ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Jane Remover - Revengeseekerz | ジェーン・リムーヴァー
  2. rural 2025 ──テクノ、ハウス、実験音楽を横断する野外フェスが今年も開催
  3. Columns Electronica Classics ──いま聴き返したいエレクトロニカ・クラシックス10枚  | Alva noto、Fennesz、Jim O'Rourke
  4. caroline ──まもなく2枚目のリリースを控えるキャロライン、ついに初来日が決定
  5. Columns ♯13:声に羽が生えたなら——ジュリー・クルーズとコクトー・ツインズ、ドリーム・ポップの故郷
  6. Ami Taf Ra ──新たに〈Brainfeeder〉に加わったアミ・タフ・ラ、新曲はカマシ・ワシントンがプロデュース
  7. 別冊ele-king 渡辺信一郎のめくるめく世界
  8. interview with aya 口のなかのミミズの意味 | 新作を発表したアヤに話を訊く
  9. Hüma Utku - Dracones | フーマ・ウツク
  10. Shuta Hasunuma ──蓮沼執太フィルがブルーノート東京での2年ぶりとなるコンサートを発表
  11. interview with IR::Indigenous Resistance 「ダブ」とは、タフなこの世界の美しきB面 | ウガンダのインディジェナス・レジスタンス(IR)、本邦初インタヴュー
  12. Mark Stewart ——マーク・スチュワートの遺作がリリースされる
  13. interview with Louis Cole お待たせ、今度のルイス・コールはファンクなオーケストラ作品
  14. Columns Stereolab ステレオラブはなぜ偉大だったのか
  15. Stereolab ——日本でもっとも誤解され続けてきたインディ・ロック・バンド、ステレオラブが15年ぶりに復活
  16. Mark Turner - We Raise Them To Lift Their Heads | マーク・ターナー
  17. 野田 努
  18. DREAMING IN THE NIGHTMARE 第2回 ずっと夜でいたいのに――Boiler Roomをめぐるあれこれ
  19. interview with Mark Pritchard トム・ヨークとの共作を完成させたマーク・プリチャードに話を聞く
  20. 青葉市子 - Luminescent Creatures

Home >  Reviews >  Album Reviews > Katie Gately- Katie Gately

Katie Gately

ElectronicIndustrialNoise

Katie Gately

Katie Gately

Public Information

三田 格 Dec 12,2013 UP

 総勢14名から成るフィールド・レコーディング・オーケストラ、シアトル・フォノグラファーズ・ユニオンに途中から参加したらしきケイティ・ゲイトリーによる初ソロ(from LA)。これがフォークにもインダストリアルにも聴こえる不思議な感触を放つサウンドで、OPNが切り開いた地平の深さを見せるというのか、USアンダーグラウンドがまだ未知数にあふれていることを実感させてくれる。どこから聴いても、誰のマネでもなく、戸惑うばかりの新感覚である。

 アコースティック・インダストリアルとでもいうような彼女のサウンドは一体、どこから来たのだろう。ゼロ年代前半に地下で蠢いていたマルシア・バセットのノイズ感覚と、最近だとメデリン・マーキーのような透明度の高いドローン・サウンドが同居しているのも奇跡的に感じられるし、インダストリアル・サウンドに憎悪ではなく、美的センスが感じられるところも素晴らしい。もしかしてアンディ・ストットの影響はあるのかもしれないけれど、それをフェミニンな変奏として示すだけでも充分にチャレンジングだし、そうだとすればそれは本当に成功している(アンディ・ストット・ミーツ・FKA・トゥィッグスというか)。インダストリアル=鉄槌感だという人には申し訳ないけれど、インダストリアルでありながらまったく重さも感じさせない。

 本人の言葉に左右されて音楽を聴くという態度はあまり好きではないんだけど、どうしてもそういうことが気になるという人はインタヴューをどうぞ。「美」に関してはやはり意識的なところがあるようで、音楽に深く入り込むようになったのは去年の夏から。きっかけはドクター・アクタゴンと来た。クール・キースがダン・ジ・オートメイターと組んだサイケデリック・ヒップ・ホップの快作である。もちろん、彼女の作品とは似ても似つかない。最近のお気に入りはマイルズ・ウィットテイカーにデムダイク・ステアー。アンディ・ストットではありませんでした……。

 サウンドクラウドで聴ける音源はこれよりも古いものなのか、時に重く、あるいは痛く、全体に洗練されていないニュアンスが残っている。つまり、はじめから独自のサウンドを有していたわけではなく、試行錯誤の末に現時点へと辿り着いたことが推測できる。あるいは、アルバムを先に聴いてしまったせいか、ここに上がっている曲はまるでデトックスのように感じられる。毒を吐き出して、後に残ったものの、なんと美しかったことというか。

 https://soundcloud.com/katiegately

 つーか、なんでファーマコンの音源がアップされているんだろう??

三田 格