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野田 努   Apr 20,2010 UP

 山崎ヒロが主宰する〈サウンドオブスピード〉は、東京を拠点としたインターナショナルなテクノ・レーベルのひとつである。10年以上前の話だが、彼がこの名前のパーティをはじめた頃に、彼が当時住んでいた新宿の家に行ったことがある。窓を開けると高層ビルがよく見えるマンションの一室の、決して広いとは言えないその部屋で座りながら、彼は「プラッドを日本に呼んでパーティをやったんだけど、ここに泊めてあげたんです」と話していたことを憶えている。それから彼は日本の〈ビッグ・チル〉を目指しながら、ジンプスターやトム・ミドルトン、ミックスマスター・モリスらを招聘しながらパーティを続けていた(現在、パーティは休止中)。その活動のなかでレーベルも生まれたというわけだが、〈サウンドオブスピード〉の初期の傑作のひとつが北海道のクニユキ・タカハシのKoss名義のアルバム『リング』(2001年)で、評価の高いこのアンビエント・アルバムは"チルアウト"を指標するこのレーベルの色を明確に表している。それはIDMスタイル、チルアウト、もしくはジャズ(フュージョン)......である。また、このレーベルから昨年リリースされた(山崎ヒロの友人である)ルーク・ヴァイバートの『リズム』も忘れるわけにはいかない。〈サウンドオブスピード〉からシングルを4枚連続でリリースしてからのそのアルバムは、世界中のチルアウターたちのコレクションの1枚に加えられている(僕のそのひとりである)。

 『サークルズ』は、レーベルにとって2枚目のコンピレーション・アルバムだ。アルバムの1曲目はクニユキ&クシティの"ビー・フリー"。ジャジーで、チルアウティで、ユーフォリックなこのトラックはレーベルの音楽性を象徴する、実にブリリアントなトラックだ。続いてオルシッドネイーションによるスペイシーなディープ・ハウス、そしてジンプスターによるアトモスフォリックなミニマル・ハウス......〈サウンドオブスピード〉らしいトランシーでラウンジーなエレクトロニック・ミュージックが展開される。メランコリックなピアノが印象的なリー・ジョーンズ(かつてへフナーとしてジャジー・ダウンテンポを発表している)の"トゥー・イン・ワン"、それからシュリケン(ジンプスターの〈フリーレンジ〉レーベルからのリリースで知られる)によるアブストラクトなハウス......。そしてルーク・ヴァイバートによるアシッディな"メジャシッド"、スウィッチの"ゲット・オン・ダウンズ"のヘンリック・シュワルツによるリミックスを経て、アルバムの最後はふたたびクニユキ&クシティ、曲名は"トレモロ"のクニユキ・ダブ・ミックス......。

 アルバムはすでに海外のメディアでも好意的に取り上げられている。今世紀もまたチルアウト・オア・ダイというわけだ、そう、何年経とうが......。目新しさはないけれど、しかし間違いなくクオリティの高いコンピレーションである。チルアウトの夏にそなえよう。

野田 努