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九龍ジョー

九龍ジョー

『メモリースティック ポップカルチャーと社会をつなぐやり方』

DU BOOKS

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矢野利裕、綾門優季   Jul 24,2015 UP
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「ぴんときた」は、奇跡だろうか?綾門優季

 突然で恐縮だが、九龍ジョー『メモリースティック』の話をはじめるにあたって、『メモリースティック』収録には惜しくも間に合わなかった九龍ジョー氏の最近の仕事である『ポストラップ』について述べさせてほしい。

 劇作家のわたしは田舎から上京して5年、『メモリースティック』に収録されているイヴェントや舞台に関して残念ながら目撃することが叶わなかったものも多く、また舞台は直接目撃したものしか熱っぽく語れない特別なジャンルなので、ご容赦願いたい。過去の記録映像を参照したところで、その場に立ち会っていなければ意味がないのだ。

 『ポストラップ』は政治批判をリリックに織り込むなど、社会性の高い内容が話題を呼んだ気鋭のラッパーSOCCERBOYと、演出家・チェルフィッチュ主宰の岡田利規がタッグを組んだ、異色な組み合わせが功を奏した公演であり、SOCCERBOYの攻撃的なリリックに、岡田利規のリリックとは相反するように思えることもある不自然で予測不能の振付が、えもいわれぬ効果を生み出し、場内を興奮の渦へと導いていた。

 その回はたまたま九龍ジョー氏が司会をつとめるアフタートークが催されたのだが、そこで観客のどよめく事実が発表された。じつは『ポストラップ』が決まるまで、 SOCCERBOYも岡田利規もお互いのことをほとんど知らず、両者の知り合いである九龍ジョー氏がぴんときたので、試しに組ませてみた、というのである。端的にいって、九龍ジョー氏がこの世に存在していなければ、SOCCERBOYと岡田利規は手を組むどころか、知り合わないまま一生を終えていた可能性もじゅうぶんにあった。そして、『ポストラップ』が存在しなければまた、わたしのその日の「すっげえもんみた!」という帰り道の高揚も、この世に存在することが叶わなかったのである。

 この九龍ジョー氏の「ぴんときた」は、奇跡だろうか? ならば、『メモリースティック』は奇跡に満ち溢れた本と呼んでいいだろう。松江哲明と前野健太の幸福な遭遇を筆頭に(奇しくも前述の岡田利規は初の子ども向けの作品となる『わかったさんのクッキー』で前野健太に劇中歌の作曲を依頼している)、九龍ジョー氏が仕掛けた、完全に意図的な「未知との遭遇」が、本来であれば存在しなかった作品を生み出しつづけている。

 『メモリースティック』は、その記念すべきドキュメントの一部始終である。刮目せよ。

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