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Jason Urick

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三田 格   Feb 21,2012 UP

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 17日から公開されているアンドリュー・ニコル監督『タイム』は、アメリカ人が愛してやまないアンチ・エイジがテーマかと思って観ていると、すぐにも格差社会の話だということがわかってくる。ふたつのテーマを単純化して見せてしまう手腕は鮮やかで、実にわかりやすく、しかもボニー&クライドを思わせるアクション映画としてまとめてしまうのだからかなわない。オキュパイという直接行動をとる者がいるかと思えば、『タイム』のようなエンターテインメントをつくる人がいる。ひとつひとつが単純極まりないものでも、それらが集まって「流れ」がつくられることに、日本にはないダイナミズムを感じてしまう。

 『裏アンビエント・ミュージック』のあとがきで僕はアンビエント・ミュージックというのはジャンル・ミュージックではなく、様々なジャンルに偏在するスタイルだと書いた。そして、とくにジャズならジャズの、あるいはテクノならテクノにおけるアンビエントの特徴といった議論には向かわなかった。むしろ撹乱させたといった方がいい。しかし、現代音楽にはそれなりに傾向があるし、ワールド・ミュージックにもどこか似通ったセンスは感じられる。ロック・ミュージックも同じくで、とくに近年、USアンダーグラウンドが生み出す発想には単純なものが多く、なかでもロウ・ファイから転じたものには「流れ」以上のものを感じ取れることが少ない。そして、数だけが多い。グレッグ・デイヴィス、ミルー、マウンテンズ、エメラルズ、ピーター・ブロデリック、ロバート・A・A・ロウ、インフィナイト・ボディ、モーション・シックネス・オブ・タイム・トラヴェル......

 ジェイスン・ユーリックのセカンド・ソロも発想の面では前作をそのまま踏襲し、レイヤーを微妙にズラしながら重ねるなど、全体としてはスキルを上げまくっている。冒頭からジ・オーブをドライにしたようなスモーク・サウンドが浴びせられ、そのままエンディングまで続いても文句はないぞーと思っていると、またしてもヴァージン・プルーンズを思わせるミニマル・ラーガやエスニック・タイプへと曲が変わっていく。1曲で1枚をやりきらないところがロック的だともいえるし、コンセプトではなく、演奏を聞かせたいというのもそうなのだろう。そして、最後に置かれたスモーカーズ・ドローンが圧巻のひと言。3時間ぐらいは聴きたいと思っていると、たったの6分で終わってしまう......

 また、ヘックスラヴ(アンビエント本P223)という名義はもう使わないのか、88人目のボアドラマーだったザック・ニールスンが本人名義でリ リースしたセカンド・アルバムも『ウォント・トゥー・ビー・ナイス』以来のフル・アンビエント作となった。前作にあたる『ウィックト・ワーク・イット・アウト』はいつも通りドラミングをあれこれと試す作風で、説明が複雑になるので、まー、おいておくとして、彼が思い出したようにアンビエント表現へと回帰してくるのはなぜなのか。しかも、この男の場合は前にも増して曲の構造が単純というか、ドラムで複雑なことをやっている反動としか思えないほどシンセサイザーの厚塗りでことを済ましてしまうとも。バリアリック・ヴァージョンのクラウス・シュルツェか、限りなく上昇気分にさ せてくれるシャルルマーニュ・パレスタイン......などといったら松村正人にテキサスのライヴハウスでベースをお見舞いされてしまうかな。つーか、ジャ ケット・オブ・ジ・イヤー?

 そうはいっても『タイム』は問題をとても単純化してしまったために(『コン・エアー』が『恐怖の報酬』にはなれなかったように)問題提起はあっても人間を描いた作品としての深みには欠けている。経済格差が人間関係にもたらす微妙で複雑な機微はそれこそチョン・ジュウン監督『子猫をお願い』にはかなわない。あの重層的な配置の妙こそ格差問題の核心に迫っていたといえる(彼女はもう映画を撮らないのかなー)。

三田 格