならない。サヴァイヴァル能力が養われるNY。毎日状況が変わるが、この原稿を書いている3月21日はマヤ暦で最後の日らしい。


コロナセルツァー、いまハードサイダー、ハードコンブチャなどビール以外のアルコール飲料が大流行。みんな買いだめしてます


オースティンのサボテンソーダ

Taylor McFerrin - ele-king

 偉大なジャズ・シンガーのボビー・マクファーリンを父に持つシンガー兼プロデューサー/DJ/トラックメイカーのテイラー・マクファーリン。ブルックリン生まれでもともとヒューマン・ビートボクサーだったというテイラーだが、彼のソロ・アルバム『アーリー・ライザー』が〈ブレインフィーダー〉からリリースされたのは、もう5年も昔の2014年のこと。ロバート・グラスパー、サンダーキャット、マーカス・ギルモアらUS新世代ジャズ系ミュージシャンに、父のボビーやブラジルのセザール・マリアーノといったレジェンド級ミュージシャン、さらにハイエイタス・カイヨーテのネイ・パームやエミリー・キング、ライアットらシンガー陣が参加したこのアルバムは、その頃よりジャズへと接近していく〈ブレインフィーダー〉を象徴する一枚でもあった。音楽的にはジャズ、ソウル、ヒップホップ、LAのビート・ミュージック、ロンドン~NYのベース・ミュージックなどさまざまな要素が結びついたもので、後のジェイムスズーの『フール』(2016年)あたりにもその影響は伺える。2010年代半ばの傑作の一枚であったが、その後の作品リリースは途絶えてしまっていた。
 もともと寡作のアーティストで、2006年のデビューEP「ブロークン・ヴァイブズ」から『アーリー・ライザー』までも8年の月日を要していたので、テイラー本人としては至ってマイ・ペースでライヴ中心の活動をおこなっていたのだろう。そんなテイラーの久々のリリース情報が流れたのは2018年で、それはロバート・グラスパー、テラス・マーティン、クリスチャン・スコット、デリック・ホッジ、ジャスティン・タイソンと組んだ R+R=NOW というプロジェクトによる『コラジカリー・スピーキング』だった。2017年のSXSWフェスでこれらメンバーが集まり、そのセッションからアルバム制作まで発展していったわけだが、ジャズ畑の面々の中でテイラーもキーボードとヴォーカルを担当し、グループにおけるエレクトロニカやアンビエント的側面を打ち出すのが彼の役割でもあった。アルバム・リリース後は R+R=NOW のツアーのほか、カマシ・ワシントンやビッグ・ユキなどさまざまなジャズ・ミュージシャンとのライヴが続いていたが、『アーリー・ライザー』以来の待望のソロ・アルバム『ラヴズ・ラスト・チャンス』がようやく完成した。

 今回のリリースは〈ブレインフィーダー〉からではなく、〈フロム・ヒア・エンターテインメント〉という自主レーベルのようで、ミゲル・アトウッド・ファーガソンやソニームーンのアンナ・ワイズなど現在のテイラーが拠点とするロサンゼルスのミュージシャンのほか、クリスチャン・スコットの『ストレッチ・ミュージック』へのフィーチャリングで知られるシンガー兼フルート奏者のエレナ・ピンダーヒューズも参加している。
 『アーリー・ライザー』に比べて、全体的に『ラヴズ・ラスト・チャンス』はソウル/R&B寄りの内容と言え、よりソウル・シンガーとしての側面にフォーカスしているようだ。そうした中で、特にルーズ・エンズなどに象徴される1980年代のシンセ・サウンドやAORと結びついたソウル・グループを彷彿とさせる楽曲が目につく。“ナウ・ザット・ユー・ニード・ミー”や“メモリー・デジタル”がその代表で、現在のロサンゼルス・シーンであればジ・インターネットデイム・ファンクあたりとの相関性も見出せるようなシンセ・ブギーと言える。AOR色が強い“ソー・コールド・イン・ザ・サマー”にも表われるように、アルバム全体のトーンはメロウかつアンビエントなムードに包まれ、現在で言われるところの「クワイエット・ウェイヴ」に属する作品となっている。そして、一般的なR&Bシンガーにはないオルタナティヴな個性がテイラーの特徴でもあり、スローなワルツ曲の“アイ・ウッド・スティル”や、ブラッド・オレンジにも通じるソフト・サイケなムードの“アイ・キャント・ギヴ・ユア・タイム・バック”などは、ジャズを含めていろいろなタイプの音楽を通過してきたテイラーだからこそできる作品だと言える。

Joe Armon-Jones - ele-king

 UKジャズの躍進は止まらない。そのキイパースンのひとりであり、春にはエズラ・コレクティヴとしても良作を送り出しているジョー・アーモン・ジョーンズが、早くもニュー・アルバムをリリースする(彼の最新インタヴューはこちらから)。ダブにアプローチした最新シングル曲“Icy Roads (Stacked)”が体現していたように、「ジャズ」という枠にとらわれない内容に仕上がっているとのことで、これまた2019年の重要な1枚になりそうな予感がひしひし。ちなみに先行配信された新曲“Yellow Dandelion”には、先日 16FLIP とのコラボも話題になったジョージア・アン・マルドロウが参加。いやー、発売が待ち遠しいぜ!

Joe Armon-Jones
トム・ミッシュも輩出した南ロンドンのUKジャズ・シーンから、新時代をリードする異才ジョー・アーモン・ジョーンズがアルバム『Turn To Clear View』のリリースを発表! さらにアルバムから“Yellow Dandelion feat. Georgia Anne Muldrow”を先行配信!

UKジャズ・シーンでの活躍により、多方面から注目を集める若きキーボーディスト/プロデューサーのジョー・アーモン・ジョーンズが9月20日(金)に最新アルバム『Turn To Clear View』をリリースする。

今年リリースしたデビュー・アルバムが大きな反響を呼んでいるアフロ・ジャズ・ファンク・バンドのエズラ・コレクティヴの一員としても活躍するジョー・アーモン・ジョーンズ。Glastonbury、SXSW、Boiler Room などでのパフォーマンスを果たし、ジャイルス・ピーターソンの Worldwide Awards 2019 ではセッション・オブ・ザ・イヤーを受賞するなど、新世代ジャズ・シーンを語る上では欠かせない存在となっている。今年、FFKT の出演で来日を果たし、日本でも早耳のリスナーから強く支持されるアーティストだ。

先行配信されている“Yellow Dandelion feat. Georgia Anne Muldrow”
https://www.youtube.com/watch?v=R1Li_bri66k

シングル・リリースされている“Icy Roads (Stacked)”も今作に収録されている。
https://www.youtube.com/watch?v=INGbirNwZAI

今作はジャズという枠にとらわれず、ダブ、ハウス、ヒップホップ、などクラブ・カルチャーに強くインスパイアされた内容のアルバムとなった。参加アーティストも豪華で、〈Brainfeeder〉に所属し、ケンドリック・ラマー、エリカ・バドゥ、ロバート・グラスパーなど名だたるミュージシャンから多くの支持を集めるジョージア・アン・マルドロウは先行配信されている“Yellow Dandelion”でフィーチャリングされている。他にも、ナイジェリア出身の注目シンガーObongjayar、〈YNR Productions〉の設立者でもあるラッパーのジェスト、Maisha でも活躍中のヌビア・ガルシアがアルバムに参加。また、国内盤CDには10インチ限定シングル「Icy Roads (Stacked)」でのみ聴けた“Aquarius”が今回のボーナストラックとして追加収録される。

label: Brownswood / Beat Records
artist: Joe Armon-Jones
title: Turn To Clear View
release date: 2019.09.20 FRI ON SALE

国内盤CD BRC-610 ¥2,200+税
ボーナストラック追加収録/解説書封入

詳細はこちら:
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=10409

iTunes : https://apple.co/2YECpvn
Apple Music : https://apple.co/2YECpvn
Spotify : https://spoti.fi/2OuUgAM

TRACKLISTING
1. Try Walk With Me Ft. Asheber
2. Yellow Dandelion Ft. Georgia Anne Muldrow
3. Gnawa Sweet
4. Icy Roads (Stacked)
5. (To) Know Where You’re Coming From
6. The Leo & Aquarius Ft. Jehst
7. You Didn’t Care Ft. Nubya Garcia
8. Self:Love Ft. Obongjayar
9. Aquarius *Bonus Track For Japan

STOLEN - ele-king

 これは爆弾かもしれない。ダークなエレクトロニック・サウンドを響かせる中国四川省は成都の6人組、その名もストールン(秘密行動)が8月7日に日本デビュー・アルバム『Fragment』をリリースする。彼らの楽曲はニューウェイヴ~ゴシック~シンセ・ポップなど、間違いなく英米ロックから影響を受けているが(10月からはニュー・オーダーのツアーに同行することも決定しているそう)、音楽については保守的で厳しいという中国において、なぜこのようなバンドが登場するに至ったのか? ワーキングクラス出身のフロントマン、リャン・イーによれば、まず海賊盤でポーティスヘッドやジョイ・ディヴィジョンと出会い、その後ネット経由でさまざまな海外の音楽にアクセスしていったのだという。なかでもクラフトワークの存在は大きかったようで、借金までしてライヴを観に行ったのだとか(そのあたりの経緯はHEAPの記事に詳しい)。気になる点はまだまだ多いが、いまは続報を待とう。

[7月5日追記]
 本日、8月リリースのアルバムより収録曲“Chaos”が先行配信された。またなんと、同曲の石野卓球によるリミックスも公開、同氏からはコメントも届いている。「このダイナミックなトラックをリミックスできて光栄です。楽しくできました」とのこと。配信はこちらから。

STOLEN

ダークでミステリアスな、テクノとロックのミクスチャー・サウンドが、ヨーロッパのアンダーグラウンド・シーンで注目を集める、中国のインディーズ・バンド“STOLEN(ストールン)”が、今年8月、日本でデビュー・アルバム『Fragment(フラグメント)』をリリースすることが決定しました。

“STOLEN(漢字表記では“秘密行動”)”は、中国で今最も刺激的な音楽シーンのひとつとして知られる四川省の省都・成都(せいと)を拠点に活動する、平均年齢26歳の5人の中国人と1人のフランス人で構成されるバンドです。

STOLEN Trailer for Japan
https://youtu.be/eeEbvS1hsYY

プロデューサーは、イギリス、マンチェスター生まれの音楽プロデューサー、ミュージシャンである、Mark Reeder(マーク・リーダー)。

マーク・リーダーは、70年代当時、ジョイ・ディヴィジョンのイアン・カーティスや、マッドチェスター・ムーヴメントを巻き起こした〈ファクトリー・レコード〉のオーナーでナイトクラブ「Hacienda(ハシエンダ)」の創始者、トニー・ウィルソンと親交の厚かった人物。ニュー・オーダーにも多大な音楽的影響を与えており、マーク・リーダーの存在がなければ、ニュー・オーダーの名曲“Blue Monday”も生まれることはなかったと言われています。

また1990年にベルリンで立ち上げた音楽レーベル〈MFS〉は、ポール・ヴァン・ダイクや、エレン・エイリアンら世界的なスターDJを輩出した伝説的エレクトロニック・ミュージック・レーベルとして知られていますが、実は、電気グルーヴの作品を初めてヨーロッパへ向けてリリース(1995年のヒットシングル「虹」をリリース)したレーベルであり、マーク・リーダーは、電気グルーヴと石野卓球氏がその後ヨーロッパでのキャリアを築くきっかけを作った重要人物でもあります。

STOLEN を中国で見出したマーク・リーダーは「ニュー・オーダー以来の衝撃を受けた」と語り、2007年に活動を停止していた〈MFS〉レーベルを再び活性化することを決意、STOLEN のデビュー・アルバム『Fragment』をプロデューサーとして完成させました。

日本では今年8月に、アルバムをリリースすることが決定。マーク・リーダーと石野卓球氏のリミックス音源を含む全13曲を収録したアルバム『Fragment』を〈U/M/A/A〉よりリリースします。

また、STOLEN は10月にスタートする、ニュー・オーダーのライヴ・ツアーに、スペシャル・ゲストとして参加することも決定しています。アルバムのリリースに先駆け、先行配信なども行う予定。今後の動向にご注目ください。

【Stolen プロフィール】

中国で今最も刺激的な音楽シーンのひとつと言われる、四川省の省都・成都(せいと)を拠点にする平均年齢26歳の5人の中国人と1人のフランス人で構成される6人組のインディーズ・バンド。2011年結成。バンド名「STOLEN(ストールン、漢字表記は秘密行動)」は、神秘的、秘密主義、暗やみなどを意味する。

インディーズ・バンドとして中国国内での数多くのライヴ・ツアーを積み重ねた後、2016年に初めての海外ライヴとしてフランス《Trans Musicales Festival》に出演、2017年、フランス《SAKIFO Music Festival》に出演、2019年にはアメリカ SXSW に招かれるがビザの問題で入国することが許されなかった。

謎多き中国のインディーズ・シーンから全世界デビュー・アルバムとなる『Fragment(フラグメント)』はドイツ・ベルリンの伝説的レーベル〈MFS〉のオーナー Mark Reeder がプロデューサーとなり、成都にある彼らのホームスタジオとベルリンのスタジオでレコーディングされた。テクノやロックといったカルチャーを独自に吸収したそのサウンドやライヴ・ステージ、アートワークは、中国の若者から人気を集めるポストロック~ダークウェイヴの旗手として、その注目は世界中へと拡がっている。

【バンド・メンバー】
Vocals / Synth : Liangyi
Guitar / Keyboard / Samples / Vocals : Duanxuan
Guitar / Vocals : Fangde
Bass : Wu Junyang
Drums, Percussion : Yuan Yufeng
VJ : Formol

【Stolen SNS】
Weibo: https://www.weibo.com/mimixingdong
Instagram: https://www.instagram.com/stolen_official/
Facebook:https://www.facebook.com/strangeoldentertainment/

Qrion - ele-king

 現代的でありつつどこか叙情的なダンス・チューンを次々と送り出す、札幌出身サンフランシスコ在住のDJ/プロデューサー、クリョーン(Qrion)。これまでスロウ・マジックやトキモンスタなどのリミックスを手がけ、デイダラスとも共演、ポーター・ロビンソンやライアン・ヘムズワース、カシミア・キャットらのツアーに帯同してきた彼女だけれど(初音ミクを使った曲もあり)、このたびなんと、昨年リリースされたEP「GAF 1」「GAF 2」の12インチ化を記念してリリース・パーティが開催される運びとなった。日時は4月30日、会場は CIRCUS Tokyo。当日は Taquwami、Submerse、ピー・J・アンダーソンらも出演するとのことで、これは見逃せない!

札幌出身で現在はサンフランシスコを拠点に活動しているDJ/プロデューサー、Qrion (クリョーン)が、スタイリッシュかつディープなハウス・サウンドをみせた2018年のEP「GAF 1」、「GAF 2」の楽曲が待望の 12 inch 化が決定。
平成最後の4月30日に CIRCUS TOKYO にてリリースを記念したパーティーを開催!

TITLE: PLANCHA × CIRCUS presents Qrion 『GAF』 Release party
DATE: 2019.4.30 (TUE/HOLIDAY) OPEN 18:00

LINE UP:
Qrion
Taquwami
Submerse
Pee.J Anderson

ADV: 2,800yen
DOOR: 3,300yen
(別途1ドリンク代金600yen必要)

TICKET:
Peatix:https://qrion.peatix.com/
イープラ:https://eplus.jp/
チケットぴあ:P-CODE (149133)

VENUE: CIRCUS Tokyo
〒150-0002 東京都渋谷区渋谷3-26-16
03-6419-7520
https://www.circus-tokyo.jp

▼ Qrion

札幌出身、現在はアメリカ・サンフランシスコを拠点とするトラックメイカー/プロデューサー。10代の頃からオンラインを中心に音源をリリースし注目を集め、Ryan Hemsworth、How To Dress Well、Giraffage、i am robot and proud ら海外のプロデューサーとの共作が一挙に話題となり、瞬く間に世界中に Qrion の名が広がり、海外からのオファーが殺到、〈Fool’s Gold〉、〈Carpark Records〉、〈NestHQ〉、〈Secret Songs〉などの世界中のレーベルからリリース、「Trip」、「Just a Part of Life」といった自身の作品のほか、TOKiMONSTA、Slow Magic などのリミックス作品もリリースしている。

さらに Qrion は世界中をツアーしており、Slow Magic との28日間の北米ツアーを終えた、Porter Robinson、Ryan Hemsworth、Cashmere Cat, and Giraffage のツアーにも帯同、この秋の自身の最新EPとなる「GAF」のリリース・ツアーでは、LA、ニューヨーク、サンランシスコ、札幌、東京など、アメリカと日本で全8公演を成功裡に収め、更には、世界最大級のダンス・ミュージック・フェス Tomorrowland 2018 出演を始め、HARD Summer、Holy Ship、Moogfest、NoisePop、SXSWのショーケース、Serentiy Fest、更には日本の TAICOCLUB’ 18 など、多くのフェスティバルでもプレイ。 2018年に世界基準でさらなる話題を集める、今最も注目すべきアーティスト。

▼ Taquwami

作曲家。これまでにいくつかのEPといくつかのmp3をインターネット上でリリース。その他プロデュースワークやリミックスワークも多数手がける。

▼ submerse

イギリス出身の submerse は超個人的な影響を独自のセンスで消化し、ビート・ミュージック、ヒップホップ、エレクトロニカを縦横無尽に横断するユニークなスタイルを持つDJ/ビートメーカーとして知られている。これまでにベルリンの老舗レーベル〈Project: Mooncircle〉などから作品をリリースしている。SonarSound Tokyo2013、Boiler Room、Low End Theory などに出演。
また、Pitchfork、FACT Magazine、XLR8R、BBCといった影響力のあるメディアから高い評価を受ける。2017年に90年代のスロウジャムやヒップホップを昇華させたニューアルバム『Are You Anywhere』をリリース!

▼ Pee.J Anderson

Pee.J Anderson (ピー・ジェイ・アンダーソン)は Al Jarriem (アル ジャリーム)と JOMNI (ジョムニ)による関西出身の Deep House ユニット。
2017年末のハウス・シーンに突如現れ、精力的にリリースやライブ活動を行い東京のダンスフロアを彩り続ける。PCライブをベースに、ボーカルや楽器による生演奏と併せて4つ打ちを鳴らすスタイルからクラブ界隈で異才を放つ。

ここ5年ほど、アイスランドや北欧のフェスティバルに積極的に参加している、アイスランド・エアウェイブスhttps://icelandairwaves.is。2013年から数えて5回アイスランドや北欧のフェスティバルに参加し、バルセロナのプリマヴェーラhttps://www.primaverasound.es/には2回、ノルウェイのフェスには最近参加し始めた。

私がNYのインディ・オンライン・ストアの〈インサウンド〉insound.comで働いていた1999年頃、同僚がノルウェイのオスロで開催されるフェスティバル、Øya(オイヤ)https://oyafestivalen.noについて話していたのを覚えている。当時、創業したばかりのインサウンドとØyaは、同じようなアーティストを扱っていた。ノルウェイなんて遠い異国だと思っていたが、NYからは約7時間、時差も6時間で、時差ボケも酷くない。


会場への道

私は2017年に初めてオスロのØyaに参加し、2018年には同じくノルウェイのトロントヘイムで開催されるPstereo(ぺステレオ)https://pstereo.noに参加した。
Øyaは1999年にスタートし、ソニック・ユース、イギー・ポップ、アークティック・モンキーズ、ベックなど、ピッチフォーク系のバンドが出演することを売りにしている。一方、Pstereoは2007年にスタートし、クラフトワーク、モグワイ、ロイクソップ、スロウダイブなど、エレクトロニカ、ポップ、ロックなどのバンドが主に出演している。2019年のØyaのヘッドライナーは、キュア、ロビン、テーム・インパラ、ジェイムス・ブレイク。同じ年、ぺステレオには、ホイットニー、イェーセイアー、ブロック・パーティ、ビッグバンなどが出演した。



コンファレンス

コンファレンス会場


今年2019年は、オスロのBy:Larm(ビ・ラーム)https://bylarm.noに参加した。By:Larmでは音楽フェスと一緒にコンファレンスも行われ、SXSWの北欧版と言える。3日間(今年は2/28-3/2)講義、セミナー、ネットワーキングが昼間に行われ、夜は18の会場で、350ものコンサートが開かれる。By:Larmは北欧の音楽と海外の音楽の出会いの場である。

1998年に始まったBy:larmはスタート当初、バーゲン、トロントへイム、トロムソ、クリスチャンサンドなど毎年異なるノルウェイ内の都市で行われていたが、参加者が増え続けたために大きな会場やホテルが必要になり、2008年からはオスロを拠点としている。

今年のレクチャー内容は、「デジタルミュージックの世の中でアーティストが侵す10の間違い、それを避ける方法。」、「デジタル革新の世の中でアーティストとレーベルはどうやってインパクトを与えるか。」、「ストリーミングの技術は熟したが、収入が公平になるディストリビューション問題。ユーザー中心の世の中でどのように音楽経済を変えることが出来るか。」、「ブランドやスポンサーが古臭さや妥協なくどのように音楽業界に新しい内容を提供出来るか。アーティストは信頼性を損なわず収益を上げるため、スポンサーを利用できるか。」、「自分のバンドはホット。では次は。」、など興味あるトピックが続く。〈シークレットリー・カナディアン〉や〈モ・ワックス〉のA&Rの話や、マネージャー、エージェントからも直接話を訊けて音楽業界で働く人には気になる話題が満載である。



Girl in red

Kelly Moran

ショーケースされるバンドは北欧のバンドが殆どで、2日間で30ほどを駆け足で観た。ノルウェイのマック・デマルコと言われているBrenn.(ブレン)は、演奏は下手だし何がしたいのか分からなかったのだが、とにかく音を掻き鳴らしていて「やってやる!」という姿勢も伝わってきたし、期待のホープに思えた。青とピンクの色違いのジャンプスーツも可愛かった。〈ベラ・ユニオン〉のPom Poko(ポンポコ)は、柔道着風ツナギとバスケットボールのユニフォームというよくわからないアウトフィットだったが、元気一杯エナジー爆発で、ガール・イン・レッドと同じくオーディエンスにダイブしたり、ファンのサポートも熱かった。スウェーデンのMeidavale(メイダヴェール)は、ウォーペイントとワォー・オン・ドラッグスを足したようなサイケデリックな浮遊感が漂うバンドで、黄色のジャンプスーツが可愛かった。〈DFA〉からも作品をリリースするアバンギャルドアーティストの、Nils bech(ニルス・ベック)はストリングス隊をバックに歌い、同時に会場の外に3Dマッピングをしていて、現代的なアートのようなパフォーマンスを見せた。


Selma Judith

Maidavale

土曜日は、Torggata通りで行われるTorggatafestというフリーショーが3時から7時まで8つのお店や会場で行われ、50ほどのバンドがプレイした。さらにアン・オフィシャルパーティが近くで行われ、ビール、アップルサイダー、ビーツ・スープ(!)などが振る舞われた。

SXSWと同じで知り合いが出来ると数珠繋ぎにどんどん人を紹介され、見たいバンドを見逃すという事態に陥るが、ネットワーキングを目的に来る人が殆どである。アジア人は全く見なかったが、中国からのジャーナリスト、DJが来ていた。その他は北欧の違う都市から訪れていた音楽業界の人々だった。彼らはSXSWにも行くらしく、月に一回はNYに行くという人も居て、世界中を飛び回ってるのだなあと。オスロは、レイキャビックやコペンハーゲンと同じく、Wi-Fiや充電場所が何処にでもあり、水道水も飲めるが、アルコールは外では飲めない。日曜日にはフリーマーケットがあったり、少し散歩も出来る、小さいがとても便利なオスロを体験出来た。

大満喫した次の日NYに戻ろうとすると、フライトが悪天候のためキャンセルに。何故かロンドンに行く事になった。旅もフェスも予測出来ないという事で、初のロンドンを楽しむ事にする。


Yoko Sawai
3/4/2019

R+R=Now - ele-king

You can't help it. An artist's duty, as far as I'm concerned, is to reflect the times.
by Nina Simone

 「時代を反映させることはアーティストの責務である」とは、女性ジャズ・ピアニストでシンガーのニーナ・シモンによる名言のひとつである。彼女自身も1960年代の公民権運動に参加し、人種差別や女性差別などと闘ってきたのだが、そうした姿勢に影響を受けたアーティストは同じ黒人女性シンガーでもエリカ・バドゥ、ローリン・ヒル、ビヨンセなどジャズ界にとどまらず多い。そして、ニーナ・シモンのこの言葉に触発されて新たなプロジェクトが始まった。「Reflect+Respond=Now」、すなわち「R+R=Now」というのがこのプロジェクトの名前で、そこに参加するのはロバート・グラスパー(キーボード、ローズ)、テラス・マーティン(サックス、ヴォコーダー、キーボード)、クリスチャン・スコット(トランペット)、デリック・ホッジ(ベース)、テイラー・マクファーリン(キーボード、エレクトロニクス)、ジャスティン・タイソン(ドラムス)の6人。ロバート、デリックはロバート・グラスパー・エクスペリメント(RGE)で長らく共に活動しており、エスペランサ・スポルディングのアルバムにも参加してきたジャスティンは、最近になってそのRGEに加わったばかり。テイラーはジャズ・シンガーのボビー・マクファーリンの息子で、ヒューマン・ビートボクサー兼トラック・メイカーとして知られる。彼のアルバム『アーリー・ライザー』(2014年)にはロバートも参加したという間柄だ。ケンドリック・ラマーの『トゥ・ピンプ・ア・バタフライ』(2015年)の共同プロデュースで名をあげたテラスは、学生時代からロバートとは知り合いで、彼のソロ・アルバムにもロバートはたびたびゲスト参加している。ロバートにとってLAシーンの橋渡しとも言える存在だ。クリスチャンはニューオーリンズ出身で、昨年はジャズ生誕100周年にちなんだ『ルーラー・レベル』『ディアスポラ』『ザ・エマンシペーション・プロクラスティネーション』という3部作を発表した。作品に政治・社会的なメッセージを持ち込むことがしばしばあり、トム・ヨークのアトムズ・フォー・ピースやXクランのツアーにも参加するなど、ジャズ・ミュージシャンでありながらオルタナティヴな活動も行っている。

 こうした面々が一同に集まったのは、昨年開催されたSXSWフェスティヴァルのこと。そのときのロバート・グラスパー&フレンズという名前のセッションが発展し、R+R=Nowへと繋がっていった。ロバートは2015年にニーナ・シモンのトリビュート・アルバム『ニーナ・リヴィジティッド』をプロデュースしており、そこにはローリン・ヒル、コモン、メアリー・J・ブライジなどが参加して、ジャスティンもドラムを叩いていたのだが、そうした流れが本プロジェクト名に繋がっているとも言える。また、昨秋から今年にかけてロバート、コモン、カリーム・リギンズによるオーガスト・グリーンというユニットが生まれ、「ブラック・ライヴズ・マター」にも繋がるアルバムを出していること、そしてテラスやロバートも参加した『トゥ・ピンプ・ア・バタフライ』から、クリスチャン・スコットによるミクスチャーな要素の高いコンテンポラリー・ジャズなど、そうした一連の動きを集約したアルバムと言えるのが『コラジカリー・スピーキング』である。6人のメンバーのほかにも、シンガー・ソングライターのゴアペレ、ムーンチャイルドの紅一点のアンバー・ナヴラン、モス・デフ改めヤシーン・ベイ、ラッパーのスターリーなどが参加している。

 サウンド面を見ると、テラス・マーティンがヴォコーダーを披露する“チェンジ・オブ・トーン”や“アウェイク・トゥ・ユー”を筆頭に、大まかにはRGEの延長線上にあるアルバムであるが、随所にクリスチャン・スコットだったり、テイラー・マクファーリンだったり、メンバーのカラーが生かされている。“チェンジ・オブ・トーン”はロバート・グラスパーのピアノ・ソロもフィーチャーされており、ロバートとテラスがプロジェクトの両輪を担っていることが伺える。ただし、中間からテイストが変わってアンビエントな展開を見せるところは、テイラー・マクファーリンのエレクトロニカ的な楽曲の要素も強いなと感じさせる。“アウェイク・トゥ・ユー”の方もメロウでアンビエントなテイストが強いのだが、サンダーキャットや〈ブレインフィーダー〉の諸作に通じるLA風味を感じさせるのは、テラスならではというところだろう。そうしたアンビエントな雰囲気を引き継いで始まる“バイ・デザイン”はインスト曲だが、全体のムードとしてはムーンチャイルドやキングあたりのジャジーなネオ・ソウルに近いかもしれない。リズム・セクションの面白さでは“レスティング・ウォリアー”があり、デリック・ホッジとジャスティン・タイソンによるスリリングな変拍子が冴える。クリスチャン・スコットのエフェクトをかけたトランペットの音色もクールで、RGEにはトランペットが無いだけに、また異なった魅力を放っているだろう。全体的にジャズ・ロック的な曲調となっているが、そんなところもクリスチャンらしいオルタナ感覚の表われである。“ニーディッド・ユー・スティル”はメロウなマナーのトラックにヴォコーダーを乗せ、途中でオマリ・ハードウィックのラップ・スタイルのヴォーカルもフィーチャーされる。この曲やスターリーをフィーチャーした“リフレクト・リプライズ”は、コモンも参加するオーガスト・グリーンに近いタイプの曲であり、ヒップホップ作品にも多く関わるテラスとグラスパーらしさが表われている。

 アルバム全体を通じてテラス・マーティンのヴォコーダーが印象に残り、“カラーズ・イン・ザ・ダーク”もそうした1曲。テラスにしろ、ロバートにしろ、1970年代後半のハービー・ハンコックからの影響が強いことを感じさせると共に、後半にかけてのジャスティンのエキサイティングなドラミングも聴きどころ。“ザ・ナイト・イン・クエスチョンズ”はグナワ音楽のようなリズムに、クリスチャンのエキゾティックなトランペットをフィーチャー。彼の次のアルバムにも収録予定の楽曲だそうだ。デリックのベース、テラスのシンセにアマンダ・シールズのラップを乗せた空間的な“ハー=ナウ”を挟み、“レスポンド”でもデリックのベースがメロディアスな旋律を奏でる。この曲はロバート抜きの演奏で、デリックのベースとクリスチャンのトランペットが主役となっている。そして、“ビーン・オン・マイ・マインド”は浮遊感に満ちたアンバー・ナヴランのヴォーカルが印象的。幻想的な音処理がされたこの曲に顕著だが、RGEやテラス、クリスチャンなどのソロ作などと『コラジカリー・スピーキング』との違いを上げるなら、本作にはアンビエントな音響空間作りの意識が強いということになるだろう。そうした点で、RGEの『ブラック・レディオ』などからまた進化し、今の新しいジャズの空気感を反映させたのが『コラジカリー・スピーキング』である。

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