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Deerhunter

合評

Deerhunter- Halcyon Digest

4AD/Hostess

Oct 06,2010 UP 橋元優歩、野田 努、橋元優歩、野田 努、橋元優歩、野田 努、橋元優歩、野田 努 E王
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一緒にハイになろう、僕は年をとりたくないんだ文:野田 努


Deerhunter / Halcyon Digest
E王 4AD/Hostess

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 2008年のディアハンターによる『マイクロキャッスル/ウィアード・エラ・コンティニュード』、2009年のアトラス・サウンド名義による『ロゴス』、これらはここ数年のUSインディ・アンダーグラウンドの野心――IDMスタイルからノイズ、ヴィンテージ・スタイル等々――と接続しながら、明日のポップ・サウンドを模索するアルバムだ。サウンド面での工夫があるというのはもちろん大きいが、それだけがトピックではない。それら2枚はアニマル・コレクティヴと並ぶ、ゼロ年代におけるネオ・サイケデリアを代表する作品でもある。個人的な遍歴を言わせてもらえれば、『サング・タングス』(2004年)から『クリプトグラムス』(2007年)へ――というのがおおまかな流れとしてあって、その地下水脈における最初のポップ・ヴァージョンが『マイクロキャッスル』だったと記憶している。
 ポップ・サウンドとはいえ、アニマル・コレクティヴにはない妖艶なメロウネスがそこには詰まっている。ブラッドフォード・コックスが関わる音楽には、昔ながらのジャンキーの、役立たず人間のみが発することのできる香気というものがある。弱者であるがゆえの色気があり、彼にはルーザー・ロッカーとしての十二分な資質がある。いまどき珍しく、頽廃的な光沢がある。それがゆえにだろうか、ブラッドフォード・コックスにはアニマル・コレクティヴほどのピーターパン的な印象はない。
  
 CD2枚に25曲を収録した『マイクロキャッスル/ウィアード・エラ・コンティニュード』においてキャッチーな曲も書ける才能を証明したバンドは、この新作では、CD1枚46分のなかに11曲を収録している。厳選された11曲なのだろう。また、いくつかの作曲にはギタリストのロケット・プントが関わっているそうで、ディアハンターがコックスのワンマン・バンドではないことを暗に主張しているようだ(しかし、いまとなってはディアハンターとアトラス・サウンドにそれほど違いがあるとは思えないのだけれど......)。
 
 子供への自己投影を主題にした"ドント・クライ"はヴェルヴェッツ直系のロック・ソングで、"リヴァイヴァル"とともに口ずさみたくなるタイプの曲だ。恐怖をテーマにした"セイリング"はスローテンポの美しいブルース・ロックで、"メモリー・ボーイ"はテレヴィジョン・パーソナリティーズを彷彿させるキャッチーなサイケデリック・ポップ。"ベースメント・シーン"は夢見るガレージ・ポップ・ソングで、シングル・カットされた"ヘリコプター"はメロウなエレクトロニカ系ポップ・ソング、それに続く"ファウンテン・ステアーズ"はバーズ......というかより深いトリップに夢中なストーン・ローゼズといったところ。まあ要するにアルバムは多彩で、捨て曲なしの引き締まった内容になっている。『マイクロキャッスル』のとの大きな違いはそこで、ポップ・バンドとしてのディアハンターの才能がスマートに発揮されている。
  
 まあ......とはいえ、僕の場合は、間章の啓蒙主義めいた言葉で描かれたコックスの夢想を共有するにはもういい歳なのだ、という事実もある。「年をとりたくない」と歌われても、年をとってしまっている。「目を覚ましたくない」と歌われても、毎朝7時に起こされる。困ったものだ......。「一緒にハイになろう/僕は年をとりたくないんだ」、そのいっぽうでコックスは「それは僕の終わりを意味するのかもしれない/年をとりたい」と、彼の分裂した思いを打ち明ける。その曲、"ベースメント・シーン"の歌い出しはこうだ。「少しでいいから夢を見よう/地下の世界についての夢を」――リヴァーブをかけられ茫洋と響く彼の言葉と歌は、そして成長(大人)を拒否する『ハルシオン・ダイジェスト』は、"終わりなき夏"をひたすら夢想するチルウェイヴと、その他方では過去に惑溺するヴィンテージ・ポップスと、いずれにせよそれほど遠くはないどこかで混じりながら、USインディに拡がるネオ・サイケデリアをよりいっそう強固なものにしている......ように聴こえるのだ。

文:野田 努

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