ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Cornelius - 2022.7.30@Fuji Rock Festival (review)
  2. interview with HASE-T 人生が変わるような音楽 (interviews)
  3. Actress × Mount Kimbie ──アクトレスとマウント・キンビーがコラボレイト (news)
  4. Ebi Soda - Honk If You're Sad (review)
  5. Lianne Hall - Energy Flashback (review)
  6. black midi - Hellfire (review)
  7. Mary Halvorson - Amaryllis & Belladonna (review)
  8. Pan American - The Patience Fader (review)
  9. ダブ・パトロール - ──2022年上半期の推薦盤10枚 (review)
  10. interview with Cornelius 新作『Ripple Waves』を語る (interviews)
  11. Cornelius ——“変わる消える”の配信を再開したコーネリアス (news)
  12. interview with Superorganism 僕らが目指しているのはポップ・ミュージックを作るってことだけ (interviews)
  13. Brian Eno ──ブライアン・イーノのニュー・アルバムがリリース、ひさびさのヴォーカル作品 (news)
  14. Claire Rousay - Everything Perfect Is Already Here (review)
  15. interview with Wu-Lu 世界が変わることを諦めない音楽 (interviews)
  16. 새눈바탕/セヌンバタン(Bird's Eye Batang) - 손을 모아 /ソヌル モア(Flood Format) (review)
  17. 寺尾紗穂 - 余白のメロディ (review)
  18. interview with Cornelius 星の彼方へ (interviews)
  19. こんにちでもなお ガイガーカウンターを手にすれば「ラジウム・ガールズ」たちの音を 聞くことができる - ──映画『ラジウム・シティ~文字盤と放射線・知らされなかった少女たち~』、アルバム『Radium Girls 2011』 (review)
  20. Big Thief ──ビッグ・シーフの初来日公演が決定 (news)

Home >  Reviews >  Album Reviews > BLYY- Between man and time crYstaL poe…

BLYY

Hip Hop

BLYY

Between man and time crYstaL poetrY is in motion.

SUMMIT

大前至   Sep 30,2020 UP
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 池袋を拠点に2001年より活動を続けてきたというヒップホップ・グループ、BLYY (ブライ)が、活動20年目にして初のフル・アルバムとしてリリースした本作。メンバーの年齢的にもおそらく40歳を過ぎており、ベテランと言っても差し支えないと思うが、ライヴを中心に地道に(かつ着実に)キャリアを積んできた彼らの年輪のひとつひとつがしっかりと刻まれた、実に深く染み入ってくるファースト・アルバムだ。

 5MCによるマイクリレー、MCでもある alled がフルプロデュースしたトラック、そして DJ SHINJI によるスクラッチと、それら全てが、彼ら自身、リアルタイムに経験してきたであろう90年代から2000年代初頭のヒップホップがベースとなっており、現在進行形の日本のヒップホップとは全く違った空気感を放っている。例えばブーンバップ・ヒップホップの流れとも共通する部分は感じられるものの、しかし結果的に目指している方向性は全く異なる。個人的には最盛期の LAMP EYE や BUDDHA BRAND などを思い出したりもしたが、BLYY が醸し出すムードは、そういった往年のグループともまた異なる。彼らのサウンドの中にあるモノクローム感というか、ピュアでありながら薄汚れたようなダークな感触は、もしかしたら池袋という街の空気感がダイレクトに反映された結果なのかもしれない。

 勝手な想像ではあるが、彼らがグループ結成当初に作り上げたスタイルをそのまま継承し、純粋培養させながら、ひたすら磨き上げてきた結果でき上がったのが本作だとすれば、非常に納得がいく。その一方で、流行りには一切乗らずにひとつのやり方をひたすら20年も続けてきたのであれば、正直驚くしかない。アルバム1曲目の “MAN” を聞いただけでも、彼らの声質からフロウ、ライミング、リリックに込められた言葉のひとつひとつ、さらにサンプリング・ソースやトラックの出音まで、おそらく30代後半以降の日本語ラップ・ファンであれば、何か強く心に引っかかってくる部分があるだろう。単なるノスタルジーともまた違う、彼らなりの美学が作り出した究極のアートがこの作品には宿っている。

 ちなみに本作のリリース元は PUNPEE や BIM、SIMI LAB、C.O.S.A. らを擁する、あの〈SUMMIT〉だ。いまの日本語ラップ・シーンを背負って立つ存在である〈SUMMIT〉が、BLYY のようなアーティストの作品を世に送り出すというのは本当に意義深いことであり、改めてその審美眼には恐れ入る。

大前至