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Luciano

Luciano

Tribute To The Sun

CADENZA

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渡辺健吾 Nov 12,2009 UP
E王

 ルシアーノはスイス・アルプスのほとり、パンを買うにも遠くの町まで出掛ける必要のある人里離れた村に暮らす。ベルリンでの慌ただしくナイトライフ中心の暮らしを捨て、家族とともに人生を歩める生活を選んだ。そこで初めて本格的な自分専用のスタジオを作りあげた彼は、〈ピースフロッグ〉からの変名による前作から4年ぶりとなる待望の2作目を精魂込めて完成させた。いや世界に彼とレーベル〈カデンツァ〉の存在が知れ渡り、やりたいことが思い通りやれるようになって初めてのまとまった作品集、実質的にはデビュー作と言っても差し支えないかもしれない。

 ここ2年ほど、ルシアーノはA&Rとしての才能を爆発させ、自身のDJとしての人気の高まりと共に〈カデンツァ〉から数多のヒットを送り出し、なかでもMichel Cleisの"La Mezcla"のような南米のルーツを強く意識したフォルクローレ・ミニマルとでも呼べるようなムーヴメントを先導した。一部ではそれを「ハードミニマル末期の、民族音楽なんかの歌や太鼓をループさせただけの曲が大量発生したのと同じ現象」と揶揄する向きもあったし、実際ルシアーノやリカルドのフォロワー的な連中には、そういうレヴェルのものも含まれている。しかし、この素晴らしいアルバムには、そんな批判を寄せつけないどころか、彼がなぜ「太陽の照らすような環境/パーティ」に魅せられ、いわゆるミニマルからそういった音へとシフトして、そこから何を得たのかがすべて描かれている。

 チリの裏通りの喧騒をそのまま曲にしたような冒頭の"Los Ni?os de Fuera"、イスラエル系フランス人シンガー、ケレン・アンの歌声をエディットした2曲目"Celestieal"、トリッキーやマッシヴ・アタックでの客演が有名なマルチナ・トプリィ=バードの幻想的な声が印象的なキックレスの3曲目"Sun, Day and Night"、ルシアーノの子供たちの声が背景ではね回るプレイフルで陽射しと緑を感じる"Conspierer"、そして彼の実験的なライヴ・ユニット?therでも聴けたハング・ドラム(スチール・パン的な打楽器)の音とアルプホルン(!)がゆったりとセッションを繰り広げる"Hang For Bruno"あたりまでの流れはテクノや既存のダンス音楽の枠を完全に超越して、まさに陽の光のなかで踊るような悦楽に溢れている。

 後半は徐々に暗いダンスフロアでの祝祭へと世界が変わり、東京のWOMBの楽屋で録音されたという日本語のダベりが聞ける小品"Pierre For Anni"を挟んで、王道で力強く、電子音に彩られたラストの"Oenologue"まで疾走はつづく。あまりにスピリチュアル臭さが全開で、ちょっと引くかもしれないアートワークは個人的にはどうかと思うが(これまでの〈カデンツァ〉のカヴァーはあれだけ素晴らしいのになぁ......)、ある意味世界の中心に彼がいて、自然と共生しようとする姿をテクノロジーで描こうとしてるという意味では、この盤の音にピッタリとも言える。

 さらに、おまけと言っては豪華すぎる南米ツアーのドキュメント映像を記録したDVDも、すごく楽しめる。冒頭、サンチアゴでかつて住んでいた家を訪ね、「ピノチェトはクソだ」と吐き捨てるルッシ。昔馴染みなのか、現地のクラブで熱烈に出迎えられるルッシ。英語では少しバカっぽいイメージが強かった彼のパーソナリティーも仏語やスペイン語では違って聞こえる。だからこそ字幕が英語のみなのはあまりに残念、日本盤を出すなら、しっかり字幕をつけるべき。しかし、その点を差し引いても09年のテクノ~ハウスでは最重要のアルバムであることは間違いない。とくに「最近のテクノだとか、ミニマルだとか、どうもなぁ......」と思っているような人たちにこそ聴いてもらいたい作品だ。

渡辺健吾