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Volcano Choir

Volcano Choir

Unmap

Jagjaguwar / Contrarede

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野田 努 Nov 10,2009 UP
E王

 渋谷のワルシャワは好きなレコード店のひとつで、店にカフェ・コーナーが設置されて以来、アルコール目当てで立ち寄るようにもなってしまった。去る10月、店内に「傑作です」のキャプションとともに壁に並んであったこれをじっと見て、視聴して、悩んだ挙げ句に買うことにした。実は僕は、その時点でボン・アイヴァーさえもまだ聴いていなかった。

 およそ1年前、『ガーディアン』や『オブザーヴァー』はボン・アイヴァーの『For Emma, Forever Ago』を最大限に褒め称えた。「2008年の最高のレコードはアメリカの僻地の闇のなかの人影によって作られた」、『オブザーヴァー』の記者はそう書いた。もっともその背後には「この年には2年前の『Whatever People Say I Am...』のような、決定的なアルバムが1枚もなかった」という失意もあった(2008年12月7日)。『ガーディアン』にいたっては2008年は「ゴミだめインディの死が宣告された年」であり、「ギター・レコードは年間ベストのどこにもない」と記したほどだった(2008年12月12日)。そしてこのふたつのメディアは、TV・オン・ザ・レディオとボン・アイヴァーを持ち上げたのである。「コールドプレイがブライアン・イーノとそのバカげた一式を借りて急進派を急いでいる」ような時代において、27才のジャスティン・ヴァーノン(ボン・アイヴァー)が2006年の冬のあいだ父親の山小屋で録音した音楽は、実に感動的な愛の音楽だったと、そういう話だ。

 そして、これは僕の悪い癖で、たとえばフリート・フォクシーズのような、汚れを知らないような音楽を聴いているとどうにも落ち着かなくなるという事情もあって、僕は欧米を代表する大メディアの推薦をスルーしていたのである。そんな人間がどうして・ヴァーノンを擁するヴォルケーノ・クワイア(火山の聖歌隊)なるバンドのアルバムに惹かれたのかと言えば、ワルシャワの「傑作です」の言葉と、そしてこのバンドの前身にペレがあること――ギタリストのクリス・ローズナウとドラマーのジョン・ミュエラー――が興味深く思えたからだった。ペレは、90年代から00年代初頭にかけて活動していたバンドで、わかりやすく言えばポスト・ロック的な実験(エレクトロニクス、ジャズ、クラウトロック等々)を好んだバンドだ。好き嫌いはともかく、その工夫された音はモダンだった。同じように禁欲的だが、ボン・アイヴァーの素朴さとはいわば対極にある。
 そんなわけで、ヴォルケーノ・クワイアのファースト・アルバムを買った。1曲目のギターのイントロがその決め手となった。アルバムには美しい調和があるが、それはヴァーノンの、ボン・アイヴァーで見せたファルセット・ヴォイスとアコースティック・ギターのコード・ストロークの組み合わせとは違った類のもの、控えめなエレクトロニクスと実験的なポップスとの調和だ。

 2曲目の"Seeplymouth"はバンドの抒情性が広がり、劇的な高まりが爆発する。その激しさは、まさにUSオルタナティヴの真骨頂なのだろう。実験色の強い曲――アンビエント・テイストを展開する"Dote"、ギターのループとコーラスの絡み方において『ピッチフォーク』がアニマル・コレクティヴの『Sung Tongs』との近似性を指摘した"And Gather"、プリペアード・ピアノめいたトラックとロバート・ワイアットめいたソウルがねじくれていく"Mbira In The Morass"なども面白い。

 このアルバムを聴いて、そして遅ればせながらヴァーノンのデビュー作であるボン・アイヴァーの『For Emma, Forever Ago』を聴いた。結論を言えば、ヴォルケーノ・クワイアのほうが気に入っているし、こちらのほうに可能性を感じている。

野田 努