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interview with Lex Blondel (Total Refreshment Centre) サッカー96とキーラン・ブース

interview with Lex Blondel (Total Refreshment Centre)

すべて新録、UKジャズのトップ・プレイヤーたちが集結したコンピレーション

──コミュニティを生み出したスタジオ創設者が明かすその背景

小川充    通訳:佐藤空子   Mar 30,2023 UP

 サウス・ロンドンのジャズ・シーンで活躍するミュージシャンたちが、その活動拠点とする場所やヴェニューとしてよく挙げるところがある。レーベル活動やイヴェントなどをおこなう〈ジャズ・リフレッシュド〉や〈トータル・リフレッシュメント・センター〉がそれである。〈トータル・リフレッシュメント・センター〉はロンドン北東部のダルストンという町にあるスタジオで、南ロンドンのミュージシャンもよく利用しており、箱側としても彼らの活動をサポートしている。リハーサル・スタジオなどの設備も完備しており、比較的安価な料金で誰でも利用できるという点がポイントで、通常のライヴ営業時間の後にフリーで飛び入り参加できるアフター・アワーズ・セッションがある。このセッションでミュージシャンたちは腕を競い、お互いの技術向上を図り、横の繋がりが生まれていく。こうした環境が南ロンドンのジャズ・シーンが発達していく要因のひとつでもあるのだ。〈トータル・リフレッシュメント・センター〉はレーベル運営もおこない、ヴェルス・トリオやニュー・グラフィック・アンサンブルがアルバムやEPを出し、シカゴからやってきたマカヤ・マクレイヴンがロンドンのミュージシャンたちとセッションを繰り広げたライヴ録音『ホエア・ウィ・カム・フロム』もリリースしている。ほかにサンズ・オブ・ケメットザ・コメット・イズ・カミング、トライフォース、ビンカー・アンド・モーゼスイル・コンシダードなどが録音スタジオとして用いている。

 こうして、およそ10年ほどロンドンの音楽シーンを支えてきた〈トータル・リフレッシュメント・センター〉が、このたび初のレーベル・オムニバス・アルバムを〈ブルーノート〉経由でリリースした。収録には馴染み深いサッカー96はじめ、バイロン・ウォーレン、ジェイク・ロング、マターズ・アンノウン、ツァイトガイスト・フリーダム・エナジー・エクスチェンジ、ニュー・グラフィック、レザヴォアと、サウス・ロンドンのみならず、世界中から新旧の気鋭ミュージシャンが参加する。また、ジャズというスタイルにとらわれることなく、ヒップホップ、ダブ、ソウル、ファンク、ドリルなどさまざまな音楽が融合し、ロンドンらしい折衷的なサウンドを聴かせている点も特徴だ。このアルバムのことを含め、〈トータル・リフレッシュメント・センター〉の設立やこれまでの歩みなどについて、創設者であるレックス・ブロンデルに話を訊いた。

「人」なんだよ。基本的にはそこにあるコミュニティなんだ。同じような考えを持っていたり、異なるスキルを持ったりする人たちと出会うことができる。他のところだと皆自分のスタジオにこもって誰とも出逢わないよね。何の繋がりもないっていうのがよくあるけど、ここは全く逆。

レックスさんはトータル・リフレッシュメント・センター(以下、TRC)の設立者とのことですが、いつ、どのように設立されたのかからお伺いできますか? また、今回の取材には同席できなかったようですが、当初同席予定だったエマさんという人物はどのようなご担当なのですか?

レックス・ブロンデル(Lex Blondel、以下LB):2012年に友人と一緒にTRCをはじめたんだけど、もともとはロンドン東部のハックニーでレコーディング・スタジオを立ち上げようと思っていたところだった。その直前にスタジオを作るためのスペースを見つけて作業をはじめたんだけど、問題があってかなり急ぎ足で進めなければならなくなったんだ。それで別のスペースを探しはじめた。するとガムトゥリーっていうクレイグス・リストのようなサイトでこの広告を見つけたんだ。そこに「ここ知っているぞ」っていうスペースがあがっていた。
 そこはもともとジャマイカの社交場みたいなところで、イヴェントをやったり、リハーサル・スタジオがあったりして、レゲエの、それも伝説的なレゲエ・ミュージシャンがよく通っていたところ。知っている場所だったこともあって、エキサイトしてすぐに見に行ったら、友人たちとレコーディング・スタジオを作るのに最適なスペースだった。で、すぐに決めたんだ。スペースがとても広かったし、レコーディング・スタジオひとつだけじゃなくて、いろいろな部屋も共用スペースもあったからね。すぐに一緒にやりたい人たちとコンタクトを取ったんだ。スタジオでは、すぐにプロデューサーのキャピトルKに仕事をするために来てもらった。スペースのひとつがミュージック・ヴェニューとして使われていた大きな部屋だったから、すぐにギグをはじめた。サッカー96のダン・リーヴァーズやマックス・ハレットとかは早い時期に来るようになって、ギグをはじめたんだ。アルバムのアートワークを担当しているのはライムンド・ウォンという人物なんだけど、彼もまたライヴの共同企画ですぐに関わることになったんだ。レコーディング・スタジオを持ち、一緒に仕事をしたい人たちに囲まれているという動機だけで、ごくごく有機的な形ではじまったんだ。
 エマ・ウォーレンはTRC出身のジャーナリスト。彼女はもともとクラブ・ナイトで踊ったり、ライヴ・ミュージックを見に来たりする客としてやってきて、すぐに友だちになった。彼女がよく来ていた当時は、会場そのものが政府の審議会によって閉鎖の危機にさらされていた。ムーヴメントとまではいかなくとも、結構大きな流れになって文化を作っていたこともあって、彼女はそれを記録し、その場所のストーリーとそこにいる人びとのストーリーを伝えるための小さなパンフレットみたいなものか、本を作りたいと思っていた。そこで彼女は記録用にと、そこにいる僕たち全員にインタヴューをはじめた。ありがたいことに、そのときTRCはなんとかその場所にとどまることができたんだけど、彼女はその後インタヴューや取材記事を本にまとめた。エマはプロの音楽ジャーナリストで、普段から講演会の仕事や対談なんかもしていて、文化やコミュニティを生み出す空間の例としていつも僕たちのことを話しているんだ。

RCはライヴ・ヴェニューであると同時に、実験的なスタジオ・ラボとしての機能も備えています。それらを含めてこの施設の特徴などを伺えますか?

LB:スタジオは2階建ての大きなジョージアン様式の倉庫で、メインのレコーディング・スタジオがひとつあって、キャピトルKやジョーダン・パリー、ダン・リーヴァーズのような人たちが利用している。そこでプロデューサーとして、バンドのレコーディングやミキシング、アルバムのマスタリングなど、全てをおこなうんだけど、マカヤ・マクレイヴンヌバイア・ガルシアサンズ・オブ・ケメットなんかが長年に渡ってアルバムを作っている。プロダクション・ルームも11室ほどある。6~7年前からの常連のアラバスター・デプルームをはじめ、スナップド・アンクルズというバンドのマイキー・チェスナットなど、様々な人がそれら11のスタジオを使っているんだ。それぞれのスタジオは、基本的に誰かが音楽を書き、プロデュースし、人とコラボレーションする場所。たとえばスナップド・アンクルズのマイキーは、そこで全てのアルバムを制作したし、以前はアートワーク担当だったライムンド・ウォンと一緒にフローティング・ワールド・ピクチャーという新しいバンドを立ち上げた。人びとが出会い、知り合い、そして互いにプロジェクトを作り上げていく例のひとつだね。ライヴ・ヴェニューは、以前は1階に大きな会場があって、そこでいろいろなことをやっていた。いまはもう少し小さなスペースになっていて、そこで試聴会やライヴ・ショーケースなどをおこなうんだけど、高品質の4チャンネル・ステレオを導入している。
 少し調べてみたんだけど、この建物が建てられたのは20世紀初頭のようで、1906年頃だと思う。この建物の全貌は、さっき話したエマ・ウォーレンの著書でも語られている。ちなみにタイトルは『メイク・サム・スペース』。彼女は僕たちのTRCとそれに関わる人びとの物語を語っていて、僕たちの前に存在したジャマイカン・ソーシャル・クラブの人びとの物語も語り、20世紀初頭に製薬会社のバイエルがこの建物を建てたときまで遡っているんだ。そう誰が建てたのか、その人についてまで書いている。すべてを洗いざらい書いているよ。

サウス・ロンドンのジャズ・シーンが注目を集める近年ですが、そうしたシーンにいるアーティストたちの活動拠点のひとつがTRCです。こうしたアーティストたちがTRCで活動するようになったのはどのような理由からですか?

LB:アラバスター・デプルームがいつも言っているように、「人」なんだよ。基本的にはそこにあるコミュニティなんだ。同じような考えを持っていたり、異なるスキルを持ったりする人たちと出会うことができる。たとえばアートワークを作ってくれる人に出会える。TRCではバンドのレコーディング、ミックス、写真撮影、ヴィデオ作成も可能だ。スペースの中で何でもできるっていうのもあるけど、他のところだと、スタジオがあっても皆自分のスタジオにこもって、誰とも出逢わないよね。そこでは他人と何の繋がりもないっていうのがよくあるけど、ここは全く逆。皆がお互いを知っていて、お互いに協力し合い、チャンスを作り出している。
 アラバスター・デプルームとかはその恰好の例さ。彼は7年程前にマンチェスターからやってきて、ロンドンに知り合いがいるわけでもなかった。でもスタジオを構えたらすぐに馴染んでくれて、ヴェニューをやっていた頃に声をかけてくれた。そこから月1回開催するシリーズを一緒にはじめたんだ。彼は毎回新しいミュージシャンを招いて、自分の音楽を一緒に演奏するギグをキュレーションしていた。そのおかげで、一方では新しいミュージシャンと出会い、新しいコラボレーションを生み出すこともできた。もう一方で、商業的にあまり偏らない方法でオーディエンスを開拓することにも繋がった。僕たちはただ彼の音楽が好きで、それを信じていたんだ。僕たちがこれらのイヴェントをやったのは、その音楽が好きだからであって、お金目当てではなかった。もともとカッコイイからやろうぜって感じだったんだ。50人しか来なくてもいい、これはすごくいいからやり続けようってね。5年後には2000人規模にしようなんて考えていなかった。実際にそうはなったけど、当時はそれを目指していなかった。音楽も素晴らしいし、いいなって思うから、とにかくやってみよう、やり続けようという感じだった。自分の心の中から出てくるもので、質が高ければ、それを大事にすればいい。コンサートを開くと、音響エンジニアがいい仕事をしてくれないとか、嫌な思いをしたりすることってあるよね。あそこでは皆自分のやっていることが好きだから、その空間が好きだから、その空間を象徴するものが好きだから、皆一生懸命やってくれる。皆がベストを尽くし、皆がお互いを思いやり、仕事をするんだ。こういう理由があるからこそ、皆来てくれるんだと思う。

RCの歴史の中で、特に印象に残っているギグなどありますか?

LB:たくさんあるけど、少しメインストリームに近いところに進出できたことがあって、物事がうまく行って、人も仕事も蒔いた種が育っている感じがすることがあったんだ。ジャイルス・ピーターソンと一緒にスペースで何度かイヴェントをやったんだけど、基本的には僕がバンドをブッキングした。その日はザ・コメット・イズ・カミングが来てくれたんだけど、まだ彼らがブレイクする前だったね。ライターやDJにも来てもらったよ。それは当時の僕たちにとって大きな出来事であり、ちょっとしたステップ・アップのようなものだった。たぶん、2016年か2017年のことだったはず。
 ここまで来るのにたくさんのステップがあった。大きな一歩のように聞こえるかもしれないけど、それ以外で言うと最初のイヴェントだね。サッカー96、スナップド・アンクルズ、そして今日まで実際にスタジオにいるような人たちっていう、お気に入りのミュージシャンに演奏してもらった。当時の彼らは超人気者ではなかったけど、同じような意識の仲間たちが集まって、素晴らしい時間を過ごすことができて、誰かに頼ることなく、自分たちのやりたいことを自分たちでできるって気づけるきっかけになった。また、スペースは少し狭くなってはいたんだけど、シード・アンサンブルやジョー・アーモン・ジョーンズのような人たちが本当に好きで見に来てくれる、そんなオーディエンスが集った黄金時代もあったね。本当に美しい時期だった。マイシャのギグもそうだね、話をはじめたらきりがないし、本当にたくさんあったから選べないね。
 黄金期に関してはけっこうずっとあったと思う。それぞれの時期にそれぞれの素晴らしいところがあったからね。特にジャズ・シーンを語るなら、その前はジャズというよりポスト・パンクに近いものだった。そのムーヴメントについて言うのならば、僕たちは2015年頃から関わっていたかな。2015年から2017年はTRCの中でジャズが飛躍的に成長した時期だ。テオン・クロスやジョー・アーモン・ジョーンズ、ヌバイア・ガルシア、ジェシー・カーマイケルといった人たちと初めてライヴをしたんだよ。誰も知らなかったロンドンの若いジャズ・シーンだね。僕たちは2015年頃から彼らと仕事をはじめて、何年も一緒に仕事をしてきた。でも、何かが動いているな、このシーンが本当に遠くまで届くものだなと確信したのは、2017年のことだったと思う。200人くらいのライヴだったものが、500人とか毎週来てくれるようになったんだ。その頃からレーベルとの契約が決まっていき、ローリング・ストーン誌に大きな記事が掲載されるようになり、注目されるようになった。だから僕にとっての黄金期は、いまに繋がっているすべてのことなんだ。彼らとのこうしたムーヴメントを一緒に生み出してきたこともそうだけど、誰よりも先に僕たちがその音楽に興奮できたことそのものかな。それが僕にとっての黄金期だろうね。

質問・序文:小川充(2023年3月30日)

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小川充 小川充/Mitsuru Ogawa
輸入レコード・ショップのバイヤーを経た後、ジャズとクラブ・ミュージックを中心とした音楽ライターとして雑誌のコラムやインタヴュー記事、CDのライナーノート などを執筆。著書に『JAZZ NEXT STANDARD』、同シリーズの『スピリチュアル・ジャズ』『ハード・バップ&モード』『フュージョン/クロスオーヴァー』、『クラブ・ミュージック名盤400』(以上、リットー・ミュージック社刊)がある。『ESSENTIAL BLUE – Modern Luxury』(Blue Note)、『Shapes Japan: Sun』(Tru Thoughts / Beat)、『King of JP Jazz』(Wax Poetics / King)、『Jazz Next Beat / Transition』(Ultra Vybe)などコンピの監修、USENの『I-35 CLUB JAZZ』チャンネルの選曲も手掛ける。2015年5月には1980年代から現代にいたるまでのクラブ・ジャズの軌跡を追った総カタログ、『CLUB JAZZ definitive 1984 - 2015』をele-king booksから刊行。

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