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浮遊感のあるトラック5選

浮遊感のあるトラック5選

文:Yusaku Shigeyasu   Jul 07,2016 UP

 パーティの流れの中で、もしくは、DJセットの流れのなかで、浮遊感のあるトラックが映える瞬間がある。例えば、真夜中のダンスフロアで意識を没頭していくようなモノトーンな時間帯を経たときや、野外で夜明けを迎えるときだ。そうした場面で解放感を演出したり、荘厳さを醸し出したりするなど、浮遊感のあるトラックが果たす役割は幅広い。怪しげな雰囲気のものから爽快な感じのもの、さらにはノスタルジックなものまで、浮遊感の印象はトラックによって様々だ。
 その印象に大きな影響を及ぼしているのはパッドだろう。サウンドプロセッシングならではの特性であるテクスチャー変化を体現する音素材であり、コード進行やメロディ以外の深みを音楽に加えるパッドはエレクトロニック・ミュージックの醍醐味のひとつだ。堅牢なビートや極太ベースラインのように力強くオーディエンスの身体を突き動かすことは少ないかもしれないが、パッドはトラックの背後でじわじわと湧き上がって上昇していったり、トラック全体を柔らかく包み込んだり、濃霧のように漂ったりしながら、楽曲の全体的な色彩やムードを実に豊かに変化させる。
 ここに掲載した5曲はいずれも非4つ打ちトラックとなっているのでグルーヴにタメがあり、より浮遊感を感じられるものになっている。どんな状況/環境で映えるのか、もしくは、どのようにDJセットに組み込んで印象を彩るのか。そうしたことを思い描いてみると面白いかもしれない。


Edit Select - Loop Continue (Dino Sabatini remix) (Dreiklang)

ボトムの効いたキックとおぼろげなハイハットによるビートに神々しく降り注ぐパッドが印象的。スネアやクラップが使われていないので、浮遊感が際立っている。それに対して重厚なベースラインがコントラストとなっていて心地よい。

Forest Drive West - System (Livity Sound)

深淵へゆっくりと下降していくかのようなディープな1曲。異なる周期で揺らぐパッドが重なり合うことで徐々に大きなうねりを生み出していく。擦り付けるようなハイハットが鼓膜と意識をかきむしる。

London Modular Alliance - Fallow (Applied Rhythmic Technology)

タイトに打ち込まれるエレクトロ・ビートの間をパッドがシンセベースと連動しながら吹き抜けていく。中盤のブレイク部ではメロディ素材と絡み合いながら程よくノスタルジックな空気をもたらしてくれる。

Tom Liem - A Liquid State (Shipwrec)

いつまでも漂っていられる浮遊感がたまらない。その肝は、じわじわと解放されていくバックグラウンド・パッドの爽快なテクスチャー変化と、アシッドサウンドになりそうでならないベース・シーケンスの焦らしだ。

Kane Ikin - Tap Tap Collapse (Type)

長く減衰する残響音がパッド代わりとなって大きく起伏するベースラインと共に鼓動する壮大なトラック。アクセントとしてホイッスルのように吹き付けられるシンセにハッとさせられる。

文:Yusaku Shigeyasu