ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. R.I.P. Jimmy Cliff 追悼:ジミー・クリフ
  2. ele-king vol.36 特集:日本のシンガーソングライター、その新しい気配
  3. interview with LIG (Osamu Sato + Tomohiko Gondo) 至福のトリップ体験 | 佐藤理+ゴンドウトモヒコ、インタヴュー
  4. Columns 2025年のFINALBY( )
  5. Sorry - COSPLAY
  6. VMO a.k.a Violent Magic Orchestra ──ブラック・メタル、ガバ、ノイズが融合する8年ぶりのアルバム、リリース・ライヴも決定
  7. Geese - Getting Killed | ギース
  8. K-LONE - sorry i thought you were someone else | K-ローン
  9. SCARS ──来年のデビュー20周年を祝しワークジャケットが発売
  10. Oneohtrix Point Never - Tranquilizer | ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー
  11. Kamasi Washington, Bonobo and Floating Points ──アニメ『LAZARUS ラザロ』のサウンドトラックがリリース
  12. Susumu Yokota ──横田進のリスニング・イベントが京都「しばし」にて開催
  13. Columns Oneohtrix Point Never 『Tranquilizer』 3回レヴュー 第二回目
  14. Columns 11月のジャズ Jazz in November 2025
  15. claire rousay - a little death | クレア・ラウジー
  16. ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー『Tranquilizer』試聴会レポート - @原宿・BEATINK Listening Space
  17. Oklou - choke enough | オーケールー
  18. DREAMING IN THE NIGHTMARE 第2回 ずっと夜でいたいのに――Boiler Roomをめぐるあれこれ
  19. Columns なぜレディオヘッドはこんなにも音楽偏執狂を惹きつけるのか Radiohead, Hail to the Thief Live Recordings 2003-2009
  20. Masaaki Kobayashi ──小林雅明による書籍『ヒップホップ名盤100』が発売中

Home >  Reviews >  Album Reviews > BudaMunk & TSuggs- Thank And Gro

BudaMunk & TSuggs

Hip HopJazz

BudaMunk & TSuggs

Thank And Gro

King Tone / DOGEAR

大前至 Oct 29,2020 UP

 ビートメーカー/プロデューサーとして様々なアーティストの楽曲を手掛ける一方で、Sick Team の一員としての活動や mabanua とのユニット=Green Butter、Fitz Ambrose とのユニット=BudaBrose、さらに Joe Styles、Aaron Choulai、ISSUGI、ILL SUGI など様々なアーティストとのコラボレーション作品を生み出してきた BudaMunk。ソロでもビート・アルバムだけでなく、ヴァラエティに富んだメンツをゲストに迎えた作品も展開しているのだが、2018年にリリースされたソロ・アルバム『Movin' Scent』の収録曲 “Froaura” にて美しい鍵盤のメロディを響かせていたのが、今回のコラボレーターであるジャズ・ピアニストの Tony Suggs こと TSuggs だ。

 80年以上の歴史を誇る名門ジャズ・バンド、Count Basie Orchestra の5代目ピアノ・プレーヤーを務め、故 Roy Hargrove が率いていたR&B/ヒップホップ・プロジェクト=The RH Factor のアルバム『Hard Groove』にもオルガンで参加するなど、USジャズ・シーンのコアな部分に身を置いていたのがその経歴からも伺える。2000年代のアンダーグラウンド・ヒップホップをルーツに持ちながら、実に数多くの作品を発表してきた BudaMunk であるが、今回の TSuggs とのプロジェクトは、彼にとっても最もジャズのカラーが強い作品であることは間違いない。曲のキモとなっているビートの部分は BudaMunk が手がけているので、曲の芯の部分にあるのはもちろんヒップホップなのだが、曲によってはジャジーなヒップホップというよりも、ヒップホップ・テイストが濃厚なジャズと表現したほうが相応しいようにも思う。

 そんな本作のヒップホップとジャズとの絶妙なバランス感を象徴するのが一曲目の “Mergers and Acquisitions” だろう。DJ YUZE によるアブストラクトなスクラッチに、ジャズ、R&B、ヒップホップなど様々なジャンルのアーティストと共演するギタリストの吉田サトシが参加し、緊張感のある絡みが展開しながら、TSuggs によるキーボード(主にローズ・ピアノ?)によって実に美しく透明な空気感が曲全体を覆う。続く “Convinced” に参加しているのが、TSuggs と同様に Roy Hargrove とも繋がりのあるベーシストの Amen Saleem で、BudaMunkによるビートとキーボード、ベースとのトリオによるライヴ感あるセッションはまさしくジャズそのものだ。他にもベーシストの日野 "JINO" 賢二が参加した “Half on a Baby”、トランペット奏者の Patriq Moody が参加した “Kozmic Question” など、ゲスト参加曲での躍動感溢れるグルーヴ感は実に面白く、ヴォーカル曲では Iman Omari が参加した “Good Vibes” は間違いなく本作の目玉となる極上の一曲だろう。その一方で、BudaMunk と TSuggs が一対一で対峙するミニマルな構成の楽曲での、ビートとキーボードのみが作り出すグルーヴはやはり格別で、永遠に聴き続けていられるような圧倒的な心地良さを与えてくれる。ゲスト参加したアーティストも交えながら、本作の魅力をぜひライヴでも再現してほしいと思う。


大前至