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Bjorn Torske

Bjorn Torske

Kokning

Smalltown Supersound

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野田 努   Jan 15,2011 UP

 ノルウェーのコズミック・ディスコを聴いていると、ああ、この国は本当に福祉国家なんだなと思う。ディテールを見れば問題点もあるのは当然だろう、が、少なくとも日本で暮らすよりは老後の心配が少ないことは間違いない。昨年リリースされたプリンス・トーマスのファースト・アルバム、ディスクヨッケのセカンド・アルバム、あるいはリンドストロームの歌モノ......これらすべてに共通するのは楽天性、お気楽さ、ピースな感覚で、それはダブステップの暗さ、チルウェイヴの憂鬱、あるいはジュークの激情などとはまったく異なる。ディスコの快楽主義は深い絶望の上に成り立つものだが、北欧のコズミック・ディスコからは絶望がまったく聴こえない。シカゴ・ハウスの淫靡さともデトロイトの暗い情動とも無縁である。好むと好むざるとに関わらず、それがコズミック・ディスコの魅力である。

 ノルウェーのダンス・シーンにおけるゴッドファーザー、ビョーン・トシュケの昨年11月にリリースされた『コクニング』である。トシュケは、よく知られたところでは1991年にIsmistik名義でオランダの〈Dジャックス・アップ・ビーツ〉からアシッド・ハウスの12インチを、あるいまた同年にオープン・スカイズ名義ではロンドンの〈リーンフォースド〉からジャングルの12インチをリリースしている。1998年にはロンドンのデトロイト・フォロワーのレーベル〈フェロックス〉から最初のアルバムを発表している。スウェーデンの〈スヴェック〉からもシングルを出している。いずれにしても、インディ・レーベルを拠点に20年ものあいだ作品をリリースし続けているのがトシュケである。

 『コクニング』は、2年ぶりの通算4枚目のアルバムとなる。リリース元はコズミック・ディスコ・ブームによって国際的な名声を得た〈スモールタウン・スーパーサウンド〉。2年前の前作『ファイル・ナップ』を特徴づけたのがダビーなミニマルやエレクトロだとすれば、『コクニング』は70年代前半の、『アウトバーン』以前の、つまりトゲや毒のないクラフトワークがディスコをやっているかのような感じで、クラウトロック・テイストがピースな感覚のもとで強調されているようだ。全体的にテンポは下がって、リズムのヴァリエーションは格段に増えている。メロディは際だち、リスニング色が強まっている......とも言える(が、もちろんこれはダンス・サウンドである)。

 スライドギターのメランコリックな音色を活かしたタイトル曲"コクニング"、アコースティック・ギターのコードストロークとシンセサイザーの音色を重ねる、ベルゲン市内にある山の名前を冠した"グルフィェル"、親しみやすいメロディとハウス・ビートがミックスされる"ニッテン・ニッテン"、ピアノが印象的な"スリッテ・スコ"といった曲が象徴的で、典型的なコズミック・ディスコの"ベルゲンセレ"もあるが、前作にあったチップチューンめいたエレクトロはない。洗練され、ずいぶんと心地よく、お洒落で、まあとにかく、ある種のゆるさ、ほのぼのさ、微笑みといったものが、空気のように漂っている。トゲも毒も絶望もないが、『ファイル・ナップ』でファンになったリスナーにとっては、間違いなく前作以上に好きになれるアルバムである。

野田 努

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