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DUBKASM

Jun 18,2016 UP

DJ file (12)

DUBKASM

取材:髙橋勇人

123

(海賊ラジオは)イリーガルな行為だから、アンテナやレコードを常に隠していなきゃいけないし、おまけに放送場所も変えなきゃいけない。でもそこまでして、アンダーグラウンドな音楽が流れるプラットフォームを作る価値はあったね。

■:DJに合わせてサックスを吹くというアイディアはどう生まれたのでしょうか?

S:俺はもともとストライダとして、レゲエのセレクターをやっていたから、マイクを使うことには慣れていた。厳密なミックスをするわけではないから自分のことはDJとは呼べないかな(笑)。このスタイルでライヴをするのは、かなり自然な成り行きだった。
ベンはサックスだけじゃなくて、ギターを入れたり、エフェクトを使ったり、当時からいろいろやっていたよ。でもライヴでそのスタイルになったのは、かなり自然なものだった。それから俺たちの名前がダブカズムなように、ダブ、つまり7インチで言うならB面のヴォーカルが入っていない曲にフォーカスをしているから、ベンがメロディを作る余地があることも大きいかもしれないな。

■:ディジステップさんは自身のプレイにおいて、即興性をどのように表現していますか?

D:メインのメロディを別にすれば、すべて即興だね。僕は昔から耳コピを通して音楽を習得してきた。幼い頃はお母さんが弾くピアノを聴いて、メロディを作る練習をしていてね。だから流れている曲のキーに対して、自分で要素を付け足すのは早いうちから習慣化されているんだ。いまでもその延長線上でサムとセッションをしている。

S:90年代にロンドンの伝説的なダブ・セッション、ブリクストン・レックに出たことがあってね。そのオペレーターであるアバ・シャンティアイ(Aba Shanti-I)のセットにベンはサックスで参加していた。ものすごく凶暴なサウンドシステムであるにも関わらず、ベンはちゃんとキーを拾ってプレイできていたんだよ(笑)。ハードなダブに合わせてスウィートに吹けるのが、彼の素晴らしいところだと思う。

D:シャンティアイのバンドでもプレイすることがあったんだけど、ものすごい体験だったよ。正しいフィーリングで吹くにはどうするのか、どう即興するのか、プレイ中何を聴くべきなのか、とても勉強になった。レゲエのプレイではかなり具体的なイントネーションが求められるからね。

■:ストライダさんは地元のブリストルをベースにしたラジオ番組『サファラーズ・チョイス・ショー』でも活躍されています。

S:『サファラーズ・チョイス・ショー』は1996年に、ラガFMっていうところから放送を開始して、それからパッションFM、サブFMに移動して、いまはオンラインで聴ける。ブリストルという街でラジオを長く続けるにはどうすればいいのかって考えながら続けているよ。

■:海賊ラジオもやっていたということは、放送に必要なアンテナなども持っていたんですか?

S:もちろん! あれはエキサイティングな体験だったよ(笑)。イリーガルな行為だから、アンテナやレコードを常に隠していなきゃいけないからさ。おまけに放送場所も変えなきゃいけない。でもそこまでして、アンダーグラウンドな音楽が流れるプラットフォームを作る価値はあったね。そのリスナーがカーンだったりして、彼はダブやレゲエについて勉強になったと言っていた。次の世代に音楽を伝える役割も果たしていたわけだ。いまでは世界規模で配信ができるわけだけど、ローカルにおいても海賊ラジオの存在は重要だと思う。でも『サファラーズ・チョイス・ショー』がオンラインで聴けるようになって、俺のリスナーが増えたことは間違いないし、それはすごいことだ。ブリストルと世界が繋がったってことでもあるからね。

■:2013年にリリースされた“ヴィクトリー!”は、今回の来日公演でもオーディエンスの合唱が起きていたように、大きなヒットとなりました。2015年にはマーラによるリミックスも話題になりましたが、どのような経緯で彼のリミックスを出すことになったんですか?

S:ベルギーでショーをしたときに、マーラと偶然出くわしたことがあってね。同じユーロ・スターに乗っていた。俺たちダブカズムはベルギーへ向かっていて、彼は自宅のあるブリュッセルに帰る途中だった(笑)。その前にもクラブで話したことがあったんだけど、そのときは音が大きかったらちゃんと話すことができなかったから、初めて真剣にいろいろ話すことができたんだ。それですごく共感してね。俺もマーラも子供がいるから、音楽の話もしたけど、主に子育てについて語り合っていたよ(笑)。そういう友人関係からスタートして、いっしょにセッションをするようになった。“ヴィクトリー!”のリミックスを誰かに依頼しようと考えていたんだけど、マーラは理想的な人物だった。レゲエのバックグラウンドもあるし、俺は個人的に彼をダブステステップのジャー・シャカだと思っている。それでリミックスを依頼した。マーラがリミックスするのはすごくレアだから、上手くいかないかもって思ったりもしたんだけど、依頼していたら1年後に曲がフルで送られてきて、嬉しかったね。マーラに限らず、リミックスで再解釈されるっていうのは面白い体験なんだけどさ。彼のレーベル〈ディープ・メディ〉のファミリーたちともパーティで知り合えて、とてもエキサイティングな関係だよ。

Victory - Dubkasm (Mala Remix)

■:それでは最後に、日本のオーディエンスにコメントをお願いします。

D:日本の文化や出会ったものにすごく愛着を感じている。訪れた場所と、そこで活動するミュージシャンたちも素晴らしくて尊敬しているよ。これなでいろんな場所を回ってきたけれど、日本はそのなかでもかなりユニークだね。自分たちのツアーに関わってくれた人々、とくにBS0のクルーに感謝したい。こんなマジカル・キングダムに呼んでくれてありがとう(笑)。

S:好きな音楽を追っている人々の姿は、いつも俺にインスピレーションを与えてくれる。俺たちはブリストルで育ったから、あの街で起きていることはいたって自然なことなんだけど、日本に来てみたら、俺たちの活動やブリストルのシーンはすごく固有なんだって気づかされた。自分たちのやってきたことを、こういう形で共有することができて大変嬉しいね。『おでんくん』から日本の家族まで、体験した文化すべてが素晴らしかった(笑)。これから先、何年もこの体験を思い出すことになると思う。ありがとう!

取材協力:BS0

取材:髙橋勇人