ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. JME - Grime MC (review)
  2. Four Tet ──フォー・テットがニュー・アルバムをリリース (news)
  3. Yaporigami ──山梨出身ベルリン在住の電子音楽家が〈Virgin Babylon〉より新作を発表 (news)
  4. Jagatara2020 ──復活目前のじゃがたら、ライヴ会場先行販売ほか店舗限定特典&パネル展の開催が決定 (news)
  5. interview with Jeff Paker 話題作『The New Breed』のメンバーとの来日ライヴ直前スペシャル (interviews)
  6. Carl Michael Von Hausswolff - Addressing The Fallen Angel (review)
  7. Vladislav Delay ──ヴラディスラフ・ディレイがニュー・アルバムをリリース (news)
  8. φonon ──佐藤薫主宰の〈フォノン〉が新たに2作品をリリース (news)
  9. Columns 「ハウスは、ディスコの復讐なんだよ」 ──フランキー・ナックルズの功績、そしてハウス・ミュージックは文化をいかに変えたか (columns)
  10. 漢 a.k.a. GAMI監修『MCバトル全書』 ――名バトルからあの事件の裏側まで、現行ジャパニーズ・ヒップホップシーンのリアルがわかる『MCバトル全書』が発売中 (news)
  11. Columns NYクラブ・ミュージックの新たな波動 後編:進化する現代のレイヴ・カルチャー (columns)
  12. Oli XL - Rogue Intruder, Soul Enhancer (review)
  13. Jeff Parker ──ジャズ・ギタリストのジェフ・パーカーが新作をリリース (news)
  14. パラサイト 半地下の家族 - (review)
  15. Sefi Zisling - Expanse (review)
  16. Columns TINY POPというあらたな可能性 (columns)
  17. Jagatara2020 ──80年代バブル期の日本に抗い、駆け抜けた伝説のバンド、じゃがたらが復活! (news)
  18. Columns tiny pop sound cloudガイド (columns)
  19. Stormzy - Heavy Is The Head (review)
  20. Nick Cave and The Bad Seeds - Ghosteen (review)

Home >  Reviews >  Album Reviews > Zomby- One Foot Ahead Of The Other EP

Zomby

Zomby

One Foot Ahead Of The Other EP

Ramp

Amazon iTunes

野田 務   Nov 11,2009 UP
このエントリーをはてなブックマークに追加

 生きる屍、自らをゾンビと名乗るだけはある。ダブステップ・シーンにおける異端児、変わり者、ミステリー、反逆者、もしくは頽廃。エイフェックス・ツインがDJでプレイするだけのことはあるけれど、フランツ・フェルディナンドがリミックスを依頼した根拠はよくわからない。B級だし、安っぽいし、レイヴィーだし、......そして、大人を舐めきったようなこの自称ジャングリストは、ベッドルームの歪んだ夢想にどこまでも戯れる。悪意はない。面白がっているだけなのだろう。

 さて、これはロかの"Spliff Dub"で有名な、スモーカーズ系ゲームボーイ系プロデューサーによる、例によってチープで8ビットめいた作品で、ハドソン・モホークとも共通する感性=ポップとオナニズムの際どいせめぎ合いが展開される。いや、言い過ぎだった。オナニズムというほど自己完結的なものではない。エロール・アルカンだって彼の珍味なトラックをスピンしている。ただ......この人は、自分の音楽を1枚の"作品"として真面目に出す気があまりないようだ。2008年の『Where Were U In '92?』というアルバム・タイトルが暗示するように、彼はあの時代のジャングルを愛している。あの時代のレイヴのエネルギーを、若さゆえの暴走を、俗っぽさを、そのいかがわしさを賞揚している。実際そのアルバムは笑ってしまうほど、あの頃の音楽へのオマージュとなっている。

 昨年末、およそ1年前に〈ハイパーダブ〉からリリースされた2枚組のシングル「Zomby EP」も、なんとも捉えどころのない音楽だった。お決まりのダブステップを拒否するだけではない。スペイシーなレイヴ・スタイルもあればアンビエントもあるし、エレクトロニカ風のトラックもあった。コミカルだがダークで、実験的だがTVゲームめいている。低予算で作られたホラー映画の美学を彼からは感じたものだった。

 今回も実に、ある意味では投げやりにできている。すべての曲は途中ですぱっと終わる。エンディングというものを放棄しているのか、ただ面倒くさいだけなのか。しかし、正直な話、それぞれのトラックは、おかしなほど魅力を持っている(だから買ってしまうのだ)。タイトル曲の"One Foot Ahead Of The Other"にはメランコリックな輝きがあり、この変人の抒情性を感じることができる。"ゴジラ(Godzilla)"もまたエモーショナル曲だが、秋葉原的なものがそこには混じっている。今回は"Expert Tuition"のようなハマリ系のミニマルも展開しているが、これが実に良い。真面目な話、最良のデトロイト・フォロワーのトラックを聴いているようだ。タイトル・トラックとともに今回のベストである。それから......"メスカリン・コーラ(Mescaline Cola)"って、このひどいタイトルのトラックは、赤ちゃんの王国の華麗なるメリーゴーランドで、最後の"Firefly Final"もまた、このオタクめいた煙好きのソウルを感じる。が、しかし、それもどれも、いきなりぱっと終わる。すべての曲は、慣習的に言えば未完成なのだろうが、この生きる屍は完成など目指していない。アーティなるものとはほど遠いが、もうひとつ別の情熱がここにはある。

 そして彼は自分のベッドルームで煙を吐きながらチキンをほおばり、こんな下らない音楽を作っている......。

野田 務