「DJ DON」と一致するもの

DADDY G(MASSIVE ATTACK) & DON LETTS - ele-king

 DADDY G(MASSIVE ATTACK) & DON LETTSが揃って来日ツアー!
 UKサブカルチャーの最重要人物Don Lettsがメンバーとして名を連ね、「反骨と創造の精神」を軸に活動する英日コレクティヴ、REBEL DREAD  HARDWAREが各地豪華共演者と共に2年振りのジャパンツアー開催。

英国から、すばらしい2トップがやって来る

——野田努

 かしこまって言うことでもないが、いま、我々は救いようのない混乱のなかにいる。雷鳴轟く闇夜に放り出され、立っていることさえ困難な船に乗っている気分だ。何をよすがとすればいい? いまも音楽は灯台の役割を担うことができるのだろうか。危険な場所を指し示し、時代における道標(みちしるべ)たり得るだろうか。
 およそ半世紀前、「パンキー・レゲエ・パーティ」が英国で暮らす白人の若者たちの耳と精神を拡張したことは周知の通りだ。そのきっかけを作ったのがロンドンのドン・レッツというDJであったことも、歴史の教科書を引くまでもなく明らかだ。パンクとレゲエの合流によって促された精神的な連帯は、人種差別や人びとを抑圧するシステムに立ち向かった。そうして、かつてない文化の扉が開いた。ベースが響き、言葉が舞う。ブリストルではダディ・GというDJがその後に続いた。「ワイルド・バンチ」が誕生し、それはやがてダブの重低音を纏った漆黒のグループ、マッシヴ・アタックへと展開する。
 ドン・レッツとダディ・Gがやって来る。2026年は、ちょうどパンク誕生50周年にあたるわけだが、いまなおドン・レッツが第一線で活躍していることは驚異である。50年前、パンクにレゲエを教えたこのDJは、自ら開けた扉から広がるフロア上で、そのプレイリストを更新し続けている。ヒップホップからジャングル、ダブ、インディ・ロック、ダンスホール……腹の底に響く低周波の音……。しかし重要なのはジャンルではない。その音楽が人びとにとってどんな意味があるか、だ。必要とされている夢か、あるいは特効薬か。リズムという底流のなかに出口を見つけるかもしれない。ドン・レッツとダディ・Gは、いまも音楽が前向きなパワーを持っていることを熟知している、その筋の達人たちである。同士たちよ、フロアで会おう。

REBEL DREAD HARDWARE
DISCIPLES OF BASS TOUR '26

DJ
DADDY G (MASSIVE ATTACK)
DON LETTS (REBEL DREAD HARDWARE)

SOUND OPERATER
SOUND OPERATER
内田直之(※TOKYO ONLY)

チケット発売中 :
https://eplus.jp/rebeldreadhardware/

【東京公演】
日時:4月10日(金) 24:00~5:00
会場:LIQUIDROOM https://www.liquidroom.net/
出演者:DADDY G (MASSIVE ATTACK)
DON LETTS (REBEL DREAD HARDWARE)
内田直之(SOUND OPERATE)

more

【京都公演】
日時:4月11日(土) 21:00~4:00
会場:CLUB METRO https://www.metro.ne.jp/
出演者:DADDY G (MASSIVE ATTACK)
DON LETTS (REBEL DREAD HARDWARE)
Michiharu Shimoda (SILENT POETS)
HATCHUCK (REBEL DREAD HARDWARE)

【博多公演】
日時:4月15日(水) 20:00~2:00
会場:KIETH FLACK https://kiethflack.net/
出演者:DADDY G (MASSIVE ATTACK)
DON LETTS (REBEL DREAD HARDWARE)
+MORE

【名古屋公演】
日時:4月17日(金) 20:00~
会場:Live & Lounge Vio https://liveloungevio.com/
出演者:DADDY G (MASSIVE ATTACK)
DON LETTS (REBEL DREAD HARDWARE)
HAYASSEN / OBRIGARRD

【大阪公演】
日時:4月18日(土) 18:00~23:00
会場:SOCORE FACTORY https://socorefactory.com/
出演者:DADDY G (MASSIVE ATTACK)
DON LETTS (REBEL DREAD HARDWARE)
[LIVE]:おとぼけビ~バ~(Otoboke Beaver)
+MORE

【広島公演】
日時:4月19日(日) 17:00~21:00
会場:広島クラブクアトロ https://www.club-quattro.com/hiroshima/
出演者:DADDY G (MASSIVE ATTACK)
DON LETTS (REBEL DREAD HARDWARE)
高木完 & K.U.D.O (MAJOR FORCE PRODUCTIONS)

【松山公演】(※DON LETTS ONLY)
日時:4月25日(土) 21:00~3:00
会場:CLUB BIBLOS https://x.gd/gg4BQ
出演者:DON LETTS (REBEL DREAD HARDWARE)
クボタタケシ / HATCHUCK (REBEL DREAD HARDWARE)

【前橋公演】(※DON LETTS ONLY)
日時:4月26日(日) 15:00~22:00
会場:SPORT BAR UNIT TWO https://unit-two.owst.jp/
出演者:DON LETTS (REBEL DREAD HARDWARE)
KING OF OPUS

主催:REBEL DREAD HARDWARE
https://www.rebeldreadhardware.com/

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DADDY G (MASSIVE ATTACK)

 DADDY Gは、MASSIVE ATTACKの中心的メンバーであり、WILD BUNCH SOUND SYSTEMの創始者としても知られる。
 SMITH&MIGHTY、TRICKY、PORTISHEAD等に代表されるDUB、REGGAE、FUNK、DISCO、HIP HOPを取り込んだUK ブリストル・サウンドの先駆者としてその名を世に刻んでいます。流れの早いシーンにおいてグローバルに活躍するDADDY G。そのスピリットは、あらゆるジャンルのアーティスト達に多大な影響を与えてきた。MASSIVE ATTACKとして活躍する以前は、DJとしてその名を轟かせ、当時10歳という若さでミックステープを作成、頭角を現し出し、その卓越したセンスで1980年にはブリストルで一番の若手DJとしての地位を確立していた。彼がかける斬新なDISCO、PUNK FUNK、SOUL、DUB、REGGAEには多くのファンが虜になり、そのファンの熱狂ぶりからも、彼のDJセットがどれだけ他のアーティストと一線を期していたことかがうかがう事ができる。
 その選曲やミックスのスキルのみならず、マイクも自由に操るDADDY G。多くのDJが存在する中で、彼がクリエイトするミュージック・ワールドには、唯一無二のとても特別な暖かみと存在感を感じる事が出来る。
 MASSIVE ATTACKとして2026年に新作発表・大規模なツアーが控えており、新たなフェーズを迎える。

DON LETTS (REBEL DREAD HARDWARE)

 ロンドン・ブリクストン生まれ。 ヴィヴィアン・ウエストウッド「SEX」と並び、ロンドンカ ルチャーの中心的存在だったショップ 「アクメ・アトラクションズ」を運営したドン・レッツは、そのアティチュードから、ファッション、そしてショップの壁を重低音で振動させるダブレゲエで注目を集めた。彼が初めてDJを務めたクラブ「ROXY」は、100日間の限定営業であったが、パンクスにレゲエの魅力を伝えたことで伝説となった。その経験から真のDIY精神を学んだ彼は映像作家としても活動。リアルタイムで当時の映像を撮り、 '79年に初のパンク・ドキュメンタリー映画『PUNK ROCK MOVIE』を制作。また、THE CLASH全てのMVを監督したことでも知られている。 ‘80年代半ばにはTHE CLASH を脱退したMICK JONESと「BIG AUDIO DYNAMITE」を結成。‘03年 THE CLASHのドキュメンタリー『WESTWAY TO THE WORLD』でグラミー賞受賞。'05年にパンクの核心にせまった『PUNK:ATTITUDE』を制作。‘21年 世界中で愛されるコンピシリーズ『Late Night Tales』にセレクターとして参加。独自のダブアウトされたセレクションで賞賛を集めた。自身のソロプロジェクトである「REBEL DREAD」名義初のアルバム「Outta Sync」を‘23年リリース。アルバムでは故・TerryHallやHollie Cookなどゲストボーカルが参加。
 BBC RADIO 6 Musicにて毎週土曜日に自身の番組である「Culture Clash Radio」を持つ。STUSSYオリジナル・トライブとしての顔も持ち、カルチャー・アイコンとして現在も世界中のクリエイターから熱いオファーを受ける。

MURO - ele-king

 強力な組み合わせのコンピレーションがリリースされる。キング・オブ・ディギンことMUROは、90年代の時点でレアグルーヴの観点からクラブで山下達郎をプレイしたりと、80年代日本の音楽の再評価に先鞭をつけた、まさに草分け的存在だ。そんなMUROがいよいよ〈ALFA〉を掘るというのだから見すごせない。
 3月25日発売のその『DIGGIN' ALFA -selected by MURO-』は、赤盤/青盤と呼ばれる2種類のLPと、CD盤を合わせた計3種類が存在。それぞれ収録曲も異なっているが、吉田美奈子やカシオペアから昨年初めてリイシューされ話題を呼んだリンダ・キャリエールまで、グルーヴ感を忘れずに編まれているところはMUROならではだろう。曲目など詳細は下記より。

“MURO x ALFA 55th Anniversary”コンピ盤『DIGGIN' ALFA -selected by MURO-』、2026年3月25日 CD/LP 同時発売決定!

 日本が世界に誇るDJ/プロデューサー/レコード・ディガー、MUROが良質な音源の宝庫であるALFA音源から選りすぐりかつオブスキュアな音源をコンパイルしたコンピレーション盤『DIGGIN' ALFA -selected by MURO-』を2026年3月25日にリリースする。『DIGGIN' ALFA -selected by MURO-』は、CDとLP1、LP2の3種の収録曲がそれぞれ異なる内容となっており、MUROならでは独自のグルーヴ感を徹頭徹尾湛えた決定版的セレクションは、MUROファンだけでなく、これまでのALFAファンや様々な世代にもフレッシュな「新譜」として響くことは間違いない。なお、アナログはLP1の〈赤盤>とLP2の〈青盤〉の2種で発売となる。対象店舗予約・購入特典も決定しているので、確実な入手にはお早めの予約・購入をお勧めしたい。

〈MUROコメント〉
「レア・グルーヴ的な観点から掘り起こしたALFAの音源をもう一つのタペストリーのように織りなして『DIGGIN' ALFA -selected by MURO-』が生まれました。多くの方々に楽しんでいただけたらなによりです。」

■詳細はこちら https://www.110107.com/muro_diggin_alfa
■ご予約・ご購入はこちら https://lgp.lnk.to/muro_diggin_alfa

【『DIGGIN' ALFA -selected by MURO-』各種 予約・購入特典情報】
〈対象店舗/特典内容〉
・Amazon.co.jp:メガジャケ(各形態別絵柄)
・楽天ブックス:オリジナルステッカー(赤盤絵柄)
・セブンネットショッピング:オリジナルミニスマホスタンドキーホルダー(青盤絵柄)
・ディスクユニオン:オリジナル缶バッジ(各形態別絵柄)

〈注意事項〉
※全ての特典に数に限りがございますので、無くなり次第終了となります。予めご了承ください。
※CD/LPとも1枚購入につき1つ購入特典をお渡しいたします。
※対象店舗以外での配布はございません。予めご了承ください。

【商品概要】

■CD『DIGGIN’ ALFA -selected by MURO-』
2026年3月25日発売
品番:MHCL-3127
定価3,500円(税込)
・ライナーノーツ封入

■LP1:『DIGGIN' ALFA -selected by MURO- 1』〈赤盤〉
2026年3月25日発売【完全生産限定盤】
品番:MHJL-422
定価4,950円(税込)
・ライナーノーツ封入
・Warner Music Mastering 北村勝敏氏によるカッティング
・ソニー・ミュージックソリューションズ静岡プレス

■LP2: 『DIGGIN' ALFA -selected by MURO- 2』<青盤>
2026年3月25日発売【完全生産限定盤】
品番: MHJL-423
定価4,950円(税込)
・ライナーノーツ封入
・Warner Music Mastering 北村勝敏氏によるカッティング
・ソニー・ミュージックソリューションズ静岡プレス

【『DIGGIN' ALFA -selected by MURO-』各盤収録楽曲】
<ご予約・ご購入はこちら https://lgp.lnk.to/muro_diggin_alfa
※CDとLP1、LP2がそれぞれ異なる収録内容です。
※アナログは、LP1の<赤盤>とLP2の<青盤>の2種展開。

収録楽曲】全16曲
01. BREATH OF NIGHT / 喜多嶋 修
02. Say You Will / 喜多嶋 修
03. LOVIN' YOU / 吉田美奈子
04. REFLECTIONS OF YOU / CASIOPEA
05. FREESIA / CASIOPEA
06. TORNADO / 吉田美奈子
07. BREATH OF NIGHT (夜気・YAKI) / 横倉 裕 ※CDのみ収録
08. ボン・ボヤージ波止場 / 小坂 忠
09. 雲のゆくえに / 吉田美奈子
10. SUMMER BLUE / ブレッド&バター
11. ORIENTAL EXPRESS / 横倉 裕 ※CDのみ収録
12. HOT SAKE / 麻上冬目
13. YUMEDONO / 大村憲司
14. BLIZZARD / いしだあゆみ
15. BAMBOO BONG /大村憲司
16. うたたねドリーマー/ 鈴木こう

収録楽曲】全8曲
<SIDE-M_A (SIDE-A)>
01. BREATH OF NIGHT / 喜多嶋 修
02. Say You Will / 喜多嶋 修
03. LOVIN' YOU / 吉田美奈子
04. REFLECTIONS OF YOU / CASIOPEA

<SIDE-U_L (SIDE-B)>
01. FREESIA / CASIOPEA
02. TORNADO / 吉田美奈子
03. ボン・ボヤージ波止場 / 小坂 忠
04. 雲のゆくえに / 吉田美奈子



収録楽曲】全9曲
<SIDE-R_F (SIDE-A)>
01. LOVE CELEBRATION / LINDA CARRIERE ※LP2のみ収録
02. YUMEDONO / 大村憲司
03. HOT SAKE / 麻上冬目
04. BLIZZARD / いしだあゆみ
05. BAMBOO BONG / 大村憲司

<SIDE-O_A (SIDE-B)>
01. うたたねドリーマー / 鈴木こう
02. TAKE ME / 大野方栄 ※LP2のみ収録
03. FIRECRAKER (REMIX) / Y.M.O. ※LP2のみ収録
04. BEHIND THE MASK (REMIX) / Y.M.O. ※LP2のみ収録

【MUROプロフィール】
日本が世界に誇るKing Of Diggin'ことMURO。'80年代後半〜'90年代初頭KRUSH POSSE、MICROPHONE PAGERで日本のヒップホップ黎明期から活躍。ソロでは国内外でのDJ、マイアミ「WMC」出演、米レーベル「STONES THROW」のツアー参加等で、世界中の有名DJ/クリエイターらと密に交流、全世界コネクションを独自に開拓。レーベル公式MIXも多数発表。信頼度認知度抜群、国内外で絶大な人気を誇る唯一無二のDJ/プロデューサー。なお本作発売日はMUROの誕生日でもある。
https://www.instagram.com/dj_muro/

・毎週水曜日21:00〜 TOKYO FM MURO presents「KING OF DIGGIN’」
 https://www.tfm.co.jp/kod/
・2026年よりWEB「Commune H」でMUROレギュラー連載開始予定
 https://c.houyhnhnm.jp

interview with Kneecap (Mo Chara and Móglaí Bap) - ele-king

 政治において、言語は戦場であり法廷で争うための手段となる。その場に立つ全員が言葉の些細な言い回しを巡って議論する。そこで我々は弁護士となり、言葉の意味の違いを研ぎ澄ませて鋭利な刃物に変える兵士にもなる。その最たる現場がベルファストの政治だ。地理的にはアイルランドに位置しながら、一部はイギリスの統治下にあり、政治的・宗教的な背景によってカルチャーも分断されている。
 モウグリ・バップとモ・カラのラッパーふたりとDJプロヴィからなるベルファストを拠点にするニーキャップの作品はそのような言語の宝庫であり、アイルランドの政治的風景を言葉とヴィジュアルの両方から色濃く反映している。DJプロヴィという(*「Provisional IRA(暫定IRA)」の略称から派生したスラング「Provei」が元ネタ)アーティスト名しかり、あるいはアイルランド国旗の3色の目出し帽もアイルランド共和派の武装組織IRAを示唆している。そもそもバンド名のニーキャップ自体が上記の関連団体によっておこなわれた悪名高い拷問を伴う制裁手段について言及している。つまり、あからさまに挑発している。しかし、このようなメッセージ性をライヴにおけるパーティのどんちゃん騒ぎ的なノリと合わせることによって、彼らはその背景にある恐怖や緊張感を緩和すると同時に、宗派の垣根を越えて若いファン層、とりわけ1998年の和平合意以降に育った若者が集える場を提供している。
 とはいえ、彼ら自身はゴリゴリの共和主義者であり、アイルランド語で楽曲を制作し、イギリスによる北アイルランドの統治に対して公の場で激しく抗議している。さらに労働者階級であることに誇りを持ち、保守党の元首相マーガレット・サッチャーに対していまだに根深い嫌悪感を抱き続ける姿勢は、アイルランド国内だけでなくイギリスの左派系リスナーから圧倒的な支持を受けている(筆者もまたそのひとり)。さらにパレスチナへの支持も公言しており、それが原因でイギリスの首相キア・スターマー政権から糾弾され、同政権から反テロ法を盾にモ・カラがハマスを支持しているとの理由に(いまのところ、まったくの不毛な作戦とはいえ)法的に執拗な攻撃を受けている。
 メディアや政治界などの権威からはニーキャップは無責任で無神経な危険分子のような描かれ方をしているのかもしれない。しかし、セルフ・タイトルにして彼ら自身が主演を務める映画『ニーキャップ』はときに寓話を交えながらフィクションという形で、彼ら自身が自らの目線で自らのストーリーを語る機会を提供している。さらにその特異な言語にフォーカスすることで、国家レベルから日常生活のレベルの両方から政治について多面的に映し出しながら、政治家やタブロイド紙が伝えるストーリーのカウンターとして、よりパンチとユーモアの効いた繊細な物語と同時に、いわゆる「トラブルズ」と呼ばれる北アイルランド紛争下のステレオタイプのイメージを覆す形でベルファストに暮らす人々の日常を描き出している。
 今回、モウグリ・バップとモ・カラにビデオ通話によるインタヴューで、言語およびそこに含まる細部やニュアンスが、彼らの歌詞だけでなくアイデンティティや日常生活であり、そのすべてに関わる政治においてどのような中心的役割を担っているのかについて語ってもらった。

うちのライヴについて確実に言えるのは、ものすごい多様性があるってこと。全ジェンダーが勢揃いしてる。(モ・カラ)

いまではインターネットのおかげで、フランス語だのバスク語だのカタルーニャ語だの、ありとあらゆる言語の音楽にアクセスできるようになってる。いまはもっと実のある音楽が求められてる時代になってるんだろうね。(モウグリ・バップ)

音楽を作って表現するというのは、ある種の空間なり環境を作り出してリスナーに提供するという側面もありますよね。ことライヴ・パフォーマンスでは大いにそれがあてはまると思うのですが、どのような空間を作り上げようとしていますか?

モウグリ・バップ:ニーキャップの使命のひとつとして、いまのメインストリームのラジオじゃ滅多に取り上げられることがない言語で語っていく、つまり、アイルランド語を中心にした自分たちのリアリティを反映した空間を作り上げようっていうのがあるんで。音楽を通して人びとがアイルランド語と繋がれる環境を作りたいわけさ。アイルランド語を自分自身のアイデンティティの一部として感じてもらいたい。これまでそういうことをやってる連中っていなかったんで。少なくともアイルランドのいまどきのヒップホップ・シーンにおいては。

モ・カラ:うちのライヴについて確実に言えるのは、ものすごい多様性があるってこと。全ジェンダーが勢揃いしてる。ヨーロッパというか、少なくともイギリスとアイルランドのヒップホップ・シーンってほぼ野郎に支配されてるじゃん。それがうちのバンドはカルチャー的側面も入ってきてるんでね。言語だったりとか、そこに伴うアイデンティティだったり、そこからも共感できる。毎回、ありとあらゆるジェンダーが集まってる。めっちゃエネルギーに溢れてるし、毎回モッシュピットが起きるし、モッシュするときは全員一緒、性別に関係なく、誰もケガしないようにお互いに気を遣いながら。誰にとってもめちゃくちゃ安全な場なんだよ。誰でも輪のなかに入ることができるし、そこに参加したいと願う全員にとってのオーガナイズされたカオスって感じ。

ライヴ映像を見る限りモッシュピットがライヴで重要な位置を占めているように思いますが、そこには何らかの意図があるんでしょうか。実際、あなた方もそこに注力しているように見受けられますし、その場にいるが安全に楽しめるようにすごく気を配っているようですね。

モ・カラ:若干、エネルギー過剰って説も! というか、そもそもそれ自体がエネルギーを宿してるような、うちのバンドでやってるモッシュピットってそういうものだから。みんなそれを期待してるわけで、客のほうも盛り上がりにきてるみたいな……だから、盛り上げ役としては超ラクだよね。そもそもモッシュピットのことを聞きつけた上で会場に集まってるわけで、なんなら客同士が勝手にモッシュピットをはじめて盛り上がってる。とりあえずモッシュしてる最中ってめちゃくちゃ自由に感じるじゃん、なんか知んないけどさ。モッシュの輪のなかにいると、自分も全体の一部になったみたいな感覚になるっていうか、たんにライヴに来た客のひとりじゃなくて、それよりも大きな何かに繋がった感覚になる。自分もショウの一部になるわけさ。要するに、双方向からのエネルギーの交換がおこなわれてるわけだよね。俺らも客を楽しませるし、向こうも俺らを楽しませてくれる。

モウグリ・バップ:ライヴに熱狂が生まれるのと同時に一体感も生まれる。お互い安全な状態を保ちつつ楽しむためには信頼関係がないと。それがあるからこそ、モッシュピットはうちのライヴの中心みたいな存在になってるんじゃないかな。みんなうちのライヴからそういうものを受け取ってるわけさ、その場にいる全員が仲間みたいな意識というか。

それって、あなたたちの政治的な思想にもあてはまりますよね。仲間意識であり人びとを繋いでいく力みたいな。

モウグリ・バップ:まさに。

モ・カラ:政治だって、ある意味、パーティと同じぐらい大事だからね。 政治に突っ込んでいくのだって、その先に楽しいことが待ってるって期待してるからなわけじゃん。あるいは戦いに勝利して祝福しようって気持ちがあるからなわけじゃん。パーティもライヴで自由になるのも生きるために必要不可欠なもんなんでね。

そもそも共産党って言葉自体に、パーティ(党)って言葉が入ってますもんね。

モ・カラ:マジそれな!

モウグリ・バップ:ハハハ!

モ・カラ:てか、めっちゃウケてんじゃん!

政治に突っ込んでいくのだって、その先に楽しいことが待ってるって期待してるからなわけじゃん。あるいは戦いに勝利して祝福しようって気持ちがあるからなわけじゃん。パーティもライヴで自由になるのも生きるために必要不可欠なもんなんでね。(モ・カラ)

アイルランド語なり少数言語で歌うことの何がいいって、本質的に反資本主義的であるってことで、金儲けのためじゃなくてコミュニティのために存在してるってとこだよ。(モウグリ・バップ)

以前もおっしゃっていましたが、ベルファストでもアイルランド語を話してる人口はそんなに多くないですよね。音楽という形を介すことでアイルランド語を完全に理解していなくても、その言語と繋がると思いますか。

モウグリ・バップ:とはいえ、流暢でなくてもいくつかの単語は知ってたりしるし、うちのライヴに来て一緒に歌ってアイルランドも十分堪能してもらえるんじゃないかな。流暢じゃなくても、その言葉を楽しむことはできるんだから。あともうひとつ重要なこととして、少数言語を話す環境に育った子どもって、まわりでその言語が使われてないと、その言語には価値がない、あるいは社会的に重要じゃないって自然と思い込まされるようになるんだよね。だから、俺らの映画が映画館で上映されたりラジオで曲がかかったりすることで、それまでアイルランド語に付随してた恥の部分が払拭されて、自分たちの言語でありアイデンティティに誇りが持てるように。 実際、うちのライヴに来る客のほとんどはアイルランド語を話せないけど、それでも十分楽しんでるしアイルランド語で一緒に歌って大満足してる。

モ・カラ:そりゃまあ、自分らの場合はラッキーだったっていうか、アイルランド語の学校に通わせてもらう機会に恵まれてたんで。というのも、自分たちの前の世代が国から支援もないなかでゼロから築き上げてくれたものなわけで。いまではみんな普通にウチのライヴに来て、たんに学校で勉強する科目とは別の形でアイルランド語に慣れ親しむことができる。それこそ自分たちの一世代、二世代前の世代にとってたんに学校で習うだけでそれ、それ以外で使う機会もなかったのが、いまではライヴだの映画だの学校の外でも楽しめるものになってる。

1950年代のロックンロールの誕生以来、全世界においてポップ・ミュージックも英語の曲中心でしたよね。いまの英語が母語のリスナーは、自分たちが理解できない言語の音楽も以前よりもオープンに楽しめるようになってると思いますか?

モ・カラ:いや、確実にそれはあるでしょ。いまって、みんな何かしら新しいものを求めている時代で、前例のないものだったり、これまでとは違うものを自分から探しに行くようになってる。60年代の人間に自分の知らない外国語の音楽って言っても、なかなかピンと来なかっただろうけど、いまではみんな普通に言葉なんて関係なしに音楽を聴いてる。

モウグリ・バップ:結局、英語が長いあいだ公共の電波を支配してきたのだって、昔は音楽を発表する機会が大手のラジオだのテレビだの一つ二つのメディアに絞られていたからであって。それがいまではインターネットのおかげで、フランス語だのバスク語だのカタルーニャ語だの、ありとあらゆる言語の音楽にアクセスできるようになってる。いま、うちの相方が言ってたように、いまはもっと実のある音楽が求められてる時代になってるんだろうね。

以前のように世界のポップ・カルチャーをアメリカが支配しているという構造が崩れかけてるのもあるんじゃないでしょうかね。

モ・カラ:まさに!

モウグリ・バップ:それってアメリカで植民地の支配者の銅像が撤去されていったのと同じ動きだよね。植民地とか、主要もしくは多数派言語による支配が徐々に綻びを見せてる証拠だよね。しかもいまではインターネットのおかげで、人びとが自分で聴きたい音楽を自分で選ぶ権利を取り戻してる。アイルランド語なり少数言語で歌うことの何がいいって、本質的に反資本主義的であるってことで、金儲けのためじゃなくてコミュニティのために存在してるってとこだよ。

モ・カラ:過去の歴史からも帝国が崇拝対象となるシステムになってたわけで、アートもそれに倣うような形になってたわけで。英語で歌われてきたのなんてまさにその最たる例だし。でもいまはわざわざ学校で勉強するまでもなく、誰でもインターネットにアクセスして、諸外国の歴史について知ることができるし、かつての帝国がどれだけ世界に害悪をもたらしてきたかもはや周知の事実になってるわけさ(笑)。結果として、先住民族の言語や少数民族のカルチャーが再び注目されるようになってる。

モウグリ・バップ:いま言ったのって、インターネットがもたらした最大限にポジティヴな面の一例だよね。そりゃまあ、アメリカや中東の帝国主義者の連中はフェイク・ニュースを拡散するためにインターネットを利用してるっていう側面があるとはいえ。

※このあとふたりの舌鋒はまだまだ続きます。後編は2月下旬発売予定の『別冊ele-king 音楽は世界を変える』に掲載。ぜひそちらもチェックを。


English version

interviewed by Ian F. Martin

When it comes to politics, language is both a battleground and a courtroom. It makes lawyers of us all, arguing over the finest differences in meanings between words, and it makes soldiers of us too, honing these differences down into blades. Nowhere is that more true than in the politics of Belfast. Geographically part of Ireland, ruled as part of the United Kingdom, and culturally split down the middle along political and religious grounds.

Formed by rappers Móglaí Bap and Mo Chara, along with DJ Próvaí, Belfast-based band Kneecap’s work is dense with the language, both verbal and visual, of the Irish political landscape. DJ Próvaí’s name and Irish tricolour flag balaclava are both references to the republican paramilitary group the IRA. The group’s name refers to a notorious form of torture and punishment carried out by such groups. It’s a provocation, for sure, but marrying this language to the sort of raucous party atmosphere of their shows is also a way of putting the edge of fear and danger it implies behind them and open up a shared space for young fans from both sides of the sectarian divide — especially those who grew up in the years after the 1998 peace agreement.

That said, the group are staunch republicans, writing in the Irish language and fiercely and vocally opposed to British rule over their corner of Ireland. They are proudly working class and retain a deep loathing for Conservative former Prime Minister Margaret Thatcher, which has endeared them to left-leaning listeners both at home and in Britain (I’ll admit, myself included). They have also been vocal supporters of Palestine and attracted condemnation and ongoing legal attacks from the government of British prime minister Keir Starmer, who have used anti-terrorism laws to (thus far unsuccessfully) prosecute Mo Chara on accusations of promoting Hamas.

Seen only through the lens of the media and political establishment, Kneecap come across as irresponsible, insensitive and dangerous. Their self-titled movie, which stars the group themselves in a fictionalised, often allegorical version of their origin story, was an opportunity for the group to frame their story in their own way, and in its explicit focus on language as a multilayered vehicle for politics on both a national level and in daily life, presented a powerful, funny and nuanced counter-narrative to the story the politicians and tabloid newspapers were telling, as well as a depiction of Belfast life that subverts many of the Troubles-era stereotypes of the city.

I spoke to Móglaí Bap and Mo Chara via video about how language in all its specificities and nuances is at work at the core of not just their lyrics but their identities, their everyday lives, and the politics that run through it all.

When you make music, you’re also creating a space or an environment for the listeners, especially when you think of the live performance. What kind of space are you trying to create?

Móglaí Bap (MB): A big part of Kneecap is creating this environment of reality where the Irish language is central, especially as it’s not a language that’s heard a lot on the mainstream radio. So we’re trying to create an environment where people can connect with the language through the music. They can identify with the language. And it’s not something that’s been done, really, in contemporary hip hop music in Ireland.

Mo Chara (MC): There’s also something to be said about our gigs that we have such a mix. There’s a mix of all genders. I think a lot of hip hop gigs in Europe, in England, in Ireland, it’s very male-dominated. And I think the difference with Kneecap is that we have a cultural aspect to it as well, with language and identity to it, so people relate to that. We always have a mix of genders. We have very high energy gigs, there’s always moshpits, but everyone’s moshing together, all genders, no one’s trying to injure each other. It’s a very safe space for everyone. Organised chaos for everybody who wants to be involved.

Watching videos of your live performances, the moshpit seems to have a central place in the show. Is there something special about the moshpit? Because you seem to put a lot of energy into that part of the show — organising, or taking a lot of care to make sure everybody’s safe.

MC: Maybe too much energy sometimes! But I think it took on a life of its own, the moshpits that we do, because everyone is expecting hig energy, and what happens is the crowd… we can rile them up pretty easily, but the crowd have heard about all the moshpits and so they come in and do it themselves. The thing is there’s something very freeing about it. When you’re part of a moshpit, you’re part of a collective, you’re part of a greater thing rather than just an individual at a show — you’re part of a show then. When there’s a moshpit happening, the audience are putting on a show for us. It’s kind of transactional: we entertain them, they entertain us back.

MB: It creates a sense of excitement at the gig, and also a sense of solidarity between people because you have to rely on each other to keep each other safe and have a good time. So I think that’s why it’s kind of central to our gigs, because that’s what people get from our gigs: a sense of solidarity.

Which I guess feeds into the political aspects of what you do: the sense of solidarity and everyone being in it together.

MB: Exactly.

MC: In certain scenarios, politics is just as important as partying. I mean what’s the point of chasing political memes unless you’re going to be able to enjoy yourself at the same time, or enjoy yourself after the fight’s done? So partying and the freedom that comes with gigs are just as important a part of life.

You can’t spell “Communist Party” without “party”!

MC: Exactly!

MB: Hahaha!

MC: He loves that one!

You’ve mentioned in the past about how, even in Belfast, there’s not a lot of Irish speakers, so is there a way in which, by delivering it through music, that gives people a way to connect with it even without fully understanding all of it?

MB: One aspect of it is that people who don’t speak Irish but they speak a few words, they can come to the gig and they can sing along and get that sense of fulfilment, that you don’t have to be fluent to enjoy the language. And another aspect of it is that, when you speak a minority language growing up as a kid, if it’s not heard, you feel like it’s not worthy or that society values it. So the fact that our movie was in the cinemas and our songs are on the radio, it gets rid of that shame and gives them self esteem towards their language and identity. Most people don’t speak Irish at our gigs, so the fact that they can come along, enjoy the gig and sing along in Irish, there’s a sense of fulfilment there.

MC: Obviously we were lucky enough that we had the opportunities to go to school in Irish because of the generations that came before us who had built that stuff up from scratch with no help from the state. And now people can come to our shows and it’s not just a school subject the way it was for the generation or two before us, where they were just learning it in school and they didn’t have any services or anywhere to go to enjoy it socially. Now people can go to a show or see a movie and it’s just about taking it outside of the classroom.

Since the birth of rock’n’roll in the 50s, pop music worldwide has been dominated by the English language. Do you think English speaking audiences nowadays are becoming more open to enjoying music in languages they don’t speak?

MC: Definitely. I think we’re at a time in history now where we’re seeking something different. Everybody’s seeking something new, that hasn’t been done, or branching out in some way. If you tried to explain to somebody in the 60s that you’re listening to music in a language you don7t understand, it’s probably alien to them, but now it’s become the norm.

MB: The reason that English has dominated the airwaves for so long is because there was only one or two avenues for getting your music out there through mainstream radio or TV or whatever, but now you have the internet, and there’s people singing in French or languages you’ve never even heard, Basque languages or Catalan or whatever, so now we have access to all this music and I think, as he was saying, people are looking for something with a bit more substance these days.

I wonder as well if part of it’s also this sort of slow collapse of the United States as the centre of global pop culture.

MC: Yes!

MB: I think it’s kind of reflected in, you know when they were taking down the statues in America of the former colonialists. I think that’s part of this slow degeneration of this idea of colonies, of mainstream languages, of majority languages. And with the internet, we can take back control of the avenues of listening to music. And a good thing about singing in Irish or any minority language is that it’s anti-capitalist at its core because it’s not there for profit, it’s there for the sake of community.

MC: If you go back, empires have always been looked up to, and obviously art kind of imitated that, obviously with music always being in the English language and stuff, but now you don’t have to be in a classroom to learn a certain subject, anyone can get on the internet and listen to someone talk about some historical event that happened in another country, we’ve all kind of realised that empires have (laughs) been a kind of bad thing for the world, so people are looking more towards indigenous languages and more towards minority culture again.

MB: I think that’s the most positive aspect of the internet, because of course we have imperialists in America and the Middle East, etcetera, using the internet as a means of spreading fake news.

DJ Narciso - ele-king

 何年も前なら、音楽のリリースに関しては眠たくなるような、まるで冬眠期間のようだった11月と12月が、いまや「ニンジャ・センバー(Ninja-cember)」なのではないかと、私はますます考えはじめている。ホリデーシーズンがわずか数日後に迫り、北半球の多くが暗い冬の極寒の突風に備えているなか、信じられないようなリリースが次から次へと我々に忍び寄ってきていることが近年ではよくある。
 たとえば昨年の今頃なら、我々は夏のリリースをさえも霞ませるような強力なアルバムに真剣に向き合っていた。デビュー・アルバムを提げたBLACKPINKのROSÉによる『ロージー』やケンドリック・ラマーの『GNX』などだ。そしてこの12月、すでに私はまたしても真剣な昂りを感じている。なぜなら、イギリスのレーベル〈SVBKVLT〉がDJ Narcisoの『Dentro De Mim』(ポルトガル語で「私のなかに」の意)をリリースしたばかりだからだ。彼らはこれをEPだと言っているが、7つの強力なトラックとふたつの素晴らしいリミックスが収録されているいま、それが本当に重要だろうか。

 もし君が、DJ Narcisoがヨーロッパやアフリカで関わっている素晴らしい「バティーダ(Batida)」シーンを追っているなら、こうしたプロデューサーの多くが独自のEPやシングルをリリースしていることを知っているはずだ。DJ Narcisoも、自身のBandcampや他のレーベルから多くの作品を出している(編註:2025年7月にセカンド・アルバム『Capítulo Experimental』を〈Príncipe 〉からリリースしている)。そうなると、「なぜ今回の新しいEPが、彼の他の作品と比べて特別なのか」という疑問が浮かぶだろう。
 その問いにできるだけ率直に答えるなら、このEPはとくに、とにかく「深い」のだ。フォーカスがより研ぎ澄まされている。1曲目の“Segredo”は、通常のダンス・トラックよりもわずかにテンポが遅く、導入部としては控えめだ。普段なら私はこのようなトラックを飛ばしてしまうところだが、この3分間は報われた。ビートが遅いことで、より荒涼とした力強さが許容されていたからだ。この種のアフリカン・ビートのミニマリズムは、まるでシャドーボクシングのようだ。それらがどのように打ち込んでくるのか、常に予見できるわけではない。その引きずるようなビートは、まるでアフリカ版の「Godflesh(イギリスのインダストリアル界の伝説)」を聴いているような気分にさせてくれる。

 各駅停車の“Segredo”が駅に到着した後は、“Pesadelos”で高速列車さながらの全速力へと移る。ここでもまた、意図的な閉所恐怖症を伴う激しいコール・アンド・レスポンスのトンネルが続く。オールドスクールなインダストリアル・ミュージックを愛する人で、ここでのアプローチを気に入らない者は想像できない。DJ Narcisoは、即座に体を揺らす要素に焦点を当てるだけでなく、ビートに対する単純なノイズに安住することもない。彼は、ビートの間にこれほどまでの「無」が存在する、最高のテクノに通じる「間」を求めている。ダンス・ミュージックの最高の楽しみは、しばしばビートそのものではなく、その間にある空間にある。“Pesadelos”は、イギリスのBurialのようなトンネル・ヴィジョンの雰囲気と、より安定したフックを併せ持っている。
 “Agancha”は、私にとってアルバムの中心のように感じられる。ベースの明瞭さ、ノイズ、そして遠くの残響がすべて引き離されて配置されており、大きなアンプの環境で聴けば魔法のように響くことだろう。
 残りのトラックも同様に中毒性がある。クラブやジムに非常に適しており、最後の1拍までダンスへの献身を呼び起こすのにちょうど良いBPMで、ドラムのように正確に刻まれる。多くのプロデューサーが、1曲だけパンチのある曲を作って他のトラックで集中力を欠くのを見てきたが、DJ Narcisoにとってプロデュースとはジムに通うようなものなのだと感じる。
 1日で筋肉は作られない。それゆえに、彼の1年間だけでも膨大なアウトプットがあるのだ。SwimfulとDigita NgecheのKop-Zによるふたつのリミックスも、決して引けを取らないが、確かに本編と同じマニアックなエネルギーはない。幸運なことに、それらは最後に配置されている。7つのオリジナル・トラックがよどみなく流れ、繰り返し聴くことに価値がある資産となっている。願わくは、1時間のミックスも提供してもらえないだろうか。

【編註】

Ninja-cember(ニンジャ・センバー)
「Ninja(忍者)」と「December(12月)」を掛け合わせた造語。忍者が音もなく忍び寄るように、予期せぬタイミングで衝撃的な新作が次々とリリースされる12月の状況のこと。

Batida(バティーダ)
ポルトガルのリスボンを中心に、アフリカ系移民(アンゴラなど)のコミュニティから生まれたダンス・ミュージック。伝統的なアフリカン・リズムと荒々しい電子音との融合を特徴としている。

Godflesh(ゴッドフレッシュ)
1988年に結成されたイギリスのインダストリアル・メタル・バンド。


I am starting to think more and more that November and December which many years ago would be sleepy and more like hibernation time with music releases, is now Ninja-cember. Incredible release after release sneaking up on us while the holiday season is only days away and much of the northern hemisphere is bracing for the frigid blasts of dark winter.

Last year around this time, we were seriously dealing with some heavy hitting albums that even eclipsed summer releases such as Blackpink`s ROSE with her debut album and Kendrick Lamar with GNX. Already now in December, I am getting some serious feels again cause UK label SVBKVLT just released DJ Narciso`s DENTRO DE MIM (Portuguese for “INSIDE OF ME”). They say it`s an ep but with 7 heavy hitting tracks and 2 stellar remixes does it really matter at this point?

Now if you are following the incredible Batida scene that DJ Narciso is a part of in Europe and Africa, then you should know that many of these producers release their own ep`s and singles. DJ Narciso has a plethora of them on his own bandcamp and other labels. Which would lead to the suggestion - why is this new ep special from his other stuff?

Well to answer that as frankly as possible, this ep in particuilar is SO much deeper. The focus much more laser sharp. The first track “SEGREDO” is unassuming as an introduction as it moves slightly slower than usual dance tracks. I normally would skip such a track but the 3 minutes of my time were rewarded as the slower beat

allowed more starkness. The minimalism of these types of African beats is almost like shadow boxing. You can`t always see how they are gonna hit you. The dragging beat seriously makes me feel like I am listening to African GODFLESH (UK industrial legends).

After the local train of “SEGREDO” arrives at the station, it`s full speed ahead on the high speed with “PESADELOS.” Again, a tunnel of call and response intense with its intentional claustrophobia. I can`t imagine anyone who loves old school industrial music not loving the approach here. Besides focus on instant booty movers, DJ Narciso doesn`t rest on simple noise against the beats, he wants the MA (間) of the best techno where

there is so much of nothing between the beats. The best enjoyment of dance music often isn`t the beat but the space in between. “PESADELOS” gives the moody feels of BURIAL UK tunnel vision vibes with a better constant hook.

“Agancha” really feels to me the center of the album. The clarity of bass, noise, and distant echoes all spaced far apart I am sure would sound magical in a larger amp setting.

The rest of the tracks are just as infectious. Very club or gym friendly and tighter than a drum in lock step with just the right BMP to invoke dance devotion to the very last beat. I have heard many a producer make a banging track and then lose focus on other tracks. I get the feeling that producing is like going to the gym for DJ Narciso.

One day doesn`t make a good muscle. Hence his large output just in one year. The 2 remixes by Swimful and Digita Ngeche`s Kop-Z aren`t shabby either though for sure they don`t have the same manic energy. Luckily they are at the end. Seven original tracks flow effortlessly making repeated listenings a valuable asset. Could we get an hour mix, perhaps?

The Bug vs Ghost Dubs - ele-king

 UKデジタル・ニュールーツ・レゲエのステッパーの「速さ」でもって、コンラッド・パック~DJゴンズらがダブ・テクノの新たなスタイルを切り拓いたとすれば、ゴースト・ダブスは、2024年リリースの『Damaged』で、サウンドシステム体験に由来するダブのヘヴィネスをある種の「遅さ」でもって表現し、さらなる「重み」を引き出したことでダブ・テクノのまた別の新たな道を作り出したと言えるのではないだろうか(どちらもUKデジタル・ニュールーツのサウンドシステムにその着想のルーツがあるのが共通しているとも言える)。本作はゴースト・ダブスが、〈Pressure〉のドン、ケヴィン・マーティンことザ・バグとともに、その「重さ」に対する過剰なオブセッションをさらに追究した作品と言えるだろう。もちろんサウンドの「重さ」は、長年のケヴィン・マーティンの音楽表現の核となるサウンド・コンセプトでもある。

 ゴースト・ダブスはドイツはレーバウ生まれ。現在はドイツの南西部シュトゥットガルトを拠点に活動するマイケル・フィードラーによるプロジェクト。2000年代中頃からダブ・ダウンテンポな「トーキョー・タワー」なる名義で活動をしているようだが、おそらくゴースト・ダブスへの直接の関連としては、ジャー・シュルツ名義での活動が挙げられるだろう。同じくドイツのダブ・レーベル〈Basscomesaveme〉にて、2018年よりリリースし、2枚の『Dub Over Science』というシリーズがある。当レーベルは比較的UKデジタル・ニュールーツ的なサウンドシステムに根ざしたダブに軸足がありながら、べーチャン/リズム&サウンド由来のミニマル・ダブ的なサウンドの影響も感じさせるのが特徴で、ジャー・シュルツもまさにそうしたサウンドと言えるだろう。ニュールーツ・ステッパー的なリズムをピッチダウンすることで得ることができる「重さ」と、かのジャンルのシンフォニックな要素を排除し、テクスチャー的にはリズム&サウンド的なミニマル・ダブなサウンド感を取り入れている。そしてゴースト・ダブス名義は、ジャー・シュルツ名義の作品をさらにスクリューし、さらにベース音以外をストリップダウン、まさにその「重さ」のみを追求。すなわちサウドシステムでのあの低音体験以外のほとんどの音楽的要素を、名義が示すように「不在」にしてしまった、そんなサウンドを展開している。しかし、恐らくサウンドシステムの経験者ほど、逆説的にその「不在」によって、生々しい現地での圧倒的な空間を埋め尽くすベース体験を思い起こす、そんな作品だった。

 一方、ここ数年、ザ・バグの方は2023年より「The Machine」というシリーズで、同〈Pressure〉より作品をリリースしており、Bandcampでは自身の解説として「Slower, lower, hypnotic and basically dirty as f-ck/より遅く、より低く、催眠的で、基本的にはクソ汚い」と言い、一時期のダンスホール・スタイルをスクリューしたような、インダストリアなノイズにまみれたダブのシリーズをリリースしている。ちなみに〈Pressure〉はレーベル屋号でもあるが、自身が主宰するサウンドシステム・パーティの名前でもある(今回のジャケットもそのシステムのスタック・スタイルとも)。こうした音楽性の追求の下でジャー・シュルツのサウンドと共鳴し、ゴースト・ダブスの音源をリリース、そして今回のスプリット・アルバムへと結実したことは想像に容易い。

 少々本筋とはズレるが、ザ・バグことケヴィン・マーティンと言えば、もちろん数少ないベリアルとのコラボレーターでもあり、2003年の〈Rephlex〉からの早すぎたテクノ・ダンスホール・アルバム『Pressure』(ちなみにこちらはセカンドで、同名義でのデビューは最近スペクターの再発やらなにやら注目が集まりそうなNYの「イルビエント」レーベル〈WordSound〉から)のリリースなどその先鋭的なサウンドは後々驚かされることばかりでもある。またこれまでのコラボレーターや〈Pressure〉からのリリースの人選なども一癖も二癖もあるが、そのラインナップにUKのグライムMCからジャマイカン・ディージェイ、果てはインダストリアル・メタル方面からのJKフレッシュ(ゴッドフィッシュ/ナパーム・デス)、ストーナー・ロック方面のアル・シスネス(スリープ)、さらにベリアルを列べられるのは彼ぐらいのものだろう(この交点に彼の音楽性の核があるとも)。また〈Mo' Wax〉からの『Now Thing』(2001年)と、その続篇として2020年代のテクノ/ベース・ミュージック界隈からのダンスホール再評価として話題となった『Now Thing 2』(2021年)もあったが、その間を中継するコンピとしてケヴィンが選曲を半分担当した〈Soul Jazz〉からの、当時のベース・ミュージック的な目線でダンスホールを捉えた2011年のコンピ『Invasion Of The Mysteron Killer Sounds』も忘れてはならない(1990年代、〈Virgin〉のアンビエント・シリーズからリリースされた、彼がコンパイルした『Macro Dub』も、トリップホップやジャングルなどダンス・ミュージックのダブを横断するまさに『DUB入門』的には名盤だ)。と、なにが書きたかったかというと、そのセンスは先鋭的で、彼のやることには、あとあと「アレって早かった」と思うことがなにかと多い。おそらく本作も新たな文脈を作り出すのではないか、そんなことも考えてしまう。

 と、話は戻るがそんなザ・バグがゴースト・ダブスとともに今回『Implosion』と名付けたスプリット・アルバムは、さらに「より遅く、より低く、催眠的で、基本的にはクソ汚い」をこれまた体現したサウンドで、そのタイトルは強大な質量ゆえに光すらも脱出することができないブラックホールの内向きの強力な重力を想起させ、ここで展開される音はそれくらい重いということなのだろう。とにかく冷たく、不穏で重い、インダストリアルでノイジー、そんなダブ・サウンドが全体を覆い尽くしている。アルバムはそれぞれの楽曲が交互に収録され、いわばレゲエのサウンド・クラッシュのチェーン・フィ・チェーン・スタイルで展開していく。初回に聴いたときにはいわゆる純然たるコラボ楽曲かと思っていたがそうではなかった。マッシヴ・アタックの『Mezzanine』の冒頭 “Angel” のイントロを彷彿とさせる冷たく重いザ・バグの楽曲からスタートし、不穏な霧がかったエコーとスロウにピッチダウンされたミニマル・ダブ・サウンドのゴースト・ダブス、と交互に進んでいく。ザ・バグの方がノイジーで、ゴースト・ダブスの方は空間を生かしたダブ・ミックスが特徴のように思える。そしてザ・バグの “Burial Skank (Mass, Brixton)”、“Dread (The End, London)” やゴースト・ダブス “Into The Mystic” といった重量級のスロウ・ステッパーの合間に聞こえてくるノイズは、まるでサウンドシステム特有のホワイトノイズや耳鳴り、巨大な低音ゆえに建物の躯体が共振して生まれるノイズを追体験しているかのようでもある。もはやその低音は空気の暴力とも言えそうな物理的な圧迫感すらある。それでいて、そのサウンドの感触は、もはやストーナー・ドゥームのレコードの隣にあっても、そういうものだと思ってしまいそうなところもある。

 ノイズやドローン・メタルの轟音体験と、レゲエのサウンドシステムによるダブの轟音体験に同様のものを見出す、それを音像として体現してきたのがケヴィン・マーティンのある種の表現の核にあるように思える。そして本作では、まさにサウンドシステムの出音、轟音の低音体験をいかに音楽表現に変換し伝えるかというのがひとつコンセプトなのだろう。過剰なまでに増幅されたドローンにも似たベースライン、ノイズとエコーは物理的な現場の状況をシミュレートしているかのようで、サウンドシステムの轟音体験の記憶を生々しい音楽として顕現させている。ジャケットのモチーフ、サウンド・クラッシュのチェーン・フィ・チェーン・スタイル、さらにはザ・バグにいたっては、その曲名には、例えばジャー・シャカがサウンドシステムをよく開催していた〈Rockets〉など、UKレゲエ~サウンドシステム~ベース・ミュージックの重要なヴェニューや地域の名前がつけられている。まさにサウンドシステム・カルチャーに捧げられた1枚と言えるだろう。ある意味で目の前にヴァーチャルなサウンドシステム体験を顕現させようとするようなそんな作品でもある。もちろんそれなしでも楽しめる作品だが、サウンドシステムでのダブ体験、それがあって作品のディティールに触れることで、さらなる驚きと理解が生まれる作品でもあるだろう。


STARFESTIVAL CLOSING 2025 - ele-king

 関西発のオルタナティヴ・フェスとしてローカル・シーンと世界を接続しつづける〈STARFESTIVAL〉が、年末恒例のクロージング・パーティを今年も開催。12月30日(火)にクリエイティブセンター大阪(名村造船所跡地)にて。

 今年のゲストにはUKを代表するクラブ〈Fabric〉のレジデントDJとして知られるクレイグ・リチャーズ、〈Hospital Records〉のオーナーでありUKにおけるドラムン・ベース・シーンを牽引するロンドン・エレクトリシティを迎え、ローカル・アクトにはDJ KRUSH、DJ MASDA、¥ØU$UK€ ¥UK1MAT$U(行松陽介)をはじめとする実力者をラインナップ。UKダンス・ミュージック愛好家にとっては見逃せない機会でしょう。

Wang One - ele-king

 インターネットはインディ・アーティストと彼ら/彼女らをサポートする人々に大きな恩恵を与えてきた。ネットがなければ〈Maltine Records〉や〈TREKKIE TRAX〉の台頭はあり得ず、『Pitchfork』が「日本の重要なインターネット・レーベル10選」という特集を組むこともなかったかもしれない。我々リスナーも、ほとんど週替わりで出現するスターたちに心を躍らせた。

 中国でもそれは同じらしく、南京出身のLola Oneと上海出身のCase Wangによるインディ・エレクトロニック・ユニット “Wang One” も、それに類する経験を経てきた。音楽コンシェルジュ・ふくりゅう氏によるインタヴューの中で、ふたりは「ほとんどの曲をNetEaseから学んだ」と認めている。そこではダフト・パンクやYMOの楽曲が次々とサジェストされ、自身がサイトにアップロードした自作曲がコミュニティ内で高い評価を獲得した。

 陰謀論が跳梁跋扈し、今日も元気にヘイトが駆け回っている電脳空間。けれども、そこにはまだ見ぬ音楽を求めてさまよう者とそれに応えようとするコミュニティの蜜月の関係があった。この大海から誕生したスターも枚挙に暇がない。

 日本ではハチP(米津玄師)をはじめ多くのプロデューサーがニコニコ動画から羽ばたいていったが、それぞれシグネチャーなサウンドは確認できるものの、音楽ジャンルとして「これ」と特定できるケースは少なかった。1曲の中にロック的な要素があり、パンクっぽいニュアンスがあり、エレクトロの手触りがある。

 Wang Oneはユニットとしてこれまで4曲発表してきたが、いずれも異なる世界観とテクスチャーで構成されている。デビュー・シングル “Walk On Shame” はファンキーなディスコ・チューンで、2曲目の “Oh Young Boy” はチャーチズとラナ・デル・レイが共にスタジオ入りを果たしたような内容だ。そして最新シングル “IDK - idontknowwhatyoutalkingabout-” では、アシッド・ハウスの上でLolaのパンク・ヴォーカルが響いている。ダンスフロアに根差しながら、射程はもっと長い。鳴らされてるのが真夜中のクラブだけでなく、そこは夕方のライヴ・ハウスかもしれないし、野外フェスのステージかもしれない。手探りの部分もあるだろうが、ふたりのサウンドはさまざまなポテンシャルを秘めている。

 そういった紆余曲折をレーベルとして続けたのが、まさしく〈TREKKIE TRAX〉だ。彼らが “IDK - idontknowwhatyoutalkingabout-” のリミックスを手掛けたのは、なかば必然めいたものを感じられる。その上、彼らはULTRA JAPAN 2025のメインステージでこの曲をプレイした。レーベル・クルーであるFellsiusの “Boss House” や、彼らがここぞというときにかけるOutlanderの “The Vamp (TTC Kick Rebuild)” など、〈TREKKIE TRAX〉総集編のようなDJセットの中で燦然と輝く “IDK (TREKKIE TRAX CREW Remix)”。“Strings of Life” が香るピアノのリフに、脱構築されたビートがお台場の空に舞った。

 同じく “IDK” のリミキサーとして、ベルリンを拠点に音楽シーンで暗躍するマーク・リーダーもクレジットに名を連ねている。マンチェスター育ちの彼は、ニュー・オーダーの “Blue Monday” の誕生に立ち会い、石野卓球をベルリンへ送り込んだ。また彼は、Wang Oneと同郷のインディ・バンド “STOLEN” の世界デビュー・アルバム『Fragment』のプロデューサーを務め、自身のレーベル〈MFS〉からリリースさせた。大陸間を横断しながら活動する様はまさに “密輸人”。なお、彼は『Fragment』に収録された “Chaos” のリミックスVer.も提供しており、そちらも大変クールだった。

 今回の “IDK -idontknowwhatyoutalkingabout-(Mark Reeder's Got You Remix)”では原曲にみられるTB-303のニュアンスを尊重しつつ、妖しげなシンセのサウンドをまぶした。ちなみにSTOLENが2024年1月30日と2月1日に大阪と東京でライブを行った際、Wang Oneはスペシャル・アクトとして抜擢されている。このとき披露したのは5曲程度だったが、インパクトは十分だった。

 そしてもうひとり、“IDK” のリミキサーがいる。それが10代なかばのDJ/作曲家・heykazma。“音に溶ける” パーティ〈yuu.ten〉のオーガナイザーでもあるheykazmaは、バイレファンキやジューク/フットワークのようなアブストラクなビートで老獪な音のジャーニーを紡ぎ出す。個人的な体感ではheykazmaのリミックスが最もフロアライクで、構成も明確だったように感じる。

 先のインタヴューによれば、Caseのルーツのひとつにゲーム音楽があるという。作中で流れるサウンドトラックによって、ダンス・ミュージックをはじめとする海外の音楽に開眼していった。昨今の中国ではオーセンティックなテクノやハウスがゲーム音楽として実装されるケースもあり、多くの才能あるトラックメイカーがビッグ・タイトルに関わっている。たとえばTSARなどはYellow Clawのレーベル〈Barong Family〉からのリリースで知られるChaceと共に中国の音楽ファンの間で並べて語られることもあったが、いまや『崩壊:スターレイル』をけん引する存在だ。

 インターネットを介して未知の音楽を発見し、自作曲を発表する。そしてゲームへと回帰。つまりいま、ダンス・ミュージックと接触するのに生身の空間でパーティを開く必要もないのだが、我々はフロアへと誘われてゆく。10代のパーティ・オーガナイザーが率先してイベントをうつのだから、やはりそこには特別な磁場があるのだ。マーク・リーダー、〈TREKKIE TRAX〉、heykazma。3世代にわたって証明されたのは、ネットの有象無象から生まれた情熱の行方なのかもしれない。

 そして中国の大海にも、我々が獲得してきた熱量や憧れと同じ類のものがただよっていた。それらがひとつ形として結実したのが、今回のリミックス盤だ。混沌とする昨今、音楽に世界や社会を背負わせるのは重すぎるかもしれない。だが、本作にはかつて我々がみたユートピアの片鱗がある。

BlankFor.ms - ele-king

 インスタグラムのサジェスト欄になにが表示されるかは十人十色だろうが、電子音楽やシンセサイザーに興味を持つ人のもとにはハードウェア・シンセやモジュラー・シンセ、ペダル・エフェクターなどを駆使した60秒未満の演奏動画がたびたび流れてくることだろう。

 そうした世界に出自を持つニューヨークはブルックリンの電子音楽家、BlankFor.msことタイラー・ギルモアが初のジャパン・ツアーを開催。兵庫の〈Tobira Records〉と〈space eauuu〉の2会場での公演ほか、実験音楽やバンド・サウンド、果てはハイパーポップまでを広く受け入れる東京・下北沢のクラブ〈SPREAD〉の3会場を巡るそうだ。

 兵庫公演にはBlankFor.ms のほかLullatone、Tatsuro Murakami、Nekomachi、Molderが出演。〈space eauuu〉での投げ銭制でのライヴにはヴィジュアル・アーティストのKeiji Matsuokaが映像演出として参加。

 東京公演は〈PLANCHA〉サポートのもと開催。ローカル・アクトに、20年代デジコア・シーンでのポエトリー・ラップから大きく飛び出し、4台の中古iPhoneで即興演奏を実施する唯一無二のスタイルへと移行した音楽家・vqが出演。DJには〈悪魔の沼〉でもおなじみの名手、COMPUMAが参加。

 新旧さまざまな価値観が融和し、異なるフィールドから生まれたオブスキュアな感性、そして美しい電子音の調べが堪能できる公演となることでしょう。以下詳細。

BlankFor.ms Japan Tour 2025

10月25日(土) 兵庫 加西・Tobira Records
10月26日(日) 兵庫 神戸・space eauuu
10月28日(火) 東京 下北沢・SPREAD

兵庫公演①
日程:2025年10月25日(土)
会場:兵庫 加西 Tobira Records
時間:TBA
料金:3,000円 (学生2,000円)
チケット:TBA

出演:
BlankFor.ms
Lullatone
Tatsuro Murakami
Nekomachi

兵庫公演②
日程:2025年10月26日(日)
会場:兵庫 神戸 space eauuu
時間:開場17:30 / 開演18:00
料金:Donation + 1 drink order

出演:
BlankFor.ms
Lullatone
Tatsuro Murakami
Molder

Visual:
Keiji Matsuoka

東京公演
BlankFor.ms “After The Town Was Swept Away”
Release Party in Tokyo

日程:2025年10月28日(火)
会場:東京 下北沢 SPREAD
時間:開場19:00 / 開演19:30
料金:前売3,300円 / 当日3,800円 ※共に別途1ドリンク代
チケット: https://www.artuniongroup.co.jp/plancha/top/news/blankfor-ms-japan-tour-2025/

出演:
BlankFor.ms
vq

DJ:
COMPUMA


BlankFor.ms

タイラー・ギルモア(Tyler Gilmore)、別名BlankFor.msは、ニューヨーク・ブルックリンを拠点に活動するアーティスト。劣化したテープ、アナログ・シンセサイザー、そしてスピネット・ピアノを用いて、豊かでテクスチャー感のある音楽を制作している。
これまでにソロ名義で2019年にPuremagnetikからデビュー・アルバム『Works For Tape And Piano』をリリースし、2023年には、ラスベガスを拠点とするアンビエント・レーベル、Mystery Circlesより『In Part』を発表、そして同年ECMのプロデューサー、Sun Chungが設立したレーベル、Red Hook RecordsからJason Moran、Marcus Gilmoreとのコラボレーション・プロジェクト『Refract』をリリース。アナログとデジタルを交差させた繊細で美しい音響作品として高い評価を受ける中、今年9月5日にMatthewdavid主宰のLAの名門Leaving Recordsから最新アルバム『After The Town Was Swept Away』をリリースしたばかりだ。
ギルモアは映画やビデオゲームの音楽も手がけており、アカデミー賞作品賞にノミネートされた映画『Nickel Boys』にも楽曲を提供。また、The Cinematic Orchestra、Arthur Moon、Para Oneといったアーティストのリミックスも行っている。さらにSpitfire Audioとの共同開発により、テープ録音の質感を取り入れたソフトウェア音源「Tape Synths」をリリース。
インスタグラムでは10万人近いフォロワーを有し、SNSを通じて世界中のリスナーと繋がりながら、BlankFor.msは独自の音楽言語でグローバルな存在感を高め続けている。
https://www.instagram.com/blankfor.ms/


Lullatone(兵庫公演に出演)

15枚のアルバムリリースと1億回以上のストリーミングの他、Each Story等の国内アンビエント主要フェスへの出演、また数々の映画やテレビ番組、アート作品のために作曲を手がける音楽家。日々起こる小さいけれど大切にしたい、そんなものごとへのサウンドトラックとして楽曲を制作している。Lullatoneのライブは、いくつもの小型シンセサイザーとロボットドラムを使用し、多彩な音を再現するための小さな実験室のようであると言われる。多くのインタラクティブな要素が組み合わさり、遊び心のあるライブでリスナーを魅了し続けている。


Tatsuro Murakami(兵庫公演に出演)

東京生まれ、ギタリスト・プロデューサー。高校卒業後にブラジルへ渡り、日本人として初めてサンパウロ州立タトゥイ音楽院ショーロ科をクラシックギター専攻で卒業。現地でサウンドトラック制作も学び作曲家としての活動を開始し、現在までにアンビエント系の海外レーベルより5枚のアルバムをリリースしている。約7年間のブラジル滞在の後帰国し、帰国後は国内のブラジル盤リリースや通訳、興行企画等にも携わる。タージ・マハル旅行団(現Stone Music)ギタリスト、USレーベルMystery Circlesの日本支部代表。2025年に最新作”Mita Koyama-cho”をLPリリース。


vq(東京公演に出演)

vqはネカフェやコインランドリー、スーパー銭湯、友達の家を拠点に活動するアーティスト。アニメ『タコピーの原罪』エンディングの公式リミックス、BALMUNG 2025 S/Sでの音楽制作およびモデル出演、ゆるふわギャング主催の「PURE RAVE」や、中国・広州にて開催された626company主催イベント「无题一」など、多様なフィールドで表現の幅を広げている。
最近は先月からハマってしまった雑炊を、作っては食べる日々を送っている。


COMPUMA(東京公演に出演)

ADS(アステロイド・デザート・ソングス)、スマーフ男組での活動を経て、DJとしては国内外の数多くのアーチストDJ達との共演やサポートを経ながら、日本全国の個性溢れる様々な場所で日々フレッシュでユニークなジャンルを横断したイマジナリーな音楽世界を探求している。自身のプロジェクトSOMETHING ABOUTよりMIXCDの新たな提案を試みたミックス「SOMETHING IN THE AIR」シリーズをはじめ、コレクティヴ「悪魔の沼」での活動でのDJや、楽曲制作、リミックスなど意欲的に活動。2022年には初ソロ名義アルバム「A View」2024年には「horizons」をリリース。Berlin Atonal 2017、Meakusma Festival 2018への出演、ヨーロッパ・ラジオ局へのDJミックス提供など国外での活動の場も広げる。一方で、長年にわたるレコードCDバイヤーとして培った経験から、コンピレーションCD 「Soup Stock Tokyoの音楽」の他、BGM選曲を中心にアート・ファッション、音と音楽にまつわる様々な空間で幅広く活動している。Newtone Records、El Sur Records所属。

その彼方には、魅惑的な静寂が広がっていた……

ジャズの奥深くに広がるサイレンス
かつてない斬新な観点からつづられる未来的なエチュード

新しい音楽の聴き方、そして静と動が完璧に繋がった世界

マイルス、イーノにはじまり、「静寂の次に最も美しい音」のキャッチフレーズで知られるECM、菊地雅章の忘れられたシンセサイザー作品、芦川聡や吉村弘、尾島由郎ら日本の環境音楽の開拓者たち、そして清水靖晃から高田みどりまで

著者入魂、7年ぶりの書き下ろし

四六判変型並製/352ページ

[著者]
原 雅明(はら まさあき)
文筆家、選曲家。レーベルringsのプロデューサーとしてレイ・ハラカミの再発等に携わり、LAのネットラジオ局dublabの日本ブランチの設立に関わる。リスニングや環境音楽に関連する企画、ホテル等の選曲も手掛ける。早稲田大学文化構想学部非常勤講師。著書に『Jazz Thing ジャズという何か』『音楽から解き放たれるために』など。

『アンビエント/ジャズ』刊行に寄せて
──著者・原雅明による「前書きの前書き」をこちらにて公開中

刊行記念イベント開催決定!
・9/23@WPU Shinjuku
・10/13@野口晴哉記念音楽室
→詳細は本ページ下部をご確認ください

聴きながら読む──「アンビエント/ジャズ」プレイリスト公開中

Ambient/Jazz - between Miles Davis and Brian Eno Chapter 1&2

Ambient/Jazz - between Miles Davis and Brian Eno Chapter 3&4

Chapter 1 & 2 (YouTube Music)
https://music.youtube.com/playlist?list=PLwIEk49IRfMR35xvuGibFfpPlj9YORa1a&si=LV-Nsb82ydiGGv2A

Chapter 3 & 4 (YouTube Music)
https://music.youtube.com/playlist?list=PLwIEk49IRfMRRFpcQIW6O2CwFCSzfiZfI&si=21PsB4WMVhMTMw49

目次

intro

第1章 マイルス・デイヴィスのジャズとアンビエント

1 空間の拡張と時間の遅延──第2期クインテットにおける試行錯誤
2 エレクトリック期に試みられたトーン・ポエム/アンビエント
3 アップデートされる80年代以降のマイルス

第2章 ブライアン・イーノのアンビエントとジャズ

1 オブスキュアとギャヴィン・ブライヤーズ
2 アンビエントの誕生
3 アンビエント・シリーズの発展
4 ダニエル・ラノワの『Belladonna』とその後のイーノ

第3章 ECM もう一つのジャズとアンビエント

1 マンフレート・アイヒャーとジャン=リュック・ゴダール
2 多様なるECMの世界

第4章 日本におけるジャズと環境音楽の往還

1 菊地雅章が残した浮遊するサウンドとハーモニー
2 日本の環境音楽の開拓者たち──芦川聡、吉村弘、尾島由郎
3 清水靖晃の「質感」
4 今日まで続く高田みどりの挑戦

outro

オンラインにてお買い求めいただける店舗一覧
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未来屋書店/アシーネ

刊行記念イベント①

dublab.jp presents
Listening Event “AMBIENT / JAZZ”

dublab.jpのファウンダーであり、文筆家、選曲家、レーベルringsのプロデューサーである、原雅明の新刊「アンビエント/ジャズ――マイルス・デイヴィスとブライアン・イーノから始まる音の系譜」の出版を記念したイベントの開催が決定。
ゲストに環境音楽のシーンを牽引し、海外からの再評価も高い尾島由郎氏を招聘し、書籍の本質をトーク&リスニングで解剖。また、「AMBIENT / JAZZ」を各々の解釈で展開させていくDJによるサウンドが空間を演出します。

また、会場では、新刊『アンビエント/ジャズ──マイルス・デイヴィスとブライアン・イーノから始まる音の系譜』をはじめ、本書のコンセプトである「アンビエント/ジャズ」に関連した書籍を揃えたポップアップ・ブックストアも出店します。

ぜひ、皆様の来場をお待ちしております。

会場: WPU Shinjuku
https://hotel.wpu.co/shinjuku/

日時: 2025年9月23日(火祝)
14:00-19:30

入場無料

Talk&Listening:
Masaaki Hara
Yoshio Ojima

DJ:
DJ Emerald
grrrden
JIMA 
mamekx

Support:
ADAM Audio

14:00-15:00 mamekx
15:00-16:00 DJ Emerald
16:00-17:00 JIMA
17:00-18:30 Talk&Listening: Masaaki Hara, Yoshio Ojima
18:30-19:30 grrrden

https://dublab.jp/show/listening-event-jazz-ambient-25-9-23/

刊行記念イベント②

「アンビエント/ジャズ――マイルス・デイヴィスとブライアン・イーノから始まる音の系譜 」出版記念レコード鑑賞会

10.13.2025(mon.祝日)
野口晴哉記念音楽室
open 16.00 start 17.00
¥3000(+1d order制)※Limited 20/reservation only

Masaaki Hara 
Takuro Okada
野口晴哉記念音楽室にて、ele-king booksより刊行された原雅明氏の新著 『アンビエント/ジャズ――マイルス・デイヴィスとブライアン・イーノから始まる音の系譜』 の出版を記念し、リスニング会を開催致します。
セレクターには著者の原氏、そしてレコードコレクターとしても名高い、音楽家・岡田拓郎氏をお招きし、新刊に関連する作品をレコードで聴きながら、お二人の対談を行い、「聴く/聞く」ことを掘り下げる一夜となります。
限定20名、予約制のささやかな会となります。参加ご希望の方は、お名前と人数を明記のうえ、全生新舎instagramのDMにてお申し込みください。

※入場時にIDチェックがあります。
身分証明書をご持参ください。

お詫びと訂正

このたびは『アンビエント/ジャズ』をご購入いただきまして誠にありがとうございます。
同書に誤りがありましたため、謹んで訂正いたしますとともに、
お客様および関係者の皆様にご迷惑をおかけしましたことをお詫び申し上げます。

●59ページ 6行目

誤 『The Complete Bitches Brew Sessions』
正 2003年リリースの『The Complete Jack Johnson Sessions』

●同 9行目

誤 『The Complete Bitches Brew Sessions』
正 『The Complete Jack Johnson Sessions』

●169ページ 注4の7行目

誤 ディオ演奏
正 デュオ演奏

●185ページ 8行目

誤 彼の音作り方から、
正 彼の音の作り方から、

●209ページ 5行目および9行目

誤 「All of My Life」
正 「All My Life」

●218ページ 後ろから4行目

誤 ルアカ・ポップ
正 ルアカ・ボップ

●281ページ 後ろから1行目

誤 「Wind 1,2」
正 「Air 1,2」

●282ページ 1行目

誤 「Wind 3」
正 「Air 3」

●同 3行目

誤 「Wind 4,5」
正 「Air 4,5」

●297ページ 8行目および10行目

誤 吉川
正 吉村

●312ページ 3行目

誤 濱野
正 濱瀬

interview with Colin Newman/Malka Spigel - ele-king

 「時代の流れに身を任せながらも、自分の原則を守ろうとする」というのが、マルカ・シュピーゲルが、過去数十年にわたって音楽と人生の道を歩む上で指針としてきた哲学を、自ら説明した言葉だ。イスラエル生まれで最初はベルギーを拠点とするポスト・パンクと実験的ポップ・バンド、ミニマル・コンパクトとして活動を始めた。
「君は本当に詩人だね」と、この時間の大半で冗談交じりに語ったのは、彼女のパートナーでイギリスのポスト・パンク時代の伝説のバンド、ワイアーのリード・ヴォーカル兼ソングライターとして名を馳せたコリン・ニューマンだ。
やりとりのなかで、行ったり来たりしながら互いの空白を埋めるように話し、どちらかが割って入って会話の流れを調整する。コラボレーションが基本という感覚こそが彼らの自然な会話の仕方の本質の一部であり、おそらくそれが、音楽家として長く継続できている協働の特性をも垣間見せているのかもしれない。


Immersion
Nanocluster Vol. 1


Immersion
Nanocluster Vol. 2


Immersion
Nanocluster Vol. 3

 1980年代にベルギーで出会ったふたりの、尽きることのない好奇心、新しい音に対する鋭いアンテナを張り巡らせること、そして他者の作品を吸収して共有したくてたまらない、スポンジのような吸収力と解放的な感性が組み合わさったことで、魅惑的で変わりやすいオルタナティヴ・ポップ・ミュージックの歴史に大きな影響を与える(同時に影響を受ける)存在となった。

 〈スウィム(Swim ~)〉レーベルの共同オーナーとして、Githead名義のバンドとして、ここ最近ではエレクトロニック・デュオ、イマージョン(Immersion/没入の意味)名義として『ナノクラスター(Nanocluster)』における複数の人と共働するスピーゲルとニューマンは、おそらくこれまでで一番活発な活動を展開している。今年のはじめ、彼らは『ナノクラスター』シリーズの第3弾をリリースし、イマージョンとしては、アメリカのアンビエント・カントリー・トリオのSUSSと共に砂漠と海、コンクリートと空を融合させた、ヒプノティックで本質的なテクノで宇宙的なコラージュを創り上げた。その一方、イマージョンのニュー・アルバム『WTF?』は時代精神を捉えたタイトルで、9月にリリース予定だ。

 下記は、昨年夏に『ナノクラスター』の「vol.2」「vol.3」のリリース期間中に実施した、スピーゲル(MS)とニューマン(CN)とのインタヴュ-の編集版である。

80年代半ばのブリュッセルに本物のシーンがあった。〈クラムド・ディスクス〉だけでなく、〈クレプスキュール〉もあり、両レーベルにたくさんの国際的なアーティストが集まって、結果的にブリュッセルに住むようになったりしていた。物価も安くてツアーもやりやすかったし。

この世界に入るきっかけは何だったと考えていますか?

マルカ・スピーゲル(以下、MS):知識も技術もない状態でも、とにかく人と集まって一緒になって演奏することから始まった気がします。それでも、クリエイティヴであることの力がどういうものなのかを感じることができたのが大きかった。そして私は‶一緒に居ること〟の力を感じ続けている。私たちが常にコラボレーションをするのはそのため。他の人と演奏すると音楽面だけでなく、人間関係においても魔法みたいなものを感じるから。

コリン・ニューマン(以下、CN):僕はマルカとはまったく違う世界から来ています。いわゆるハードコアからネオクラシカルまでの、ありとあらゆる音楽の領域で、合奏(アンサンブル)にはふたつのアプローチの仕方があると思う。ひとつは、誰かが何か書き留めたものを皆で演奏するタイプ。もう一方は、皆で部屋に集まってその場で一緒に何とかするタイプだとすると、僕は最初の方。ワイアーが、ジャミングが下手くそなのは、周知の事実! 「部屋で一緒に音楽を作ってみよう!」と言っても決して何もできあがらない。基本的な作品の構造と要素があれば、非常に良いものになる可能性はある。それに対して、マルカは完全に怖い物なしなんだ。彼女が文字通り演奏を始めると、その周りに必ず何かが見つかるという具合。僕たちが最初に出会ったのは1985年で、それからほぼ継続的に長い時間、一緒に仕事をしている。

あなたは、ミニマル・コンパクト(Minimal Compact)の5枚目のアルバムをプロデュースされましたね?

CN:そう、『レイジング・ソウルズ/Raising Souls』をね。

その頃、つまり1980年代初頭のベルギーの音楽シーンは、アクサク・マブールとザ・ハネムーン・キラーズのマーク・ホランダー(オランデル)が〈クラムド・ディスクス〉で活躍していた非常に興味深い時代だったようですね。

MS:そう、ある種のエネルギーがあった。レーベル周辺にはタキシードムーンやその他の多様な音楽があって、コリンは完全に魅了されていたと思う。彼は、ロンドンで公有地に不法滞在するような生活から、ブリュッセルに移ってイギリスよりも少し穏やかな人びとや美味しい食事に出会えた。

CN:そうなんだ。すごく気に入っていたよ。本物のシーンがあった。80年代半ばは常に魅力的な時代で、〈クラムド・ディスクス〉だけでなく、〈クレプスキュール〉もあり、両レーベルにたくさんの国際的なアーティストが集まって、結果的にブリュッセルに住むようになったりしていた。物価も安くてツアーもやりやすかったし。

MS:ロンドンはかなり厳しい場所だった! 私はロンドンに行き始めたばかりの頃にショックを受けたの。ものすごく貧しい感じがして。あなたがブリュッセルに惹かれた理由がわかった。誰かと恋に落ちた以外にもね……わかるでしょう?

CN:一目ぼれだったよ。

MS:楽しい場所だったけれど、(シーンが)衰退すると退屈なベルギーになってしまった。

CN:それは、ベルギーのシーンが心理的な境界線を越えてしまったからなんだ。フランドルとワロン地域はほとんど別の国とも言える場所で、シーンは〈R&S〉レコードがあったゲント(ヘント)に移ってしまい、そこがテクノ・シーンのすべてになった。突然、〈R&S〉と契約した国際的なアーティストたちが現れて、シーンを牽引するようになった。エイフェックス・ツインの最初のアルバムをリリースしたのも彼ら。〈ワープ〉レーベルが頭角を現して彼らの輝きを奪うまで、ゲントには強いシーンがあった。

MS:私たちが再びロンドンに興味を持ち始めたのもその頃だったね。

CN:たしかにね。ブリュッセルからゲントへの移住を考えるぐらいなら、ポーランドに移るのと変わらない。どちらにも同じ銀行、同じ店があるけど、言語もメンタリティも全然違う。それに、ロンドンはまさに、拡大し始めている時だった。

MS:私たちはいつも、物事が始まりそうな場所に惹かれる傾向があるね。

CN:僕は1986年にブリュッセルに移ったんだけど、僕たちがそこを離れたのは1992年になってからだった。その時、ロンドンではようやく電子音楽シーンが始まったところだった。

MS:そして私たちはレーベルを立ち上げて、多くの電子音楽のアーティストたちと知りったの。

CN:移住する前には、マルカのミニマル・コンパクトでの活動が下火になっていて、シンガーのサミー・バーンバッハの近所に住みながらあるプロジェクトに取り組んでいたんだけれど、進展しなかった。そしたら、マルカにソロ・アルバムの話が来たんだよね。でも、彼女は知らない雇われのミュージシャンたちとスタジオに入るのを嫌がり、自分たちのスタジオで、自分たち自身で作りたいと思った。

MS:それに、彼らは私たちの考え自体を理解してはくれなかった。その頃ちょうど、自分たちのスタジオを持つということをし始めたばかりだったから。今では普通のことなのにね。

CN:彼女は、‶もうやり始めたからには、最後までやり遂げたい。さっさとやってしまおう″と言ったんだ。ロンドンに引っ越す時には、ガレージをしっかりと録音ができる場所に改造してレコードを作ってから、リリースしてもらえるレーベルを探すつもりだった。持っていた僅かな金でガレージに防音を施して、新しいミキシング・コンソールを買い、レコードを完成させた。だけど、レコードを出してくれるレーベル探しには完全に失敗したんだ。そんななか、ミュート・レコード社長のダニエル・ミラーとミーティングをしたら、「ここまで全部を自分たちでやったのなら、自分たちで出せばいいのに。やり方はこうだ……」と、レーベルの運営方法を2時間かけて指導してもらった。そして突然、アルバムをリリースすることになった。

MS:(私たちの)典型的な回答ね! 質問に対して、もはやまったく別の話題になってしまっている……!

その後、ミニマル・コンパクトのサミー・バーンバッハと一緒に、オラクルという名でコンピレーションを制作して出した。2枚のレコードを出したところで、マルカが言ったんだ。「私たちはテクノ・レコードを作らなければ!」と。

これこそが私の理想のインタヴューの形ですよ。私がやるべきことが少なければ少ないほど良い!

CN:実は、僕たちがレコード会社を作ったことをマルカが認めるまでに一年かかったんだ。彼女にはそれがとても思い上がったことに思えたから! それでも僕たちはマルカの初のソロ・アルバムをリリースし、そこから利益を得ることができた。

MS:あの頃はいまよりもまだやり易い時代だったから。

CN:そして、人びとはもっと多く(音楽を)購入していた。その後、ミニマル・コンパクトのサミー・バーンバッハと一緒に、オラクル(Oracle)という名でコンピレーションを制作して出した。2枚のレコードを出したところで、マルカが言ったんだ。「私たちはテクノ・レコードを作らなければ!」と。

MS:私はそんなこと言っていないけど!

CN:いや、言ったよ!君はもっとインストゥルメンタルな曲を作るという想いにかられていた。そして、常に‶ミステリアス〟という言葉を好んでいたね。

MS:多分、そっちの方がより純粋だからだと思う。テクノには‶フロント〟というイメージがあまり無いところに惹かれたの。音楽の制作者がどこから来た、どういう人なのかは知らなくても、純粋な音楽だけがすべてだと思うようなところに。

CN:そうそう、『NME』では‶顔なしのテクノ・バカ(”faceless techno bollocks)″みたいにまとめられたけれど、それは‶ジャングル″のような言葉と同じで、最初はこき下ろしみたいな呼び方だけど、結局は受け入れられるんだ。‶顔なしのテクノ・バカ″なんて、素晴らしい発想だよね![編註:これはすぐにテクノの匿名性、音楽重視で作り手のルッキズムに依存しない態度を賛辞する言葉になった] 最初のイマージョンのレコードでは、僕たちはドイツ出身だと偽ってウィッグやマスクを着けて宣材写真を撮って、でたらめな偽名を使っていた。レコード会社としては、レコードをリリースするだけだから、それが誰によるものなのかは関係ない。それが最初のイマージョンのアルバム『オシレイティング/Oscillating』だった。

ほぼ同じ時期にリミックス・アルバムもリリースされましたよね?

MS:当時はほんとうに簡単だった。電子音楽のミュージシャンがたくさんいて、誰もがオープンで、「お願いできる?」と聞くと「もちろん、リミックスするよ!」という返事がもらえたものよ。

CN:それはロビン(ランボー、別名スキャナー)が始めたんだよね。バタシー・バークを歩いていた時、彼が「リミックスしてあげるよ!」と言ったんだ。我々も、いいね! という感じで。僕たちはそれが12インチ盤を出す口実になると思った。それで2枚分のリミックス・アルバムを作ったんだけど、2作目の頃には、テクノ界の少し有名なクロード・ヤングのようなアーティストがリミックスを手掛けてくれるようになって、それらのレコードが売れたんだ! まだレーベルを始める前の〈ファット・キャット〉がコヴェント・ガーデンにレコード店を持っていたから、少し多めに白盤を作って〈ファット・キャット〉に渡せば、彼らがトップDJたちに売ってくれていた。

MS:そうやって、自然と広がっていったの。あの自然な流れが好きだったな。今は、すべて業界の仕組みを通さなくてはならなくて、その罠から抜け出すのは不可能ね。

CN:それで、僕たちのそれまでの歴史とはまったく関係なく、ダンス・ミュージック界でクールな音楽を出すレーベルという評判を得たんだ。その次に、LFOのゲズ・ヴァーリーから連絡が来て、「いくつかのトラックがあるんだけど、ワープは全部が‵聴くための音楽′でないと出したくないと言っている。俺はダンスフロア向けの音楽をやりたいのに」と言うんだ。ちょうど息子のベンを迎えに行く車の中でそのカセットを聴いたんだけど、最初のトラック“クオ・ヴァディス/Quo Vadis”を聴いた瞬間にこれはポップ・ミュージックだと思ったね!

MS:彼はG-Manと名義を変えて12インチを出して、この曲は大成功を収めたし、今でもプレイされている。日本でのワイアーのライヴで、ある人がワイアーの出番の前に“クオ・ヴァディス”をプレイしていた。その人は、コリンとこの曲の繋がりを知らなかったと思うけど。聴いた瞬間に、「ワオ! まだプレイする人がいるんだ」と思った。

CN:まさにクラシックな、ダンスのできるミニマル・テクノとして、DJたちに愛されたよね。この頃には僕たちはもう恐ろしいほどの評判を得ていたんだけど、ひとつのスタイルに固執したくはなくて。そして、ドラムンベースが登場し、僕たちも夢中になった。テクノはある種、アメリカンな感じがしたけど、ドラムンベースはまさにロンドンの音楽で、70年代パンクのような興奮を覚えた。突然、信じられないほどのエネルギーの爆発が起きた。正直、90年代半ばのある時点では、もうドラムンベースさえあればいいという感じだった。自分たちでも少し作ったけれど、その後、ロニー&クライドという、ブレイクビートのより知的な側面に分け入って、違う領域に挑戦する人たちと仕事をするようになった。僕たちはもう少しダウンテンポ寄りの作品をいくつか出して、90年代後半にはポスト・ロックの渦に巻き込まれ始めた。僕たちは90年代をアンビエント・テクノから始めて、ポスト・ロックへとたどり着いた。その時の時流に乗ったということだ。レーベルをやるのであれば、常に現代的であり続けなければいけない。

いまの話を聞いて、あなたが先ほど話していたことを思い出しました。あなたは、ネオクラシックからその他のさまざまなジャンルへと続く音楽の糸のようなものについて話してくれましたが、それに名前は付けていないと言いました。実は私もそういったことをよく考えるのです。ジョン・ケージからブライアン・イーノが1970年代にやったこと、それからパンクの時代にもっとも興味深いバンドがやっていたことまで、線を引くことができるのではないかと。それは、クラシック・ロックの正典の枠組み外にある、並行歴史(パラレル・ヒストリー)のようなものではないかとね。

MS:ストリーミングが始まってからすべてが変わったのではないかな。音楽を届ける範囲や、仕組みそのものが変わったのでは?

CN:根本的に変わったのは、どこに力があるかということだと思う。例えば、90年代のインストゥルメンタル・ミュージックの台頭は、アーティストがアメリカやイギリス出身でなくても世界的に活躍できることを意味して、その変化はストリーミングの普及によって完成されたんだ。今ではその現象は‶グローカリズム(glocalism)〟と呼ばれていて、アーティストが自国で成功を収めながら世界中へと広げていくことができる。それと同時に業界は、完全に石化したかのような状態になって——僕が言っているのは、メジャー・レーベルや大手の独立系のことだけど——なんとか過去の体制にしがみつこうともがいている。権力の分散化は確実に起きていて、それをさらに加速化させる必要がある。

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ドラムンベースが登場し、僕たちも夢中になった。テクノはある種、アメリカンな感じがしたけど、ドラムンベースはまさにロンドンの音楽で、70年代パンクのような興奮を覚えた。突然、信じられないほどのエネルギーの爆発が起きた。正直、90年代半ばのある時点では、もうドラムンベースさえあればいいという感じだ。

あなた方が一緒に働き始めた時、コラボレーションが重要になったと言っていましたね。年月を経て、それが大きく成長したように見えます。それはあきらかに、『ナノクラスター』の重要な要素のひとつですよね。

MS:それがすごく魅力的な領域なんです。長年音楽を作り続けていると、知らない人と一緒に働くこともあって、そんな時には自分の安全地帯から押し出されるようなことも起きてくる。どこか違う場所で、他の人たちのやり方に挑戦すると、視野が広がって、多くの選択肢を与えられるの。すべてのコラボレーションが私たちを新たな場所へと連れて行ってくれる。

CN:2000年代になると、ワイアーが再び始動して、それと並行してGitheadというバンドのプロジェクトにも取り組んでいた。10年前には、ブライトンに移住したんだけど、そこでまたイマージョンも復活させることにしたんだ。機材がかなりシンプルで、ただ一緒にギグをするだけでよかったから。イマージョンの前のアルバム『ロウ・インパクト/Low Impact』は1999年のリリースで、その次のレコードは2016年だった。長い間隔が空いてしまったけど、それが僕たちに自由に活動する空間を与えてくれた。それでアルバムを制作して最初は2枚の10インチ盤として発売し、後にCDに編集した――まるで島に住むアナログな生き物みたいなイメージで。実際にそれがタイトルになったんだけど(EP『アナログ・クリーチャーズ/Analogue Creatures』と『リヴィング・オン・アン・アイランド/Living On An Island』 をまとめたアルバム、『アナログ・クリーチャーズ・リヴィング・オン・アン・アイランド』)。実は僕たちがすでにその時、ブレグジットによる疎外感を感じ始めていたのがタイトルに表れているんだ。

今日の取材の前にその曲を聴いていて、そのことに強く感じ入りました。『リヴィング・オン・アン・アイランド』というタイトルと2016という年を見て「ああ、自分もその感覚を知っている!」と思ったんです。

MS:ブレグジットの投票時には、私たちは島に居て、あらゆるものから隔絶されているという強い感覚を覚えたの。

CN:僕たちは海辺に住んでいるしね。

MS:そう。そしてそれがある種の希望と楽観主義を同時にもたらしてもくれる。

CN:いくつかライヴやフェスティヴァルにも出演したけれど、大きな動きはなかったね。
でもブライトン在住の知人が、「ブライトンに居るなら、自分たちの手でシーンを作る必要がある」と言ったんだ。現地の音楽シーンは結構分断されているからね。

MS:ミュージシャンもすごく多いから!

CN:すごく多い! それで僕たちは、「それはどういう意味だろう? どうやったらシーンを生み出すことができるのか? クラブでイベントを企画してもいいけど、他の人とどうやって差別化できるんだろう? そうだ、コラボレーションの要素を入れてみよう」と思いついた。僕たちはターウォーター(Tarwater)とはベルリンのシーンの初期から何年も知り合いだったし、会場をみつけて、ターウォーターとイマージョンがコラボレートするイベントを企画しようということになった。彼らが数日間、僕たちの所に泊まり込んで一緒に曲を作ればよいと考えた。そして、それが上手くいったんだ。

MS:リハーサル中にもスタジオで録音ができたから、基礎となる録音を残すことができたしね。

CN:ザ・ローズ・ヒルという公共の、110人ぐらいのキャパの小さな会場でやったんだよね。ちゃんとしたお客さんで埋めるのも簡単な規模の。

これは、実はワイアーのブルース・ギルバートが人生と芸術について語った大事な声明のひとつ、「文脈がすべてだ(Context is all).」から来ている。僕はいわゆるビッグ・ボーイ・プロダクションと言われるものを常に嫌ってきた。レコードを聴いて、その背後に関わった‶プロデューサー″のエゴが透けて見えるような自己主張の強いもののことだ。

コラボレーションはどのような感じでやるのでしょう? 即興することもあるんでしょうか? それとも事前の準備の方が多めですか?

MS:まず私たちがアーティストにアプローチして、「私たちの方から3つの基本的なアイディアを送るから、あなたの3つの基本の考えを返送してください。何か思いついたものをそこに乗せてみてほしい」と言う。それを基に、あまりやり過ぎない程度に構築していく。それから相手と一緒になって完成を目指すの。毎回違うやり方にはなるけれど、それが基本的な構造かな。全然即興ではないけれど、完成度をそこまで高くしないから「うまく行くだろうか?」とか「良いライヴができるだろうか?」というような多少の緊張感もある。

CN:次に思いついたコラボレーションの相手がレティシア・サディールだった。‶クラウトロック・カラオケ″というものがあってね。

MS:ロンドンに長年住んでいる、日本から来た人が企画している、違うバンドの人達が集まってクラウトロックのヴァージョンを弾くという一夜があって、それが楽しいの!

CN:それをレティシア・サディールと一緒にやったんだけど、彼女はギター演奏の能力だけでなく、すべてのパートを覚えて参加したんだ。僕たちはそんなことをしたことがなかったんだけど! それを見て、彼女に『ナノクラスター』の話を持ちかけたら、セットをやってくれるのではないかと思った。

MS:彼女が私たちの所にやって来て滞在し、一緒に題材に取り組んで。そう、とても良かったわ。

CN:僕たちは多くの素晴らしい人たちを知っているけど、そのうちの何人かは僕たちがその人たちのファンであるという理由からなんだ。ウルリッヒ・シュナウスが宇宙で一番の音楽を作っていた時もあったし、他にもロビン・ランボー、スキャナー、勿論Githeadのね。彼のことももう何年も知っているよ。

MS:それ以来、私たちはますます幅広い分野でコラボを続け、紙の上では機能しそうもない奇抜なアイディアを次々と生み出してきたの。

CN:そこへ突然パンデミックが襲い、2020年5月に僕たちは4つのコラボレーション企画以外はまったくすることがなかったから、「アルバムを完成させよう」と決めた。実はこれは難しい決断だった。というのも、マルカと僕はそれまで一度もアルバムのミキシングをやったことがなかったから。まさに目から鱗が落ちるような経験だった。僕の感覚では、それが当時、僕たちのスタジオから生まれた作品のなかでも最高のミックスのレコードになったんだ。すべてをコラボレーションして制作したからだと思う。

MS:ある意味、ラジオからも影響を受けていたよね。異なるジャンルの曲をたくさん聴くと、音の組み合わせ方など、無意識に影響を受けていたと思う。

CN:その通りだね。それを2021年にリリースして、批評家からはある程度の高評価を得たけれど、パンデミックの最中にはプロモーションは何もできなかった。ライヴもすでに終わっていたので、ツアーを組むのも難しい状況だった。どちらにしても、2021年から22年にかけて、ツアーを検討したミュージシャンは、自分たちで主催するしかなかったし。

パンデミックの状況において、アルバムで他のアーティストたちとはどのように協力して制作できたんですか?

CN:すべてを事前に録音していた。

MS:リハーサルをしながら録音し、それを制作の基盤としたの。現在では、彼らが送ってくれる素材で仕事をしているけれど、次回作のコラボレーション(2025年のSUSSとの『ナノクラスターVol.3』)では、物理的な空間での作業はしないと思う。状況次第だけどね。スタジオ・ワークを完成させるには、互いにパーツを送り合うか、物理的に人が集まるかのどちらかの方法がある。

それは、プロジェクトの進化の一環ですね。始めた頃にはブライトン在住のミュージシャンたちや、移動が容易な人たち中心だったのが、より広範にアーティストを探し始めると、プロセス自体も変わってくる。

CN:まさに。最初の作品をリリースした後、「次のレイヤーに行くにはどうすればよいか」を考えた。多くの人と話をしたけど、誰もブライトンには居なかったし、パンデミック後というのは、誰もが自分のキャリアに集中していた時期だった。僕たちと仕事をするのは贅沢だと思われる可能性もあったから、何か別の方法はないかと考えた。僕たちの知り合いにサウス・バイ・サウスウェストの主なオーガナイザーのひとりであるジェイムズ・マイナーがいたので、そこで何かをやってみようと思った。

MS:それは結構怖いことだった。というのも、オースティンまで遠征して、現地の人たちと音楽を作らなければならなかったから。どうやってやろう?と。その時、リストにソー(Thor)・ハリスの名前を見つけたの。彼はその土地の人で、パーカッションを演奏するので、一緒に何かを創りやすいのではないかと思った。

CN:彼はかなりアメリカのミニマリスト・シーンの核心にいる人物だし。

MS:そして、生まれつきコラボレーションの才能のある人。

CN:ソーは、実に乗り気きだったね。事前に素材を交換したので現場に着いたらすでに基盤となるものもあった。結局、彼の家でリハーサルをすることになった――彼はただ優秀な音楽家であるだけでなく、大工、配管工、便利屋としても何でもござれの職人で、素晴らしい社会的良心も持ち合わせているんだ。

MS:彼は素晴らしい人物だった。彼の自宅で仕事ができたのは良い経験だった。オースティンでは誰もが知る人物。

CN:実際のパフォーマンスでは、ちょっとした試練のようだった。というのも、結局、ホテル・ヴェガスで演奏することになり、半分暗がりの、そこら中、酔っぱらいだらけのなかで、テーブルの上に機材を設置しなければなかったから。

MS:それがコラボレーションの良いところ。それぞれの異なる経験が、いつもなら行かないような場所にまで連れて行ってくれるので、かなりの中毒性がある。私たちは人と一緒に音楽を作ることが大好きだし、他の人の世界に引き込まれるのも特別なことだから。

それが、リスナーとして『ナノクラスター』のアルバムを聴くときに興味深い点のひとつです。音楽的な個性が互いに溶け合っていくかのような感覚なんです。多くの人が関わっていて、各盤面やディスクごとにコラボレーターが違うのに、常に一貫した雰囲気が漂ってくるからです。あなたたちがワイヤーとの作業について説明してくれたのとは対照的ですね。ワイアーでは各人の役割が明確に分けられ、決まっていたという。

MS:コラボレーターが違っていても、音に一貫した豊かさがあると言う声をよくもらいます。

CN:それはおそらく、最終的なミックスのやり方も影響しているだろうね。

MS:でも、それだけではないわ。私たちはそこに人間同士の繋がりを持ち込むから。いつも、最後には友情関係になって終わることが多いよね。

CN:僕たちは、一緒に仕事をする人の空間を作ろうと努めるけれど、文脈を設定した上でそうする。これは、実はワイアーのブルース・ギルバートが人生と芸術について語った大事な声明のひとつ、「文脈がすべてだ(Context is all).」から来ている。僕はいわゆるビッグ・ボーイ・プロダクションと言われるものを常に嫌ってきた。レコードを聴いて、その背後に関わった‶プロデューサー″のエゴが透けて見えるような自己主張の強いもののことだ。制作に関わるのであれば、その音楽とそれを聴く人の間の障壁を取り除くべきだ。リスナーがその音楽のなかに何があるのかを容易に聴けるようにするべきだと思う。自分や他の関係者を良く見せよう、聴かせようとすることではなく、全体が大事なんだ。

レーベル名をSwim(泳ぐ)にしたのはなぜですか?

MS:だめ(笑)? 私たちはいつも響きの良い名前を探しているんだけど。多分、私たちがいつも異なる人びとの世界の間に軽やかに浮かんでいるからかも。でも、ほんとうはよくわからない。それは後からついて来るものだと思う。この名前を聞いて、あなたは何を思い浮かべますか?

私はブライアン・イーノのことを思い出しました。彼の音楽では水が繰り返し登場するテーマで、イマージョンで聴く音にもどこか似たものを感じます。あなた方は、どちらも他のバンドではシンガーとして知られていますが、ここでは多くの曲でヴォーカルを削ぎ落しています。だから、ポップスターやロックスターのエゴを排除して、他の可能性が生まれる流動的な空間を探しているように聴こえます。

MS:私たちは、『ウォーター・コミュニケーション/Water Communication』というコンピレーションも出したし、水は繰り返し現れるテーマなの。そして今は、海辺に住んでいるし。

CN:これは、ある意味、『ナノクラスターVol.2』のもうひとつのコラボレーションであるジャック(ウォルター、別名カブゾア Cubzoa)に引き戻される。2021年頃だったと思うけれど、皆が再びライヴを開催するようになり、僕たちはザ・ローズ・ヒルに行ってカブゾアに真に感銘を受けたんだ。

MS:彼は私たちに曲を送ってくれるようになったんだけど、曲というのは完成されたものなので、最初はどうしたらよいのかと戸惑った。通常は、もっと基本的なところから始めるから。でもとても興味深い挑戦になったし、すごく良い作品に仕上がったと思う。

「いまのバンドは大変なのよね。そうせざるを得ないんだから」「ほんとうにそう! パンデミック以降、業界はミュージシャンに圧力をかけている」

CN:さらにもうひとつ、これまでの『ナノクラスター』ではやったことのないことをしたんだ。それは、素材をどんどん出し合うことだった。最初は素材が足りていなかったから。結果、かなり素晴らしい成功に繋がった。彼の曲とはかなり違うものになったんだ。

MS:彼が一緒に居るとほんとうに良い人なので助かったわ。人間性は非常に重要だから。

前回の作品では、4人のアーティストが参加してそれぞれが10インチの片面を担当されましたが、2作目ではふたりとなり、各ディスクにひとりのアーティストが参加した形になっていますね。

MS:それは事前に決めたことではなかったけど、作業を進めるうちに素材が十分そろったことに気付いたの。今後はもしかしたら、コラボレーションはひとつだけになるかもしれない(注:実際、『ナノクラスターVol.3』では、SUSSのみとのコラボになった)。

CN:ルールを設けてはいないよね。ただ、僕たちはダブル10インチ(2枚組の10インチ盤)が好きで。この着想は、完全に実用面でのふたつの理由から生まれた。ひとつ目は、最初のアルバムを製造した際、12インチのヴァイナルをプレスするのに数か月かかったのに、10インチならずっと早く作れたということがあった。また、最初のアルバムには4つのまったく異なるプロジェクトが含まれていた。だから‶それぞれに専用の面があれば、それが自然な仕切りになる″と考えた。

MS:アーティストにとってもより興味深くなるしね。

CN:そう。それぞれが独立した作品になればね。当然のようにデジタル配信では、別々のEPとしてもリリースされているし、ストリーミングでは、短い長さのリリースがトレンドになっているようだ。例えば、20曲入りのアルバムをリリースしても、注目されるのは1、2曲だけで、残りは無視されてしまう。ストリーミングでは聴く人の注意力が極端に短いから。別々のEPにすることで、異なる人たちがそれぞれ別のアーティストに集中できると思った。でも実際には、媒体によるということなんだけど。

そして2作目では、各アーティストがより広い範囲でプレイする余地が得られると、EPのような短いフォーマットではなく、違う方向性になる気がします。

MS:そうかも。各アーティストがより多くの表現で貢献できるようになることが重要。

現在のあなた方の作品に共通するテーマのひとつは、独立した所有権の尊重のように感じます。ワイアーの場合も、バンドがカタログの大部分を所有しているというのは事実でしょうか?

CN:僕たちは80年代の作品は所有しておらず、70年代、80年代の出版権も持っていないけれど、70年代作品のマスターテープは保持していて、2000年以降の作品のすべても持っている。〈スウィム〉からリリースしたアーティストの一部は、自分たちで権利を買い戻していて、他のアーティストは特に気にしていないようだけれど、僕たちは喜んで権利を返還するつもりなんだ。他の人の音楽に執着する必要はない。

MS:あなたの場合は、所有権を持つことがとても重要だと思う。だって、大手レーベルが持つ影響力というものに嫌というほど、気付かされたんだから……

CN:僕たちにとっては、個人的にかなり大きな違いになったよね……。勿論、僕は非常に恵まれた立場で話しているわけだけど。つまり、70年代のワイアーの素材が何世代にもわたって受け入れられてきたから。それは70年代にリリースされた当時の人たちだけでなく、世代を超えて受け継がれて若い人にまで響いている、決して静かではないダイナミックな現象なんだ。さらにストリーミングの数字から判断すると、リスナーは減少するどころか、増加している。自らでマスターの権利を所有し、収益の大部分をバンドに還元できると、生計を立てるための基盤ができる。もしもオリジナル・メンバーと同世代の人たちが公務員になっていれば、はるかに多くの収入を得ていただろう。だけど、60代、70代、80代のミュージシャンのなかには、生活に苦労している人も多い。ツアーに出なければ家賃を払えないから、過酷な条件でツアーを続けるしかないんだ。

MS:でも、私たちが一緒に作るものをすべて所有していることには、メリットとデメリットの両方がある。外部レーベルのように、作品をより広めるような力はないから。

CN:お金がかかるからね。宣伝費や製造費、その他すべてに費用がかかる。だけど、例えばすでにやっているコラボレーションのひとつは、ブライトンを拠点とするバンド、ホリディ・ゴースツというサムとカットのカップルで、僕たちとも仲が良い。彼は30代前半で、ツアーのブッキング方法まで良く知っているんだ。僕の世代のミュージシャンは、ツアーのブッキングの仕方などまったく知らないと思う。

MS:いまのバンドは大変なのよね。そうせざるを得ないんだから。

CN:ほんとうにそう! パンデミック以降、業界はミュージシャンに圧力をかけている。

日本でも似たような状況だと感じます。あの数年で、何かが急激に加速した、‶それ以前とそれ以後″があるんです。若手のミュージシャンたちが、まるで優秀なビジネスマンのように見えるのはある意味で尊敬に値するけど、彼らがそうせざるを得ないことに同情してしまいます。

MS:そうよね。ミュージシャンとして、ただ音楽を追求する自由は、素晴らしい以外の何ものでもない。

(了)

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“I think you swim with the times, but you try to hold onto your own principles,” is how Malka Spigel describes the philosophy that’s guided her path through music and life over the past several decades — initially with Israeli-born, Belgian-based post-punk and experimental pop band Minimal Compact.

“You’re such a poet,” jokes her partner through the greater part of that time, Colin Newman, who made his name as the lead vocalist and songwriter of UK post-punk legends Wire.

A sense of back-and-forth, of each filling the gaps left by the other, of one stepping in and adjusting the flow of the conversation — of collaboration, essentially — is a natural part of the way they talk, and perhaps offers a window into the nature of their long-lasting collaboration as musicians too.

The pair met in Belgium in the 1980s and a combination of endless shared curiosity, a finely honed antenna for new sounds, and a porous, open sensibility to both absorb and eagerly share other people’s work has seen them leave their in fluence on (and be influenced by) by a fascinating and fluid alternative history of popular music.

Working together as co-owners of the Swim~ label, in the band Githead, as the electronic duo Immersion and most recently with a series of collaborators in the Nanocluster live and recording project, Spigel and Newman are perhaps more active than they’ve ever been. Earlier this year, they released the third of their Nanocluster series in collaboration, Immersion merging with US ambient-country trio SUSS to create a hypnotic, techno-organic, shifting kosmische collage of desert and sea, concrete and sky. Meanwhile, Immersion’s new album, under the zeitgeist-grabbing title “WTF?”, is set for release in September.

The following interview is an edited version of a conversation with Spigel (MS) and Newman (CN) last summer in the period between the second and third Nanocluster releases.

__________

IM : What do you think was your starting point that got you on this train?

MS: I think just getting together with people and playing together without any knowledge and technical ability, but feeling already the power of what it’s like to be creative. But also the togetherness, for me is the power that always stays there. That’s why we always collaborate: there’s some kind of magic when you play with other people, not only on the music side but on the human side.

CN: I come from a very different world from Malka. I mean, within whatever you call this whole gamut of music that runs from hardcore to neoclassical or whatever, there seem to be two approaches among ensembles. One is somebody writes something and the ensemble plays it, or the ensemble stand in a room and figure it out together. I come from the first approach. Wire is famously rubbish at jamming! If you’d said, “Let’s stand in a room and figure out some music together,” that’s never happened. If you have a basic structure and some compositional elements that are going in there, then it can be very, very good. Whereas Malka is completely fearless: she will literally just start playing and you kind of find things that go around what she’s playing. We first met in 85, so that’s a long period of pretty much continual working together.

IM : You produced maybe the fifth Minimal Compact album, right?

CN: Yeah, “Raging Souls”.

IM : That looks like a very interesting period for music in Belgium in the early 80s, with the Crammed Discs label and Marc Hollander from Aksak Maboul and The Honeymoon Killers.

MS: Yeah, there was some kind of energy. There was Tuxedomoon and other kinds of music around the label, and I think Colin was pretty much charmed by the whole thing. He came from living in a squat in London into Brussels, and the nice food and people who are kind of softer than in the UK.

CN: Yeah, I loved it. It was a real scene. And that period around the mid-80s was a really fascinating time. It wasn’t just Crammed Discs, there was Crépuscule, and both labels had a lot of international artists who ended up living in Brussels because it was cheap and good for touring.

MS: And London was a pretty harsh place! I was a bit shocked when I started going to London! It felt pretty poor. I could see why you were charmed with Brussels. Apart from falling in love with… you know!

CN: It was love at first sight.

MS: It was a fun place, but when it died off, it just became boring Belgium.

CN: What happened was the scene in Belgium crossed the psychological border. Flanders and Wallonia are almost two separate countries, and the scene moved to Ghent because that’s where R&S Records were based, and that was the whole techno scene was. Suddenly there were all these international artists signed to R&S and they were leading the pack. I mean, they put out the first Aphex Twin albums. Until Warp came and stole their thunder, there was a strong scene in Ghent.

MS: That’s also when we started getting more interested in London again.

CN: That’s true, if you’re in Brussels and you’re thinking about moving to Ghent, you might as well be moving to Poland. You have the same banks and same shops, but you have a totally different language and an entirely different mentality. And London was just starting to expand.

MS: We always feel attracted to places where things kind of start.

CN: I moved to Brussels in 1986 and we finally left in ’92, and at that point, the electronic scene was just starting in London.

MS: And started a label, and started to get to know more electronic music artists.

CN: Before we left, Malka’s time with Minimal Compact had sort of fizzled out, and we lived around the corner from the singer, Samy Birnbach, and sort of worked on a project that didn’t go anywhere. Then Malka got the offer to do a solo album, but she didn’t want to go into the studio with a bunch of hired musicians. We wanted to make it ourselves in our own studio.

MS: And they just didn’t get the concept. It was the beginning of people owning their own studios, and now it’s so common.

CN: She said, “Well I’ve already started on it. I want to finish it. Let’s just do it.” We moved to London with the idea that we could convert our garage into a proper space for recording, then make that record and figure out if we could find someone to release it. We took the little money we had, soundproofed the garage, bought a new mixing board and set to work on finishing the record. Then totally failed to find a label for it, but I had a meeting with (Mute Records boss) Daniel Miller and he said, “You’ve done it all yourselves, so why don’t you just release it yourselves as well? This is what you do…” So I had like a two-hour instruction about how to run a label. And suddenly we were releasing an album.

MS: Typical answer! He asked a question and now we’re a million miles away!

IM : This is my ideal interview. The less work I have to do, the better!

CN: It took Malka a year to actually admit that we had a record company. She thought it was well pretentious! But we put out Malka’s first solo album, and we made some money out of it!

MS: It was easier in those days.

CN: And people bought more. And after that we put out a compilation of the material we’d worked on with Sami Birnbach from Minimal Compact, under the name Oracle. So we’d released two records and then Malka said, “We have to make a techno record!”

MS: I never said that!

CN: Yes you did! You were very much into the idea that we had to make something more instrumental. You always liked the word “mysterious”.

MS: I guess it’s more pure. I always felt attracted with techno to how it doesn’t have too much of a “front image”. The people making the music, we don’t know where they come from, it’s all about the purity of music.

CN: Yeah, summed up in the NME with the phrase “faceless techno bollocks”, which rather like all those other words, like “jungle”, which starts off as a put-down but you sort of embrace it: “faceless techno bollocks”, what a brilliant idea! With the first Immersion record, we just pretended to be from Germany and we had publicity photos with wigs and masks, we had made-up names. If you’re a record company, you just release records: they could be by anybody. That was the first Immersion album, “Oscillating”.

IM : You also put out a remix album at almost the same time, didn’t you?

MS: It was really easy at the time. There were lots of electronic musicians, people were open, you’d ask someone, “Yeah, I’ll do you a remix!”

CN: It was Robin (Rimbaud, a.k.a. Scanner) that started it. We were walking in Battersea Park and he said, “I’ll do you a remix!” Oh, alright! Then we thought that would be an excuse to put out twelve-inches. We did two volumes of remixes and by the second one, we were getting slightly bigger names in the techno world doing remixes for us, like Claude Young, and those records were selling! Fat Cat Records had a shop in Covent Garden, and basically you’d manufacture some extra white labels, give them to Fat Cat, and they would sell them to all the top DJs.

MS: So it kind of spread naturally. I like the way it was so organic. Now everything goes through the industry and it’s impossible to break out of that kind of trap.

CN: And we started to have a reputation within dance music that was nothing to do with our history, just as this label that puts out cool music. The next thing that happened was that Gez Varley from LFO got in contact with us and he said, “I’ve got these tracks and Warp don’t want to put it out because they want to be all ‘listening music’ and I want to to do dancefloor.” And I remember listening to his cassette while going to pick up our son Ben from school in the car, listening to the first track, “Quo Vadis”, and I just thought, “This is pop music!”

MS: He called himself G-Man. And we did really well with it. I mean, people still play “Quo Vadis”. I heard it in Japan, when Wire played a gig and there was someone playing earlier, I don’t think he connected you with the track, but he played “Quo Vadis” and I thought, “Wow! People are still playing it!”

CN: It’s just an absolutely classic bit of danceable minimal techno and DJs loved it. So by this point we had a fearsome reputation but didn’t want to stick in one style. And then drum’n’bass happened. We were biiiiig on drum’n’bass. Techno was sort of American, but drum’n’bass was just London music, and it was kind of exciting like the 70s punk thing: suddenly you have this unbelievable explosion of energy. There was a point in the mid-90s when, to be honest, drum’n’bass was the only music that you needed. We made a little bit of it ourselves, but then we started working with Ronnie & Clyde, who were sort of the more intellectual side of breakbeat or pushing into a different kind of area. We put out some other stuff that was kind of more downtempo, and then towards the end of the 90s, we started to get involved in the whole post-rock thing. We charted a course through the 90s, starting with ambient techno and ended up with post-rock. It was all about what was going on: if you’re a label, you’ve got to be contemporary.

IM : It reminds me of something you said earlier. You talked about this thread of music that runs from neoclassical through all these other things, and you didn’t have a name for it. But it’s something I often think about: that there’s a line you could draw through stuff like John Cage, through what Brian Eno was doing in the 1970s and what a lot of the most interesting bands of the punk era were doing. It’s like a parallel history outside that classic rock canon.

MS: Didn’t everything change because of streaming. It changed how far it can reach and how it works.

CN: I think the fundamental change is in where the power lies. For example, the rise of instrumental music in the 90s meant that artists didn’t have to be from America or the UK to be international artists, and that thing has really been completed now with streaming, where you have what they call “glocalism”, where artists can do really well in their territory and spread out. At the same time, the industry is absolutely petrified and they’re doing everything they can to hang on — I’m talking about the major labels and the large independents — to the way it was. There’s definitely been a devolution of power and that has to be accelerated.

IM : You said that collaboration is something that became important when you started working together, and it seems like that’s grown a lot over they years. It’s obviously a big part of what Nanocluster is.

MS: It’s a fascinating area, because after so many years of making music, you get pushed out of your comfort zone because you’re working with a person you might not even know very well. So to kind of find yourself somewhere else and to try to go towards what they do, it opens you up and gives you ways forward with more options. Every collaboration takes us somewhere else.

CN: Wire happened again through the 00s, we had a parallel project, Githead, which was also a band, and we moved to Brighton ten years ago. We made a decision when we got to Brighton that we would reactivate Immersion because the equipment was quite modest and we could just play gigs together. Immersion’s last album (“Low Impact”) had come out in 1999 and the next one came out in 2016. It’s a long time between records, but that offered us a space to just get on and do stuff, so we did an album, which we initially released as two 10-inches and then compiled onto a CD — like analogue creatures living on an island, which was actually the title (the EPs “Analogue Creatures” and “Living On An Island” which were compiled into the album “Analogue Creatures Living On An Island”). So we were already starting to feel the alienation of Brexit in that title.

IM : I was listening to that earlier today and that struck me. I saw “Living On An Island”, then the date 2016 and thought, “Oh yeah, I know that feeling!”

MS: There was a really strong feeling at the time of the Brexit vote that we’re on an island, kind of separate from everything.

CN: And we live next to the sea, too.

MS: Yeah, which gives you a kind of hope and optimism at the same time.

CN: We did a few gigs, maybe a couple of festivals, but there wasn’t a lot going on with it. But someone we knew in Brighton had told us, “If you’re in Brighton, you need to create your own scene.” It can be quite divided-up.

MS: There’s LOTS of musicians!

CN: Lots of musicians! So we thought, “Well what does that mean? How can we create a scene? Let’s create a night in a club, but how can we make that different to anybody else’s? Well let’s have a collaborative element in it.” We’d known Tarwater for absolutely years, right from the early days of the Berlin scene, and we thought, “We’ll find a venue, do Tarwater and Immersion collaborating together. They can stay with us for a couple of days, we can work out the pieces together.” And it worked.

MS: And we could record it in our studio while we were rehearsing, so we had a basic recording of it.

CN: We did it at The Rose Hill, which is a small community venue that holds about 110 people — easy to fill it up with the right thing.

IM : How does the collaboration come about? Is there improvisation, or more prior preparation?

MS: We approach the artist and say, “We’ll send you three very basic ideas, you send us three basic ideas: try and put something on it that you come up with.” And we kind of build it, but not too far. Then we get together and sort of complete it in a way. It’s different every time, but that’s the basic structure. It’s not improvisation at all, but it’s not so complete that there isn’t a kind of tension about “Is it going to work? Is it going to be good live?”

CN: The next person we thought of was Laetitia Sadier. There’s something called “Krautrock Karaoke”.

MS: It’s someone from Japan who’s been living in London for a long time, and he’s been organising nights where people from different bands get together and play a version of krautrock. It’s fun!

CN: We did one with Laetitia Sadier. She came with not only the competence of her guitar playing: she’d actually learned all the parts, which is more than we’d ever done! It was amazing. So we thought maybe if we ask her, she’ll do a Nanocluster set.

MS: And she came over, stayed here, worked on material, and yeah, it was good.

CN: We know a lot of people, some of them just because we’re fans. There was a point when Ulrich Schnauss was making some of the best music on the planet, and then Robin Rimbaud, Scanner, of course who was in Githead. We’ve known him for years.

MS: And since then, we’ve been collaborating further and further afield and come up with more weird ideas that maybe shouldn’t work on paper.

CN: And then suddenly the pandemic hit, it was May 2020, we had these four collaborations, absolutely nothing else to do, so we thought, “Let’s finish the record.” And that was a difficult decision because Malka and I had never worked on mixing an album before. It was a real eye-opener: it was at that point the best mixed record that had come out of our studio, in my opinion, and it was because we were doing everything as a collaboration.

MS: It was kind of influenced by the radio show as well. When we play a lot of songs from different genres, we hear sounds, how things are put together, and it does unconsciously influence how we work.

CN: Absolutely. So we put that out in 2021, to some critical acclaim but in the middle of a pandemic you can’t do anything about promoting it much. All the gigs had been done already, so a bit difficult to tour it. And anyway, if any musicians in 2021-2022 were thinking about touring, they were thinking about touring themselves.

IM : Given the pandemic situation, how were you able to work together with the artists on the album?

CN: Everything was recorded beforehand.

MS: So while we rehearse, we record, and that becomes the base to work on. Now we’re working on stuff that they send us, and I don’t think something physical, in a room, is going to happen for this next collaboration (2025’s “Nanocluster vol. 3” with SUSS). So it depends. There’s always a way to finish studio work, whether we send parts to each other or peeople are physically here.

IM : This is also part of the way the project has evolved, by the sound of it. When you started, it was musicians in Brighton or who could travel easily, but as you start looking further afield for artists to work with, maybe that changes the process.

CN: Absolutely. What happened was that we put the first one out and then we thought “How do we move that on to the next layer?” Because we’d spoken to a lot of people but none of them were in Brighton, and the post-pandemic period was one when people were very much looking at their own careers. Doing stuff with us could be seen as a luxury. So we thought, “How can we do this another way?” We know quite well one of the main organisers of South By Southwest, James Minor, and we thought, “OK, why don’t we do something there?”

MS: It was quite scary because we have to travel to Austin and somehow create music with someone already there, so how do you do it? Then we saw Thor Harris on the list: he’s local, he plays percussion and seemed like it might be easy to make something together.

CN: And he’s very much in the American minimalist world.

MS: And he’s a natural collaborator.

CN: Thor was really up for it, we exchanged some material so we had something to build on when we got there. We ended up rehearsing in his house — the house that he built himself because he’s not only a very competent musician: he’s also a very competent carpenter, plumber and odd-job man, who also has this amazing social conscience.

MS: He’s an amazing guy. It was a great experience to work in his house. Everybody knows him in Austin.

CN: It was a bit of a baptism of fire in terms of the actual performance. We ended up playing at Hotel Vegas. We had to set up a table with all our gear on, in semi-darkness with drunk people falling all over us.

MS: It’s the beauty of the collaboration: each experience is different and each experience takes you somewhere you wouldn’t otherwise be. That feeling is quite addictive because we love making music together but to be pulled into someone else’s world as well is special.

IM : That’s one of the things that I find interesting, hearing the Nanocluster albums as a listener: it’s the feeling of all the musical egos dissolving into each other. Even though there’s a lot of people involved and the collaborator is switching with each side of the record or each disc, quite a coherent atmosphere comes out of it. The opposite of how you described working with Wire where each person’s role is very clearly fixed and separated.

MS: We do hear from people that even though there’s different collaborators, there’s a fullness to the sound.

CN: I guess that’s also how we mix it in the end.

MS: But not only that: we bring something human-wise where we connect with the person. It’s always ended up being a friendship.

CN: I mean we try to create a space for the person but we set a context. That’s actually one of Bruce Gilbert from Wire’s big statements about life and art: “Context is all.” I always hate what I call “big boy production” where you hear a record and you know there’s been a “producer” involved because it’s got that ego about it. If you’re working on production, you should be taking away the barrier between the music and the person listening to it: you should make it easy for the person to hear what’s in the music. It’s not about making yourself sound good, or about making this other person sound good: it’s about the whole thing.

IM : Why did you choose the name Swim~ for the label?

MS: Why not? (Laughs) I mean we always look for good sounding names. I suppose we always float easily between the worlds of different people. I don’t know, though. That’s something that comes after the fact. What do you think when you hear the name?

IM : It reminds me of Brian Eno. Water is such a recurring theme in his music, and I felt he does something a little similar to what I hear in Immersion. You’re both musicians who are known as singers in your other bands, but here you’ve stripped away the vocals in a lot of it. So it’s like taking away the pop star or rock star ego and finding some more fluid space where other things could happen.

MS: We had a compilation called Water Communication, so water seems to be a theme that keeps coming back. And now we live by the sea.

CN: This kind of brings us back to Jack (Wolter, a.k.a. Cubzoa), the other collaboration on Nanocluster Volume 2. I think it was back in 2021, when people were starting to have gigs again, and we went to The Rose Hill and we were really impressed by Cubzoa.

MS: He ended up sending us songs, and we thought, “What are we going to do?” because songs are quite complete things. Normally we start from something more basic, but it was an interesting challenge and I think it turned out really well.

CN: And the other thing was we did something that we had so far not done with Nanocluster, which is bash out some material between us because we didn’t have enough material at first. It was a quite spectacular success. They were quite different to his songs.

MS: It helps that he’s such a nice guy to be with. The human side is so important.

IM : With the last one, there were four artists, with each getting one side of the 10-inch but with the second one it’s just two, with one artist per disc.

MS: It’s not something we decided in advance, but it became obvious as we worked that there’s enough material. In the future it might be just one collaboration (Note: this ended up being the case with “Nanocluster vol.3” with SUSS).

CN: There’s no rule. Though we like the double ten-inch. The idea for it came about through two entirely practical reasons. One was that when we manufactured the first album, pressing 12-inch vinyl was taking absolutely months when you could do 10-inches much quicker. And then also on the first album there were four really different projects. So we thought, “If each one gets their own side, it’ll make a natural division between them.”

MS: And it’s more interesting for the artists, too.

CN: Yeah, if they’ve got their own separate things. And of course with the digital release, they are separate EPs as well. With streaming, the trend seems to be towards shorter releases. You’ll notice that someone releases an album with like twenty tracks, but only one or two will get attention and the rest will be ignored because there’s a bit of a short attention span in streaming. So we thought separate EPs and then perhaps different people will tend more towards one or towards another one. But it’s just about the medium, really.

IM : And I guess with the second one, each artist having more space to play with takes it to a different place than with a smaller, EP-length canvas.

MS: Yeah, there’s more expression for each artist to contribute.

IM : One thing that seems to run through your work now is a respect for independent ownership. I think even with Wire now the band owns most of its catalogue, is that right?

CN: We don’t own the 80s stuff and we don’t own the publishing on the 70s or 80s stuff, but we own the masters on the 70s stuff and we own everything since 2000. Some of the artists that we’ve released on Swim have taken back their own rights and others don’t seem to be bothered so much, but we’re happy to give back the rights. We don’t need to be hanging onto other people’s music.

MS: With you, it’s really important to have ownership because you became much more aware about how big labels can really…

CN: It’s made a massive difference to us personally. Of course I talk from a very priveliged position because it just so happens that Wire’s 70s material caught generation after generation. It’s not a static thing where the only people who listen to Wire’s music from the 70s are contemporaries of when it came out. It seems to go down the generations and catch younger audiences as well, so it’s a dynamic thing. And that audience, from what I can see in the streaming figures, is growing, not diminishing. So owning the master rights and getting the majority of the money into the band gives you a living. I mean people of the age of the original members, if they’d gone into the civil service, could easily be making much more money, but a lot of musicians in their sixties, seventies and eighties are struggling. Having to go on tour in poor conditions because if they don’t go on tour, they can’t pay their rent.

MS: There is an avantage and a disadvantage in that we own everything that we make together. We don’t have the power of an external label that can maybe push it more.

CN: It does cost money. You have to spend money on promotion, you have to spend money on manufacturing and all the rest of it. But, for example one of the collaborations that we’ve already started is with a band who are based in Brighton called Holiday Ghosts — with Sam and Kat. We’re two couples and we get on really well. He’s in his early thirties, and they know how to book a tour: they don’t have any problem with that kind of stuff. Musicians of my generation would not have even the first idea how to book a tour.

MS: I mean it’s so hard for bands nowadays, they have to be.

CN: They have to be! And since the pandemic, the industry has squeezed the musicians.

IM : It feels similar in Japan, where there’s a before and after where something accelerated massively over those years. Young musicians seem like such good businesspeople, and I sort of admire them but I kind of feel sorry for them that this has had to happen to them.

MS: Yeah, the freedom of just being a musician is amazing.

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