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Cankun

AmbientElectronicExperimental

Cankun

Only the Sun Is Full of Gold

Hands in the Dark

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倉本諒   May 07,2015 UP

 カンクン(CANKUN)のヴィンセントとはかつてローブドア(Robedoor)のサポート・メンバーとしてヨーロッパを周遊した際に旅をともにした。〈ノット・ノット・ファン〉からのデビューに裏打ちされるように、彼も当初はまたサン・アロー(Sun Araw)に多大な影響を受けたワンマン・バンドであった……脱力系ギター・ループを主として構築される、いい加減なポスト・コロニアル的世界観、という意味では同じくフランスで活動するハイ・ウルフにかなり近いスタイルからキャリアをスタートさせている。

 しかしたとえばハイ・ウルフことマックスが鋭敏に現在のシーンの動向をうかがっているのに対して、ヴィンセントはどちらかといえばそういったことに無頓着なように思える。イタロ・ディスコやハウスへの造詣の深さとクラウト・ロックへの傾倒、自身は訪れたことがないというメキシコ南東部の土地への朧げなイメージから触発されるトロピカル感覚などをベースとして、シーンとは無関係に、当初からブレることのない要素を彼なりのプログレッシヴ・ロックとして紡ぎ上げてきた。

 前作、『カルチャー・オブ・ピンク(Culture of Pink)』以来2年ぶり、同じくフランスの〈ハンズ・イン・ザ・ダーク〉よりリリースされた新作、『オンリー・ザ・サン・イズ・フル・オブ・ゴールド(Only the Sun Is Full of Gold)』は、サン・アロー以降のあらゆるローファイ・エキゾチカの最終形態、そのもっとも洗練された形と言っていい。前作でのギターによるファンキーな展開は控えめに、70~80年代のカルト・サーフ・ヴィデオのサウンドトラックのように緩やかに進行してゆく厭味のないサイケデリア、過度に極彩色に彩られることのないそれはまさしくVHS越しに観える色褪せた桃源郷の海辺のようでもある。ヴィンセントの別プロジェクトであるアーチャーズ・バイ・ザ・シー(Archers By The Sea)で長年にわたり追求してきたローファイ・エレクトロニクス・サウンドによって投影される仮想の海辺、その舞台が本作ではもっともいかされていると言えよう。

梅雨入りする前にこれを聴きながら海へドライヴに行きたいなぁ……とかたまには僕だって思うんですよ。


倉本諒